会社法ニュース2024年05月31日 共同保有者の重要提案行為の合意とは(2024年6月3日号・№1029) 取締役の選解任等の一定の外形的事実を政令に限定列挙へ
公開買付制度や大量保有報告制度を見直す「金融商品取引法及び投資信託及び投資法人に関する法律の一部を改正する法律」が5月22日に公布された。大量保有報告制度の見直しでは、「共同保有者」(共同して株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している者)の範囲の明確化が行われる(改正金融商品取引法の公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日から施行)。
昨今では、投資家が企業と対話することが求められており、複数の投資家が協調して個別の投資先企業に対し特定のテーマについて対話を行うこと(協働エンゲージメント)により、質的・量的なリソース不足を補い、対話の実効性を高めることが重要とされている。しかし、大量保有報告制度における「共同保有者」の範囲が法令上不明確であることが協働エンゲージメントを行う上での支障になっていると指摘されている。大量保有報告制度では、複数の投資家が「共同保有者」に該当し、合意した保有割合が5%超になれば、大量保有報告書の提出が求められることになるからだ。
このため、今回の改正では、複数の投資家が「経営に重大な影響を与えるような合意」(重要提案行為等の合意)を行わない限り、例えば、配当方針や資本政策の変更などの企業支配権に直接関係しない提案を共同して行う場合であれば、「共同保有者」に該当しないこととしている(改正法27条の23第5項)。その一方で今後規定される政令では、取締役の選解任や重要資産の処分等については重要提案行為等の合意に該当するものとして限定列挙し、「共同保有者」とみなすことを明確化する。
2008年の金商法の改正により、大量保有報告書等の不提出及び不実記載が課徴金制度の対象とされたものの、その後も大量保有報告書等の提出遅延は相次いでおり、実効性の面で懸念が生じている。特に共同保有者の認定に係る立証が難しいことから、複数の投資家が協調して株券等を取得していることが疑われる事例なども見受けられるため、一定の外形的事実を示すことにより、企業及び投資家の双方の懸念を払拭することで対話の実効性を高める狙いがある。
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