解説記事2024年06月17日 税制改正解説 令和6年度における所得税関係の改正について(上)(2024年6月17日号・№1031)
税制改正解説
令和6年度における所得税関係の改正について(上)
鷲見太希/増田高也
賃金の上昇が物価高に追い付いていない国民の負担を緩和し、物価の上昇を上回る持続的な賃金の上昇が行われる経済の実現を目指す観点からの令和6年分における所得税額の特別控除の実施及び給与等の支給額が増加した場合の税額控除制度の強化等並びに資本の蓄積の推進及び生産性の向上による供給力の強化のための産業競争力基盤強化商品生産用資産を取得した場合の税額控除制度及び特許権等の譲渡等による所得の課税の特例の創設を行うとともに、新たな産業の創出及び育成を推進するための特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等の適用要件の見直し並びに経済のグローバル化を踏まえた特定プラットフォーム事業者を介して行う電気通信利用役務の提供に関する消費税の課税の特例の創設を行うほか、納税環境の整備、租税特別措置の見直し等所要の措置を講ずることを内容とした「所得税法等の一部を改正する法律」は、国会における審議を経て令和6年3月28日に参議院本会議で可決・成立し、3月30日に関係政省令とともに公布され、原則として4月1日から施行されている。
以下これらの改正内容について概要を説明する。
所得税法等の改正
1 新たな公益信託制度の創設に伴う所得税法等の整備(所法9等関係)
(1)改正の内容
① 公共法人等及び公益信託等に係る非課税について、適用対象となる公益信託が公益信託に関する法律の公益信託(以下「公益信託」という。)とされ、公益信託の信託財産につき生ずる所得(貸付信託の受益権の収益の分配に係るものにあっては、その受益権が信託財産に引き続き属していた期間に対応する部分に限る。)については、所得税を課さないこととされた。
② 贈与等の場合の譲渡所得等の特例について、対象となる資産の移転の事由に「公益信託の受託者である個人に対する贈与又は遺贈(その信託財産とするためのものに限る。)」が追加され、譲渡所得の基因となる資産等について公益信託の受託者に対する贈与又は遺贈があった場合には、受託者の主体の属性(個人・法人)にかかわらず、その贈与又は遺贈によるみなし譲渡課税を行うこととされた。
③ 公益信託の委託者である居住者がその有する資産を信託した場合には、その資産を信託した時において、その委託者である居住者からその公益信託の受託者に対して贈与又は遺贈によりその資産の移転が行われたものとして取り扱うこととされ、公益信託に資産を信託した場合には、上記②のみなし譲渡課税が行われることが明確化された。
④ 寄附金控除について、認定特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭に代えて、公益信託の信託財産とするために支出したその公益信託に係る信託事務に関連する寄附金(出資に関する信託事務に充てられることが明らかなもの等を除く。)が、特定寄附金として寄附金控除の対象とされた。なお、改正前に特定寄附金とみなされていた認定特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭については、引き続き寄附金控除の対象とする経過措置が講じられた。
⑤ 所得税を課さないこととされる相続、遺贈又は個人からの贈与により取得する財産等のうち個人からの贈与により取得する財産の範囲から、公益信託から給付を受けた財産に該当するものを除くこととされた。
⑥ 上記②の改正に伴い、みなし譲渡課税の対象となる事由を基準にその適用対象等が定められている措置(贈与等により取得した資産の取得費等)について、所要の整備が行われた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、公益信託に関する法律(以下「公益信託法」という。)の施行の日以後に効力が生ずる公益信託(移行認可を受けた信託を含む。)について適用し、同日前に効力が生じた旧公益信託(移行認可を受けたものを除く。)については従前どおりとされている。
② 上記(1)②~⑥の改正は、公益信託法の施行の日から施行される。
2 減価償却資産の範囲及び耐用年数の改正(所令6等関係)
(1)改正の内容
① 減価償却資産の範囲に、無形固定資産として漁港水面施設運営権が追加された。
② 鉱業権のうち、石油又は可燃性天然ガスに係る試掘権の耐用年数が6年(改正前:8年)に、アスファルトに係る試掘権の耐用年数が5年(改正前:8年)に、それぞれ短縮された。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和6年4月1日から施行される。
② 上記(1)②の改正は、令和7年分以後の所得税について適用し、令和6年分以前の所得税については従前どおりとされている。
3 国又は地方公共団体が行う保育その他の子育てに対する助成事業等により支給される金品の非課税措置の改正(所規3の2関係)
(1)改正の内容
非課税とされる一定の業務又は施設の利用に要する費用に充てるため国等から支給される金品について、その対象となる施設の範囲に、児童福祉法に規定する親子関係形成支援事業に係る施設が追加された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年分以後の所得税について適用し、令和5年分以前の所得税については従前どおりとされている。
4 公共法人等及び公益信託等に係る非課税の改正(所令51の3関係)
(1)改正の内容
適用対象となる公社債等の管理の方法に、一定の社債につき金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る。)又は登録金融機関にその社債の譲渡についての制限を付すこと等の要件を満たす保管の委託をする方法が追加された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、公共法人等又は公益信託若しくは加入者保護信託が令和6年4月1日以後に支払を受けるべき社債の利子について適用される。
5 国庫補助金等の総収入金額不算入制度の改正(所令89関係)
(1)改正の内容
対象となる国庫補助金等に、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法に基づく国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の供給確保事業助成金及び独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構法に基づく独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構の供給確保事業助成金が追加された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年分以後の所得税について適用される。
6 源泉徴収の対象とされる報酬・料金等の範囲の改正(所法204等関係)
(1)改正の内容
源泉徴収制度及び支払調書の対象となる報酬・料金等の範囲に、社会保険診療報酬支払基金から支払われる流行初期医療の確保に要する費用が追加された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年4月1日以後に支払うべき診療報酬について適用し、同日前に支払うべき診療報酬については従前どおりとされている。
7 本人確認書類の範囲の改正(所規81の6等関係)
(1)改正の内容
国内に住所を有しない個人で個人番号を有するものに係る個人番号を証する書類の範囲に個人番号カードが追加されるとともに、その書類の範囲から還付された個人番号カードが除外された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年5月27日から施行されている。
8 オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書等の電子交付の特例の改正(所規92の3等関係)
(1)改正の内容
① 国内においてオープン型の証券投資信託の収益の分配又は剰余金の配当等とみなされるものにつき支払をする者が、その支払を受ける者からのその支払に関する通知書の交付に代えて行うその通知書に記載すべき事項の電磁的方法による提供についての承諾を得ようとする場合において、その支払をする者が定める期限までにその承諾をしない旨の回答がないときはその承諾があったものとみなす旨の通知をし、その期限までにその支払を受ける者からその回答がなかったときは、その承諾を得たものとみなすこととされた。
② 集団投資信託を引き受けた内国法人が、個人又は法人からのその支払の確定した集団投資信託の収益の分配に係る通知外国所得税の額等の書面による通知に代えて行うその書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供についての承諾を得ようとする場合において、その内国法人が定める期限までにその承諾をしない旨の回答がないときはその承諾があったものとみなす旨の通知をし、その期限までにその個人又は法人からその回答がなかったときは、その承諾を得たものとみなすこととされた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、上記(1)①の支払をする者又は上記(1)②の内国法人が令和6年4月1日以後に行う上記(1)の通知について適用される。
9 計算書等の書式の特例(改正後:計算書等の書式等の特例)の改正(所規104関係)
(1)改正の内容
① 適用対象に、障害者等の少額預金の利子所得等の非課税措置に関する申告書が追加された。
② 国税庁長官は、適用対象となる書類の書式について所要の事項を付記し、又は一部の事項を削る場合には、併せてその用紙の大きさを別表に定める大きさ以外の大きさ(日本産業規格に適合するものに限る。)とすることができることとされた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和8年9月1日から施行される。
10 支払調書等の提出の特例の改正(所法228の4等関係)
(1)改正の内容
支払調書等のe-Tax等による提出義務制度について、この制度の対象となるかどうかの判定基準となるその年の前々年に提出すべきであった支払調書等の枚数が30枚以上(現行:100枚以上)に引き下げられた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和9年1月1日以後に提出すべき調書等について適用し、同日前に提出すべき調書等については従前どおりとされている。
租税特別措置法等の改正
第一 金融・証券税制の改正
1 特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等の改正(措法29の2等関係)
(1)改正の内容
① 権利行使価額の年間の限度額である1,200万円の判定について、特定新株予約権に係る付与決議の日において、その特定新株予約権に係る契約を締結した株式会社が、その設立の日以後の期間が5年未満のものである場合には権利行使価額を2で除して計算した金額とし、その設立の日以後の期間が5年以上20年未満であること等の要件を満たすものである場合には権利行使価額を3で除して計算した金額として、その判定を行うこととされた。
② 適用対象となる新株予約権の行使により取得をする株式の管理の方法について、改正前の要件に代えて、「新株予約権の行使により交付をされるその株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)の管理に関する取決めに従い、その取得後直ちに、その株式会社により管理がされること」との要件を選択適用できることとされた。
③ 株式会社に提出する書面について、その書面の提出に代えて、電磁的方法によるその書面に記載すべき事項の提供を行うことができることとされた。また、その書面に記載すべき事項の提供を受けた株式会社は、各人別に整理し、その書面に記載すべき事項を記録した電磁的記録をその提供を受けた日の属する年の翌年から5年間保存しなければならないこととされた。
④ 付与会社等により管理がされている特定株式について、その管理に係る契約の解約又は終了等の事由によりその特定株式の全部又は一部の返還又は移転があった場合には、その返還又は移転があった特定株式については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額による譲渡があったものとみなして、株式等に係る譲渡所得等の課税の特例その他の所得税に関する法令の規定を適用すること等とされた。
⑤ 「特定新株予約権の付与に関する調書」及び「特定株式等の異動状況に関する調書」の記載事項の見直しが行われた。
⑥ 認定新規中小企業者等及び社外高度人材の要件の見直しが行われた。
(2)適用関係
① 上記(1)①及び②の改正は、令和6年分以後の所得税について適用し、令和5年分以前の所得税については従前どおりとされている。
② 上記(1)③の改正は、令和6年4月1日以後に株式会社に対して行う電磁的方法による書面に記載すべき事項の提供について適用される。
③ 上記(1)③の改正は、令和6年4月1日以後に提出をする書面について適用し、同日前に提出した書面については従前どおりとされている。
④ 上記(1)④の改正は、令和6年4月1日以後に管理に係る契約の解約又は終了により特例適用者又は承継特例適用者が有する特定株式又は承継特定株式の全部又は一部の返還がある場合について適用し、同日前に管理に係る契約の解約又は終了により特例適用者又は承継特例適用者が有する特定株式又は承継特定株式の全部又は一部の返還があった場合については従前どおりとされている。
⑤ 上記(1)⑤の改正は、特定新株予約権でその付与をした日が令和6年4月1日以後であるものについて適用し、特定新株予約権でその付与をした日が同日前であるものについては従前どおりとされている。
⑥ 上記(1)⑤の改正は、令和6年4月1日以後に提出する特定株式等の異動状況に関する調書について適用し、同日前に提出した特定株式等の異動状況に関する調書については従前どおりとされている。
⑦ 上記(1)⑥の改正は、令和6年4月1日から施行される。
2 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等の改正(措法37の13等関係)
(1)改正の内容
① 一定の新株予約権の行使により取得をした控除対象特定株式にあっては、その控除対象特定株式の取得に要した金額に、その新株予約権の取得に要した金額を含むこととされた。
② 同一年中に複数銘柄の控除対象特定株式の取得をした場合において、特例の適用を受けた年の翌年以後の各年分におけるその控除対象特定株式に係る同一銘柄株式の取得価額又は取得費から控除する金額の計算方法が明確化された。
③ 都道府県知事等の確認をした旨を証する書類について、その特定株式が一定の新株予約権の行使により取得をしたものである場合には、その新株予約権と引換えに払い込むべき額及びその払い込んだ金額の記載があるものに限ること等とされた。
④ 適用対象に、居住者等が受益者となった一定の信託の財産として特定株式の取得をする方法が追加された。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、個人が令和6年4月1日以後に払込みにより取得をする新株予約権の行使により取得をする特定株式について適用される。
② 上記(1)②の改正は、個人が令和6年4月1日以後に払込みにより取得をする特定株式について適用し、個人が同日前に払込みにより取得をした特定株式については従前どおりとされている。
③ 上記(1)③及び④の改正は、令和6年4月1日に施行される。
3 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例の改正(措法41の19等関係)
(1)改正の内容
① 一定の新株予約権の行使により取得をした控除対象特定新規株式にあっては、その控除対象特定新規株式の取得に要した金額に、その新株予約権の取得に要した金額を含むこととされた。
② 都道府県知事等の確認をした旨を証する書類について、その特定新規株式が一定の新株予約権の行使により取得をしたものである場合には、その新株予約権と引換えに払い込むべき額及びその払い込んだ金額の記載があるものに限ること等とされた。
③ 適用対象となる国家戦略特別区域法に規定する特定事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限が令和8年3月31日まで2年延長された。
④ 適用対象となる地域再生法に規定する特定地域再生事業を行う株式会社により発行される株式の発行期限が令和8年3月31日まで2年延長された。
⑤ 特定新規中小会社の確認手続において必要な添付書類が一部削減された。
⑥ 適用対象に、居住者等が受益者となった一定の信託の財産として特定新規株式の取得をする方法が追加された。
(2)適用関係
① 上記(1)①及び②の改正は、個人が令和6年4月1日以後に払込みにより取得をする新株予約権の行使により取得をする特定株式について適用される。
② 上記(1)⑤及び⑥の改正は、令和6年4月1日に施行される。
4 租税特別措置法に定められている支払調書等の書式等に関する特例の整備(措規2の5等関係)
(1)改正の内容
① 国税庁長官は、次に掲げる調書等の書式について必要があるときは、所要の事項を付記すること又は一部の事項を削ることができることとされた。
イ 障害者等の少額公債の利子の非課税措置に関する申告書
ロ 勤労者財産形成住宅(年金)貯蓄の利子所得等の非課税措置に関する申告書
ハ 特定新株予約権の付与に関する調書及び特定株式等の異動状況に関する調書
ニ 上場株式等の源泉徴収選択口座内調整所得金額及び源泉徴収選択口座内配当等の所得税徴収高計算書
ホ 未成年者口座年間取引報告書
へ 住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書
ト 償還差益の所得税徴収高計算書
チ 割引債の償還金に係る差益金額の所得税徴収高計算書
② 国税庁長官は、租税特別措置法に定められている調書等の書式について所要の事項を付記し、又は一部の事項を削る場合には、併せてその用紙の大きさを別表に定める大きさ以外の大きさ(日本産業規格に適合するものに限る。)とすることができることとされた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和8年9月1日から施行される。
5 金融機関等の受ける利子所得等に対する源泉徴収の不適用の改正(措法8等関係)
(1)改正の内容
適用対象となる公社債等の利子等の範囲に、一定の社債であって、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る。)又は登録金融機関にその社債の譲渡についての制限を付すこと等の要件を満たす方法による保管の委託がされたその社債の利子等が追加された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、金融機関、金融商品取引業者等又は内国法人が令和6年4月1日以後に支払を受けるべき社債の利子について適用される。
6 上場株式配当等の支払通知書等の電子交付の特例の改正(措規4の4等関係)
(1)改正の内容
① 国内において上場株式等の配当等又は特定割引債の償還金の支払をする者は、その支払を受ける者からのその支払に関する通知書の交付に代えて行うその通知書に記載すべき事項の電磁的方法による提供についての承諾を得ようとする場合において、その支払をする者が定める期限までにその承諾をしない旨の回答がないときはその承諾があったものとみなす旨の通知をし、その期限までにその支払を受ける者からその回答がなかったときは、その承諾を得たものとみなすこととされた。
② 上場株式等の配当等の支払の取扱者が、個人又は内国法人若しくは外国法人からのその上場株式等の配当等に係る控除外国所得税相当額等の書面による通知に代えて行うその書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供についての承諾を得ようとする場合において、その支払の取扱者が定める期限までにその承諾をしない旨の回答がないときはその承諾があったものとみなす旨の通知をし、その期限までにその個人又は内国法人若しくは外国法人からその回答がなかったときは、その承諾を得たものとみなすこととされた。
③ 金融商品取引業者等は、特定口座を開設した居住者等からの特定口座年間取引報告書の交付に代えて行うその報告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供についての承諾を得ようとする場合において、その金融商品取引業者等が定める期限までにその承諾をしない旨の回答がないときはその承諾があったものとみなす旨の通知をし、その期限までにその居住者等からその回答がなかったときは、その承諾を得たものとみなすこととされた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、通知者が令和6年4月1日以後に行う上記(1)の通知について適用される。
7 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置の改正(措法37の14等関係)
(1)改正の内容
① 受入期間内に受け入れた上場株式等の取得対価の額の合計額が240万円を超えないこと等の要件を満たすことにより特定非課税管理勘定に受け入れることができる上場株式等の範囲に、上場株式等について与えられた新株予約権の行使により取得をした上場株式等その他の一定のもので金銭の払込みにより取得するものが追加された。
② 非課税管理勘定又は特定非課税管理勘定に受け入れることができる非課税口座内上場株式等の分割等により取得する上場株式等の範囲から、非課税口座内上場株式等について与えられた一定の新株予約権の行使等により取得する上場株式等でその取得に金銭の払込みを要するものが除外された。
③ 金融商品取引業者等の営業所の長は、勘定廃止通知書又は非課税口座廃止通知書の交付に代えて、電磁的方法による勘定廃止通知書記載事項又は非課税口座廃止通知書記載事項の提供ができることとされた。
④ 非課税口座を開設し、又は開設していた居住者等は、勘定廃止通知書又は非課税口座廃止通知書を添付した非課税口座開設届出書の提出に代えて、勘定廃止通知書記載事項若しくは非課税口座廃止通知書記載事項の記載をした非課税口座開設届出書の提出又は非課税口座開設届出書の提出と併せて行われる電磁的方法による勘定廃止通知書記載事項若しくは非課税口座廃止通知書記載事項の提供等ができることとされた。
⑤ 金融商品取引業者等の営業所に非課税口座を開設している居住者等は、勘定廃止通知書又は非課税口座廃止通知書の提出に代えて、電磁的方法による勘定廃止通知書記載事項又は非課税口座廃止通知書記載事項の提供等ができることとされた。
⑥ 非課税口座内上場株式等の配当等に係る金融商品取引業者等の要件について、非課税口座に国外において発行された株式のみの保管の委託がされ、かつ、その者がその株式に係る国外株式の配当等に係る支払の取扱者に該当することその他の要件を満たす場合には、口座管理機関に該当することとの要件を満たす必要はないこととされた。
⑦ 勘定廃止通知書及び非課税口座廃止通知書並びに非課税口座年間取引報告書の記載事項の簡素化等がされた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、令和6年4月1日以後に取得をする上場株式等について適用し、同日前に取得をした上場株式等については従前どおりとされている。
② 上記(1)②の改正は、令和6年4月1日以後に行使又は取得事由の発生により取得する上場株式等について適用し、同日前に行使又は取得事由の発生により取得した上場株式等については従前どおりとされている。
③ 上記(1)③の改正は、令和6年4月1日以後に提出を受ける金融商品取引業者等変更届出書又は非課税口座廃止届出書について適用し、同日前に提出を受けた金融商品取引業者等変更届出書又は非課税口座廃止届出書については従前どおりとされている。
④ 上記(1)④の改正は、令和6年4月1日以後に提出をする非課税口座開設届出書について適用し、同日前に提出をした非課税口座開設届出書については従前どおりとされている。
⑤ 上記(1)⑤の改正は、令和6年4月1日以後に特定累積投資勘定又は特定非課税管理勘定を設けようとする場合について適用し、同日前に特定累積投資勘定又は特定非課税管理勘定を設けようとする場合については従前どおりとされている。
⑥ 上記(1)⑥の改正は、令和6年4月1日以後に支払を受けるべき非課税口座内上場株式等の配当等について適用し、同日前に支払を受けるべき非課税口座内上場株式等の配当等については従前どおりとされている。
⑦ 上記(1)⑦の改正は、令和6年4月1日以後に提出を受ける金融商品取引業者等変更届出書又は非課税口座廃止届出書について適用し、同日前に提出を受けた金融商品取引業者等変更届出書又は非課税口座廃止届出書については従前どおりとされている。
令和6年4月1日以後に提出する令和6年以後の各年において金融商品取引業者等に開設されている非課税口座に係る報告書及び金融商品取引業者等に開設されている未成年者口座に係る報告書について適用し、同日前に提出した租税特別措置法第37条の14第34項の報告書及び同法第37条の14の2第27項の報告書並びに同日以後に提出する令和5年以前の各年において金融商品取引業者等に開設されていた非課税口座に係る報告書及び金融商品取引業者等に開設されていた未成年者口座に係る報告書については従前どおりとされている。
8 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例等の改正(措令25の10の2関係)
(1)改正の内容
上場株式等保管委託契約に基づき特定口座に受入れ可能な上場株式等の範囲に、次の上場株式等が追加された。
① 金融商品取引業者等に特定口座を開設する居住者等が非課税口座内上場株式等について与えられた一定の新株予約権の行使等により取得する上場株式等でその取得に金銭の払込みを要するものの全てを、その行使等の時に、その特定口座に係る振替口座簿に振替記載等をする方法により受け入れるもの。
② 居住者等が開設する非課税口座に設けられた特定非課税管理勘定等に係る非課税口座内上場株式等及びその非課税口座が開設されている金融商品取引業者等にその居住者等が開設する特定口座に係るその非課税口座内上場株式等と同一銘柄の特定口座内保管上場株式等について生じた株式の分割等の事由により取得する上場株式等(非課税口座に受け入れることができるもの及び特定口座に受け入れることができるものを除く。)で、その上場株式等のその特定口座への受入れを振替口座簿に振替記載等をする方法により行うもの。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年4月1日以後に上記①の行使等又は上記②の事由により特定口座に受け入れる上場株式等について適用される。
第二 住宅・土地税制の改正
1 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除制度(住宅ローン税額控除)等の改正(措法41等関係)
(1)改正の内容
① 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除制度の改正
イ 個人で、年齢40歳未満であって配偶者を有する者、年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者又は年齢19歳未満の扶養親族を有する者(以下「特例対象個人」という。)が、認定住宅等の新築等又は買取再販認定住宅等の取得をし、かつ、その認定住宅等の新築等をした認定住宅等(認定住宅等とみなされる特例認定住宅等を含む。)又は買取再販認定住宅等の取得をした家屋を令和6年1月1日から同年12月31日までの間に自己の居住の用に供した場合(その認定住宅等の新築等又は買取再販認定住宅等の取得をした日から6月以内に自己の居住の用に供した場合に限る。)において、認定住宅等の住宅ローン税額控除の特例を適用する場合の同年分の認定住宅等借入限度額を次のとおり上乗せされた金額とする特例が創設された。

ロ 小規模居住用家屋である認定住宅等で令和6年12月31日以前に建築確認を受けたもの(以下「特例認定住宅等」という。)の新築又は特例認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得についても、認定住宅等の住宅ローン税額控除の特例の適用ができることとされた。ただし、その者の控除期間のうち、その年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円を超える年については、適用しないこととされた。
ハ 二以上の住宅の取得等に係る住宅借入金等の金額を有する場合の控除額の調整措置等について、所要の措置が講じられた。
② 東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の改正
イ 特例対象個人に該当する住宅被災者が、認定住宅等の新築等又は買取再販認定住宅等の取得をし、かつ、その認定住宅等の新築等をした認定住宅等(認定住宅等とみなされる特例認定住宅等を含む。)又は買取再販認定住宅等の取得をした家屋を令和6年1月1日から同年12月31日までの間に自己の居住の用に供した場合(その認定住宅等の新築等又は買取再販認定住宅等の取得をした日から6月以内に自己の居住の用に供した場合に限る。)において、東日本大震災の被災者等に係る住宅ローン税額控除の控除額に係る特例を適用する場合の同年分の借入限度額を次のとおり上乗せされた金額とする特例が創設された。

ロ 上記①ロ及びハと同様の措置を講ずることとされた。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、特例対象個人等が令和6年1月1日以後に認定住宅等を居住の用に供する場合について適用される。
2 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除の改正(措法41の19の3等関係)
(1)改正の内容
次の措置が講じられた上で、その適用期限が令和7年12月31日まで2年延長された。
① 子育て対応改修工事等に係る税額控除制度の創設
イ 特例対象個人が、その所有する居住用の家屋について子育て対応改修工事等をして、その居住用の家屋を令和6年4月1日から同年12月31日までの間にその者の居住の用に供した場合には、その特例対象個人の同年分の額から、子育て対応改修工事等に係る標準的費用額(補助金等の交付を受ける場合には、補助金等の額を控除した後の金額とし、その金額が250万円を超える場合には、250万円)の10%に相当する金額を控除することができることとされた。
ロ 上記イの「子育て対応改修工事等」とは、国土交通大臣が財務大臣と協議して定める子育てに係る特例対象個人の負担を軽減するために家屋について行う増改築等でその増改築等に該当するものであることにつき増改築等工事証明書によって証明がされたものであり、その子育て対応改修工事等に係る標準的な工事費用相当額(補助金等の交付がある場合には、補助金等の額を控除した後の金額)が50万円を超えること等の要件を満たすものが本特例の対象とされている。
② 合計所得金額要件の見直し
本特例の適用対象者の合計所得金額要件を2,000万円以下(改正前:3,000万円以下)に引き下げることとされた。
③ エアコンディショナーの省エネルギー基準達成率の見直し
本特例の適用対象となる省エネ改修工事のうち省エネ設備の取替え又は取付け工事について、その工事の対象設備となるエアコンディショナーの省エネルギー基準達成率を107%以上(改正前:114%以上)に引き下げることとされた。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、改修工事をした家屋を令和6年4月1日以後に居住の用に供する場合について適用される。
② 上記(1)②の改正は、対象高齢者等居住改修工事等、対象一般断熱改修工事等、対象多世帯同居改修工事等又は対象住宅耐震改修若しくは対象耐久性向上改修工事等をした家屋を令和6年1月1日以後にその者の居住の用に供する場合について適用し、これらの改修工事をした家屋を同日前にその者の居住の用に供した場合については従前どおりとされている。
③ 上記(1)③の改正は、対象一般断熱改修工事等をした家屋を令和6年1月1日以後にその者の居住の用に供する場合について適用し、対象一般断熱改修工事等をした家屋を同日前にその者の居住の用に供した場合については従前どおりとされている。
3 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等の改正(措法33等関係)
(1)改正の内容
適用対象に、土地収用法に規定する事業の施行者が行うその事業の施行に伴う漁港水面施設運営権の消滅により補償金を取得する場合及び漁港管理者が漁港及び漁場の整備等に関する法律の規定に基づき公益上やむを得ない必要が生じた場合に行う漁港水面施設運営権を取り消す処分に伴う資産の消滅等により補償金を取得するときが追加された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、令和6年4月1日から施行される。
4 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の2,000万円特別控除の改正(措法34等関係)
(1)改正の内容
① 適用対象に、古都保存法又は都市緑地法の規定により対象土地が都市緑化支援機構に買い取られる場合(一定の要件を満たす場合に限る。)が追加された。
② 適用対象から、都市緑地法の規定により土地等が緑地保全・緑化推進法人に買い取られる場合が除外された。
(2)適用関係
① 上記(1)①の改正は、都市緑地法等の一部を改正する法律の施行の日から施行される。
② 上記(1)②の改正は、個人の有する土地等が都市緑地法等の一部を改正する法律の施行の日以後に買い取られる場合について適用し、個人の有する土地等が同日前に買い取られた場合については、従前どおりとされている。
5 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の改正(措法34の2関係)
適用対象となる特定の民間住宅地造成事業のために土地等が買い取られる場合について、その適用期限が令和8年12月31日まで3年延長された。
6 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の改正(措法36の2等関係)
適用期限が令和7年12月31日まで2年延長された。
7 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正(措法41の5等関係)
(1)改正の内容
本特例の適用を受けようとする個人が買換資産に係る住宅借入金等の債権者に対し、住宅ローン税額控除制度における「住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書制度」に係る適用申請書を提出している場合には、買換資産に係る住宅借入金等の残高証明書の納税地の所轄税務署長への提出及び確定申告書への添付を不要とした上で、その適用期限が令和7年12月31日まで2年延長された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、個人が令和6年1月1日以後に行う譲渡資産の特定譲渡について適用し、個人が同日前に行った譲渡資産の特定譲渡については従前どおりとされている。
8 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正(措法41の5の2関係)
適用期限が令和7年12月31日まで2年延長された。
9 既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除の改正(措法41の19の2関係)
適用期限が令和7年12月31日まで2年延長された。
10 認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除の改正(措法41の19の4関係)
(1)改正の内容
本特例の適用対象者の合計所得金額要件が2,000万円以下(改正前:3,000万円以下)に引き下げられた上で、その適用期限が令和7年12月31日まで2年延長された。
(2)適用関係
上記(1)の改正は、個人が、認定住宅等の新築又は認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得をして、その認定住宅等を令和6年1月1日以後にその者の居住の用に供する場合について適用し、個人が、認定住宅等の新築又は認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得をして、その認定住宅等を同日前にその者の居住の用に供した場合については従前どおりとされている。
11 特定の事業用資産の買換え等の場合の譲渡所得の課税の特例の廃止(旧震災税特法12等関係)
適用期限(令和6年3月31日)の到来をもって廃止された。
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