解説記事2024年08月05日 税制改正解説 令和6年度における国際課税関係の改正について(2024年8月5日号・№1038)

税制改正解説
令和6年度における国際課税関係の改正について
 判田一樹/山本真太郎

はじめに

 経済のデジタル化・グローバル化や取引の多様化・複雑化が進展する中、国際課税制度の重要性はますます高まっており、近年、我が国では、BEPSプロジェクトの合意事項等を踏まえ、国際的な課税逃れの防止に向けて累次の制度整備が行われてきた。
 令和3年(2021年)10月には、OECD/G20「BEPS包摂的枠組み」(IF:Inclusive Framework on BEPS)において、市場国への新たな課税権の配分(「第1の柱」)及びグローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)の「2本の柱」からなる解決策が最終的に合意された。このうち「第2の柱」については、令和5年度税制改正において所得合算ルール(IIR:Income Inclusion Rule)に係る法制化(各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税の創設等)が行われた。「第2の柱」は、令和5年度税制改正に引き続き、今般の税制改正においても国際合意に則った法制化が行われている。具体的には、所得合算ルールについて、OECDにより発出されたGloBEルールに係るガイダンスの内容や、国際的な議論の内容を踏まえた制度の明確化等の観点からの見直しが行われた。
 加えて、国際課税関係の改正については、外国子会社合算税制の見直し等の改正が行われている。外国子会社合算税制の見直しは、「第2の柱」の導入により企業に追加的な事務負担が生じること等を踏まえ、令和5年度税制改正に引き続き、追加的な見直しが行われたものである。具体的には、いわゆるペーパー・カンパニー特例に係る収入割合要件について、外国関係会社の事業年度に係る収入等がない場合には、その事業年度における収入割合要件の判定を不要とする見直しが行われている。
 また、分散型台帳技術を使用する暗号資産等を利用した国際的な脱税及び租税回避を防止する観点から、令和4年(2022年)、OECDにおいて策定された「暗号資産等の取引や移転に関する自動的情報交換の報告枠組み」(CARF:Crypto-Asset Reporting Framework)に基づき、非居住者の暗号資産に係る取引情報等を租税条約等に基づいて各国税務当局と交換するため、国内の暗号資産取引業者等に対して非居住者の暗号資産に係る取引情報等を税務当局に報告することを義務付ける制度が整備された。
 これらのほか、非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の見直し、過大支払利子税制の見直し、子会社株式簿価減額特例の見直し、外国金融機関等の店頭デリバティブ取引の証拠金に係る利子の課税の特例の適用期限の延長及び非居住者又は外国法人が振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権に該当するものにつき支払を受ける剰余金の配当等の非課税措置の廃止等がそれぞれ行われている。
 これらの改正を含む国際課税の改正は、次の法令により行われている。
(法律)
・所得税法等の一部を改正する法律(令6.3.30法律第8号)
(政令)
・法人税法施行令等の一部を改正する政令(令6.3.30政令第142号)
・租税特別措置法施行令の一部を改正する政令(令6.3.30政令第151号)
・外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律施行令の一部を改正する政令(令6.6.21政令第214号)
・租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律施行令の一部を改正する政令(令6.6.21政令第215号)
(省令)
・所得税法施行規則の一部を改正する省令(令6.3.30財務省令第14号)
・法人税法施行規則等の一部を改正する省令(令6.3.30財務省令第15号)
・租税特別措置法施行規則の一部を改正する省令(令6.3.30財務省令第24号)
・法人税法施行規則の一部を改正する省令(令6.4.12財務省令第36号)(申告書別表関係)
・地方法人税法施行規則の一部を改正する省令(令6.4.12財務省令第37号)(申告書別表関係)
・租税特別措置法施行規則等の一部を改正する省令(令6.5.24財務省令第41号)
・外国居住者等の所得に対する相互主義による所得税等の非課税等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(令6.6.28総務省・財務省令第4号)
・租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令の一部を改正する省令(令6.6.28総務省・財務省令第5号)
・国税質問検査章規則の一部を改正する省令(令6.6.28財務省令第48号)

1 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税等の改正
(1)企業グループ等に係る最終親会社の範囲

 企業グループ等に係る最終親会社の範囲から、政府関係会社等のうち国等がその持分の全部を直接又は間接に有する会社等であって、国等の資産を運用することを主たる目的とし、かつ、法人税法施行令第155条の11第1項第2号から第4号までに掲げる要件を満たすもの(ソブリン・ウェルス・ファンド)を除くこととされた。また、他の会社等について最終親会社に該当するかどうかの判定を行う場合には、ソブリン・ウェルス・ファンドが直接又は間接に有する支配持分はないものとみなすこととされた(法法82二イ、法令155の4①)。
(2)構成会社等に係るグループ国際最低課税額の計算の見直し
 無国籍構成会社等又は無国籍共同支配会社等が自国内最低課税額に係る税を課されている場合には、無国籍構成会社等又は無国籍共同支配会社等に係るグループ国際最低課税額の計算上、その自国内最低課税額に係る税の額を控除することとされた(法法82の2②四~六、④四~六)。
(3)個別計算所得等の金額の計算
① 個別計算所得等の金額の計算における一定の税額控除の額に係る調整の見直し
 イ 適格適用者変更税額控除額等に係る調整
  特例適用前個別計算所得等の金額の計算において、適格適用者変更税額控除額のうち当期純損益金額に係る収益の額としていない金額を当期純損益金額に加算することとされたほか、個別計算所得等の金額の計算における適格適用者変更税額控除額等に係る調整方法について、所要の改正が行われた(法令155の18②十二、法規38の16⑩~⑫⑱~)。
 ロ 適格給付付き税額控除額及び適格適用者変更税額控除額以外の税額控除の額に係る調整
  特例適用前個別計算所得等の金額の計算において、税額控除の額(適格給付付き税額控除額及び適格適用者変更税額控除額を除く。)のうち当期純損益金額に係る収益の額としている金額を当期純損益金額から減算することとされた(法令155の18③十一)。
② 資本損益合算選択(除外資本損益に係る個別計算所得等の金額の計算の特例)の創設
  特定多国籍企業グループ等の選択により、除外資本損益を個別計算所得等の金額に含めることができる資本損益合算選択(除外資本損益に係る個別計算所得等の金額の計算の特例)が創設された(法令155の24の2、法規38の20の2)。
(4)調整後対象租税額の計算
① 還付を受け、又は控除された対象租税の額がある場合における調整後対象租税額の計算の見直し
 イ 当期対象租税額の計算上加算される税額控除等の額の範囲の見直し
   当期対象租税額の計算上加算される金額の範囲に、当期法人税等の額の計算上減算されている適格適用者変更税額控除額が追加された(法令155の35②二ハ)。
 ロ 当期対象租税額の計算上減算される税額控除等の額の範囲の見直し
   当期対象租税額の計算上減算される金額の範囲に、当期法人税等の額の計算上減算されていない非適格適用者変更税額控除額のうちの一定の金額が追加されたほか、当期対象租税額の計算上減算される税額控除等の額の範囲の見直しが行われた(法令155の35②三ロ、法規38の16、38の28⑨)。
 ハ 過大であった過去対象会計年度における調整後対象租税額が少額である場合に係る特例の見直し
   各対象会計年度において、過大であった過去対象会計年度における調整後対象租税額が少額である場合に係る特例の適用を受ける場合において、その過大であった部分の金額が当期法人税等の額又は費用の額の計算上減算されていないときは、その過大であった部分の金額を構成会社等又は共同支配会社等のその対象会計年度に係る調整後対象租税額から減算することとされた(法規38の28⑫)。
② 資本損益合算選択を行った場合における一定の導管会社等を通じて得られる税額控除等に係る調整後対象租税額の計算の特例の創設
  構成会社等又は共同支配会社等が、各対象会計年度において資本損益合算選択の適用を受ける場合において、適格持分を有するときは、その構成会社等又は共同支配会社等のその対象会計年度に係る調整後対象租税額の計算については、その適格持分を有することにより受ける税額控除の額及びこれに類するものをその調整後対象租税額に加算する等の調整後対象租税額に係る調整を行うこととされた(法令155の35⑦、法規38の29⑪~⑰)。
③ 移行対象会計年度前の対象会計年度において計上された繰延税金資産又は繰延税金負債の取扱いの見直し
  移行対象会計年度前の対象会計年度において計上された繰延税金資産がある場合における繰延対象租税額の計算においても、当期純損益金額に係る繰延税金資産の算定に当たり繰延税金資産から控除された金額(いわゆる評価性引当額)がある場合には、その金額はないものとし、その当期純損益金額に係る繰延税金資産のうちに、その対象会計年度後の対象会計年度における法人税等の額を減少させる見込みに変更があったことにより計上された繰延税金資産がある場合には、その繰延税金資産はないものとすることとされた(法規38の28⑥)。
④ 経過措置として認められる被配分当期対象租税額の計算の見直し
  国別実効税率の計算を要しないこととされる外国関係会社等に係る特定国別実効税率の計算の見直しが行われた(令和5年改正法規附則2④)。
(5)国別グループ純所得の金額から控除する金額
 複数の国若しくは地域において勤務等する構成会社等若しくは共同支配会社等の従業員等に係る特定費用の額又は複数の国若しくは地域に所在する構成会社等若しくは共同支配会社等の特定資産の額は、その構成会社等又は共同支配会社等の所在地国におけるその勤務に係る期間又は所在する期間に係る割合が50%以下である場合には、その特定費用の額又はその特定資産の額にその割合を乗じて計算した金額とすることとされたほか、国別グループ純所得の金額から控除する金額について、所要の改正が行われた(法令155の38④、155の46、法規38の31③~⑥⑧~⑬、法規38の36)。
(6)自国内最低課税額に係る税に関する適用免除基準
 構成会社等又は共同支配会社等が我が国以外の国又は地域の租税に関する法令において自国内最低課税額に係る税を課することとされている場合において、各対象会計年度のその自国内最低課税額に係る税が一定の要件を満たすときは、その対象会計年度のその構成会社等又は共同支配会社等の所在地国に係るグループ国際最低課税額(その構成会社等又は共同支配会社等が無国籍会社等である場合にあっては、その構成会社等又は共同支配会社等に係るグループ国際最低課税額)は、零とすることができることとされた(法法82の2⑥⑩⑬、法令155の54、法規38の43、38の45①)。
(7)収入金額等に関する適用免除基準
 構成会社等のうちに連結除外構成会社等がある場合において、収入金額要件又は所得金額要件の判定に係るその連結除外構成会社等に係る収入金額、個別計算所得金額又は個別計算損失金額は、国別報告事項(我が国以外の国又は地域におけるこれに相当する事項を含む。以下同じ。)として提供された又は提供されるものとした場合における一定の収入金額(その連結除外構成会社等に係る部分に限る。)とすることができることとされた(法令155の55③⑧)。
(8)連結除外構成会社等に関する適用免除基準
 構成会社等(その構成会社等の所在地国を所在地国とする構成会社等のうちに連結除外構成会社等が含まれるものに限る。)が各対象会計年度において①又は②の要件のいずれかを満たす場合には、その対象会計年度のその所在地国に係る当期国別国際最低課税額は、零とすることができることとされた(法法82の2⑧⑩、法令155の55⑤~⑧、法規38の44⑤⑥)。
① 実効税率要件
  イに掲げる金額がロに掲げる金額(零を超えるものに限る。)のうちに占める割合が15%以上であること。
 イ その所在地国を所在地国とする全ての構成会社等(連結除外構成会社等を除く。)の調整後対象租税額の合計額と国別報告事項として提供された又は提供されるものとした場合における発生税額に係る事項に係る金額(連結除外構成会社等に係る部分に限る。)との合計額
 ロ その所在地国を所在地国とする全ての構成会社等(連結除外構成会社等を除く。)の個別計算所得金額の合計額から個別計算損失金額の合計額を減算した金額と国別報告事項として提供された又は提供されるものとした場合における一定の収入金額(連結除外構成会社等に係る部分に限る。)との合計額
② 通常利益要件
  上記①ロに掲げる金額がその構成会社等に係る実質ベース所得除外額以下であること。
(9)移行期間CbCRセーフ・ハーバー
① 国別報告事項の提供義務がない特定多国籍企業グループ等についても、移行期間CbCRセーフ・ハーバーの適用を受けることができることとされた(令和5年改正法附則14①一・二ロ)。
② 構成会社等又は共同支配会社等の本店に係る移行期間CbCRセーフ・ハーバーの判定に用いる収入金額、調整後税引前当期利益の額及び税額等の金額から恒久的施設等に係る部分の金額を除くこととされた(令和5年改正法令附則4⑪)。
③ 移行期間CbCRセーフ・ハーバーの判定に用いる収入金額又は税引前当期利益の額に利益の配当の額(その利益の配当を支払う他の構成会社等の連結等財務諸表において費用の額として計上されている額に限る。)が含まれていない場合には、その収入金額又は税引前当期利益の額にその利益の配当の額が含まれるものとして判定することとされた(令和5年改正法規附則3⑪)。
④ 構成会社等が移行期間CbCRセーフ・ハーバーの適用を受ける場合における国別報告事項は、同一の連結等財務諸表を基礎として作成されたものでなければならないこととされた(令和5年改正法規附則3⑫)。
⑤ 構成会社等が移行期間CbCRセーフ・ハーバーの適用を受ける場合において、その連結等財務諸表の範囲には、一定の場合を除き、特定会計処理又はこれに準ずる会計処理を適用することが認められる連結等財務諸表を含まないこととされた(令和5年改正法規附則3⑬)。
⑥ 費用又は損失に対応する収入が認識されないケースへの対応等
  構成会社等が資金供与会社等から直接又は一定の会社等を通じて間接に受ける資金の供与(令和4年12月15日以前に行われた取引を除く。)であって、これらの取引に係る一定の費用又は損失の額がその構成会社等のその対象会計年度に係る連結等財務諸表に計上されるもの(その資金供与会社等の連結等財務諸表においてこれらの取引に係る収入の額が計上されていない等の一定の要件を満たすものに限る。)その他一定の取引が行われる場合には、その取引に係る費用又は損失の額を減算しないで、その対象会計年度に係る調整後税引前当期利益の額を計算することとされた(令和5年改正法規附則3⑭~⑰)。
⑦ 租税が二重に認識されるケースへの対応
  構成会社等と他の会社等(その構成会社等の特定多国籍企業グループ等に属する他の会社等又はその特定多国籍企業グループ等に係る共同支配会社等をいう。)との間で行われる取引(令和4年12月15日以前に行われた取引を除く。)に係る法人税等の額及び法人税等調整額の合計額(⑦において「法人税額等」という。)がその構成会社等の連結等財務諸表に計上される場合において、その法人税等の額が当該他の会社等の調整後対象租税額又は簡素な実効税率要件の判定における法人税額等の国別合計額に含まれるときは、一定の場合を除き、その国別合計額からその法人税額等を減算することとされた(令和5年改正法規附則3⑱⑲)。
⑧ 共同支配会社等に係る移行期間CbCRセーフ・ハーバーにおいても、上記⑤から⑦までの改正と同様の改正が行われた(令和5年改正法規附則3⑱、3⑲において準用する⑮⑯)。
(10)国際最低課税額に係る確定申告書等の提出期限の特例の創設
 国際最低課税額に係る確定申告書及び特定基準法人税額に係る確定申告書の提出期限が令和8年6月30日前である場合には、その提出期限は同日とすることとされた(令和5年改正法附則14の2、18の2)。
(11)申告書別表の整備
 各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に係る申告書別表及び特定基準法人税額に対する地方法人税に係る申告書別表が新たに定められた(法規別表20~20付表4、地法規別表5)。
(12)各国におけるグローバル・ミニマム課税に対する法令上の整備に伴う他の制度の見直し
① 外国税額控除
  各国において次に掲げる税に関する法令の整備が行われていることに伴い、外国税額控除制度における外国法人税の範囲について見直しが行われた(法令141②五、③四・五)。
 イ 外国における各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に相当する税(いわゆるIncome Inclusion Rule(IIR)に係る税)
 ロ 法人税法施行令第155条の34第2項第3号に掲げる税(いわゆるUndertaxed Profits Rule(UTPR)に係る税)
 ハ 自国内最低課税額に係る税(いわゆるQualified Domestic Minimum Top-up Tax(QDMTT)に係る税)
   具体的には、ハの税は外国法人税に該当することとされ、イ及びロの税は外国法人税の範囲から除外することとされた。
② 適格合併等の範囲に関する特例
  法人の所得に対して課される税が存在しない国・地域に本店等がある外国法人が特定軽課税外国法人に該当するか否かの判定について、ここでいう「法人の所得に対して課される税」には、上記①イからハまでの税が含まれないこととされた(措令39の34の4⑤一)。
③ 外国子会社合算税制
  外国子会社合算税制においても上記①イからハまでの税に係る取扱いについて明確化が行われた。内容については下記2(2)参照。
(13)特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供制度
① 特定多国籍企業グループ等報告事項等の見直し等
  特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人が提供すべき事項は、提供義務者の区分(最終親会社等、一定の中間親会社等若しくは被部分保有親会社等、指定提供内国法人又は左記以外の会社等)に応じた一定の事項とする見直しのほか、それに伴う所要の整備が行われた(法法150の3①~③、法令212③、法規68⑤~⑦、改正法規附則3)。
② 特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供期限等に係る経過措置
  特定多国籍企業グループ等報告事項等の提供期限等が令和8年6月30日前である場合には、その提供期限等を同日とすることとされた(令和5年改正法附則16③、令和5年改正法令附則4の2)。
(14)適用関係
① 上記(1)から(11)までの改正は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税について適用することとされている(改正法附則10、令和6年4月改正法規附則⑤)。
② 上記(12)①の改正は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用し、内国法人の同日前に開始した事業年度の所得に対する法人税については、従前どおりとされている(改正法令附則8)。
③ 上記(12)②の改正は、令和6年4月1日以後に行われる合併、分割、株式交換又は現物出資について適用し、同日前に行われた合併、分割、株式交換又は現物出資については、従前どおりとされている(改正措令附則20)。
④ 上記(13)①の改正は、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度に係る特定多国籍企業グループ等報告事項等について適用することとされている(改正法附則11)。

2 外国関係会社に係る所得の課税の特例(外国子会社合算税制)の見直し
(1)ペーパー・カンパニーの範囲から除外される外国関係会社に係る判定方法の見直し

 ペーパー・カンパニーの範囲から除外される外国関係会社に係る収入割合要件の判定方法について、その事業年度に係る収入の金額がない場合には、その収入割合要件の判定を求めないこととされた(措令39の14の3⑥⑧⑨、措規22の11⑩⑭⑳)。
(2)各国におけるグローバル・ミニマム課税に対する法令上の整備に伴う対応
① 適用対象金額の計算
  現地法令基準を用いて適用対象金額を計算する場合に、その計算の基礎となる「本店所在地国の法人所得税に関する法令により計算した所得の金額」は、外国における次に掲げる税に関する法令により計算された金額でないこととされた(措令39の15②)。
 イ 外国における各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税に相当する税(いわゆるIncome Inclusion Rule(IIR)に係る税)
 ロ 法人税法施行令第155条の34第2項第3号に掲げる税(いわゆるUndertaxed Profits Rule(UTPR)に係る税)
 ハ 自国内最低課税額に係る税(いわゆるQualified Domestic Minimum Top-up Tax(QDMTT)に係る税)
② 租税負担割合の計算
  税法令がある国に本店等がある外国関係会社に係る租税負担割合について、その租税負担割合の計算における分母の金額に係る「外国法人税に関する法令により計算した所得の金額」は、外国におけるQDMTTに関する法令により計算された金額でないこととされた(措令39の17の2②一イ)。
  また、法人の所得に対して課される税が存在しない国・地域(いわゆる無税国)に本店等がある外国関係会社に係る租税負担割合について、ここでいう「法人の所得に対して課される税」には、上記①イからハまでの税が含まれないこととされた(措令39の17の2②一ロ)。
③ 書類添付義務に係る書類の範囲
  内国法人の各事業年度の確定申告書に添付することとされている書類のうち本店所在地国の法人所得税に関する法令により課される税に関する申告書で各事業年度に係るものの写しについて、ここでいう「法人所得税に関する法令により課される税」には、上記①イからハまでの税が含まれないこととされた(措規22の11四)。
(3)居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例
 居住者の外国関係会社に係る所得の課税の特例についても、上記(1)及び(2)と基本的に同様の改正が行われた(措令25の19の3②④⑤、25の20②、措規18の20④⑧⑭四)。
(4)関連制度の見直し
 特殊関係株主等である内国法人等に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例についても、上記(2)③と基本的に同様の改正が行われた(措規18の20の2⑬四、22の11の3⑭四)。
(5)適用関係
① 上記(1)及び(2)(③を除く。)の改正は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する事業年度に係る課税対象金額、部分課税対象金額及び金融子会社等部分課税対象金額を計算する場合について適用し、内国法人の同日前に開始した事業年度に係る課税対象金額、部分課税対象金額及び金融子会社等部分課税対象金額を計算する場合については、従前どおりとされている(改正措令附則17)。
② 上記(2)③の改正は、内国法人の令和6年4月1日以後に開始する事業年度に係る添付書類について適用し、内国法人の同日前に開始した事業年度に係る添付書類については、従前どおりとされている(改正措規附則17①)。また、上記1(4)のうち、特殊関係株主等である内国法人に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例についても同様(改正措規附則17②)。
③ 上記(3)(上記(2)③に関連する部分を除く。)の改正は、居住者の令和7年分以後の各年分の課税対象金額、部分課税対象金額及び金融子会社等部分課税対象金額を計算する場合について適用し、居住者の令和6年分以前の各年分の課税対象金額、部分課税対象金額及び金融子会社等部分課税対象金額を計算する場合については、従前どおりとされている(改正措令附則9)。
④ 上記(3)(上記1(2)③に関連する部分に限る。)の改正は、居住者の令和7年分以後の各年分の添付書類について適用し、居住者の令和6年分以前の各年分の添付書類については、従前どおりとされている(改正措規附則10①)。また、上記1(4)の改正のうち、特殊関係株主等である居住者に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例についても同様(改正措規附則10②)。

3 非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備等
(1)非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的交換のための報告制度の整備

① 制度の内容
 イ 居住地国の特定手続
   次に掲げる者は、特定対象者の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、居住地国、外国の納税者番号等の所定の事項を記載した届出書(①において「新規届出書」という。)を、所定の期限までに、それぞれ(イ)又は(ロ)の報告暗号資産交換業者等の営業所等の長に提出しなければならないこととされた(実特法10の9①)。
 (イ)令和8年1月1日以後に報告暗号資産交換業者等との間でその営業所等を通じて暗号資産等取引を行う者
 (ロ)令和7年12月31日において報告暗号資産交換業者等との間でその営業所等を通じて暗号資産等取引をしている者
 ロ 居住地国等の再特定手続
 (イ)暗号資産等取引を行った者による異動届出書の提出
   新規届出書を提出した者は、その新規届出書に記載された居住地国等一定の事項について異動を生じた場合には、その異動を生じた後のその特定対象者の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、居住地国等の所定の事項を記載した届出書((ロ)において「異動届出書」という。)を、所定の期限までに、上記イの報告暗号資産交換業者等の営業所等の長に提出しなければならないこととされた(実特法10の9②③)。
 (ロ)報告暗号資産交換業者等による新規届出書等を提出した者等の住所等所在地国と認められる国又は地域の特定手続
   報告暗号資産交換業者等は、特定対象者の住所等所在地国と認められる国又は地域その他の事実が新規届出書等(上記イにより提出された新規届出書又は上記(イ)により提出された異動届出書をいう。ニ(ロ)において同じ。)に記載された居住地国等一定の事項と異なることを示す一定の情報((ロ)において「新情報」という。)を取得した場合には、所定の期限までに、その特定対象者につき新情報の種類等に応じた各特定手続を実施しなければならないこととされた(実特法10の9④)。
 ハ 報告暗号資産交換業者等による報告事項の提供
   報告暗号資産交換業者等は、その年の12月31日において、その報告暗号資産交換業者等との間でその営業所等を通じて暗号資産等取引を行った者(報告対象外の者を除く。)が報告対象契約を締結している場合等には、特定対象者の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、居住地国、外国の納税者番号等及びその年において行われた暗号資産等売買等に係る暗号資産等の種類ごとの名称、その種類ごとの暗号資産等の売却又は購入の対価の額の合計額等の所定の事項(ハ及びニにおいて「報告事項」という。)を、その年の翌年4月30日までに、その報告暗号資産交換業者等の本店等の所在地の所轄税務署長に提供しなければならないこととされた(実特法10の10①)。
 ニ その他
 (イ)暗号資産等取引を行った者等による報告事項の提供の回避を主たる目的とする行為等があった場合の特例
   暗号資産等取引を行った者若しくはその関係者又は報告暗号資産交換業者等が、その暗号資産等取引に係る契約に関する報告事項について、提供を回避することを主たる目的の一つとしてその報告事項に係る行為を行った場合等には、その行為がなかったもの等として本制度を適用することとされた(実特法10の11)。
 (ロ)報告暗号資産交換業者等による記録の作成及び保存
   報告暗号資産交換業者等は、新規届出書等の提出を受けた場合等には、特定対象者の特定居住地国に関する事項等の所定の事項に関する記録を文書等により作成し、保存しなければならないこととされた(実特法10の12)。
 (ハ)報告暗号資産交換業者等による報告事項の提供に係る当該職員の質問検査権
   税務職員は、報告事項の提供に関する調査について必要があるときは、その報告事項の提供をする義務がある者に質問し、帳簿書類その他の物件を検査し、又はその物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めることができることとされた(実特法10の13、10の14)。
 (ニ)罰則
   新規届出書の提出義務及び報告事項の提供義務に対する違反行為等について所要の罰則を規定することとされた(実特法13④~⑥)。
② 適用関係
  上記①の改正は、令和8年1月1日から施行される(改正法附則1六ロ、令和6年6月改正実特令附則1、令和6年6月改正実特規附則1、令和6年6月改正国税質問検査章規則附則)。
(2)外国との間での暗号資産等取引情報の自動的な提供のための報告制度の整備
① 制度の内容
 イ 報告暗号資産交換業者等による報告事項の提供
   報告暗号資産交換業者等は、その年の12月31日において、その報告暗号資産交換業者等との間でその営業所等を通じて暗号資産等取引を行った者(報告対象外の者を除く。)が報告対象契約を締結している場合等には、特定対象者の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、居住地国、外国の納税者番号等及びその年において行われた暗号資産等売買等に係る暗号資産等の種類ごとの名称、その種類ごとの暗号資産等の売却又は購入の対価の額の合計額等の所定の事項(ロにおいて「報告事項」という。)を、その年の翌年4月30日までに、その報告暗号資産交換業者等の本店等の所在地の所轄税務署長に提供しなければならないこととされた(所得相互免除法41の3①)。
 ロ その他
 (イ)暗号資産等取引を行った者等による報告事項の提供の回避を主たる目的とする行為等があった場合の特例
   暗号資産等取引を行った者若しくはその関係者又は報告暗号資産交換業者等が、その暗号資産等取引に係る契約に関する報告事項について、提供を回避することを主たる目的の一つとしてその報告事項に係る行為を行った場合等には、その行為がなかったもの等として本制度を適用することとされた(所得相互免除法41の3③)。
 (ロ)報告暗号資産交換業者等による記録の作成及び保存
   報告暗号資産交換業者等は、上記イにより報告事項の提供を行った場合には、その報告事項に関する事項等の所定の事項に関する記録を文書等により作成し、保存しなければならないこととされた(所得相互免除法41の3④⑤)。
 (ハ)報告暗号資産交換業者等による報告事項の提供に係る当該職員の質問検査権
   税務職員は、報告事項の提供に関する調査について必要があるときは、その報告事項の提供をする義務がある者に質問し、帳簿書類その他の物件を検査し、又はその物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めることができることとされた(所得相互免除法41の3⑦)。
 (ニ)罰則
   報告事項の提供義務に対する違反行為等について所要の罰則を規定することとされた(所得相互免除法47)。
② 適用関係
  上記①の改正は、令和8年1月1日から施行される(改正法附則1六イ、令和6年6月改正所得相互免除令附則①、令和6年6月改正所得相互免除令、令和6年6月改正所得相互免除規附則①、令和6年6月改正国税質問検査章規則附則)。
(3)非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の見直し
① 改正の内容
 イ 本制度の対象となる特定取引等の定義
 (イ)特定取引の範囲の見直し
 i 特定取引の範囲の追加
   本制度の対象となる特定取引の範囲に、次に掲げる取引を加えることとされた(実特令6の8一ニヌ)。
 (i)次に掲げるものの管理に関する契約の締結(預金又は貯金の預入れを内容とする契約の締結を除く。)
 a 資金決済に関する法律第2条第5項第1号から第3号までに掲げるもの(一定の前払式支払手段を除く。)
 b 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために特定の者に対して使用することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されている通貨建資産に限るものとし、資金決済に関する法律第2条第5項第1号から第3号までに掲げるもの、有価証券、有価証券とみなされる権利、電子記録債権、前払式支払手段その他これらに類する一定のものを除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができ、かつ、その財産的価値を発行する者に対し、その償還を請求することができるもの
 (ii)電子決済手段等、電子記録移転有価証券表示権利等又は暗号資産(デリバティブ取引に関して預託をするものに限る。)の預託をすることを内容とする契約の締結
 ⅱ 除外取引の範囲の追加
   本制度の対象となる特定取引の範囲から除外される「報告を免れるおそれがない取引」の範囲に、次に掲げる取引を加えることとされた(実特令6の8一柱書、実特規16の8①二・三・五)。
 (i)少額の特定電子決済手段等取引
 (ii)信託に係る契約であって、その受益権を表示する一定の電子記録移転有価証券表示権利等が金融商品取引業者等を通じて取得されるもの等
 (iii)振替特別法人出資に係る特別口座の開設(社債等振替法247の2の3①)に係る契約の締結
 (ロ)報告金融機関等の範囲の見直し
   本制度の対象となる報告金融機関等の範囲に、次に掲げる者を加えることとされた(実特令6の7①一、実特規16の7①)。
 i 資金移動業者
 ii 電子決済手段等取引業者(電子決済手段等取引業者とみなされる者を含む。)
 (ハ)特定法人の範囲の見直し
  特定法人から除外される法人に係る収入割合要件について、法人に係る収入割合の計算の基礎となる投資関連所得の範囲に暗号資産等(暗号資産等デリバテ ィブ取引を含む。)に係る所得を加えるほか、所要の見直しをすることとされた(実特令6の9①十ロ、実特規16の9②五)。
 (ニ)居住地国の範囲の見直し
   我が国及び租税条約の相手国等の双方の居住者に該当する者について、租税条約上の「双方居住者の振分けルール」にかかわらず、我が国及びその相手国等の双方を居住地国として取り扱うこととされた(実特法10の5⑧七イ)。
 ロ 居住地国等の特定手続
 (イ)新たに追加された新規特定取引に係る新規届出書が提出されなかった場合の新規特定取引に関する特定手続
   報告金融機関等は、令和8年1月1日以後にその報告金融機関等との間でその営業所等を通じて特定取引を行う者が届出書を提出しなかった場合には、特定対象者につき、既存特定取引に係る特定手続と同様の手続を実施しなければならないこととされた(実特法10の5②二、実特令6の3①~⑭⑮⑰~)。
 (ロ)特定対象者の生年月日等を保有していない場合における報告暗号資産交換業者等による情報取得措置の見直し
   報告金融機関等は、特定対象者の本人特定事項等(犯罪収益移転防止法施行規則20①二十~二十四、二十六~二十九)に変更又は追加があることを知った一定の場合には、電話等により、その特定対象者の生年月日及び外国納税者番号等を取得するための措置をとらなければならないこととされた(実特令6の3、実特規16の3⑪)。
 ハ 報告金融機関等による報告事項の提供
 (イ)報告対象外の者の範囲の追加
   報告対象外の者の範囲に、次に掲げる者を加えることとされた(実特令6の14①一、実特規16の12①④~⑨)。
 i 上場組合等に係る特定組合員等
 ii 次に掲げる法人又は特定組合員等
 (i)上場法人と支配関係に準ずる関係がある法人又は組合等に係る特定組合員等
 (ii)上場組合等に係る特定組合員等と支配関係に準ずる関係がある法人又は組合等に係る特定組合員等
 ⅲ 報告金融機関等との間でその営業所等を通じて特定取引を行った者(その特定取引が特定電子決済手段等取引のみであり、かつ、その特定取引に係る特定取引契約資産額の合計額の90日移動平均の金額がその年中のいずれの日においても100万円を超えなかった場合におけるその特定取引を行った者に限る。)
 (ロ)報告事項の範囲の見直し
   報告事項の範囲に、次に掲げる事項を加えることとされた(実特規16の12⑩)。
 i 特定法人とその特定法人に係る実質的支配者との関係(犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則第20条第1項第24号に掲げる関係に該当するものに限る。)
 ii 特定取引に係る契約を締結している者とその特定取引に係る報告金融機関等(一定の組合契約に係る組合等に係るものに限る。)との関係
 iii 特定取引を行う者の署名等がなされたものであることその他の一定の要件の全てを満たす新規届出書等が提出されているか否かの別
 iv 報告対象契約が2以上の者と報告金融機関等との間で締結されているものであるか否かの別等
 v 特定取引の種類
 vi 新規特定取引又は既存特定取引の別
② 適用関係
 イ 上記①(イ(イ)ii(iii)を除く。以下、イにおいて同じ。)の改正は、令和8年1月1日から施行される(改正法附則1六ロ、令和6年6月改正実特令附則1、令和6年6月改正実特規附則1)。なお、上記①の改正については、一定の適用関係が定められている(改正法附則56①~④、令和6年6月改正実特令附則4、6、7、令和6年6月改正実特規附則2、3)。
 ロ 上記①イ(イ)ii(iii)の改正は、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための社債、株式等の振替に関する法律等の一部を改正する法律(令和5年法律第80号)の施行の日から施行される(令和6年3月改正実特規附則本文)。
(4)台湾との間での金融口座情報の自動的な提供のための報告制度の見直し
① 改正の内容
  上記(3)の非居住者に係る金融口座情報の自動的交換のための報告制度の改正を踏まえ、同様の改正が行われた(所得相互免除法41①~③、所得相互免除規21①③)。
② 適用関係
  上記①の改正は、令和8年1月1日から施行される(改正法附則1六イ、令和6年6月改正所得相互免除規附則)。なお、上記①の改正については、一定の適用関係が定められている(令和6年6月改正所得相互免除規附則②③)。

4 その他
(1)対象純支払利子等に係る課税の特例の改正

 令和12年4月1日から令和17年3月31日までの間に開始する事業年度における超過利子額の損金算入の対象に、当該事業年度開始前10年以内に開始した事業年度(令和4年4月1日から令和7年3月31日までに開始した事業年度に限る。)に係る超過利子額を含むこととされた(措法66の5の3④、措令39の13の3⑥)。
(2)子会社株式簿価減額特例の改正
 株式等の帳簿価額から減算する金額に関する特例計算(金額特例)の対象に、対象配当等の額を受ける日の属する他の法人の事業年度((2)において「対象事業年度」という。)の期間内に特定支配日がある場合を加え、この場合(利益剰余金期中増加及び期中配当等があった場合(その対象事業年度が当該他の法人の設立の日の属する事業年度である場合にあっては、利益剰余金期中増加及び期中配当等があった場合に準ずる場合)に限る。)における特定支配後増加利益剰余金額は、①に掲げる金額から②に掲げる金額を減算した金額とされた(法令119⑪、法規27③)。
① その対象配当等の額を受ける直前の当該他の法人の利益剰余金の額からその対象事業年度の前事業年度(その対象事業年度が当該他の法人の設立の日の属する事業年度である場合には、その設立の時。下記②において同じ。)の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額を減算した金額とその対象事業年度開始の日から当該直前の時までの期間内に当該他の法人の株主等が当該他の法人から受ける配当等の額に対応して減少した当該他の法人の利益剰余金の額の合計額とを合計した金額
② その特定支配日の前日の当該他の法人の利益剰余金の額からその前事業年度の貸借対照表に計上されている利益剰余金の額を減算した金額とその対象事業年度開始の日から当該前日までの期間内に当該他の法人の株主等が当該他の法人から受ける配当等の額に対応して減少した当該他の法人の利益剰余金の額の合計額とを合計した金額
  また、上記の改正に伴い、②に掲げる金額を適用回避防止規定等における判定に用いることとするための規定の整備が行われた(法令119⑭一ロハ・二ロハ⑮一)。
(3)外国金融機関等の店頭デリバティブ取引の証拠金に係る利子の課税の特例の改正
 本特例の適用期限が、令和9年3月31日まで3年延長された(措法42①②)。
(4)振替社債等の利子等の課税の特例の改正
 非居住者又は外国法人が振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権に該当するものにつき支払を受ける剰余金の配当等の非課税措置は、適用期限(令和6年3月31日)の到来をもって廃止された(旧措法5の3④七ホ)。
(5)振替国債等の利子の課税の特例等における番号確認書類の範囲の改正
 非居住者で個人番号を有するものに係る個人番号を証する本人確認書類の範囲に個人番号カードが追加されるとともに、その本人確認書類の範囲から還付された個人番号カードが除外された(措規3の18⑰一、3の20②一、19の12⑦一)。
(6)特定目的会社の利益の配当に係る源泉徴収等の特例等における外国法人税相当額等の通知に係る電子交付の特例等の改正
 特定目的会社等が、個人又は法人からのその支払の確定した特定目的会社の収益の分配に係る通知外国法人税相当額等の書面による通知に代えて行うその書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供についての承諾を得ようとする場合において、その特定目的会社等が定める期限までにその承諾をしない旨の回答がないときはその承諾があったものとみなす旨の通知をし、その期限までにその個人又は法人からその回答がなかったときは、その承諾を得たものとみなすこととされた(措規5の4の2⑪において準用する所規92の3②、所規72の6⑩において準用する所規92の3②)。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索