税務ニュース2024年10月25日 アーンアウト対価、譲渡・雑所得の境界(2024年10月28日号・№1048) 権利実現可能な状態にないと評価されれば譲渡所得に該当しないリスク
M&Aのクロージング後、一定の期間内に一定の指標・条件の成否に応じて追加的に対価を支払う「アーンアウト条項」を設けるケースがある。株式譲渡契約上のアーンアウト条項に基づき支払いを受ける対価(アーンアウト対価)について課税当局は、クロージング時にアーンアウト対価の支払いが確定したとはいえないことから譲渡所得には該当せず、その支払いが確定した年分の雑所得として課税するとの見解に立っている。これは、ある所得が譲渡所得に該当するためには、当該所得が①譲渡に基因して、②譲渡の機会に生じたものであることを要するところ、譲渡の時点で収入の原因たる権利が確定的に発生したとはいえない場合はこれらの要件を満たさないからだ(2019年1月30日付 国税庁課税部資産課税課情報第3号「株式譲渡益課税のあらまし Q&A」問39ほか)。
これに対し、アーンアウト対価が雑所得として取り扱われるのは、対価に係る権利の発生に停止条件が付されている場合に限られるとする意見が一部専門家から聞かれる。しかし、クロージング後も一定期間支払いを留保するアーンアウト対価が、「当該期間内に一定の指標を達成することを停止条件として定めると、客観的に見て権利確定がない(権利の実現が可能な状態になっていない)」と評価される場合には、たとえこれに代えて、当該期間内に同じ指標を達成しないことを解除条件として定めたとしても、客観的に見て権利の実現可能性の程度が変わるわけではないため、やはりクロージング時に権利が確定していないとして、譲渡所得に該当しないと判断されるリスクは否定できない。国税庁Q&Aも、譲渡所得ではなく雑所得として取り扱う「アーンアウト条項」を、「クロージング後一定期間経過後に、当事者間で合意された条件の成否・達成度に応じて支払われる(又は支払われない)ものとする契約条項をいう」と定義していることから、アーンアウト対価を解除条件により定める場合も雑所得として取り扱う余地を否定するものではないと考えられる。もっとも、解除条件として定める事由は当事者が例外的に想定する事由であることが一般的であるため、アーンアウト対価を解除条件により定める場合は、停止条件により定める場合に比べると権利の実現の可能性があり、権利が確定していると主張しやすいとはいえよう。
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