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解説記事2024年11月04日 ニュース特集 外国人旅行者向け免税制度で原処分取消しの裁決事例が散見(2024年11月4日号・№1049)

ニュース特集
出国時の持ち出し確認方式導入に向け、早急な見直しが必要
外国人旅行者向け免税制度で原処分取消しの裁決事例が散見


 インバウンドによる消費拡大の一方、多額・多量の免税購入物品が国外に持ち出されず国内での横流しが疑われる事例が多発している。また、出国時に免税購入物品を所持していない旅行者を捕捉し即時徴収を行っても、その多くが滞納となるなど、免税制度の不正利用が横行している。国税当局も重点課題の1つとして対応しており、税務調査で否認されるケースも多くなっている。ただ、中には事実認定の誤り等により審査請求で原処分が取り消された事例も散見される。令和7年度税制改正では、外国人旅行者向け免税制度について、出国時に税関において持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度とするよう見直しが行われる予定となっており、一刻も早い制度の改善が求められている。本特集では、免税制度に関する取消し裁決事例とともに、免税制度の見直しの方向性について、その概要を紹介する。

国内で譲渡したか否かなど、事実認定が大きな問題

 外国人旅行者向け免税制度とは、税務署長の許可を受けた輸出物品販売場(免税店)を経営する事業者が、免税購入対象者(非居住者)に対し、免税対象物品(免税品)を一定の方法で販売する場合には、消費税が免除されるというもの。購入した免税品は国内において譲渡してはならないとされているが、横流しが疑われる事例が多発している。
 ただ、税務調査の場面では、事実認定が大きな問題となるため、その後の審査請求で原処分が取り消される事例も見受けられている。
免税品はなく残っているのは箱や袋のみ
 1件目に紹介する裁決事例は、請求人の滞在場所で行った税務調査の結果、請求人が免税店で購入した免税品の存在が確認できず、そのうちの一部の物品の梱包に用いられた箱及び袋の存在しか確認できなかったとして、請求人が免税品を国内において譲渡したとして消費税等の賦課決定処分がなされたものだ(大裁(諸)令4第40号)。
 審判所は、請求人の滞在場所に存在した箱及び袋が免税品の一部の梱包に用いられたものであるかどうかは不明であって、箱及び袋の存在は、請求人による免税品の国内譲渡の事実をうかがわせるものであるとはいえないと指摘。請求人が免税品を国内において譲渡したことを示す直接的な証拠はなく、仮に箱及び袋が免税品の一部の梱包に用いられたとしても、請求人が免税品を購入後に自ら消費し、あるいは他に譲渡したことがうかがわれるに留まるとした。加えて、審判所は、請求人が免税品の全部を輸出したとは認め難いが、輸出されなかった物品の範囲を明らかにできる的確な証拠はなく、請求人が輸出した可能性を排斥できず、これらの事情をもって免税品が国内において譲渡されたということはできないとし、原処分の全部を取り消している。
免税品を誰に譲渡したかを明らかにできず
 2件目に紹介する裁決事例も、請求人の滞在場所で行った税務調査の結果、請求人が免税店で購入した免税品の存在が確認できず、それらを国外へ発送した事実も認められないとして消費税等の賦課決定処分が行われたものである(福裁(諸)令5第5号)。
 審判所は、免税品のうち、請求人がどの物品を、いつ、どこで、誰に譲渡したのかを原処分庁は明らかにしていないと指摘。請求人が免税品を国内において譲渡したことを示す直接的な証拠はなく、そして、税務調査の際に請求人の滞在場所において免税品を確認できなかったという事情は、免税品を輸出したとの請求人の主張と何ら矛盾せず、当該事情をもって免税品が国内において譲渡されたということはできないとの判断を示し、原処分の全部を取り消している。
 なお、請求人は、免税品の全部を輸出したという証拠として、請求人が海外に渡航した際の航空機搭乗券控等を審判所に提出しており、これらの証拠は請求人が何らかの荷物を持って海外へ渡航したことを示すのみで免税品が輸出されたことを直接示す証拠ではないものの、請求人の主張を排斥するに足りる的確な証拠はないことから、免税品が輸出された可能性を排斥できず、請求人が免税品のすべてを国内において譲渡したと認定するのは困難であるとしている。
旅券の所持者が免税品を購入したと推認も
 3件目に紹介する裁決事例は、請求人が非居住者であった期間に免税店で免税手続を行い、免税品を購入したものの、居住者となる日までに免税品を輸出していないとして消費税等の賦課決定処分がなされたものだ(熊裁(諸)令4第7号)。
 請求人は、免税品の一部(時計1及び2)について、購入した事実はないと主張したが、原処分庁は、購入記録情報には、請求人の旅券に記録された請求人の氏名や旅券番号が記載されており、旅券は名義人の顔写真が記録され、名義人が厳重に保管して通常他人に使用させることはない重要な書類であることからすると、旅券を提示した者が免税品を購入したことが強く推認されるとし、免税品の購入者は、請求人と認められると主張した。
 審判所は、免税店における免税品の譲渡について、非居住者に対する譲渡に限って消費税が免除されるためには、非居住者による旅券等の提示などが要件とされているところ、こうした制度上の仕組みにより、免税店において購入者の本人確認及び購入者が免税品を購入することができる非居住者に該当するか否かの確認がなされ、その確認事項が購入記録情報に反映されることからすれば、購入記録情報に記録された事項を否認する反証がない限り、旅券等を所持する非居住者が免税品を購入したことについて、事実上の推定がされるものと解されるとした。
 本件については、時計1の購入は免税店において請求人の旅券が提示されたとする購入記録情報が存在するものの、購入代金の決済方法は、すべて現金による支払であり、また、いずれも実際の来店者が誰であるかを確認できる記録が残されていないという事情を考慮すると、審判所は、購入記録情報に記録された人物をもって真実の購入者であると直ちに認めることはできないと指摘。この点、時計1が購入されたとする各日において、請求人から友人に対し旅券の貸与が行われていたものと推認され、請求人が旅券を所持していなかったと認められることからすれば、少なくとも、請求人は、時計1に係る購入手続を自ら行っていないというべきであるとの判断を示し、原処分の一部を取り消した。
 一方、時計2が購入されたとする日については、貸与していた旅券が返還されており、請求人の旅券が免税店に提示されている事実が認められることからすると、旅券を所持していた請求人には、ほかに購入記録情報に記録された事項を否認する反証がない以上、時計2を購入したものと認めるのが相当であるとしている。

出国時に購入品の持ち出しが確認できた場合に免税販売が成立

 免税品の横流し等の不正事例は後を絶たず、また、出国時に捕捉して即時徴収を行っているものについても、そのほとんどは納税資金を持ち合わせておらず、消費税を滞納したまま出国している状況がある。前述した裁決事例をみてもわかるとおり、現行の外国人旅行者向け免税制度は、かなりの制度疲労を起こしているといえそうだ。
 このため、令和7年度税制改正では、令和6年度税制改正大綱で明記されたとおり、外国人旅行者向け免税制度の見直しが行われる予定となっている。具体的には、出国時に購入品の持ち出しが確認できた場合に免税販売が成立し、免税店が確認後に消費税相当額を返金する制度(持ち出し確認方式)へ見直すとしている(参照)。持ち出し確認方式であれば、前述した裁決事例での争いもほぼ解消され、不正への対応を求められる国税当局にとって大きなメリットとなりそうだ。税関の人員の問題など、クリアすべき課題はいくつかあるものの、この持ち出し確認方式をベースに詳細な制度設計が行われることになる。

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