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解説記事2025年03月03日 第2特集 株式報酬に係る開示規制の見直しの留意点(2025年3月3日号・№1065)

第2特集
令和7年2月25日から施行
株式報酬に係る開示規制の見直しの留意点


 株式報酬に係る開示規制などを見直す「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令」等が2月21日に公布された。上場会社が役員及び従業員に対する報酬として株式を交付する場合には、その株式に一定の譲渡制限期間が付されていることを条件に、有価証券届出書の提出に代えて、臨時報告書の提出をもって募集又は売出しを行うことができる特例制度(臨報特例)について、①譲渡制限期間を短縮、②役員・従業員の範囲を、完全子会社以外の子会社の役員・従業員にまで拡大、③事後交付型株式(RSU)に係る募集又は売出しについても、臨報特例が適用されることを明確化することとしている。「金融審議会 市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォース報告書」(2023年12月公表)及び「規制改革実施計画」(2024年6月公表)を踏まえたもの。令和7年2月25日から施行された。
 本特集では、令和6年12月26日まで意見募集を行っていた「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令」等の改正案に寄せられたコメントに対する金融庁の回答等を踏まえ、株式報酬に係る開示の見直しに関する留意点を解説する。


臨報特例の適用は「取得勧誘又は売付け勧誘等」の開始時点で判断
Q

 未上場のスタートアップが、完全子会社・完全孫会社を含む自社グループの役職員50名以上を対象にリストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)を付与し、そのRSUが未上場時に権利確定した場合、株券発行時に臨報特例の利用は可能か。
A
 臨報特例の適用の有無については、「取得勧誘又は売付け勧誘等」の開始時点で判断するため、その時点で、交付予定の譲渡制限付株式が、金融商品取引所に上場されているもの又は店頭売買有価証券に該当するものでない場合には、臨報特例は適用されない。


取得勧誘等の時点で取締役でなければ対象外
Q

 株券等の交付に係る取締役会決議時点では入社していないものの、交付時点では入社していることを予定する者に対して株式報酬を交付する場合には、交付時点で「取締役等」であるため、臨報特例の適用対象となるか。
A
 臨報特例の趣旨は、募集・売出しの相手方が発行会社等の取締役等であれば、発行会社の情報を既に取得し、又は容易に取得することができるものと考えられることから、有価証券届出書の提出を義務付ける必要性が乏しいという点にある。このため、取得勧誘又は売付け勧誘等の時点で「取締役等」でない者に対して行う場合には、臨報特例の対象とはならない。


株券等の交付日に取締役であればその後退職しても臨報特例の対象
Q

 株券等の交付日に取締役等であった者は、株券等の交付を受ける前に死亡した場合やその他の正当な理由により退任又は退職し、退任又は退職後に実際の株券等の交付を受けることとなったとしても、引き続き臨報特例の適用対象でよいか。
A
 引き続き臨報特例の適用対象となる。


有価証券報告書の提出遅延があっても提出までは譲渡制限が必要
Q

 発行会社が取締役等に対し、株券等の募集・売出しを行うに際し、臨時報告書を提出したが、株券の交付の日の属する事業年度に係る有価証券報告書又は半期報告書の提出が遅れ、結果として譲渡制限が付されていない状況となってしまった場合はどうなるのか。
A
 臨報特例は、株券等の交付日の属する事業年度に係る有価証券報告書又は半期報告書が提出されるまでは、株券等の譲渡が禁止される旨の制限が付されていることが求められている。
 したがって、譲渡制限の内容は、有価証券報告書等の提出遅延があってもその要件を満たすことができるようなものにしておく必要がある。


半期報告書の提出以降も譲渡制限を付すことは可
Q

 株券等に付されていることが求められている譲渡制限期間は、「有価証券報告書又は半期報告書の提出まで」とされるが、例えば、譲渡制限を有価証券報告書の提出までではなく、それ以降とすることも認められるか。
A
 臨報特例の適用対象となる株券等は、株券等の交付日が属する事業年度に係る有価証券報告書又は半期報告書が提出されるまで譲渡が禁止されることが必要となるが、これらの書類の提出後においても引き続き譲渡を禁止することにしても差し支えないとされている。


株券等の付与日が有報等の提出後であれば譲渡制限の対象外
Q

 事後交付型の株式報酬で臨報特例を利用する場合、株式報酬規程において事後交付型の株式報酬に係るユニットは譲渡することができない旨を定め、かつ当該ユニット付与の日から現物株式が付与されるまでの期間が、有価証券報告書等が提出されるまでの期間を充足していれば、事後交付型の株式報酬で付与される現物株式それ自体に譲渡制限が付されていなくてもよいか。
A
 事後交付型株式であるか事前交付型株式であるかにかかわらず、譲渡制限(金商法令2条の12第1号)は株券等に付されている必要がある。
 ただし、新たに新設した開示ガイドライン4−2−2により、事後交付型株式は株券等の実際の付与日ではなく、発行会社等の取締役等が所定の時期に確定した数の株券等を交付する旨の定めの内容を知ることとなる日が同号の「交付日」に相当するとの考え方が示されている。金融庁は、この「知ることとなる日」は事後交付型株式に係る取得勧誘又は売付け勧誘等に該当する行為である「所定の時期に確定した数の株券等を交付する旨を定めて通知その他の方法により当該取締役等に当該定めの内容を知らせること」から比較的近接した日であると考えており、事後交付型株式の場合の譲渡制限の意味は、かかる「知ることとなる日」の属する事業年度に係る有価証券報告書又は半期報告書が提出される前に株券等が交付される場合には、有価証券報告書又は半期報告書が提出されるまでの期間譲渡が制限されていることを求めるものとなっている。このため、実際に株券等が付与される日が、この期間経過後である場合には、その付与される株券等自体は、譲渡制限の対象ではないとしている。


特別奨励金スキームも臨報特例の適用可
Q

 特別奨励金スキーム(持株会を通じて従業員等へ譲渡制限のない現物株式を自己株処分方式又は新株発行方式にて付与する株式報酬制度)には臨報特例が適用されるか。
A
 持株会を通じて従業員等へ譲渡制限のない現物株式を自己株処分方式又は新株発行方式にて付与することは、事後交付型株式報酬制度に当たり得るが、譲渡制限期間等の要件を充足する場合には、臨報特例が適用されることになる。


募集が海外のみの場合は従来の取扱いと同様
Q

 従来からRSU制度に基づく海外居住の従業員に対する株式の交付にあたっては、新株発行の決定に従って海外募集を開始するにあたり、開示府令19条2項2号の規定に基づく臨時報告書を提出しているが、今回の改正後も変更はないか。
A
 募集行為が海外でのみ実施されている場合には、今回の改正後も、開示府令19条2項2号の2ではなく、同項1号又は2号の規定が適用される。


業績連動型は発行数や発行価額が多くなる場合を想定した数で問題なし
Q

 業績条件により変動する株式数を交付する事後交付型の株式報酬(いわゆるPSU)については、権利付与時には付与金額が不明であるが、最大に見積もった付与株式数に権利付与時の株価を乗じた金額が1億円を超過する可能性がある場合には、権利付与時に臨時報告書を提出しておく必要があるという理解でよいか。
A
 業績連動型においては、勧誘時点において株式数等が確定しないので、その時点において合理的に見込まれる株券等の数に基づき、臨時報告書の提出要否を検討することになる。その合理的に見込まれる株券等の数に関しては、金融庁は株式報酬規程等に基づき業績達成度合いが最も高い場合(最も発行数や発行価額等の総額が多くなる場合)を想定した数とすることも問題ないものとしているほか、価格に関しては、権利付与時の株価とすることも可能としている。


PSUの株式数が1億円を下回っても訂正臨時報告書の提出義務なし
Q

 現行の実務では、株式報酬について臨時報告書の提出後、失権等により最終的に1億円未満となった場合には訂正臨時報告書を提出して臨時報告書を取り下げているが、PSUにおいて最終的に交付する株式数が1億円を下回った場合には訂正臨時報告書を提出する必要があるのか。
A
 臨報特例に基づき臨時報告書の提出後、PSUにおいて最終的に交付する株式数が1億円を下回った場合であっても、訂正臨時報告書の提出は不要となる。


「又はこれらに類する決定」とは報酬委員会等の決定等を想定
Q

 開示府令19条2項2号の2柱書に定める「又はこれらに類する決定」とは、具体的にどのようなケースが想定されるのか。
A
 「又はこれらに類する決定」は、「報酬委員会」等の報酬を決定する機関及び取締役会等から適法に授権を受けた者による決定等が想定される。


取締役会等の決議時点で臨時報告書を提出
Q

 いわゆる事後交付型株式の場合、臨時報告書は、開示ガイドライン4−2−2の「所定の時期に確定した数の株券等を交付する旨を定めて通知その他の方法により当該取締役等に当該定めの内容を知らせること」を取締役会等で決定した時点で提出することになるのか。
A
 開示ガイドライン4−2−2により、事後交付型株式の場合には、「所定の時期に確定した数の株券等を交付する旨を定めて通知その他の方法により当該取締役等に当該定めの内容を知らせること」を株券等の取得勧誘又は売付け勧誘等に該当するとしているので、事後交付型株式に係る開示府令19条2項2号の2に基づく臨時報告書は、「知らせる行為」につき決議等があった時点で提出することになる。


提出会社が意思決定機関を支配しているとする理由などを記載
Q

 開示府令19条2項2号の2イ(4)の「当該子会社と提出会社との間の関係」には、どのような記載をすれば足りるのか。
A
 そもそも当該会社が発行会社の子会社でない場合には、開示府令19条2項2号の2の規定による臨時報告書の提出事由には該当しない。このため、子会社に該当する旨の記載では足りず、資本関係等、提出会社がその意思決定機関を支配しているとする理由を記載する必要がある。


資格喪失事由や譲渡制限の内容を記載
Q

 株式交付信託の場合、開示府令19条2項2号の2イ(5)に定める「勧誘の相手方と提出会社との間の取決めの内容」には、どのような内容を記載すればよいのか。
A
 金融庁は、「勧誘の相手方と提出会社との間の取決めの内容」としては、資格喪失事由や譲渡制限の内容、開示ガイドライン4−2−3の範囲で譲渡制限期間満了前に株券等の譲渡を可能とする場合には、そのユニット等の喪失事由等を記載するとしている。


分別管理のための措置の方法を記載
Q

 開示府令19条2項2号の2イ(6)に定める「当該株券が譲渡についての制限がされていない他の株券と分別して管理される方法」とは、事後交付型の株式報酬で譲渡制限を付さない株式を交付する場合には、何を記載すればよいのか。
A
 事後交付型株式については、発行会社等の取締役等が所定の時期に確定した数の株券等を交付する旨の定めの内容を知ることとなる日を金融商品取引法施行令2条の12第1号の交付日に相当するとしているが、当該知ることとなる日の属する事業年度に係る有価証券報告書又は半期報告書が提出されるまでの間に現実に株券等が交付された場合には、当該有価証券報告書等が提出されるまでは譲渡が禁止されるようにする必要がある。したがって、このような場合に備え、開示府令19条2項2号の2イ(6)による分別管理のための措置を講じ、その方法を記載する必要がある。


ユニット付与時点で未定の場合は訂正報告書で追記も可
Q

 事後交付型の株式報酬における臨時報告書の記載内容に関して、開示府令19条2項2号の2イに定める内容で、ユニット付与時点で未定であるものは「該当事項はない」あるいは「未定である」旨を記載することで足りるか。
A
 事後交付型株式報酬に係る臨時報告書の記載内容は、開示府令第19条2項2号の2イに定める事項となる。ただし、臨時報告書提出時点で未定である場合には、その旨を記載した上で、訂正報告書により追記することも可能と考えられる。


従業員持株会型ESOPは「持株会契約」に該当
Q

 従業員持株会型ESOPは、開示府令19条2項2号の2イ(8)における「持株会契約」に該当するという理解でよいか。
A
 従業員持株会型ESOPは、開示府令19条2項2号の2イ(8)に該当する。この場合、「持株会契約の内容」に信託の受益権の内容を含めて記載する必要があるため、投資者が全体の株式報酬スキームを理解できるようにする趣旨で、一定の範囲で「信託設定時に信託が一括で取得した株式を持株会が順次購入していくこと」についても記載する必要がある。


臨時報告書対象者ではなく、持株会契約で定める者を記載
Q

 開示府令19条2項2号の2イ(8)(iii)に定める「当該持株会契約に基づき当該株券等を交付することができる者の範囲」とは、持株会契約で定める範囲か、又は臨時報告書の対象とする株式発行で対象とする範囲となるのか。
A
 「当該持株会契約に基づき当該株券等を交付することができる者の範囲」とは、持株会契約で定める者の範囲を指す。したがって、実際の交付対象者の範囲が持株会契約で定められた範囲より限定されていたとしても、持株会契約で定められた範囲を記載することで差し支えない。


臨報特例が適用できない事後交付型株式は有価証券届出書等の提出が必要
Q

 臨報特例が適用できないユニット付与については、ユニット付与時に、有価証券通知書又は有価証券届出書の提出が必要となるのか。
A
 開示ガイドライン4−2−2は、金融商品取引法施行令2条の12第1号の臨報特例が適用されるかどうかにかかわらず、事後交付型株式に係る勧誘概念一般の明確化を図ったものである。このため、臨報特例が適用されない事後交付型株式においては、「所定の時期に確定した数の株券等を交付する旨を定めて通知その他の方法により当該取締役等に当該定めの内容を知らせる」時点までに有価証券届出書、発行登録書又は有価証券通知書を提出する必要がある。


令和7年2月25日以後の取得勧誘等から適用
Q

 事後交付型の株式報酬(PSU又はRSU)については、これまでは必ずしも権利付与時では株券等の取得勧誘等に該当せず、実際に当該権利に基づく株式交付の際に有価証券届出書等を提出するという実務が行われていたと理解しているが、改正後のガイドラインは、その施行後に権利付与されるPSU又はRSUに関して適用されるということでよいか。
A
 改正後の開示ガイドラインは、適用日である令和7年2月25日以後に開始する取得勧誘又はその売付け勧誘等について適用される。


株価の高騰等による理由では臨時報告書の提出は不要
Q

 開示ガイドライン24の5−14−5に関し、業績連動の事後交付型株式報酬の場合、設計と業績達成見込みに応じて、ユニット付与時点では発行価額の総額が1億円未満であったものの、業績達成見込みが高まることによって1億円以上になることが考えられる。この場合は1億円以上が見込まれた時点で臨時報告書を提出することになるのか。
A
 開示ガイドライン24の5−14−5については、寄せられた意見を踏まえ、発行数又は売出数の増加によって発行価額又は売出価額の総額が1億円以上となることが見込まれることとなった場合に臨時報告書が必要となることに見直されている。これにより、株価の騰貴のみを理由として発行価額又は売出価額の総額が1億円以上となった場合には、臨時報告書の提出は不要となる。また、臨時報告書の提出後、株価下落により1億円未満となることが見込まれる場合でも、訂正臨時報告書の提出は不要となる。


金銭で支給する場合も株券等を交付する可能性がある場合には総額に含めて記載
Q

 開示ガイドライン24の5−14−5に関し、事後交付型株式報酬では、付与されたユニット数に応じて、最終的に株式と金銭が支給される設計がある。この場合、金銭支給分も含めて発行価額又は売出価額の総額が1億円以上となることが見込まれるかを判別するのか。
A
 市場売却等によって株券等を換価することで得られた金銭を交付することを想定している場合においても、株券等として交付する可能性がある場合には、「株式の総数又は総額」に含めて記載する必要がある。

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