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解説記事2025年05月12日 税務マエストロ 相続人の申告と登録番号(2025年5月12日号・№1073)

税務マエストロ
相続人の申告と登録番号
#307
 税理士 熊王征秀

マエストロの解説

 インボイス制度の導入により、インボイスの登録をした免税事業者はおよそ160万件になると推計されている。このうち、外税で消費税相当額を受領してきた小規模な不動産賃貸業者(免税事業者)は、取引先(賃借人)からの要請ではなく、あえてインボイスの登録をしたうえで、外税による価格設定を維持しようとする動きがみられるようだ。賃借人からのクレームを避けるため、あえてインボイスの登録をして(正々堂々と)外税により消費税相当額を受領し、2割特例により申告するという作戦である。
 ところで、相続によりインボイスの登録をしている被相続人の事業を承継した相続人は、登録の意思に関係なく、みなし登録期間中はインボイスの登録事業者とみなされ、消費税の申告義務を負うことになる。インボイスの登録事業者が死亡した場合には、その規模にかかわらず、相続人は消費税申告が必要となることに注意しなければならない。今回は、みなし登録期間中の相続人の申告と登録番号について、実務上の留意点と疑問点を検証する。

Ⅰ 適格請求書発行事業者が死亡した場合の取扱い

1 相続人のみなし登録期間における申告義務
 被相続人の登録の効力は相続人に承継されないので、事業を承継した相続人が登録を受けるためには、あらためて登録申請書を提出する必要がある。
 適格請求書発行事業者である被相続人の死亡に伴い、相続人が事業を承継した場合には、その相続人がインボイスを交付することができないとなると、事業の継続に支障を及ぼす可能性がある。そこで、みなし登録期間中はその相続人を適格請求書発行事業者とみなすこととしたのである(消法57の3③)。
 不動産賃貸のケースであれば、店舗や事務所などの賃借人サイドからみた場合、家主である被相続人が死亡し、遺産分割も確定していない状況ではインボイスの交付を受けられるかどうかがわからない。
 そこで、みなし登録期間中は相続人を適格請求書発行事業者とみなすことにより、賃借人の仕入税額控除の権利を保障することにしたものと思われる。

(第57条の3 適格請求書発行事業者が死亡した場合における手続等)
                 :
3 相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した相続人(注1)(適格請求書発行事業者を除く。)の当該相続のあつた日の翌日から、当該相続人が前条第1項の登録を受けた日の前日又は当該相続に係る適格請求書発行事業者が死亡した日の翌日から4月を経過する日のいずれか早い日までの期間(次項において「みなし登録期間」という。)については、当該相続人を同条第1項の登録を受けた事業者とみなし(注2)て、この法律(同条第10項(第1号に係る部分に限る。)を除く。)の規定を適用する。この場合において、当該みなし登録期間中は、当該適格請求書発行事業者に係る同条第4項の登録番号を当該相続人の登録番号とみなす(注3)。
                 :

 この規定は、適格請求書発行事業者の事業を承継した相続人について適用される(注1)ものであり、事業を承継しない相続人についてまで適用されるものではない。
 事業を承継した相続人は、みなし登録期間中は適格請求書発行事業者とみなされ(注2)、被相続人の登録番号により、インボイスの交付義務と申告義務を負うことになる(注3)。
 ここで、相続人が従来より事業を営んでいる場合には、みなし登録期間中は、被相続人の事業だけでなく、相続人の事業から生じた売上高についても申告義務があることに注意しなければならない。
 インボイスの登録をしていない相続人が相続発生前から駐車場の賃貸をしているような場合であれば、相続人に登録の意思がなくとも、みなし登録期間中は、その賃貸収入について申告の必要があるということだ。

2 相続人がインボイスの登録申請をしない場合
 みなし登録期間中、被相続人から承継する事業については被相続人の登録番号によりインボイスを発行することになるのであるが、相続人の事業についても、被相続人の登録番号によりインボイスを発行することになるのだろうか?
 相続人がみなし登録期間中に登録申請をするのであれば、登録の通知によりみなし登録期間は終了し、登録番号は被相続人から相続人に変更になる。

 しかし、相続人に登録の意思がなく、みなし登録期間終了後は免税事業者になることを予定している場合には、相続人に登録番号は付与されない。
 被相続人と相続人がともに不動産賃貸業を営んでいる場合であれば、被相続人の賃貸物件は被相続人の登録番号によりインボイスを発行すれば特段問題となることはないが、相続人の賃貸物件はどのように取り扱えばよいのだろう?
 わずか4か月間といえども、相続人は賃貸収入についてインボイスを発行する義務が生ずるのであるから、これを賃借人に告知するべきである。この場合において、もし、賃借人からインボイスの交付要請があった場合には、被相続人の登録番号を記載したインボイスを発行しなければならない(消法57の4①)。
 また、いままで受領してきた賃貸料に消費税相当額が上乗せされていない場合には、インボイスの交付を要求してきた賃借人に対し、10%の消費税相当額を請求することを検討してみてもいいかもしれない。
 インボイスの登録をした被相続人が不動産賃貸業を営んでおり、非登録事業者である相続人が飲食店業(ラーメン屋)を営んでいる場合はどうだろう……。(おそらくないと思われるが)みなし登録期間中に顧客から要請があった場合、ラーメンの領収証に被相続人の登録番号を記載してインボイスとして交付することになるのだろうか……どうにも違和感を禁じ得ない。

Ⅱ 相続人が新規開業者の場合

1 新規開業者の取扱い
 事業を開始した課税期間は、その課税期間中に登録申請書を提出することで、その課税期間の初日まで遡って登録を受けることができる。よって、個人事業者は原則として事業を開始した年の1月1日から登録事業者となることが認められている(消令70の4、消規26の4一)。
(注)課税期間の初日(1月1日)に遡って登録を受けたとしても、開業日までは取引がないので実際は開業日から12月31日までの取引について申告義務が発生することになる。
 ただしこの特例は、みなし登録事業者が開業した場合に適用することはできない(消法57の3③、消規26の4一括弧書)。
 「新たに事業を開始した方向けFAQ(個人15):令和6年12月2日国税庁公表」には、「……この特例は、インボイス発行事業者である被相続人の事業を承継したことにより事業を開始した者は適用できないこととされています。」と書かれている。その一方で、末尾の※には、「ただし、相続のあった年のその相続の前に相続人が別の事業を開始している場合などは、その事業について、新規開業者として課税期間の初日に遡って登録を受けることができます。」とも書かれている(次頁参照)。
 消費税法施行規則26条の4一号では、みなし登録事業者(法第57条の3第3項の規定の適用を受ける事業者)が括弧書で除かれているが、この「みなし登録事業者」とは、どのような事業者を意味するのであろうか……。
 まずは、新規開業者の特例とみなし登録事業者に関する取扱いについて、消費税の法令を確認してみたい。

 相続の発生は予測することができない。インボイスの登録を予定して開業した事業者について、相続が発生したことを理由に年初からの登録を認めないこととすると、事業に支障を来すことになる。こういった理由から、相続よりも前に事業を開始している事業者については、年初に遡っての登録を認めるものと思われる。

2 相続前に相続人が別の事業を開始している場合とは?
 FAQ(個人15)の※には、「ただし、相続のあった年のその相続の前に相続人が別の事業を開始している場合などは、その事業について、新規開業者として課税期間の初日に遡って登録を受けることができます。」と書かれている。
 このFAQの※に書かれている「……別の事業を開始している場合など……」という文言(下線は筆者加筆)は、どういう意味なのだろうか……?
 「別の事業を開始」というのは、所得税における所得区分のことではなく、単に「相続の前に相続人が事業を開始している場合」を意味するものと思われる。「別の」という言葉は不要ではないか? また、「など」という曖昧な表現は、ほかにどのようなケースを想定しているのだろう……。

個人15
相続によりインボイス発行事業者の事業を承継したことに伴い、事業を開始しましたが、新規開業者に該当するのでしょうか?


 事業を開始した課税期間は、その課税期間中に登録申請書を提出することで、その課税期間の初日(個人事業者は、原則として1月1日)まで遡って登録を受ける特例がありますが、この特例は、インボイス発行事業者である被相続人の事業を承継したことにより事業を開始した者は適用できないこととされています。
 なお、インボイス発行事業者である被相続人の事業を承継した相続人は、みなし登録期間が生じることになりますが、みなし登録期間中は、被相続人の登録番号によりインボイスを交付することが可能であり、また、みなし登録期間中に登録申請書を提出し、登録を受けることで、みなし登録期間終了後も引き続きインボイスを交付することができます(登録通知がみなし登録期間終了後に届いた場合、その通知が届いた日までみなし登録期間が延びることになります。)。
※ただし、相続のあった年のその相続の前に相続人が別の事業を開始している場合などは、その事業について、新規開業者として課税期間の初日に遡って登録を受けることができます。

(1)相続人がみなし登録期間中に登録申請する場合
 インボイスの登録をせずに物品販売業(事業所得)を新たに開始した相続人(免税事業者)について、事業開始後に不動産賃貸業を営んでいた被相続人(適格請求書発行事業者)の相続が発生した場合には、相続人はどのような取扱いになるのだろう……。
 「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を提出し、みなし登録事業者として被相続人の登録番号によりインボイスの発行をした相続人は、登録通知が届いた後は自らの登録番号によりインボイスの発行をすることになる。
 なお、相続人はインボイスの登録をせず、みなし登録期間だけ課税事業者(みなし登録事業者)として申告することや、みなし登録期間中に登録申請をすることにより、相続のあった日の翌日(みなし登録期間の初日)から(みなし)登録事業者になることもできる。

 では、相続人が営んでいた物品販売業(事業所得)についてはどのような取扱いになるのだろうか……。みなし登録期間中は被相続人の登録番号を使用してインボイスを発行し、登録通知が届いた後に、開業日から相続発生日の前日までの期間中の取引につき、相続人の登録番号が記載されたインボイスを遡って発行することになるのだろうか?

 物品販売業(事業所得)については、みなし登録期間中に被相続人の登録番号を使用してインボイスの発行をするのではなく、登録通知が届いてから、相続人の登録番号が記載されたインボイスを遡って発行したほうが現実的だと思うのだが、このような処理方法も認められるのであろうか?

(2)相続人がみなし登録期間経過後に登録申請する場合
 相続人がみなし登録期間経過後にインボイスの登録申請をした場合について考えてみたい。インボイスの登録をせずに物品販売業(事業所得)を新たに開始した相続人(免税事業者)について、事業開始後に不動産賃貸業を営んでいた被相続人(適格請求書発行事業者)の相続が発生した場合には、みなし登録期間中は相続人に申告義務が課されることになる。よって、相続人は被相続人の登録番号により、インボイスを発行することになる。
 みなし登録期間が経過すると被相続人のインボイスの効力は失効することとなるので、相続人が開業日(年初)から登録事業者となることを希望する場合には、改めてインボイスの登録申請をする必要がある。
 この場合であっても、FAQ(個人)15の※を読む限り、相続人は開業日に遡ってインボイスを発行することができるものと思われる。また、被相続人から承継した不動産賃貸業については、みなし登録期間の末日の翌日に遡って申告義務が生ずることになる。

 相続人がみなし登録期間中にインボイスの登録を検討しているのであれば、物品販売業(事業所得)についてはインボイスの発行を保留しておくことも検討すべきである。
 そして、みなし登録期間経過後に登録の決断をしたならば、登録通知が届いてから、相続人の登録番号が記載されたインボイスを遡って発行したほうが効率的だと思うのだが、このような処理方法も認められるのであろうか?
 また、開業日に遡って相続人が登録事業者となるのであるから、被相続人から承継する不動産賃貸業につき発生した空白期間(みなし登録期間の末日の翌日から登録日の前日までの期間)は、相続人の登録番号が記載されたインボイスを遡って発行することができるものと思われる。
(3)相続人が登録希望日から登録する場合
 相続人がみなし登録期間経過後の「登録希望日」から登録する場合について考えてみたい。インボイスの登録をせずに物品販売業(事業所得)を新たに開始した相続人(免税事業者)について、事業開始後に不動産賃貸業を営んでいた被相続人(適格請求書発行事業者)の相続が発生した場合には、みなし登録期間中は相続人に申告義務が課されることになる。
 みなし登録期間が経過すると被相続人のインボイスの効力は失効することとなるので、相続人が「登録希望日」から登録事業者となることを希望する場合には、改めてインボイスの登録申請をする必要がある。
 この場合、被相続人から承継した不動産賃貸業については、登録希望日から12月31日までの期間について、再び申告義務が生ずることとなる。
 また、被相続人の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えている場合には、みなし登録期間経過後も相続人は課税事業者になるとともに、登録センターから通知を受けた日(登録日)からでなければ登録事業者となることはできないので注意が必要だ。

 このようなケースであれば、みなし登録期間中は被相続人の登録番号により、登録後は新たに付与された相続人の登録番号によりインボイスを発行することになる。

3 相続後に相続人が事業を開始した場合
(1)相続人がみなし登録期間中に開業する場合

 不動産賃貸業を営んでいた被相続人(適格請求書発行事業者)の事業を承継した相続人が、みなし登録期間中に物品販売業(事業所得)を新たに開始した場合について考えてみたい。
 相続があった後に開業する場合には、年初に遡って適格請求書発行事業者となることはできない(消規26の4一括弧書)。このようなケースであれば、みなし登録期間の初日から登録通知があるまでの期間は被相続人の登録番号により、登録後は新たに付与された相続人の登録番号によりインボイスを発行することになる。
 被相続人から承継した不動産賃貸業については、相続人に登録番号が付与された時点で契約書のまき直しをするか、覚え書きを作成すれば特段問題はなさそうである。
 ただ、物品販売業については、相続人の登録を境に登録番号が変わることになるのであるから、取引先にその旨を伝えておかないと、トラブルが発生することにもなりかねない。
 「適格請求書発行事業者公表サイト」に掲載される相続人の登録年月日は1月1日ではなく、登録日になるのであろうから、登録通知がくる前に発行するインボイスには、被相続人の登録番号を書かざるを得ないことになる。結果として、開業日から登録通知日前までの期間については、被相続人の名前でなければ「適格請求書発行事業者公表サイト」での検索ができないことになりそうだ。

(2)相続人がみなし登録期間経過後に開業する場合
 不動産賃貸業を営んでいた被相続人(適格請求書発行事業者)の事業を承継した相続人が、みなし登録期間経過後に物品販売業(事業所得)を新たに開始した場合について考えてみたい。
 相続があった後に開業する場合には、年初に遡って適格請求書発行事業者となることはできない(消規26の4一括弧書)。
 みなし登録期間中は相続人に申告義務が課されるが、みなし登録期間が経過すると被相続人のインボイスの効力は失効することとなるので、相続人が「登録希望日」から登録事業者となることを希望する場合には、改めてインボイスの登録申請をする必要がある。
 この場合、被相続人から承継した不動産賃貸業については、登録希望日から12月31日までの期間について、再び申告義務が生ずることとなる。
 また、被相続人の基準期間における課税売上高が1,000万円を超えている場合には、みなし登録期間経過後も相続人は課税事業者になるとともに、登録センターから通知を受けた日(登録日)からでなければ登録事業者となることはできないので注意が必要だ。

 このようなケースであれば、みなし登録期間中は被相続人の登録番号により、登録後は新たに付与された相続人の登録番号によりインボイスを発行することになる。

4 実務上の問題点
 実務上、不動産の賃貸借については、契約書に登録番号などの必要事項を記載することにより、賃貸人はインボイスの発行を省略することになると思われる。よって、相続が発生した場合には、トラブルを避けるためにも、なるべく早い時期に賃借人との契約書をまき直しするか、覚え書きを作成するべきである。
 実務の現場では、相続人がみなし登録期間中にインボイスの登録を失念したり、そもそもインボイスの登録をせずに非登録事業者となっていることを賃借人が認識できていないまま、仕入税額控除の規定を適用するという誤りが散見されるようである。インボイスQ&Aの問95では、賃借人が自己責任において賃貸人の登録の有無を確認するよう指導しているが、賃借人にこのようなことを義務づけるのは、現実問題として相当に無理があるように思われる。

Ⅲ ケース別登録申請書(フローチャート)

 ケース別登録申請書(フローチャート)相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した個人事業者用により、新規開業者がインボイスの登録申請をする場合のポイントを確認する(下記の表は筆者がフローチャートをアレンジして作成したものである)。
 フローチャートによると、みなし登録期間中に登録申請をする場合には、「ケース1」か「ケース6」のいずれかに該当することになるようだ。

 フローチャートのタイトルは、「ケース1」が「事業を開始した課税期間の初日から登録を受ける場合」、「ケース6」が「相続によりインボイス発行事業者の事業を承継し、みなし登録期間中に登録申請書を提出する個人事業者」と記載されている。それぞれの「記載方法」の欄を確認すると、「ケース6」には括弧書きで「適格請求書発行事業者の死亡届出書を提出してください。」と記載されているのに対し、「ケース1」には「適格請求書発行事業者の死亡届出書」に関する記述がない。
 相続人が1月1日(開業日)に遡って登録事業者になることを選択した場合には、相続発生前から適格請求書発行事業者として申告義務があることから、あえて「適格請求書発行事業者の死亡届出書」について触れていないということなのだろうか……。

Ⅳ みなし登録事業者になるかどうかは選択制なのか?

 消費税法施行令70条の6では、みなし登録事業者となる相続人に対し、「適格請求書発行事業者の死亡届出書」の「相続による届出者の事業承継の有無」欄に、適格請求書発行事業者(被相続人)の事業を承継した旨の記載を義務づけている。

(令第70条の6適格請求書発行事業者の事業を承継した相続人の手続等)
 法第57条の3第3項の規定の適用を受けようとする同項に規定する相続人は、同条第1項の規定による届出書に、相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した旨を記載しなければならない。
                  :

 ここを読んでいくと、「法第57条の3第3項の規定の適用を受けようとする……相続人……」と規定されているので、法第57条の3第3項の規定の適用を受けない相続人は、「相続による届出者の事業承継の有無」の欄は、どのように記載すればよいのだろうか?
 なお、相続人は、事業承継の有無にかかわらず、「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を(速やかに)納税地の所轄税務署長に提出することが義務づけられている(消法57の3①)。
 物品販売業(事業所得)を新たに開始した免税事業者が、インボイスの登録について検討している最中に相続が発生し、不動産賃貸業を営んでいた被相続人(適格請求書発行事業者)の事業を承継した場合について考えてみたい。
 相続人が1月1日(開業日)に遡って登録事業者になることを選択した場合には、相続発生後も適格請求書発行事業者として申告義務があることから、あえて相続人を登録事業者とみなす必要はない。結果、「相続による届出者の事業承継の有無」欄は、記載しなくてよいことになりそうである。
 では、相続人が1月1日(開業日)ではなく、みなし登録期間の初日から適格請求書発行事業者になることを選択した場合に限り、「相続による届出者の事業承継の有無」欄は、「有」を○で囲むことになるのだろうか……?
 「相続による届出者の事業承継の有無」欄の「有」を○で囲んで「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を提出してしまうと、後から1月1日(開業日)に遡って適格請求書発行事業者になることはできないのだろうか?
 消費税法施行令70条の6と同施行規則26条の4の1号括弧書きを読む限り、このような難しい判断を迫られることになるような気がするのだが、ただでさえ難解な相続実務について、このような取扱いがされたのでは実務が機能しなくなるように思われる。
 基本通達でなくともいいので、Q&AやFAQなど、国税庁から五月雨式に発表される情報により、もっともっとわかりやすい解説、もっともっと実務に即した取扱いを明示していただくことを切に希望する次第である。

Ⅴ 国税庁の公表資料について(要望)

 令和6年10月に公表された『登録申請書の書き方フローチャート(相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した個人事業者用)』は、令和7年2月に改訂され、「相続があった年と登録申請書を提出する年は同じですか?」という枠が追加された(下記の表は筆者がフローチャートをアレンジして作成したものである)。
 その後、令和7年4月に再び改訂がされ、標題を『ケース別登録申請書(フローチャート)相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した個人事業者用』に変更するとともに、標題下の説明書きを詳しく書き直している。

 令和7年2月の改訂の理由であるが、改訂前のフローチャートでは、みなし登録期間が年をまたぐケースを想定していなかったので、令和7年2月の改訂により補正を加えたものと思われる。

 ここで指摘しておきたいのは、この令和7年2月と同年4月の改訂に関する情報開示のやり方である。というのも、国税庁ホームページのインボイス制度特設サイトの新着情報では、この改訂に関する案内がまったくされていないのである!
 フローチャートが改訂されていたことを知っている税理士は全国で何人いるのだろう……。本誌の読者でも、知らない方がほとんどではないだろうか?
 我々税理士は、国税庁の新着情報を頼りに情報を収集しているのに、何の前触れもなく知らないうちに改訂されたのでは、何がどう変わったのかを知る術が無い。誤りを公にしたくなかったからこっそり直したのだと指摘されても国税庁は何も反論できないのではないか?
 ついでにもう一点苦情を申し上げておきたい。令和7年4月21日にインボイスQ&Aが改訂され、いつものように改訂による追加や改訂は各問ごとに表記されている。インボイスQ&Aが改訂されると、国税庁は一文字変わっただけでも【令和●年●月改訂】と表記してくるのであるが、改訂のハザマにおいて、何の断りもなく文章を改訂することが散見された。
 我々税理士は、いつ、どこが変わったのかということを知る術が無いのが実情である。
 令和5年10月改訂の際、問116(2割特例の適用ができない課税期間②)と問128(適格請求書などの請求書等に記載された消費税額による仕入税額の積上げ計算)について、文章表現などに明らかな誤りがあったことから、本誌No.1001(2023年10月30日号)の17~18頁でその旨指摘した。しかし、この箇所は令和6年4月改訂でも訂正されなかったところ、今回の改訂でやっとこさ修正されていた。しかし、問には【令和●年●月改訂】という表記はされていないので、内容が変わっていることに気づいた人はおそらくいないものと思われる。
 2025年4月30日の日経新聞朝刊では、トランプ政権の操作により米政府機関のウェブページが大量に消えていることが一面トップで報道されている。日本においても、公文書の取扱いが何かと問題になる昨今において、公表資料を何の前触れもなくこっそり訂正するという国税庁の行為は大いに問題があると感じている。


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e-mail:ta@lotus21.co.jp
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