解説記事2025年09月29日 実務解説 半期報告書 作成上の留意点(2025年9月期提出用)(2025年9月29日号・№1092)
実務解説
半期報告書 作成上の留意点(2025年9月期提出用)
(前)企業会計基準委員会 専門研究員 中西美樹
《まとめ》
・「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正により、「重要な契約等」及び「発行済株式総数、資本金等の推移」について開示の新設及び拡充が行われている。
・「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」及び「リースに関する会計基準」を中心とした項目に留意が必要。
・このほか、「上場企業等が保有するVCファンドの出資持分に係る会計上の取扱い」についても留意が必要。
Ⅰ はじめに
本稿は、2025年9月期の半期報告書における作成上の留意点についてまとめたものであり、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という。)の改正に伴う留意点、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)から改正・公表された企業会計基準等に関する留意点を中心に解説する。
なお、文中において意見にわたる部分は私見であることをあらかじめ申し添えておく。
Ⅱ 開示府令の改正を踏まえた半期報告書の開示に係る留意点
(1)概要
2022年6月に公表された「金融審議会 ディスクロージャーワーキング・グループ報告」において、個別分野における「重要な契約」について、開示すべき契約の類型や求められる開示内容を具体的に明らかにすることで、適切な開示を促すことが考えられるとされたことを踏まえ、2023年12月22日に開示府令が改正された。
また、2025年2月21日にスタートアップへの資金供給の促進関係についても開示府令が改正された。
(2)重要な契約等
開示府令の改正により、「重要な契約等」として「企業・株主間のガバナンスに関する合意」、「企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」及び「ローン契約と社債に付される財務上の特約」について記載することとされた(開示府令第四号の三様式記載上の注意(以下「記載上の注意」という。)(9)f~h)。このうち、「企業・株主間のガバナンスに関する合意」について、(a)当該提出会社の役員について候補者を指名する権利を当該株主が有する旨の合意、(b)当該株主による議決権の行使に制限を定める旨の合意、(c)当該提出会社の株主総会又は取締役会において決議すべき事項について当該株主の事前の承諾を要する旨の合意が掲げられている。提出会社の株主と当該提出会社との間で当該合意を含む契約を締結した場合又は当該契約に重要な変更若しくは解約があった場合には、当該契約の概要、当該合意の目的、取締役会における検討状況その他の当該提出会社における当該合意に係る意思決定に至る過程、当該合意が当該提出会社の企業統治に及ぼす影響を具体的に記載することとされている(記載上の注意(9)f)。記載事例1では、「役員候補者を指名する権利について合意する契約が株主との間に締結された場合」の記載事例を記載している。なお、「企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」及び「ローン契約と社債に付される財務上の特約」についても、記載上の注意(9)g及びhに従って記載することになると考えられる。

また、経過措置として、記載上の注意(9)fからiまでの規定に準じて記載すべき事項のうち、2026年4月1日前に開始する事業年度に係る半期報告書について、この府令の施行前に締結されたこれらの規定に規定する契約又は金銭消費貸借契約に係るものについては、その記載を省略する旨を記載することによって、その事項の記載に代えることができるとされている(附則第3条第6項)。財務上の特約その他重要な影響を及ぼす可能性のある特約について、この経過措置の対象は金銭消費貸借契約に限定されている点について留意が必要である。なお、当経過措置については、2026年4月1日前に開始する事業年度に係る半期報告書についてとされているため、2026年9月期の半期報告書においては記載を省略することができないことについてもご留意いただきたい。
(3)発行済株式総数、資本金等の推移
スタートアップへの資金供給の促進関係に係る開示府令の改正により、発行済株式総数、資本金等の推移について、事後交付型株式による株券の交付による発行済株式総数、資本金及び資本準備金の増加については、当中間会計期間中のそれぞれの合計額を記載し、事後交付型株式による株券の交付によるものである旨を欄外に記載することとされた(記載上の注意(14)b)。記載事例2では、(注3)として事後交付型株式による株券の交付による増加の場合を記載している。

Ⅲ 企業会計基準等の改正・公表に係る留意点
1 「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」に係る留意点
(1)概要
グローバル・ミニマム課税は、一定の要件を満たす多国籍企業グループ等の国別の利益に対して最低15%の法人税を負担させることを目的としており、当該課税の源泉となる純所得が生じる企業と納税義務が生じる企業が相違する新たな税制である。我が国では、2023年3月28日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)において、グローバル・ミニマム課税のルールのうち所得合算ルールに係る取扱いが定められ、2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用することとされた。
これを受け、ASBJは2024年3月22日に実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(以下「実務対応報告第46号」という。)を公表した。適用時期は、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用とされている。その詳細は、大竹勇輝「実務対応報告第46号『グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い』等の概要」(本誌No.1028)を参照いただきたい。
(2)中間連結貸借対照表
グローバル・ミニマム課税制度に係る未払法人税等のうち、貸借対照表日の翌日から1年を超えて支払の期限が到来するものは、中間連結貸借対照表の固定負債の区分に長期未払法人税等などその内容を示す科目をもって表示することとされている。
(3)中間連結損益計算書関係
中間連結損益計算書において、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則では「国際最低課税額に対する法人税等」とされている。)に重要性があるときは、当該金額を注記しなければならないとされている。記載事例3では、国際最低課税額に対する法人税等に重要性がある場合の記載事例を記載している。

また、実務対応報告第46号第7項では、中間連結財務諸表においては、当面の間、当中間連結会計期間を含む対象会計年度に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を計上しないことができるとされている。記載事例4では、実務対応報告第46号第7項を適用した場合の記載事例を記載している。

2 「リースに関する会計基準」等に係る留意点
(1)概要
2024年9月13日に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)等が公表された。これは、我が国においては2007年3月に企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(以下「企業会計基準第13号」という。)等が公表されていたが、2016年1月に国際会計基準審議会(IASB)より国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」が公表され、また、同年2月に米国財務会計基準審議会(FASB)よりFASB Accounting Standards Codification(FASBによる会計基準のコード化体系)のTopic 842「リース」が公表されたことにより、我が国の会計基準とは、特に負債の認識において違いが生じることとなり、国際的な比較において議論となる可能性があったことから、借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上する会計基準の開発が行われ、公表されたものである。
「リースに関する会計基準」等は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されるが、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用が可能とされている。その詳細は、村瀬進吾/福江東晶「企業会計基準第34号『リースに関する会計基準』等の概要(上)(下)」(本誌No.1050、No.1051)を参照いただきたい。
(2)主要な経営指標等の推移
記載事例5では、リース会計基準等を早期適用する場合の主要な経営指標等の推移の記載事例を記載している。上段は、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用した場合の記載事例、下段は、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し当該期首残高から新たな会計方針を適用した場合の記載事例である。

(3)会計方針の変更等
記載事例6では、リース会計基準等を早期適用し、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下「リース適用指針」という。)第118項本文により過去の期間のすべてに遡及適用した場合の記載事例を記載している。当該記載事例では、貸手のファイナンス・リースについては、「製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース」を前提とした記載としている。

当該記載事例の「この結果」に続く影響額の記載について、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則では「税引前中間純損益金額」及び「その他の重要な項目」の影響額を記載することとされている。記載事例においては一つの例として、「税金等調整前中間純損益金額」以外にも科目を掲げているが、どの科目を記載するかは各企業の状況によって異なると考えられるため、各企業において判断することが必要となると考えられる。
記載事例7では、リース会計基準等を早期適用し、リース適用指針第118項ただし書きに従って適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し当該期首残高から新たな会計方針を適用した場合の記載事例を記載している。リース会計基準等では、実務上の負担を軽減するための多くの経過措置が設けられており、これらの経過措置を適用する場合において、重要性があるときは、当該経過措置に係る記載を行うことになると考えられる。当該記載事例では、(1)から(4)の経過措置を適用した場合を記載しているが、各企業で適用した経過措置に合わせて記載することが必要になると考えられる。


借手のリースについて、リース適用指針第118項ただし書きに従った場合、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第10項(5)の注記に代えて、適用初年度の期首の貸借対照表に計上されているリース負債に適用している借手の追加借入利子率の加重平均と、適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日において企業会計基準第13号を適用して開示したオペレーティング・リースの未経過リース料と適用初年度の期首の貸借対照表に計上したリース負債の差額を注記することができるとされている。したがって、当該記載事例の(2)借手では表によって記載している。
また、リース適用指針第97項において掲げられている3つの会計処理を選択した場合において、これらの会計方針に重要性があるときは、会計方針の変更にも注記することが考えられるため、ご留意いただきたい。
なお、記載事例6及び記載事例7は借手及び貸手の両方のリースがある場合を想定している。このため、例えば貸手のリースを記載しない企業は、記載事例から貸手に係る記載を削除して、借手のリースに関するもののみを記載することになる点、ご留意いただきたい。
Ⅳ その他の留意点
(1)「上場企業等が保有するVCファンドの出資持分に係る会計上の取扱い」に係る留意点
2025年3月11日にASBJから改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」が公表され、上場企業等が保有するVCファンドの出資持分に係る会計上の取扱いの見直しを目的として改正が行われた。その詳細は、山本智恵「改正移管指針第9号『金融商品会計に関する実務指針』の概要」(本誌No.1072)を参照いただきたい。
当該改正は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされ、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができるとされている。この点、当中間連結会計期間の期首から早期適用する場合、会計方針の変更において注記することが考えられるため、ご留意いただきたい。
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