税務ニュース2025年10月10日 各契約書は全て架空取引、益金不算入に(2025年10月13日号・№1094) 審判所、報酬の一部は振込元に返還され経済的成果もなし
本件は、請求人(法人)が株式売却に係るアレンジメント業務等を受託したとして、その報酬を益金に算入する一方、アレンジメント業務等の一部を委託したとして、その販売手数料を損金の額に算入して確定申告を行ったところ、原処分庁が、販売手数料はアレンジメント業務等に係る役務の提供を受けた事実がないにもかかわらず、業務委託先と通謀して業務委託契約書を作成することにより損金に算入したものであるとして、法人税等の更正処分及び重加算税の賦課決定処分を行ったものである。
請求人は、株式の売却先の選定を行った仲介者に対して仲介手数料を現金で支払うよう指示されたにすぎず、仲介手数料を現金で支払うための手段として、架空の取引を記載した各コンサルティング業務委託契約書を含む一連の契約書を作成したものであり、販売手数料だけでなく、売上げも架空であって益金に算入すべきではないと主張。一方、原処分庁は、請求人が取引先との間で締結した各コンサルティング業務委託基本契約書は架空の取引を記載したものと断定できず、取引先から請求人に振り込まれた金員(報酬)は、各契約書による役務の提供の対価でないとは認められない上、請求人は実際に経済的利得を収受した事実があり、請求人が役務提供を行っていないと認定するには不十分であると主張した。
審判所は、各契約書は簿外資金を捻出するために作成された虚偽文書であり、各契約書に係る契約が成立したとは認められず、本件金員は、契約に基づく役務提供の対価であるとは認められないとした。その上で、法人税は、役務の提供等の原因行為そのものにではなく、その結果として取得した経済的成果に担税力を認めて課税するものであるから、仮に原因行為について、実体的に無効であるなどの瑕疵があったとしても、取得した経済的成果が原因行為の瑕疵を起因として現実に失われない限り、法人税の課税物件を欠くことにはならないとしたが、本件金員の一部は、金員の振込元に返還されたのと同視することができる事情が存在し、請求人に係る経済的成果は失われたと認められるから、益金の額に算入すべきではないとの判断を示し、原処分の一部を取り消している。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -