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解説記事2026年01月12日 ニュース特集 Q&Aで読み解く令和8年度税制改正大綱(2026年1月12日号・№1106)

ニュース特集
年度内成立の公算大
Q&Aで読み解く令和8年度税制改正大綱


 自民党税制調査会及び日本維新の会による初めての税制改正大綱が令和7年12月19日に公表され(本誌1105号16頁参照)、これをベースにした「令和8年度税制改正の大綱」が12月26日に閣議決定された。少数与党ではあるものの、与党は国民民主党との協議を踏まえ、年収の壁(所得税負担が生じる水準)を178万円に引き上げることとし、政党間合意を行っているため、令和7年度税制改正とは異なり、原案どおり年度内成立の公算が高そうだ。
 本特集では、令和8年度税制改正大綱のポイントをQ&A形式で解説する。

所得課税

令和8年末の年末調整で対応
Q

 基礎控除等の見直しは、令和8年分の所得税から適用されるとのことですが、今回も年末調整で対応することになりますか。
A
 令和7年度税制改正と同様、1年目は令和8年12月の年末調整で対応することになる。例年どおり税制改正法案が令和8年3月末までに成立すると仮定した場合だが、当然、令和8年1月から3月は現行法に基づき源泉徴収を行うことになる。その後も、システム改修や事務フローの見直しなどがあるため、4月から改正後の法律に従い源泉徴収事務ができるわけではないからだ。また、個人事業者等であれば、令和8年分所得税の確定申告で還付を受けることになる。


日本維新の会の要望を踏まえ、高校生の扶養控除は現行制度を維持
Q

 令和7年度税制改正大綱では、高校生年代の扶養控除及びひとり親控除については、令和8年度以降の税制改正において、各種控除のあり方の一環として検討し結論を得ることとされていましたが、どのような結果となりましたか。
A
 高校生年代の扶養控除は、連立与党の日本維新の会の要望を踏まえ、令和8年度税制改正では現行制度を維持し、所得税抜本改革の一環として引き続き検討することとなった。また、ひとり親控除についても、日本維新の会の要望を踏まえ、控除額を国税は38万円(現行35万円)、地方税は33万円(現行30万円)に引き上げられることになった。所得税については令和8年分以後、個人住民税は令和9年度分から適用される。


ミニマムタックス、株式のみの場合は3.4億円から課税も
Q

 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化の見直し(ミニマムタックス)により、年間の所得が約30億円から6億円程度に引き下げられるとのことですが、所得が株式のみの場合も同様でしょうか。対象者はどの程度になるのでしょうか。
A
 令和8年度税制改正では、ガソリンの暫定税率の廃止に伴う財源措置の1つとして、ミニマムタックスの見直しが行われる(本誌1104号40頁参照)。具体的には、特別控除額を現行の3.3億円から1.65億円に引き下げるとともに、税率を現行の22.5%から30%に引き上げる(令和9年分の所得から適用)。実際の申告実績データに当てはめた場合には、現行制度では年間所得がおよそ30億円から課税されているが、6億円程度に引き下げられることになる。ただし、仮に所得のすべてが株式(分離課税)の場合については、課税されるハードルが低くなり約3.4億円から課税されることになるので留意したい。
 なお、今回の改正により、対象者は200人程度から2,000人程度に拡大するとされている。


住宅ローン減税に立地要件が追加
Q

 住宅ローン減税については、適用期限が5年間延長され、既存住宅を中心に制度の拡充が行われていますが(本誌1104号40頁参照)、新たに立地要件が設けられています。具体的にはどのような要件になりますか。
A
 立地要件とは、土砂災害などの災害レッドゾーンの新築に関しては住宅ローン減税の対象外になるというもの。災害レッドゾーンとは、開発・建築行為に規制が講じられている、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、浸水被害防止区域、災害危険区域(都市再生法に基づく勧告に従わないものとして公表の対象となった区域のみ)のこと。これらの地域の新築住宅については、令和10年入居分から適用対象外となる(令和8年・9年に入居した場合は可)。ただし、建替えや既存住宅、リフォームは適用対象となっている。
 なお、認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除(投資型減税)、新築住宅に係る固定資産税の減額措置、居住用財産の買換え等に係る特例措置、認定長期優良住宅に係る特例措置などについても同様の立地要件が新たに追加されている。


子育て世帯の生命保険料控除の拡充は1年延長
Q

 令和7年度税制改正で、1年間の時限措置として導入された子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充措置ですが、適用期限は延長されましたか。
A
 令和7年度税制改正では、子育て世帯に対する生命保険料控除の拡充として、新生命保険料に係る一般枠(遺族保障)について、23歳未満の扶養親族を有する場合には、現行の4万円の適用限度額に対して2万円の上乗せ措置を講ずることとされたが、1年間の時限措置とされていた。令和8年度税制改正では、措置内容に変更なく、適用期限が1年間延長されることになった。


NISA、贈与税の非課税枠は現行制度のまま
Q

 NISAのつみたて投資枠の対象年齢が「18歳以上」から「0~17歳」に引き下げられるとのことです。子供の場合、両親や祖父母がNISAの資金を拠出することになりますが、贈与税の非課税枠は現行制度と変わらないとの理解でよいでしょうか。
A
 令和8年度税制改正では、NISAのつみたて投資枠が拡充され、年齢が「0~17歳」についても対象になる(本誌1104号40頁参照)。年間投資枠は60万円となっているため、両親や祖父母が資金を提供したとしても非課税枠の限度内ということになる。110万円の非課税枠は現行制度のままである。
 なお、払出しは12歳以降でないとできない点には留意したい。12歳以降であっても、資金の使途が子供のためであり、子供が払出しに同意したことを示す書面とともに、親権者等(口座管理者)が申出書を金融機関に提出する必要がある。


NISA、株式売却の当年中の非課税限度額の復活は見送り
Q

 NISAについては、金融庁が株式等を売却した年に非課税限度額が復活する仕組みの導入を求めていましたが、どうなりましたか。
A
 NISAについては、成長投資枠とつみたて投資枠で、最大で年間の投資額が360万円となっており、加えて生涯の非課税保有限度額は1,800万円となっている。現行のNISAではスイッチング(現在保有する株式等を売却し、新たな株式等を購入すること)を認めているが、復活は翌年となる。このため、金融庁では、令和8年度税制改正要望において、株式等を売却した年において非課税保有限度額が復活する仕組みの導入を求めていたが、今回の税制改正では見送りとなっている。


申告分離課税の対象は金商法上の登録業者が扱う暗号資産のみ
Q

 金融商品取引法の改正が必要とのことですが、すべての暗号資産取引について、申告分離課税となる理解でよいですか。
A
 暗号資産取引に関しては、金融商品取引法の改正を前提として、課税の見直しが行われることになる。現行、個人が暗号資産取引により得た利益は原則として雑所得に該当し、給与所得等と合算する総合課税が適用されているが、株式等と同様、申告分離課税となる。
 しかし、すべての暗号資産が申告分離課税となるわけではない。金融商品取引法で登録を受けた暗号資産取引業者が取り扱う暗号資産に限られる。したがって、海外も含め、無登録業者が取り扱う暗号資産はこれまで通り総合課税の取扱いとなる。


復興特別所得税の課税期間を令和29年まで10年間延長
Q

 防衛特別所得税が令和9年1月から導入されるとのことですが、税負担はどの程度上がりますか。
A
 防衛特別所得税(仮称)は、令和7年度税制改正では適用時期が決まらなかったが、今回の改正で、令和9年1月から、所得税額に対し、税率1%を付加税として課すことが決まった。ただ、家計の負担が増加しないよう、復興特別所得税の税率を1%(2.1%→1.1%)引き下げることとしている。
 しかし、現行の復興特別所得の課税期間は令和19年12月までとされているが、この期間を10年間延長し、令和29年12月までにするとしている。

資産課税

不動産小口化商品、売買実例価額等で算定
Q

 一棟所有のマンションだけでなく、不動産小口化商品についても課税の適正化が行われるとのことです(本誌1102号4頁、1104号7頁参照)。通常の取引価額に相当する金額によって評価するとのことですが、具体的にはどのように算定することになりますか。
A
 不動産小口化商品については、セミナーなどで節税対策として喧伝されており、国税当局においても注視されてきたものだ。不動産小口化商品については、取得時期に関係なく課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価することになる。令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産の評価から適用される。
 具体的には、①出資者の照会等により、販売会社等から提示される適正な処分・買取価格等、②販売会社等が把握している適正な売買実例価額、③定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して算定することになる。①から③に該当するものがない場合には、取得価額を基に算定する。


結婚・子育て資金の一括贈与の特例も適用期限で廃止の公算大
Q

 教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、適用期限である令和8年3月31日で廃止されることになりますが(ただし、令和8年3月31日までに拠出された金銭等は引き続き同特例の適用可)、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置についても廃止という流れになるのでしょうか。
A
 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の適用期限は、令和9年3月31日とされているため、令和9年度税制改正において改廃の議論が行われることになる。同非課税措置については、令和5年度税制改正において、制度の廃止を含めて検討を行うこととされていたが、令和7年度税制改正では、「こども未来戦略」の集中取組期間(令和8年度まで)の最中にあることが勘案され、適用期限が延長された経緯がある。また、令和6年3月末時点の同非課税措置の信託の契約件数は7,787件と、教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の信託の契約件数の26万8,182件と比べてもかなり少ないだけに適用期限で廃止される可能性が高そうだ。

法人課税

大胆な設備投資に向けた税制、賃貸不動産は対象外
Q

 大胆な設備投資に向けた税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)が創設される運びとなりました。対象資産に建物も入っていますが、賃貸不動産は対象になりますか。
A
 令和8年度税制改正では、国内における高付加価値化型の設備投資を促進する観点から大胆な設備投資に向けた税制が創設される(本誌1105号4頁参照)。すべての業種を対象として、生産等に必要な設備等として、機械装置、器具備品、工具、ソフトウェアのほか、建物、構築物、建物附属設備についても対象となる。ただし、賃貸不動産は対象外となっているので留意したい。
 なお、同税制を適用するには、令和11年3月31日までの間に設備投資計画につき産業競争力強化法の「確認」を受ける必要がある。例えば、令和6年度税制改正で創設された戦略分野国内生産促進税制は産業競争力強化法の「認定」が必要であり、大胆な設備投資に向けた税制は手続きの面でも要件が緩和されており、企業にとっては朗報といえよう。


賃上げ促進税制、教育訓練費の上乗せは会計検査院の指摘により廃止
Q

 賃上げ促進税制については、大幅な見直しが行われるようですが、どのような見直しが予定されていますか。
A
 賃上げ促進税制については、ガソリンの暫定税率廃止の財源措置の1つとして大幅な見直しが行われることになる(図表1参照)。まず、大企業向けの措置は適用期限を待たずに令和8年3月31日で廃止することになった。また、中堅企業向け措置は、適用要件及び控除税率を見直した上で、適用期限通り令和9年3月31日をもって廃止されることになる。一方、中小企業向け措置は現行制度を維持した上で、令和9年度税制改正の議論において必要な見直しを検討するとしている。
 なお、全企業で対象となっていた教育訓練費に係る上乗せ措置については、令和8年3月31日で廃止される。会計検査院が令和7年1月、賃上げ促進税制では、教育訓練費増加額を上回る税額控除を受けている企業が多く散見されており、教育訓練費に係る上乗せ税額控除の仕組みは、政策目的である給与等の増加を促すために税負担の軽減を行う措置として、適切なものとなっていないおそれがあると指摘しており、これを踏まえたものとなっている。

少額減価償却資産、対象法人は従業員数400人以下に
Q

 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用期限が3年延長されるとのことですが、その他の留意点について教えてください。
A
 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例とは、30万円未満の減価償却資産を取得した場合、合計300万円までを限度に取得時に全額損金算入を認めるという制度だが、物価上昇を勘案し、「40万円未満」に引き上げられることになった(本誌1104号8頁参照)。ただし気を付けなければならないのは取得金額の合計は変更がない点だ。合計400万円ではなく、合計300万円のままとなっている。また、従業員数は、中小企業者の場合は「500人以下」とされるが、「400人以下」に引き下げられることになる。要注意だ。


パーシャルスピンオフ税制、既存事業も対象とした上で恒久化
Q

 パーシャルスピンオフ税制が見直されるとのことですが、再び既存事業も対象になるとの理解でよいでしょうか。
A
 令和5年度税制改正で創設されたパーシャルスピンオフ税制とは、元親会社に一部持分を残すパーシャルスピンオフ(株式分配に限る)について、一定の要件を満たせば再編時の譲渡損益課税を繰延べ、株主のみなし配当に対する課税を対象外とする特例措置のこと。令和6年度税制改正では要件が追加され、スタートアップ事業に限られることになったが、今回の改正では、要件である「スピンオフした会社の主要な事業として新たな事業活動を行っていること」を廃止し、再び既存の事業も対象となるよう要件を見直し、恒久化されることになった。


租特の適用企業名の公表に向けて検討へ
Q

 租税特別措置の適用企業名の公表は実現するのでしょうか。
A
 減収効果のある租税特別措置の適用を受ける法人は、確定申告書に適用額明細書を添付しなければならず、財務大臣は、毎会計年度、租税特別措置の適用状況等を記載した報告書を作成し、国会に提出することとされている。ただし、企業名についての公表は義務付けられていない。
 このため、令和8年度税制改正大綱には、日本維新の会の意向を踏まえ、租税特別措置の適用の一層の透明化を図る観点から、適用企業名の公表について具体化に向けた検討を行い、令和9年度税制改正において結論を得る旨が明記された。
 日本維新の会の梅村聡税制調査会会長(写真)は、あくまでも「公表に向けた検討」である点を強調するとともに、これまで租税特別措置全体で政策効果を図るものさしがなかったと指摘。租税特別措置の効果を検証できる環境づくりの1つが個別企業名の公表であるとしている。

消費課税

租税回避に対応、1免税事業者ごとの仕入れの上限額を1億円に
Q

 8割控除が可能となる免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置は、どのような見直しが行われましたか。
A
 8割控除が可能となる免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置は令和8年9月末までとされているが(令和8年10月1日から3年間は50%控除可)、令和8年度税制改正では、段階的に縮減する方向性は確保しつつも、インボイス制度の影響を受ける小規模事業者への配慮として最終的な適用期限を令和13年9月末まで2年延長した上で、引き下げペースや幅を見直すことになった。具体的には、令和8年10月から7割、令和10年10月から5割、令和12年10月から3割となる(図表2参照)。

 なお、免税事業者からの課税仕入れに係る経過措置については、一部で同経過措置を利用した租税回避スキームも指摘されていた。財務省によると、例えば、グローバル企業傘下の日本法人(課税)が、同傘下の外国法人(免税)から商品を仕入れる際、日本国内の倉庫に搬入されたものを仕入れることで、免税事業者である外国法人からの国内仕入として8割控除を適用し、グループ全体での消費税納付額を圧縮する事例があるとしていた。このため、1免税事業者ごとの仕入れに係る年間適用上限額は現行の10億円から1億円に引き下げられる。なお、この上限額は、取引実態等を踏まえ、今後も更なる引き下げが行われる可能性がある。


2割特例、3割特例に変更し法人は適用対象外に
Q

 いわゆる2割特例については、令和8年9月30日までの日の属する各課税期間までとされていますが、どのような見直しが行われましたか。
A
 インボイス発行事業者となった小規模事業者に関する経過措置(2割特例)については、個人事業者に限り、納税額を売上税額の3割とした上で2年間延長されることになる(令和9年・10年分申告において利用可能)。法人に関しては適用対象外となった。財務省によれば、従来から消費税の課税事業者である法人が、インボイス発行事業者の登録を受けた新たに設立した法人を取引主体に変更した上で、新たに設立した法人の申告において2割特例を利用し、結果として、取引先での仕入税額控除は維持したままグループ全体での消費税納付額を圧縮する事例があったとしていたことから適用期限で終了することになった。
 なお、新たな3割特例を利用しない個人事業者や法人については、2割特例終了後も、簡易課税制度に移行することで、2割特例と実質的に同様の計算・申告方法により確定申告書の作成が可能になる。また、簡易課税を適用する場合、現行制度では、2割特例を適用した次の年、例えば、個人事業者が令和9年から簡易課税を適用したい場合には令和9年12月末までに簡易課税制度選択届出書を提出する必要があったが、これを失念するケースがあるため、令和9年分の確定申告の際に届出書を提出すれば簡易課税を選択できるようにする措置が講じられることになる。

地方税

ふるさと納税の特例控除額の上限、給与収入1億円相当が対象
Q

 ふるさと納税について、高額寄附者に対する見直しが行われるとのことですが、具体的にはどのような見直しになりますか。
A
 ふるさと納税が、高額所得者になればなるほど有利になっているとの指摘を踏まえ、令和8年度税制改正では、個人住民税の特例控除額について、定額上限を193万円に設定することになった。令和9年の寄附分から適用される。これは給与収入1億円相当が該当し、438万円を寄附した場合の特例控除額となる(図表3参照)。なお、特例控除額の上限を超えた場合であっても、基本分の控除の適用はある。

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