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解説記事2026年03月09日 未公開裁決事例紹介 増改築が買換資産の取得(建設を含む)に該当するか(2026年3月9日号・№1114)

未公開裁決事例紹介
増改築が買換資産の取得(建設を含む)に該当するか
審判所、家屋を自己の所有とする場合に該当せず


〇増改築が「買換資産の取得(建設を含む)」(措法41条の5第7項1号)に該当するか争われた裁決(東裁(所)令6−233)。国税不服審判所は、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の趣旨、規定の文言等からすると、家屋に係る「買換資産の取得(建設を含む)」に該当するためには、家屋を自己の所有とする場合であることを要すると解されるところ、本件増改築は、これにより請求人が家屋の所有権又は共有持分を取得したというものではないから、家屋を自己の所有とする場合に当たらず、「買換資産の取得(建設を含む)」には該当しないとの判断を示した。

主  文

 審査請求を棄却する。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例を受けることができるとして更正の請求をしたところ、原処分庁が、贈与等により取得した家屋及びその増築は、買換資産の取得には該当しないことから当該特例の適用はないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実

 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 請求人は、平成15年5月2日、××××××××との間で、××××××××に所在する区分所有建物の専有部分(家屋番号:×××××××)及びその敷地利用権(以下、これらを併せて「本件マンション」という。)を35,988,000円で購入する旨の不動産売買契約を締結し、同年7月10日に本件マンションを取得した。
ロ 請求人は、平成15年7月10日、本件マンションの所在地を住民票上の住所として登録し、本件マンションを居住用として使用した。
ハ 請求人は、平成29年7月24日、××××××××××××及び×××に所在する土地の上に存する家屋(家屋番号:×××××××。以下「本件家屋」という。)の持分100分の27を請求人の母から贈与により取得し、平成30年1月11日、持分100分の65を同人から代物弁済により取得した。
  なお、本件家屋の持分100分の8は、請求人の母が所有している。
ニ 請求人は、平成29年7月24日、××××××××との間で、注文者を請求人とする本件家屋の増築工事に係る請負契約を締結し、本件家屋は、平成30年1月11日に増築された(以下、当該契約に基づく増築工事を「本件増改築工事」といい、本件増改築工事による増改築を「本件増改築」という。)。
ホ 請求人は、平成30年9月17日、××××を買主として、本件マンションを27,000,000円で売り渡す旨の売買契約を締結し、同月25日に譲渡した。
(4)審査請求に至る経緯
イ 請求人は、平成31年3月7日、平成30年分の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、本件マンションの譲渡による譲渡所得の金額の計算上、本件特例を適用して、別表の「訂正前申告」欄のとおり記載した確定申告書を提出して申告をし、その後、同月15日、本件特例を適用せずに別表の「確定申告」欄のとおり記載した確定申告書を提出して、申告をした。
ロ 請求人は、令和元年10月9日、別表の「修正申告①」欄のとおり記載した修正申告書を、また、同年12月3日、別表の「修正申告②」欄のとおり記載した修正申告書をそれぞれ提出し、修正申告をした。
ハ 請求人は、令和5年10月31日、本件マンションの譲渡による譲渡所得の金額の計算上、本件特例の適用があるとして、平成30年分の所得税等の分離長期譲渡所得の金額及び納付すべき税額を別表の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。
ニ 原処分庁は、令和6年5月28日付で、請求人は本件家屋を贈与及び代物弁済により取得していることなどから本件特例を適用できないとして、本件更正の請求に対して、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
ホ 請求人は、令和6年6月24日、本件通知処分に不服があるとして審査請求をした。

争点および主張

 本件増改築は、措置法第41条の5第7項第1号に規定する「買換資産の取得(建設を含む)」に該当するか否か。(編注:争点についての主張はのとおり)

【表】争点についての主張

請求人 原処分庁
 以下のことから、本件増改築は、措置法第41条の5第7項第1号に規定する「買換資産の取得(建設を含む)」に該当する。
(1)本件増改築工事は、母と同居するため請求人の実家である本件家屋を二世帯住宅にし、その2階を生活の本拠として利用可能とするために、①間取りの変更、②キッチン、バスルーム、洗濯設備、新たなトイレの設置、③吹き抜け部分の増床などを実施し、その対象面積は50㎡以上であることに加え、屋根の交換、外壁の全面塗装等の各種大規模な工事であり、その費用も30,000,000円超であるから、本件増改築による本件家屋の客観的・物理的、かつ、価値の増加が認識できる。
(2)税法中の用語が法文上明確に定義されていない場合、その用語は、特段の事情がない限り、言葉の通常の用法に従って解釈されるべきである。そして、買換資産の取得には、建設が含まれるところ、建築基準法第2条《用語の定義》第13号は、建築を「建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することをいう」と定義し、建設業法第2条《定義》第1項は、建設工事を「土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう」と定義している。この二つの定義からすると、建設は、土木と建築の両方を含むと解することができるから、増築は建設といえる。
(3)資産の取得費とは、所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第1項に規定するとおり、資産の取得の直接の対価及びその付随費用並びにその資産価値を増大させる費用をいうところ、本件増改築の費用は、資産価値の増大をもたらすものであるから、資産の取得費に含まれる。
 以下のことから、本件増改築は、措置法第41条の5第7項第1号に規定する「買換資産の取得(建設を含む)」に該当しない。
(1)本件増改築工事は、本件家屋の2階部分における主寝室等の間取りの変更による増築工事と認められ、上記以外の部分の工事は、設備の撤去、新設等に係る工事と認められる。
  この点、措置法第41条の5第7項第1号に規定する「買換資産」とは、国内にある当該個人の居住の用に供する一棟の家屋(床面積のうち当該個人が居住の用に供する部分の床面積が50㎡以上であるもの)であり、同号に規定する取得とは建設を含むとされているところ、本件増改築工事については、本件家屋に係る増築工事、設備の撤去、新設等に係る工事であるから、一棟の家屋の建設とまではいえない。
(2)本件増改築が買換資産の取得に該当しないことは、上記(1)で述べたとおりである。
(3)所得税法第38条第1項は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費について規定しているところ、ある費用が資産の取得費に該当することをもって、当該費用に関する行為が措置法第41条の5第7項第1号に規定する「買換資産の取得」に該当するとする規定はない。

審判所の判断

(1)法令解釈
イ 本件特例が、居住用財産の買換えをした場合の譲渡損失を他の所得金額から控除する損益通算を特例として認めているのは、住宅購入後に、住宅価格の値下がりにより住宅の含み損を抱えている者について、その後の生活状況に応じた住替えを支援し、居住水準の向上を促進するとともに、住宅・不動産の流動化を図り、住宅投資の促進による住宅市場の活性化を通じで経済対策にも資することを目的とする趣旨であり、そのための措置として、居住用財産の買換えをした場合につき、その金額の計算上生じた損失を他の所得金額から控除することによって、所得税の負担を軽減して新たな居住用財産の取得を容易にしているものと解される。
ロ 上記イの本件特例の趣旨、措置法第41条の5第7項第1号の文言等からすると、同号に規定する家屋に係る買換資産の取得(建設を含む)」に該当するためには、当該家屋を自己の所有とする場合であることを要すると解される。
(2)認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ ××××が、本件家屋に実施した本件増改築工事のうち主な内容は、次のとおりである。
(イ)1階部分について
  玄関ホール改装、便所位置変更、2階増築・水廻り新設に伴う天井他工事など
(ロ)2階部分について
  主寝室等増築、間取り変更、台所・風呂・便所の新設など
(ハ)外部部分について
  屋根葺替、雨樋交換、外壁張替など
ロ 上記イの本件増改築により、本件家屋の1階の床面積に変更はなかったものの、2階の床面積は67.49㎡から93.98㎡に増加した。
(3)当てはめ
 本件増改築工事は、上記(2)のとおり、本件家屋の1階部分については改装や便所の位置変更などでその床面積に変更はなく、2階部分については主寝室を新たに設けるなどその床面積を増加させる内容のものである。
 そして、上記(1)のロのとおり、家屋に係る「買換資産の取得(建設を含む)」に該当するためには、当該家屋を自己の所有とする場合であることを要すると解されるところ、本件増改築は、これにより請求人が本件家屋の所有権又は共有持分を取得したというものではないから、本件家屋を自己の所有とする場合に当たらない。
 したがって、本件増改築は、措置法第41条の5第7項第1号に規定する「買換資産の取得(建設を含む)」には該当しない。
(4)請求人の主張について
イ 請求人は、上記のとおり、本件増改築工事は、本件家屋を二世帯住宅にし、その2階を請求人の生活の本拠として利用可能とするためのものであり、その費用も30,000,000円超であって、本件増改築による本件家屋の客観的・物理的、かつ、価値の増加が認識できることから、買換資産の取得に該当する旨主張する。
  しかしながら、本件増改築が「買換資産の取得(建設を含む)」に該当しないことは、上記(3)のとおりであって、本件増改築工事の目的や投下した費用の額によってその判断が左右されるものではない。
  したがって、請求人の主張には理由がない。
ロ また、請求人は、上記のとおり、建築基準法に規定する建築の定義や建設業法に規定する建設工事の定義から、増改築は建設に含まれるため、本件増改築は買換資産の建設に該当する旨主張する。
  しかしながら、本件増改築が「買換資産の取得(建設を含む)」に該当しないことは上記(3)で既に述べたとおりであって、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とする建設業法における「建設工事」の定義等によってその判断が左右されるものではない。
  したがって、請求人の主張には理由がない。
ハ さらに、請求人は、上記のとおり、本件増改築の費用は資産価値の増大をもたらすものであり、所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得費」に含まれることから、本件増改築は買換資産の取得に該当する旨主張する。
  しかしながら、措置法第41条の5第7項第1号に規定する「買換資産の取得」と所得税法第38条第1項に規定する「資産の取得費」とでは、そもそも規定する法令自体が異なっている上、用語の意義も別のものであるから、本件増改築の費用が同項に規定する「資産の取得費」に該当するとしても、本件増改築が買換資産の敢得に該当することの根拠となるものではない。
  したがって、請求人の主張には理由がない。
(5)本件通知処分の適法性について
 上記(3)のとおり、本件増改築は、措置法第41条の5第7項第1号に規定する「買換資産の取得(建設を含む)」には該当せず、また、請求人は、上記のとおり、本件家屋を贈与及び代物弁済により取得しており、贈与及び代物弁済は買換資産の取得から除かれていることから、同号に規定する「買換資産の取得」をしたとは認められない。
 そして、本件通知処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に堤出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
 したがって、請求人は、本件マンションの譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上、本件特例を適用することはできないことから、本件更正の請求に対し更正をすべき理由がないとしてされた本件通知処分は適法である。
(6)結論
 よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり裁決する。

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