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解説記事2026年04月20日 実務解説 有価証券報告書 作成上の留意点(2026年3月期提出用)(2026年4月20日号・№1119)

実務解説
有価証券報告書 作成上の留意点(2026年3月期提出用)
 企業会計基準委員会 専門研究員 浅野匠彦

《まとめ》
・「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正により、「従業員の状況等」や総会前提出する場合の記載事項について開示の新設及び変更が行われている。また、サステナビリティ開示関連の改正の原則的な適用時期は来年度以降であり、早期適用しない場合は従前の規定に基づき開示をすることになる。
・2025年3月期の「重要な契約等」の記載事項に関する経過措置は2026年3月期には適用できないことに留意が必要。
・2026年3月期において「リースに関する会計基準」等や改正「金融商品会計に関する実務指針」を早期適用することができる。

Ⅰ はじめに

 本稿は、2026年3月期の有価証券報告書における作成上の留意点についてまとめたものであり、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という。)の改正に伴う留意点、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)から改正・公表された企業会計基準等に関する留意点を中心に解説する。
 なお、文中において意見にわたる部分は私見であることをあらかじめ申し添えておく。

Ⅱ 開示府令の改正を踏まえた有報の開示に係る留意点

(1)概要
 2026年2月20日に開示府令が改正され、一般に公正妥当と認められるサステナビリティ情報の作成及び開示に関する基準(以下「サステナビリティ開示基準」という。)に従った開示のための規定の整備、人的資本開示に関する制度見直し及び定時株主総会前に提出される有価証券報告書の記載事項等に係る改正が行われた。
 このうち、サステナビリティ開示基準に従った開示のための規定の整備に係る改正事項は3月決算会社の場合、2027年3月期又は2028年3月期が原則的な適用時期となり、2026年3月期は早期適用が可能となっている。
 一方で、人的資本開示に関する制度見直しや株主総会前開示に関する事項の改正は2026年3月期の有価証券報告書より適用される。
(2)人的資本開示に関する制度見直し
 2025年6月に公表された「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクションプログラム2025」では、「人的資本への投資に関する開示を充実させる観点から、有価証券報告書における従業員給与・報酬に関する記載事項を集約するとともに、新たに企業戦略と関連付けた人材戦略や従業員給与・報酬の決定に関する方針、従業員給与の平均額の前年比増減率等の開示を求める」とされ、これに対応して開示府令の改正が行われた。従前は従業員の状況を「第1 【企業の概況】」に記載することとされていたが、2026年3月期の有価証券報告書より「第4 【提出会社の状況】」において「5 【従業員の状況等】」として記載することとされた(開示府令第三号様式が準用する第二号様式記載上の注意(以下「第二号様式記載上の注意」という。)(58−2)及び(58−3))。
 記載事例1に示す「(1) 【人材戦略に関する基本方針等】」では、連結会社の経営方針・経営戦略等に関連付けた連結会社の人材戦略並びに連結会社の従業員の給与その他の給付の額及び内容の決定に関する方針を記載することとされた(第二号様式記載上の注意(58−2)a及びb)。なお、他の箇所においてこれらの事項の全部又は一部を記載した場合には、その旨を記載することによって、当該他の箇所において記載した事項の記載を省略することができるとされている(第二号様式記載上の注意(58−2)c)。

 これらのうち、従業員の給与その他の給付の額及び内容の決定に関する方針については、連結会社ではなく、提出会社(提出会社が子会社の経営管理を行うことを主たる業務とする会社である場合にあっては、提出会社及び最大人員会社)に関わるものに限ることができるとされている。ここで、最大人員会社とは、連結子会社(外国会社を除く。)のうち従業員数が最も多い会社をいい、さらに、その会社の従業員数が連結会社の従業員数の過半数を超えない場合には、従業員数が最も多い会社と2番目に多い会社をいう(第二号様式記載上の注意(58−2)b)。
 「(2) 【従業員の状況】」に記載することとされている事項は従前の「第1 【企業の概況】」の「5. 【従業員の状況】」の記載内容を概ね引き継いでいるが、提出会社の「平均年間給与の対前事業年度増減率」を2026年3月期の有価証券報告書より新たに記載することとされた(第二号様式記載上の注意(58−3)b)。また、2026年3月期の有価証券報告書より提出会社が子会社の経営管理を行うことを主たる業務とする会社の場合には、連結会社の状況及び提出会社の状況に加えて、最大人員会社の状況も記載することとされた(第二号様式記載上の注意(58−3)d)。記載事例2には、提出会社が子会社の経営管理を行うことを主たる業務とする会社であって、提出会社の連結子会社(外国会社を除く。)のうち従業員数が最も多い会社の従業員数が連結会社の従業員の過半数を超えない場合の開示例を示しており、会社ごとに提出会社の状況と同様に記載している。なお、最大人員会社について従業員数をセグメント情報に関連付けた記載は求められていない。

 開示府令の改正により、使用人のみを対象としたストックオプション制度及び役員・従業員株式所有制度を導入している場合に、「第4 【提出会社の状況】」の「1 【株式等の状況】」に代えて「5 【従業員の状況等】」の「(2) 【従業員の状況】」に記載することができるとされた(第二号様式記載上の注意(58−3)g)。
 使用人等のみに対して新株予約権を付与する場合、第二号様式記載上の注意(39)ストックオプション制度の内容aからdまでの事項を「5 【従業員の状況等】」に記載しているときは、「1 【株式等の状況】」の「(2) 【新株予約権等の状況】」の「① 【ストックオプション制度の内容】」において、その旨を記載する(記載事例3)ことにより記載を省略することができるとされている(第二号様式記載上の注意(39)f)。また、使用人その他の従業員のみを対象とした役員・従業員株式所有制度を導入している場合も同様に、第二号様式記載上の注意(46)役員・従業員株式所有制度の内容(a)から(c)までの事項を「5 【従業員の状況等】」の「(2) 【従業員の状況】」に記載しているときは、「1 【株式等の状況】」の「(8) 【役員・従業員株式所有制度の内容】」において、その旨を記載する(記載事例4)ことにより、記載を省略することができるとされている(第二号様式記載上の注意(46)c)。

 他方、使用人等のみに対して新株予約権を付与する場合又は使用人その他の従業員のみを対象とした役員・従業員株式所有制度を導入している場合に、従前のとおり「1 【株式等の状況】」の「(2) 【新株予約権等の状況】」の「①【ストックオプション制度の内容】」又は「1 【株式等の状況】」の「(8) 【役員・従業員株式所有制度の内容】」において記載することも可能である。ただし、「5 【従業員の状況等】」において記載を省略するためには、「1 【株式等の状況】」の「(2) 【新株予約権等の状況】」の「①【ストックオプション制度の内容】」に記載している旨(記載事例5)又は「1 【株式等の状況】」の「(8) 【役員・従業員株式所有制度の内容】」に記載している旨(記載事例6)を「5 【従業員の状況等】」の「(2) 【従業員の状況】」に記載することとされていることにご留意いただきたい(第二号様式記載上の注意(58−3)g)。

(3)株主総会前開示に関する事項
 開示負担の軽減により株主総会前の提出を促進する観点から、第三号様式記載上の注意(以下「記載上の注意」という。)(1)gが改正され、2026年3月期の有価証券報告書より、定時株主総会前に提出する場合に定時株主総会又は取締役会の決議事項となっている旨及びその概要を記載することとされている項目が、自己株式の取得(会社法第156条第1項の規定による株式の取得)及び剰余金の配当(会社法第453条の規定による剰余金の配当)に限られることとされた。
(4)サステナビリティ開示基準に従った開示のための規定の整備
 サステナビリティ開示基準に従った開示が段階的に義務付けられることに伴い、開示府令の所要の改正が行われた。これらの改正項目の原則的な適用時期は、3月決算会社の場合、2027年3月期又は2028年3月期であり、2026年3月期の有価証券報告書においては開示府令上従前の例によるとされている(令和8年内閣府令第5号附則第2条第1項、第7項及び第8項)。改正内容の概要は後述するが、第二号様式記載上の注意(25)h及び(30)並びに記載上の注意(1)iが改正された項目であり、早期適用をしない場合にはこれらの定めについては改正前の定めに従うこととなるため、有価証券報告書を作成するにあたって最新の規定を参照する際にはご留意いただきたい。
 第二号様式記載上の注意(25)hでは、新たに「第1 【企業の概況】」の「1 【主要な経営指標等の推移】」において時価総額を前5事業年度及び当事業年度の末日の時価総額を注記するとともに平均時価総額を注記することとされた。記載事例7では「提出会社の経営指標等」の表に注として、各事業年度の末日の時価総額を表で記載し、その下に平均時価総額を注記している。注記する平均時価総額は表に記載した6つの数値の平均ではなく、開示府令第19条の9第3項の規定に基づき算定した数値であることにご留意いただきたい。また、金額単位は記載事例7の例に限られるものではなく、投資者の混乱を招かないことに注意して適切な金額単位を用いることが考えられる。

 第二号様式記載上の注意(30)サステナビリティに関する考え方及び取組は、従前の第二号様式記載上の注意(30−2)の改正後の規定である。第二号様式記載上の注意(30)aではサステナビリティ開示基準に従ってサステナビリティ情報を記載する際の規定が新設された。第二号様式記載上の注意(30)dではスコープ3温室効果ガス排出に関する定量情報を記載する際の規定が新設され、また、「企業内容等の開示に関する留意事項について」(以下「企業内容等開示ガイドラインという。)5−16−2の改正により当該情報がセーフハーバー・ルールの適用対象とされた。第二号様式記載上の注意(30)b及びcは、規定の文言が従前の第二号様式記載上の注意(30−2)から変更されているが、定めの内容は概ね従前と同様であると考えられる。
 なお、サステナビリティ開示基準に従ってサステナビリティ情報を記載する場合には、財務会計基準機構Webページに掲載している、有価証券報告書の作成要領の分冊「有価証券報告書の作成要領(サステナビリティ関連財務開示編)」をご参照いただきたい。
 将来に関する事項を記載する場合について、記載上の注意(1)i及び企業内容等開示ガイドライン5−16−2が改正された。記載上の注意(1)iでは、将来に関する事項は当連結会計年度末(連結財務諸表を作成していない場合にあっては、当事業年度末)現在において判断したものである旨を記載することとされていたが、推論過程等や社内の開示手続を新たに記載することとされた。早期適用しない場合には記載上の注意としてこれらの記載は求められないが、改正前の企業内容等開示ガイドライン5−16−2に示されていた内容を参照して従前のとおり記載を行うこととなると考えられる。
(5)その他の事項
 「重要な契約等」のうち「ローン契約と社債に付される財務上の特約」の開示について、提出会社が連結子会社との間又は連結子会社が提出会社若しくは他の連結子会社との間で締結している金銭消費貸借契約、及び提出会社が連結子会社に対して又は連結子会社が提出会社若しくは他の連結子会社に対して発行している社債は記載対象から除かれることとされた(第二号様式記載上の注意(33)h)。

Ⅲ 「重要な契約等」の開示に関する初年度経過措置を適用していた場合の留意点

 「企業・株主間のガバナンスに関する合意」、「企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」及び「ローン契約と社債に付される財務上の特約」の開示について、2025年3月期の有価証券報告書において、記載を省略する旨を記載することによってその事項の記載に代えることができるとされた経過措置(令和5年内閣府令第81号附則第3条第4項)を適用していた場合、2026年3月期の有価証券報告書では当該経過措置は適用されない。そのため、当該経過措置の対象としていた契約に係る事項の記載を省略することができない点にご留意いただきたい。

Ⅳ 企業会計基準等の改正・公表に係る留意点

1 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等に係る留意点
(1)概要

 ASBJは、2024年9月13日に、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)等を公表した。
 適用時期は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用とされているが、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からリース会計基準を適用することができる。その詳細は、村瀬進吾、福江東晶「企業会計基準第34号『リースに関する会計基準』等の概要」(No.1050、No.1051)をご参照いただきたい。
(2)主要な経営指標等の推移
 リース会計基準等においては、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下「リース適用指針」という。)第118項ただし書きにより、適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する経過措置が認められている。記載事例8の上段は、経過措置を適用せずに過去の期間のすべてに遡及適用を行う場合、下段は、経過的な取扱いを行った場合の記載事例である。

(3)連結貸借対照表
 リース会計基準等を早期適用する場合、借手は原則としてすべてのリースについて使用権資産及びリース負債を計上することになる。有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産いずれも、使用権資産を区分して掲記しなければならないとされている。また、リース負債については、流動負債、固定負債とも区分して掲記しなければならないとされている。
 これらの借手の表示科目のうち、使用権資産については、使用権資産として区分する他に、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に連結貸借対照表において表示するであろう科目に含める方法、例えば、有形固定資産であれば建物及び構築物といった科目に含めて表示する方法も認められ、リース負債については、区分して表示するほか、リース負債が含まれる科目及び金額を注記する方法も認められている。
 また、借手については、リース適用指針第118項ただし書きの経過措置を適用する借手は、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないとされている。
 一方、貸手について「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第23条では、破産更生債権等で1年内に回収されないことが明らかなものを除いて通常の取引に基づいて発生した「リース債権」と「リース投資資産」は、区分して掲記しなければならないとされている。ただし、それぞれが含まれる科目及び金額を注記する方法、「リース債権」の重要性に応じ両者を合算して表示又は注記する方法も認められている。
 また、貸手については、借手の経過措置と同様の定めはないことから、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行うこととなる。
(4)連結損益計算書
 借手のリースの費用配分について、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する、単一の会計処理モデルが採用されている。リース負債に係る利息費用については、連結損益計算書において区分して掲記するか、当該費用が含まれる科目及び金額を注記することとされている。
 一方、貸手においては、基本的に従来の会計処理を踏襲しており、ファイナンス・リース及びオペレーティング・リースの区分が維持されている。他方、開示項目については改正がなされており、(8)注記事項 連結損益計算書関係をご参照いただきたい。
 また、(3)連結貸借対照表にも記載のとおり、借手は、リース適用指針第118項ただし書きの経過措置を適用する場合、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないとされている一方、貸手については同様の経過措置がないため、新たな表示方法に従い組替えが求められることになる点にはご留意いただきたい。
(5)会計方針に関する事項
 重要な会計方針として注記する内容については、原則として、企業会計原則注解(注1−2)及び企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第4−4項に照らして企業が判断することになる。
 記載事例9ではリースに係る収益及び費用の計上基準の一例として、貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれる場合の記載事例を示している。

 この他、重要な会計方針として記載するものがないかについて各社の状況に応じて検討が必要な点にはご留意いただきたい。
(6)会計方針の変更
 記載事例10は「リース会計基準」等を過去の期間のすべてに遡及適用する場合の注記例である。また、連結貸借対照表における使用権資産の表示については、対応する原資産の表示区分において使用権資産として区分表示し、貸手のリースは「製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース」である前提としている。

 この記載事例は、会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更に関する注記であり、連結財務諸表規則第14条の2の規定に基づいて注記を行っている。冒頭に該当する会計基準等の名称として「リースに関する会計基準」等を適用していることを記載した後、点線下線を引いて空欄としているところにそれぞれ、借手及び貸手ごとに会計方針の変更の具体的な内容を記載することを想定している。この記載に続いて、会計方針の変更の遡及適用を行った旨を記載し、「この結果」から始まる段落で、連結財務諸表の主な科目に対する前連結会計年度における影響額を記載している。この記載事例では、前連結会計年度に係る1株当たり情報に対する影響額については、1株当たり情報の注記の箇所に記載することを想定している。
 記載事例11は、リース会計基準等をリース適用指針第118項の定める経過的な取扱いに従って適用した場合の記載事例を示している。適用した経過措置について、記載事例の文中、前提条件に基づいて、(1)に借手及び貸手の共通の事項を、(2)に借手についての事項を、(3)に貸手についての事項を記載している。

 また、影響額の記載について、借手は、リース適用指針第118項の定める経過的な取扱いに従った場合、財務諸表の主な科目や1株当たり情報に対する実務上算定可能な影響額に代えて、適用初年度の期首の連結貸借対照表に計上されているリース負債に適用している借手の追加借入利子率の加重平均と、この追加借入利子率で割り引いた適用初年度の前連結会計年度の末日において開示したオペレーティング・リースの未経過リース料と適用初年度の期首の連結貸借対照表に計上されているリース負債との差額の説明を注記することとされており、記載事例11の(2)借手の最後の段落で当該事項を記載している。なお、連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表においては、さらに当該事項に代えて適用初年度の期首の貸借対照表に計上されているリース負債の金額を注記することができるとされている(「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(令和7年内閣府令第75号)附則第3条第4項及び「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則及び連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(令和7年内閣府令第20号)附則第2条第4項)。
 一方、(3)貸手については適用した経過措置を記載し、「この結果」から始まる段落以降では、財務諸表の主な科目と一株当たり情報に対する実務上算定可能な影響額を記載している。
(7)注記事項 連結貸借対照表関係
 記載事例12は、借手が連結貸借対照表においてリース負債を区分して表示せず、リース負債が含まれる科目及び金額を注記する例である。借手については、(3)連結貸借対照表にも記載のとおり、リース適用指針第118項ただし書きの経過措置を適用する場合、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないとされているため、記載事例では比較情報を記載していない。他方、貸手については適用初年度の比較情報について組み替えて記載することが必要になるため、リース債権及びリース投資資産が含まれる科目及び金額を注記する場合にはご留意いただきたい。

(8)注記事項 連結損益計算書関係
 記載事例13は、連結損益計算書において区分して掲記しない場合には注記することとされている項目を注記により開示する場合の記載事例である。1点目は、借手がリース負債に係る利息費用の含まれる科目及び金額を注記した場合の記載事例、2点目以降が、貸手がリースに係る収益及び損益について注記する場合の記載事例である。貸手については、前述のとおり、適用初年度において経過措置を適用した場合であっても比較情報を記載することになる。

(9)注記事項 連結キャッシュ・フロー計算書関係
 リース会計基準等の適用に伴い、連結キャッシュ・フロー計算書関係に関する注記事項における重要な非資金取引の内容として使用権資産の取得が追加されている。
(10)注記事項 リース関係
 ① 借手及び貸手

 リース関係の注記について、借手は、会計方針に関する情報、リース特有の取引に関する情報及び当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報を記載することとされている。また、貸手は、リース特有の取引に関する情報及び当期及び翌期以降のリースの金額を記載することとされている。
 リースに関する注記の注記事項のうち、重要性の乏しいものについては注記を省略することができるとされ、この重要性の判断については、開示目的に照らして判断するとされている。さらに、開示目的を達成するために必要な情報は、リースの類型等により異なるものであるため、リースに関する注記の注記事項以外であっても、必要な情報は、リース特有の取引に関する情報として注記することとされている。
 以下では、借手及び貸手の記載事例に共通して、リース会計基準等の適用にあたり、リース適用指針第137項の経過措置を適用し、比較情報については、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」等に基づく注記を行うことを前提として、②及び③で具体的な記載事例について解説する。
 なお、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、借手及び貸手とも、リースに関する注記として掲げられている項目のうち、「リース特有の取引に関する情報」及び「当事業年度及び翌事業年度以降のリースの金額を理解するための情報」については、注記をしないことができるとされている。また、借手は、リースに関する注記として掲げられている項目のうち、「会計方針に関する情報」については、連結財務諸表において同一の内容が記載される場合には、その旨を記載し、当該事項の記載を省略することができるとされている。
 ② 借手側
 まず、借手の会計方針に関する情報について、連結財務諸表規則第15条の3が準用する「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「財務諸表等規則」という。)第8条の6第1項第1号イ(1)から(3)については、借手がこれらの会計処理を選択した場合に注記することとされているため、記載事例14の1.会計方針に関する情報では、第1段落で(1)、第2段落で(3)を選択している場合の例を記載している。

 次に、記載事例14における2.のリース特有の情報では、財務諸表等規則第8条の6第1項第1号ロ(1)に定められている(i)使用権資産の科目ごとの帳簿価額、(iii)非償却とした借地権の設定に係る権利金等の残高、同号ロ(2)に定められている(i)短期リース及び(ii)借手の変動リース料に係る費用の発生額が含まれる科目及びその発生額を記載している。
 また、記載事例14の3.当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報では、財務諸表等規則第8条の6第1項第1号ハの(1)から(3)に定められている少額リースに係るものを除くリースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額、使用権資産の増加額及び使用権資産の科目ごとの減価償却の金額を記載している。
 ③ 貸手側
 一方、貸手側のリースについて、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースそれぞれにリース特有の取引に関する情報と当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報について注記事項が定められているため、記載事例でも分けて記載している。
 まず、記載事例15の1.ファイナンス・リースの(1)リース特有の取引に関する情報では、①リース債権の内訳、②リース投資資産の内訳について、リース料債権部分、受取利息相当額といった、財務諸表等規則第8条の6第1項第2号イ(1)に定められている構成要素の内訳を示している。次に、同号イ(2)により連結損益計算書で区分していない場合に注記すると定められているリース債権及びリース投資資産に含まれない将来の業績等により変動する使用料に係る収益が含まれる科目及び当該収益の金額を記載している。

 記載事例15の1.ファイナンス・リースの(2)当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報については、財務諸表等規則第8条の6第1項第2号ロに注記する事項が定められている。この定めに従って、リース債権とリース投資資産の残高の重要な変動について①に記載しており、②リース債権とリース投資資産のリース料債権部分の回収予定額の記載事例は、リース債権とリース投資資産をそれぞれ区別して記載する場合の例である。なお、①のリース債権とリース投資資産の残高の重要な変動については、記載事例15では文章に定量的情報が含まれているが、必ずしも定量的情報を含める必要はないとされている。
 また、記載事例15の2.オペレーティング・リースでは、リース特有の取引に関する情報として、財務諸表等規則第8条の6第1項第3号イに定められている貸手のリース料に含めていない将来の業績等により変動する使用料に係る収益が含まれる科目及び当該収益の金額を、当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報として、同号ロに定められている貸手のリース料の連結決算日後の受取予定額を記載している。

2 改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」
(1)概要

 上場企業等が保有するベンチャーキャピタルファンドの出資持分に係る会計上の取扱いの見直しを目的として検討が行われ、ASBJより2025年3月11日に改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)が公表された。適用時期は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用とされているが、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる。その詳細は、山本智恵「改正移管指針第9号『金融商品会計に関する実務指針』の概要」(No.1072)を参照いただきたい。
(2)会計方針の変更等
 改正後の金融商品会計実務指針を早期適用する場合には、会計方針の変更において注記することになると考えられる。
(3)注記事項 金融商品関係
 改正後の金融商品会計実務指針を早期適用し、組合その他これに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。以下「組合等」という。)の構成資産に含まれる全ての市場価格のない株式について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする取扱いを行っている場合には、連結貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の注記(企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」第24−16項)に併せて、その旨、当該取扱いを行う組合等の選択に関する方針及び当該取扱いを行っている組合等への出資の連結貸借対照表計上額の合計額を注記することが必要となる(連結財務諸表規則第15条の5の2第3項)。

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