解説記事2026年05月25日 SCOPE 売上先還流資金は架空売上、交付現金は交際費等に該当せず(2026年5月25日号・№1123)
地裁、益金かつ交際費とした課税処分を取消し
売上先還流資金は架空売上、交付現金は交際費等に該当せず
納税者である原告会社から売上先への資金還流をめぐり、原告会社が架空売上と主張するものを含めた全額が売上として益金に算入されるか否かという点に加えて、原告会社が売上先の出張所の所長に交付した現金が交際費等に該当するか否かが争われていた税務訴訟で東京地裁は令和8年4月17日、課税処分を取り消す判決を下した。裁判所は、原告会社の代表者の供述は信用することができ、売上高のうち架空外注費相当額は架空の売上であると認められるから益金に算入されないと判断した。また、所長に交付された現金は交際費等であるとした課税当局の主張に対して裁判所は、架空外注費相当額は売上先に対する売上高の3割から6割を占めており、原告会社が仕事受注のために自らの出捐で所長に贈与する金額としては高額すぎるから、採用することができないという判断を示した。
売上先の出張所の所長に架空外注費相当額の現金を還流
本件における不正取引(現金の還流)の概要は図のようなものであった。土木工事業等を営む原告会社は、化学工業用プラントの設計施工請負等を営む売上先から土木工事を単発的に受注していた。売上先の出張所の所長から簿外資金を捻出するための協力を依頼された原告会社の代表者は、所長の依頼を受け入れれば売上先から継続的に工事を受注することが期待でき、依頼を受け入れても原告会社に金銭的な負担は生じないと考えて所長の依頼を受け入れることを決めた。

所長は、原告会社の代表者に口頭やFAXにより原告会社が発行する請求書に記載する工事名称等や売上先に返金する金額および時期を指示していた。そして原告会社は、所長の指示により水増しされた請求書に基づき支払われた金額を売上高に計上する一方で、所長が指示した返礼額及び時期に従って架空外注費相当額の現金を所長に交付していた。
売上先への税務調査で不正取引が発覚
その後、売上先に対する税務調査が開始された。国税局の調査担当職員は、所長が複数の外注先に工事代金を水増しした請求書を提出させて外注費を水増しして支払い、水増しして支払った金額を外注先から現金で受け取っていたことなどを売上先に対して説明した。所長は、原告会社の代表者に税務署が来たため関係書類をすべて破棄するよう指示。原告会社の代表者は、関係書類を破棄した。なお、所長は税務調査開始後に死亡している。売上先は、税務調査の結果を踏まえ所長が7年間にわたる不正取引により約5億円を受け取っていたとして、同金額を雑収入として計上し、同額を未収金として計上して修正申告をした。
税務調査は原告会社にも及んだ。原告会社は、確定申告で計上した売上の一部は架空であるから益金に算入されず、外注費の一部は架空の外注加工費を計上したものであるから損金に算入されない旨の修正申告をした。
これに対し税務署は、架空外注費の損金不算入処理を是認する一方で、原告会社が架空の売上であると主張するものも含めた全額が売上として益金に算入されるほか、売上先の所長に交付した現金は交際費等(措法61の4④)に該当して損金に算入されないなどとして課税処分を行った。
これを不服とした原告会社は、売上高のうち架空外注費相当額は架空の売上であると主張して課税処分の取消しを求めるに至った。一方の課税当局は、原告会社が保有する請求書および売上先が保存する注文書等では売上高の全額が代金額として記載されており、これらの書類に記載された工事名及び金額が一致していることなどを指摘し、原告会社と売上先との間で売上高の全額を請負代金とする請負契約が締結されたと主張していた。
売上高のうち架空外注費相当額は架空売上
裁判所は、所長が原告会社に売上高の全額が代金額であるかのように装って請求書を作成するように指示したとすれば、売上先でも同様に仮装するために売上高の全額を代金額として書類を作成するのは自然であるから課税当局が主張する事実は原告会社の主張とも整合すると指摘したうえで、課税当局が主張する事実をもって原告会社と売上先との間で売上高の全額を請負代金とする請負契約が締結されたと認めることはできないという判断を示した。また、裁判所は、売上高のうち架空外注費相当額は架空売上である旨の原告代表者の供述は売上先や原告会社が作成保存する書類等の事実と整合することなどを指摘。さらに、原告会社の代表者が所長に交付した現金を交際費等とする課税当局の主張に対して裁判所は、架空外注費相当額は平成31年3月期4,300万円、令和2年3月期3,200万円、令和3年3月期8,900万円に上り、売上先に対する売上高の約3割から6割を占めており、原告会社が売上先からの仕事の受注のために自らの出捐で所長に贈与する金額としては高額にすぎるから、採用することができないという判断を示した。
以上を踏まえ裁判所は、原告会社の代表者の供述は信用することができ、売上高のうち架空外注費相当額は架空の売上であると認められ、原告会社と売上先との間で売上高の全額を請負代金とする請負契約が締結された事実は認められないと判断したうえで、売上高のうち架空外注費相当額は益金に算入されないと結論付けた。
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