解説記事2026年06月29日 税制改正解説 令和8年度における納税環境整備に関する改正について(下)(2026年6月29日号・№1128)
税制改正解説
令和8年度における納税環境整備に関する改正について(下)
宮田まどか
二 特定電子移転財産権の徴収手続の整備
1 改正の背景等
滞納者が暗号資産交換業者を介さず自ら管理している暗号資産については、無体財産権等に該当し、規定上は差押手続が設けられていたが(徴法72等)、実務上、秘密鍵を保有している滞納者の協力等がない限り、実効的に差押えを行うことができないことが課題とされていた。
そのため、税務調査により申告漏れを把握し、追徴課税を行ったとしても、滞納者が自ら管理する暗号資産について、差押えを行うことができず、滞納が継続する事案が発生しており、普及途上である自己管理する方法で保有されている暗号資産の実効的な徴収手続について、早急に整備することが求められていた。
こうした課題については、政府税制調査会の下に、外部有識者も交えて設置された「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合(第4回)」(令和7年11月13日)においても、具体的な事例が紹介された上で説明されている。
また、令和7年5月に成立した「情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和7年法律第39号)」による「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」の改正により、暗号資産等の電子情報処理組織を用いて移転する一定の財産に係る権利(特定電子移転財産権)についての没収の裁判の執行及び没収保全の手続が整備され、国税に先行して、自己管理する方法で保有されている暗号資産に対する対応がされた。
今回の改正においては、こうした課題を踏まえ、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」による没収の裁判の執行及び没収保全の手続の整備を参考として、暗号資産等の電子情報処理組織を用いて移転する一定の財産に係る権利(特定電子移転財産権)の徴収手続を整備することとされた。
以下では、この改正の内容について、説明することとする。
2 改正の内容
(1)特定電子移転財産権の差押手続
無体財産権等のうち特許権、著作権その他第三債務者等がない財産に係る権利(権利の移転について登記を要するものを除く。)であって電子情報処理組織を用いて移転するもの(以下「特定電子移転財産権」という。)の差押えは、特定電子移転財産権を徴収職員の管理に移す方法により行うこととされた(徴法72の2①本文)。ただし、当該方法によることが困難であるときは、特定電子移転財産権の権利者(名義人が異なる場合は、名義人を含む。)であってこれを他の者の管理に移すことができるものに命じて、特定電子移転財産権を徴収職員の管理に移させる方法により行うことができることとされた(徴法72の2①ただし書)。
なお、上記の差押えの効力は、特定電子移転財産権が徴収職員の管理に移され、又は上記の命令の告知がされた時に生ずることとされている(徴法72の2②)。
これは、例えば、暗号資産交換業者を介さず自ら管理している暗号資産は、特定電子移転財産権に該当するが、その暗号資産については、物体性がない財産的価値であって、債務者やこれに準ずる者がおらず、その移転について登記・登録の制度もないため、そのような形態で保有される暗号資産等の差押えを確実に執行・実現するためには、差押えを執行する徴収職員が、これを権利者の元からその者の管理が及ばないウォレットなどに移すか、それをすることができる者をしてそのようなウォレットに対象となる暗号資産を移させるほかないと考えられることを踏まえ、上記の差押手続が定められたものである。
また、正当な理由がなく、上記の命令に違反したときは、その違反行為をした者は、3年以下の拘禁刑若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとされた(徴法187の2)。なお、この罰則は両罰規定の対象とされている(徴法190)。
これは、徴収職員の管理に移す方法により差押えを行うことができないときは、暗号資産に用いられている暗号理論が技術的に解読不能な強固なものである以上、これを把握している者に行わせる以外には、当該移転を実現する方法がないといった点を踏まえ、上記の命令は、その不履行に対して罰則を設けることによりその威嚇力によって権利者に行為を強制することで制度の実効性を担保することとされたものである。
(2)特定電子移転財産権の差押解除手続
差押えの解除は、その旨を滞納者に通知することによって行うこととされている。ただし、債権又は第三債務者等のある無体財産権等の差押えの解除は、その旨を第三債務者等に通知することによって行うこととされている(徴法80①)。
上記(1)のとおり、特定電子移転財産権の差押えは、当該特定電子移転財産権を滞納者から徴収職員の管理に移す方法等により行うところであるが(徴法72の2①)、特定電子移転財産権の差押えを解除したときは、その特定電子移転財産権を、滞納者の管理に移すことを行わなければならないこととされた(徴法80②三)。
これは、他の財産と同様、特定電子移転財産権の差押えの解除は、その旨を滞納者に通知することによって行われるが(徴法80①)、徴収職員の管理から滞納者の管理に移すことを行わない限り、取引関係に立つ第三者は差押えの状態が継続しているものと認めざるを得ず、差押解除の目的を果たすことができないことが考慮されたものである。
(3)換価した特定電子移転財産権の権利移転手続
差押財産は、換価しなければならないこととされており(徴法89①)、税務署長は、差押財産を換価するときは、これを公売に付さなければならないこととされている(徴法94①)。
また、次のいずれかに該当するときは、税務署長は、差押財産を、公売に代えて、随意契約により売却することができることとされている(徴法109①)。
① 法令の規定により、公売財産を買い受けることができる者が一人であるとき、その財産の最高価額が定められている場合において、その価額により売却するとき、その他公売に付することが公益上適当でないと認められるとき。
② 取引所の相場がある財産をその日の相場で売却するとき。
③ 公売に付しても入札又は競り売りに係る買受けの申込み(以下「入札等」という。)がないとき、入札等の価額が見積価額に達しないとき、又は買受代金を納付の期限までに納付しないことにより売却決定を取り消したとき。
上記の換価の取扱いについては、特定電子移転財産権についても同様であると考えられるが、換価した特定電子移転財産権の買受人が買受代金を納付したときは、その特定電子移転財産権を買受人の管理に移さなければならないこととされた(徴法122の2)。これは、動産の権利移転手続としての引渡し等(徴法119等)と同様に、差押えにより徴収職員が管理を行う特定電子移転財産権について、権利移転手続として買受人の管理に移すことが定められたものである。
3 適用関係
上記2の改正は、令和9年4月1日から施行される(改正法附則1六イ、改正徴令附則ただし書)。
三 その他納税環境整備関係の改正
1 差押えに係る不動産の売却価額等に相当する額の国税の納付による差押解除手続の整備
(1)改正前の制度の概要
滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないとき等については、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならないこととされているが(徴法47①)、この差押えの解除の要件については、次のとおりとされていた。
① 差押えを解除すべき場合の要件
徴収職員は、次のイ又はロのいずれかに該当するときは、差押えを解除しなければならないこととされている(徴法79①)。
イ 納付、充当、更正の取消しその他の理由により差押えに係る国税の全額が消滅したとき。
ロ 差し押さえた財産(以下「差押財産」という。)の価額がその差押えに係る滞納処分費及び差押えに係る国税に先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を超える見込みがなくなったとき。
② 差押えを解除することができる場合の要件
徴収職員は、次のイからハまでのいずれかに該当するときは、差押財産の全部又は一部について、その差押えを解除することができることとされている(旧徴法79②)。
イ 差押えに係る国税の一部の納付、充当、更正の一部の取消し、差押財産の値上りその他の理由により、その価額が差押えに係る国税及びこれに先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を著しく超過すると認められるに至ったとき。
ロ 滞納者が他に差し押さえることができる適当な財産を提供した場合において、その財産を差し押さえたとき。
ハ 差押財産について、3回公売に付しても入札又は競り売りに係る買受けの申込みがなかった場合において、その差押財産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、更に公売に付しても買受人がないと認められ、かつ、随意契約による売却の見込みがないと認められるとき。
(2)改正の内容
滞納処分による財産の差押えについては、上記(1)①の差押えを解除すべき場合の要件又は上記(1)②の差押えを解除することができる場合の要件等に該当する場合を除き、解除することはできない。
そのため、実務上、滞納者から、自ら差押えに係る不動産(以下、「差押不動産」という。)を売却してその売却代金を滞納国税の納付に充てたい旨の申出がなされたとしても、これに応ずることはできず、原則として、公売に付すことにより換価を行うこととなるが(徴法94)、実際の公売では、その特殊性(買受希望者にとっての心理的抵抗感等)を考慮し、基準価格の概ね30%程度の範囲内で減価を行って最低売却額を決定していること等から、差押不動産の売却価額がその不動産の時価を下回る事例や売却に至らない事例が多く生じていることが課題とされていた。
今回の改正においては、このような課題を踏まえ、滞納者による自発的な滞納の解消を促すとともに、円滑かつ効果的な滞納整理を実現する観点から、差押不動産の売却、滞納国税の納付及び差押えの解除を一体的に行うことができるようにするための措置が講じられた。
具体的には、差押不動産が売却され、かつ、その不動産の差押えの解除について滞納者から申出があった場合において、次のいずれにも該当するときについては、その差押えを解除することができることとされた(徴法79②四)。
① その不動産の売却価額(その売却価額がその申出があった時におけるその不動産の時価に相当するものとして一定の価額を下回る場合にあっては、その一定の価額)からその差押えに係る国税に先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を控除した残額に相当する額(その相当する額がその差押えに係る国税の額を超える場合にあっては、その差押えに係る国税の額)の国税の納付があったとき。
② 国税の徴収上支障がないと認められるとき。
(3)適用関係
上記(2)の改正は、令和9年4月1日から施行される(改正法附則1六イ、改正徴規附則①)。
2 給料等の差押禁止額の引上げ
(1)改正前の制度の概要
給料、賃金、俸給、歳費、退職年金及びこれらの性質を有する給与に係る債権(以下「給料等」という。)を滞納処分により差し押さえる場合にあっては、次の①から③までの合計額に達するまでの金額は差押えが禁止されている(徴法76①)。
① 源泉徴収される所得税、特別徴収される住民税及び森林環境税並びに社会保険料に相当する金額
② 滞納者(その者と生計を一にする親族を含む。)に対し、これらの者が所得を有しないものとして、生活保護法の生活扶助の給付を行うこととした場合におけるその扶助の基準となる金額で給料等の支給の基礎となった期間に応ずるものを勘案した一定の金額(最低生活費に相当する金額)
③ その給料等の金額から、上記①及び②の合計額を控除した金額の20%相当額(地位又は体面の維持に必要と考えられる金額)
なお、上記②の最低生活費に相当する金額は、給料等の支給の基礎となった期間1月ごとに10万円(滞納者と生計を一にする配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)その他の親族があるときは、これらの者1人につき4万5,000円を加算した金額)とされていた(旧徴令34)。
(2)改正の内容
令和7年6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025」において、「物価上昇が継続していることを踏まえ、予算、税制における長年据え置かれたままの様々な公的制度に係る基準額や閾値について、国民生活へ深刻な影響が及ばないよう、省庁横断的・網羅的に点検し、見直しを進める」との方針が示され、公的制度の基準額・閾値の点検・見直しについて、政府全体としての取組みが進められてきた。
こうした方針を踏まえ、税制についても、「長年据え置かれたままの基準額や閾値」の見直しが行われ、その一環として、給料等の差押禁止の対象となる最低生活費に相当する金額について、引上げが行われた。
具体的には、給料等の差押禁止の計算の基礎となる金額のうち上記(1)②の最低生活費に相当する金額を、滞納者の給料等に係る債権の支給の基礎となった期間1月ごとに10万7,000円(改正前:10万円)(滞納者と生計を一にする配偶者その他の親族があるときは、これらの者1人につき4万8,000円(改正前:4万5,000円)を加算した金額)に引き上げることとされた(徴令34)。
(3)適用関係
上記(2)の改正は、令和8年4月1日から施行されている(改正徴令附則)。すなわち、同日以後に差押金額を取り立てる場合について適用され、同日以後に新たに差し押さえるもののみならず、同日前に差し押さえたものについても適用されるものと考えられる。
3 特定少額資産販売事業者登録制度の創設に伴う税関職員が行う消費税に関する調査に係る質問検査権の整備
(1)改正前の制度の概要
税関の当該職員は、消費税に関する調査について必要があるときは、次に掲げる者に質問し、その者の課税貨物若しくは輸出物品又はこれらの帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件(その写しを含む。)の提示若しくは提出を求めることができることとされていた(旧通法74の2①四)。
① 課税貨物を保税地域から引き取る者又は輸出物品を一定の方法により購入したと認められる者
② 上記①に掲げる者に金銭の支払若しくは資産の譲渡等をする義務があると認められる者又は上記①に掲げる者から金銭の支払若しくは資産の譲渡等を受ける権利があると認められる者
(2)改正の内容
今回の消費税法の改正により、特定少額資産販売事業者登録制度が創設され、この登録を受けた事業者(特定少額資産販売事業者)が行う特定少額資産の譲渡に係る課税貨物(その課税貨物に係る特定少額資産の譲渡を行った特定少額資産販売事業者の登録番号等がその課税貨物の輸入申告書等に付記されているものに限る。)については、輸入時の消費税を免除することとされた(消法8の2)。
また、特定少額資産販売事業者が行った特定少額資産の譲渡に係る資産以外の資産について、その資産を譲渡する者、その資産を国内以外の地域から国内に宛てて発送する者、その資産の輸入の委託者その他の関係者は、その資産が特定少額資産販売事業者により行われた特定少額資産の譲渡に係るものであると誤認されるおそれのある表示(電磁的記録にあっては、その表示の記録を含む。以下同じ。)をした仕入書その他の書類(電磁的記録を含む。以下「仕入書等」という。)をその資産を輸入しようとする者及びその者の輸入の申告を代理する通関業者(以下「輸入者等」という。)に交付し、若しくは提供し、又は登録番号若しくはその登録番号と誤認されるおそれのある番号等を輸入者等に通知してはならないこととされた(消法57の9)。
これに伴い、特定少額資産販売事業者が行った特定少額資産の譲渡に係る資産以外の資産が特定少額資産販売事業者により行われた特定少額資産の譲渡に係るものであると誤認されるおそれのある表示をした仕入書等の輸入者等への交付等に関する税関職員による消費税の調査に係る質問検査権の規定が整備された。
具体的には、税関職員による消費税の調査に係る質問検査権の行使先に、特定少額資産販売事業者が行った特定少額資産の譲渡に係る資産以外の資産が特定少額資産販売事業者により行われた特定少額資産の譲渡に係るものであると誤認されるおそれのある表示をした仕入書等を輸入者等に交付し、若しくは提供し、又は登録番号若しくはその登録番号と誤認されるおそれのある番号等を輸入者等に通知したと認められる者が追加された(通法74の2①四ロ)。
(注)上記の「特定少額資産の譲渡」とは、資産の譲渡等のうち、通信販売の方法として一定の方法による国内以外の地域に所在する資産(一の資産について対価の額が1万円以下であり、かつ、国内以外の地域から国内に宛てて発送されるものに限る。)の譲渡をいう(消法2①八の六)。
(3)適用関係
上記(2)の改正は、令和10年4月1日から施行される(改正法附則1九ロ)。
4 GビズIDとの連携によるe-Taxの利便性の向上
(1)改正前の制度の概要
① 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う申請等
電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う者は、その申請等につき規定した法令の規定において書面等に記載すべきこととされている事項並びに税務署長から通知された識別符号(ID)及び暗証符号(パスワード)(以下「e-Tax用ID・PW」という。)を入力して、その申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書と併せてこれらを送信することにより、その申請等を行わなければならないこととされている(国税オンライン化省令5①)。
ただし、次に掲げる場合には、それぞれ次に定める行為をすることを要しないこととされている(国税オンライン化省令5①ただし書、令和4年国税庁告示第23号、平成18年国税庁告示第32号)。
イ その電子情報処理組織(e-Tax)の利用(ログイン)の際に個人番号カード(個人番号カード用利用者証明用電子証明書が記録されているものに限る。以下同じ。)又は移動端末設備(その移動端末設備(スマートフォン)に組み込まれた電磁的記録媒体(ICチップ)に移動端末設備用利用者証明用電子証明書が記録されているものに限る。以下同じ。)を用いて電子利用者証明(電子情報処理組織(e-Tax)を利用しようとする者がその利用(ログイン)の際に行う措置で、その措置を行った者が地方公共団体情報システム機構がその措置を行うことができるとした者と同一の者であることを証明するものをいう(公的個人認証法2②)。)を行う場合……e-Tax用ID・PWを入力すること。
ロ 上記イの場合において、あらかじめその申請等を行う者が本人であることを確認するための措置として国税庁長官が定めるもの(その申請等に係る税務署長等が、その申請等を行う者の個人番号カード用利用者証明用電子証明書及び個人番号カード用署名用電子証明書の送信を受けること又はその申請等を行う者の移動端末設備用利用者証明用電子証明書及び移動端末設備用署名用電子証明書の送信を受けること)がとられている場合……e-Tax用ID・PWを入力すること並びにその申請等の情報に電子署名を行うこと及びその電子署名に係る電子証明書を送信すること。
ハ その電子署名が国税庁長官が定める者に係るものである場合……その申請等の情報に電子署名を行うこと及びその電子署名に係る電子証明書を送信すること。
② 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う場合の氏名又は名称を明らかにする措置
申請等のうちその申請等に関する他の法令の規定において署名等(署名、記名、自署、連署、押印その他氏名又は名称を書面等に記載することをいう。以下同じ。)をすることが規定されているものについて電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う場合には、その法令の規定にかかわらず、氏名又は名称を明らかにする措置として次に掲げるものをもってその署名等に代えることができることとされている(情報通信技術活用法6④、国税オンライン化省令6①)。
イ 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う申請等の情報に電子署名を行い、その電子署名に係る電子証明書をその申請等と併せて送信すること。
ロ 税務署長から通知されたe-Tax用ID・PWを入力して申請等を行うこと。
ハ 電子情報処理組織(e-Tax)の利用の際に個人番号カード又は移動端末設備を用いて電子利用者証明を行い、申請等を行うこと。
ニ 税務署長に対して、認定特定電子計算機(認定クラウド等)に備えられたファイル(特定ファイル)に記録されたその申請等情報を閲覧し、及び国税庁の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する権限(アクセス権限)を付与して、認定特定電子計算機(認定クラウド等)を使用する方法により申請等を行うこと。
③ 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う国税の納付手続
電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により国税の納付(特定納付手続を除く。以下同じ。)を行おうとする者は、納付書に記載すべきこととされている事項並びに税務署長から通知されたe-Tax用ID・PWを入力して、これらを送信することにより、その納付を行わなければならないこととされている(国税オンライン化省令8①)。ただし、その電子情報処理組織(e-Tax)の利用(ログイン)の際に個人番号カード又は移動端末設備を用いて電子利用者証明を行う場合には、e-Tax用ID・PWを入力することを要しないこととされている(旧国税オンライン化省令8①ただし書)。
(2)改正の内容
令和4年6月7日に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」においては、法人の電子認証について、原則としてGビズIDを利用していく方針が示されるとともに、同日に閣議決定された「規制改革実施計画」においては、GビズIDとe-Taxとの連携について、デジタル庁と連携の上、必要な措置を講ずることとされている。
こういった方針を踏まえ、令和6年度税制改正においては、「所要の法令改正等を前提」に、法人が入力するGビズID(一定の認証レベルを有するものに限る。)との連携によるe-Taxの利便性の向上に係る措置を講ずることとされていた。
今般、デジタル庁の所管する法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則の改正により、GビズIDの利用について明文化され、前提となる法令改正がされたことを踏まえ、具体的な措置を講ずることとされたものである。
今回の改正においては、GビズIDの利用者の利便性の向上に資する観点から、法人が、GビズID(一定の認証レベルを有するものに限る。)に係るシステムを経由して、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等又は国税の納付を行う場合には、その申請等の際に必要とされるe-Tax用ID・PWの入力、電子署名並びにその電子署名に係る電子証明書の送信(上記(1)①参照)を、又は国税の納付の際に必要とされるe-Tax用ID・PWの入力(上記(1)③参照)を、それぞれ要しないこととする措置等が講じられた。具体的には、次のとおり。
① GビズIDとの連携による電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う申請等
電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う法人が、電子情報処理組織(e-Tax)の利用(ログイン)の際に特定認証(法人共通認証基盤(GビズIDに係るシステム)を利用して行われる法人の申請等が当該法人に係るものであることの認証のうち国税庁長官が定めるものをいう。以下同じ。)を受ける場合には、e-Tax用ID・PWを入力すること並びにその申請等の情報に電子署名を行うこと及びその電子署名に係る電子証明書を送信することを要しないこととされた(国税オンライン化省令5①三)。これにより、その申請等を行う法人は、事前にGビズIDアカウントの取得及び電子情報処理組織(e-Tax)の開始届出書の提出をしておけば、法人共通認証基盤(GビズIDに係るシステム)経由で電子情報処理組織(e-Tax)にログインすることのみで、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による申請等を行うことが可能となる。
② 電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う場合の氏名又は名称を明らかにする措置の拡充
上記(1)②の電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により申請等を行う場合の氏名又は名称を明らかにする措置に、「電子情報処理組織(e-Tax)の利用(ログイン)の際に特定認証を受けて、申請等を行うこと」が追加された(国税オンライン化省令6①四)。
③ GビズIDとの連携による電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により行う国税の納付手続
電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法により国税の納付を行う法人が、電子情報処理組織(e-Tax)の利用(ログイン)の際に特定認証を受ける場合には、e-Tax用ID・PWを入力することを要しないこととされた(国税オンライン化省令8①二)。これにより、国税の納付を行う法人は、事前にGビズIDアカウントの取得及び電子情報処理組織(e-Tax)の開始届出書の提出をしておけば、法人共通認証基盤(GビズIDに係るシステム)経由で電子情報処理組織(e-Tax)にログインすることで、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法による国税の納付を行うことが可能となる。
(3)適用関係
上記(2)の改正は、令和9年9月1日から施行される(改正国税オンライン化省令附則①)。
5 事業性融資の推進等に関する法律の施行に伴う交付要求手続の整備
(1)改正前の制度の概要
滞納者の財産につき強制換価手続が行われた場合には、税務署長は、その手続の執行機関に対し、滞納に係る国税につき、交付要求書により交付要求をしなければならないこととされており(徴法82①)、その財産が質権、抵当権、先取特権、留置権、賃借権その他の第三者の権利(担保のための仮登記に係る権利を除く。)の目的となっている場合等には、これらの権利を有する者等(以下「質権者等」という。)に対し、交付要求をした旨を通知しなければならないこととされている(徴法82③、55)。
これは、その交付要求に係る国税が、法定納期限等以前に設定された質権等により担保される債権等を除き、全ての他の債権等に優先して配当されるため(徴法8、15①等)、交付要求の基因となった強制換価手続が行われた財産上の担保権者等に対し、その旨を通知することで、これらの者に対して、交付要求の解除請求の機会を与えようとする私債権者保護制度の一環をなすものとされている。
また、この交付要求をした旨の通知は、その交付要求に係る強制換価手続が企業担保権の実行手続又は破産手続であるときは、することを要しないこととされている(旧徴令36④)。
これは、交付要求に係る強制換価手続が企業担保権の実行手続又は破産手続であるときは、これらの手続に係る利害関係人が多数にのぼり、全ての質権者等への通知が実務上困難であることやその手続に参加する債権者の状況を当該質権者等を含む利害関係人が確認できる制度(企業担保法16、企業担保権実行手続規則23、破産法11)があることを踏まえ、その交付要求をした旨の通知をすることを要しない特例が設けられたものである。
(2)改正の内容
令和6年の第213回通常国会において提出された「事業性融資の推進等に関する法律(令和6年法律第52号)」は、令和6年6月7日に参議院本会議で可決・成立し、同月14日に公布されているが、この事業性融資の推進等に関する法律においては、無形資産を含む事業全体を担保とする制度として企業価値担保権の制度が創設された。
これに伴い、滞納者の財産につきこの企業価値担保権の実行手続が行われた場合には、税務署長は、執行機関(裁判所)に対し、滞納に係る国税につき、交付要求書により交付要求をしなければならないこととされている(徴法2十二、82①)。
この企業価値担保権の実行手続についても、総財産の換価を目的とする手続であり、その手続に係る利害関係人が多数にのぼり、全ての質権者等への通知が実務上困難であることやこれに参加する債権者の状況を当該質権者等を含む利害関係人が確認できる制度(事業性融資推進法76)が整備されており、交付要求の解除請求の機会が確保されていることを踏まえ、現行の企業担保権の実行手続又は破産手続と同様、交付要求に係る強制換価手続が企業価値担保権の実行手続であるときは、質権者等に対してその交付要求をした旨の通知をすることを要しないこととされた(徴令36④)。
(3)適用関係
上記の改正は、事業性融資の推進等に関する法律の施行の日(令和8年5月25日)から施行される(事業性融資推進法整備等政令附則)。
6 学校教育法の改正に伴う税理士試験の受験資格の要件の整備
(1)改正前の制度の概要
税理士試験(税法に属する科目の試験に限る。以下同じ。)は、次のいずれかに該当する者でなければ、受けることができないこととされている(税理士法5①)。
① 職歴による受験資格を有する者
② 学歴による受験資格を有する者
③ 司法修習生となる資格を得た者
④ 公認会計士試験の短答式試験の合格者
⑤ 国税審議会の認定した者
このうち、上記②の学歴による受験資格を有する者とは、大学若しくは高等専門学校を卒業した者でこれらの学校において社会科学に属する科目を修めたもの又は大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者で一定の学校において社会科学に属する科目を修めたものをいうこととされているが(税理士法5①二)、この「一定の学校」として、学校教育法の規定による大学、専修学校(専門課程に限る。)等が定められていた(旧税理士規則2の2)。
なお、この専修学校の専門課程は、修業年限が2年以上であること及び課程修了に必要な授業時数が一定以上であることの基準を満たすものに限ることとされていた。
(2)改正の内容
令和6年の第213回通常国会において提出された「学校教育法の一部を改正する法律(令和6年法律第50号。以下「学校教育法改正法」という。)」は、令和6年6月7日に参議院本会議で可決・成立し、同月14日に公布されているが、この学校教育法改正法においては、専修学校における教育の充実を図るため、全ての専門課程について、授業時数制から単位制に移行するとともに、修業年限が2年以上であること及び課程修了に必要な総単位数が62単位以上であることの基準を満たす専門課程を「特定専門課程」とし、その特定専門課程には、専攻科を置くことができることする等の見直しが行われ、令和8年4月1日以後に専修学校の専門課程に入学する者について適用されている(学校教育法125の2)。
これに伴い、上記(1)②の学歴による受験資格について、在学中に社会科学に属する科目を修めることで税理士試験の受験資格を得ることが可能となる専修学校の範囲について、上記の専修学校の見直しに伴う所要の規定の整備が行われた。
具体的には、学校教育法の改正に伴い、税理士試験の受験資格を得ることができる大学を卒業した者と同等以上の学力があると認められた者で専修学校において社会科学に属する科目を修めたもののその専修学校の範囲について、「特定専門課程」に限ることとされた(税理士規則2の2)。
これは、従前の上記の専修学校の範囲については、上記(1)のとおり、専門課程のうち修業年限が2年以上であること等の基準を満たすものに限ることとされていたが、この特定専門課程についても、修業年限が2年以上であること等の基準を満たすこととされていることから、従前と同様の学力があると認められた者について、税理士試験の受験資格を得ることを可能としたものである。
(3)適用関係
上記(2)の改正は、令和8年4月1日以後に専修学校の専門課程に入学する者について適用され、同日前に専修学校の専門課程に入学した者については、従前どおりとされている(改正税理士規則附則②)。したがって、同日前に専修学校の専門課程(修業年限が2年以上であること及び課程修了に必要な授業時数が一定以上であることの基準を満たすものに限る。)に入学した者が社会科学に属する科目を修めた場合には、従前どおり、上記(1)②の税理士試験の学歴による受験資格を得ることができるものと考えられる。
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