解説記事2026年08月31日 実務解説 半期報告書 作成上の留意点(2026年9月期提出用)(2026年8月31日号・№1136)
実務解説
半期報告書 作成上の留意点(2026年9月期提出用)
企業会計基準委員会 専門研究員 浅野匠彦
Ⅰ はじめに
本稿は、2026年9月期の半期報告書における作成上の留意点についてまとめたものであり、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という。)の改正に伴う留意点、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)から改正・公表された企業会計基準等に関する留意点を中心に解説する。
なお、文中において意見にわたる部分は私見であることをあらかじめ申し添えておく。
Ⅱ 開示府令の改正を踏まえた半期報告書の開示に係る留意点
(1)概要
2026年2月20日に開示府令が改正され、一般に公正妥当と認められるサステナビリティ情報の作成及び開示に関する基準(以下「サステナビリティ開示基準」という。)に従った開示のための規定の整備や、株主総会前の有価証券報告書の開示を促進する観点からの規定の改正が行われた。
このうち、サステナビリティ開示基準に従った開示のための規定の整備に係る改正事項は3月決算会社の半期報告書の場合、2026年3月末を基準として算定した平均時価総額によって2027年9月期又は2028年9月期が原則的な適用時期となり、2026年9月期の半期報告書では早期適用が可能となっている。
(2)株主総会前開示に関連する事項
開示府令の改正により、第3【提出会社の状況】1【株式等の状況】(5)【大株主の状況】及び(6)【議決権の状況】について、中間配当に係る基準日現在の状況を記載することができることとなった(第四号の三様式記載上の注意(以下「記載上の注意」という。)(15)a及び(16)a)。改正前の記載上の注意(15)aでは「当中間会計期間の末日現在の『大株主の状況』について記載すること」とされていたところ、「提出会社が当中間会計期間の末日後半期報告書の提出日までの間のいずれかの日を会社法第454条第5項の規定による中間配当に係る同法第124条第1項に規定する基準日として定めた場合にあっては、当該基準日現在の『大株主の状況』について記載すること」と改正されており、3月決算会社については、10月1日から半期報告書の提出日までの間に中間配当に係る基準日を定めている場合には、従前は中間会計期間の末日である9月30日現在の情報を記載することが求められていたが、当年度より当該基準日現在の情報を記載することとなる。
記載上の注意(15)aのただし書きでは、「これにより難い場合にあっては、当中間会計期間の末日現在の『大株主の状況』について記載すること」とされている。中間配当に係る基準日を定めていない会社や当該基準日を中間会計期間の末日である9月30日と定めている会社の場合には、「これにより難い場合」の定めに従って中間会計期間の末日である9月30日現在の状況を記載することとなるため、昨年度までの実務から特段の変更は生じないと考えられる。
また、(6)【議決権の状況】に係る記載上の注意(16)aの改正についての留意点も上述の(5)【大株主の状況】と同様である。
改正開示府令は、直近の2026年3月期の有価証券報告書から適用されており、株主総会前に有価証券報告書を提出する場合に定時株主総会又は取締役会の決議事項となっている旨及びその概要を記載することとされている項目が、自己株式の取得(会社法第156条第1項の規定による株式の取得)及び剰余金の配当(会社法第453条の規定による剰余金の配当)に限られることとされた。このため、第3【提出会社の状況】2【役員の状況】に関連すると考えられる役員の選解任に係る決議事項について、直近の2026年3月期の有価証券報告書から定時株主総会又は取締役会の決議事項となっている旨及びその概要を記載することが不要となった。
当該改正に伴い、直近の2026年3月期の有価証券報告書を定時株主総会前に提出し、当該有価証券報告書に定時株主総会又は取締役会での決議事項である「役員の改選」、「代表取締役の異動」及び「役員の役職の変更」等に関する事項を記載しなかった場合で、当中間会計期間において役員に異動があったときには、記載上の注意(17)aに従って記載することとなる。なお、役職の変更を伴わず再任された役員については「役員の異動」に該当しないと考えられるため、半期報告書における記載は不要と考えられる。役職の異動があった場合には、記載が求められている項目であるためご留意いただきたい(記載上の注意(17)e)。
(3)サステナビリティ開示に関する事項
本項目に係る開示府令の改正のうち、半期報告書に関連するものは、将来に関する事項を記載する場合の記載上の注意の改正と第2【事業の状況】4【サステナビリティに関する考え方及び取組等に関する特記事項】の項目新設である。いずれも、2026年9月期の半期報告書において適用する場合は早期適用となる。
記載上の注意(1)hは将来に関する事項を記載する場合に記載しなければならない事項を定めており、改正前の現行の規定では「当中間連結会計期間の末日現在において判断したものである旨を記載すること」とされている。改正後の規定では、推論過程等や社内の開示手続を新たに記載することとされ、有価証券報告書の様式である第三号様式と同様の改正である。早期適用しない場合には改正前の「企業内容等の開示に関する留意事項について」(以下「企業内容等開示ガイドライン」という。)5−16−2に示されていた内容を参照して、従前のとおり記載を行うこととなると考えられる。
金融庁・金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」の中間論点整理(2025年7月)では、概算部分の確定値が有価証券報告書の提出後に判明したときについて、半期報告書等を利用した自主的な開示の枠組を検討するべきであるとされている(同中間論点整理13頁及び14頁)。これに対応して、第2【事業の状況】に4【サステナビリティに関する考え方及び取組等に関する特記事項】が新設されたものと考えられる。記載上の注意(9−2)において「当該数値と当該確定値との間に差異があるときは、当該差異の状況及び当該差異が生じた理由を記載することができる」とあるように、自主的に開示することとしたときに用いることができる項目であり、記載する事項がない場合には項目名を含め記載を要しないとされている(記載上の注意(9−2)なお書き)。
(4)その他の事項
第2【事業の状況】3【重要な契約等】のうち、「ローン契約と社債に付される財務上の特約」の開示について締結又は発行をした場合に記載が求められているが、提出会社が連結子会社との間又は連結子会社が提出会社若しくは他の連結子会社との間で締結した金銭消費貸借契約、及び提出会社が連結子会社に対して又は連結子会社が提出会社若しくは他の連結子会社に対して発行した社債は記載対象から除かれることとされた(記載上の注意(9)h)。
Ⅲ 企業会計基準等の改正・公表に係る留意点
1 「I.リースに関する会計基準」に係る留意点
(1)概要
ASBJは、2024年9月13日に、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)等を公表した。
リース会計基準等は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用とされているが、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からリース会計基準を適用することができる。その詳細は、村瀬進吾、福江東晶「企業会計基準第34号『リースに関する会計基準』等の概要」(本誌No.1050、No.1051)をご参照いただきたい。
リース会計基準等を適用する場合の適用初年度においては、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下「リース適用指針」という。)第118項本文により新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する方法(以下「原則的な取扱い」という。)と、リース適用指針第118項ただし書きにより、適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する方法(以下「遡及処理における累積的影響額を適用初年度の期首残高に反映する方法」という。)が認められている。
本稿では当年度より早期適用する場合の留意点について解説する。
(2)主要な経営指標等の推移
第1【事業の状況】1【主要な経営指標等の推移】では、遡及適用等の内容を反映した旨を注記することとされているため(企業内容等開示ガイドライン24の5−7が準用する5−12−2)、原則的な取扱いによる場合には、前中間連結会計期間及び前連結会計年度に係る主要な経営指標について、リース会計基準等を遡って適用している旨を注記することとなる。一方、遡及処理における累積的影響額を適用初年度の期首残高に反映する方法による場合には、当中間連結会計期間に係る主要な経営指標がリース会計基準を適用した後の指標である旨を注記することが考えられる。
(3)冒頭記載
リース会計基準等の公表に伴い、2025年3月に連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「連結財務諸表規則」という。)及び財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則(以下「財務諸表等規則」という。)が改正されている(令和7年内閣府令第20号)。また、2025年4月のリース会計基準等の修正の公表に伴い、連結財務諸表規則及び財務諸表等規則が2025年8月に改正されている(令和7年内閣府令第75号)。第4【経理の状況】の冒頭記載において、中間連結財務諸表を改正附則のただし書きにより改正後の連結財務諸表規則に基づいて作成している旨を記載する場合には、これらの内閣府令を併記し、令和7年内閣府令第20号附則第3条第1項ただし書き及び令和7年内閣府令第75号附則第5条第1項ただし書きによる旨を記載することが考えられる。
(4)会計方針の変更
リース会計基準等を早期適用する場合、「会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更に関する注記」を行うこととなると考えられる。記載事例については、中西美樹「半期報告書 作成上の留意点(2025年9月期提出用)」(本誌No.1092)をご参照いただきたい。リース会計基準等では、実務上の負担を軽減するための多くの経過措置が設けられており、これらの経過措置を適用する場合において、重要性があるときは、当該経過措置に係る記載を行うこととなると考えられる。
会計基準等に規定されている遡及適用に関する経過措置に従って会計処理を行った場合において、遡及適用を行っていないときは、税金等調整前中間純損益金額に対する影響額及びその他の重要な項目に対する影響額を注記しなければならないとされている(連結財務諸表規則第102条が準用する財務諸表等規則第131条3項4号)。この点、リース会計基準等の適用に際し、遡及処理における累積的影響額を適用初年度の期首残高に反映する方法を選択した借手については、令和7年内閣府令第20号附則第3条第3項及び令和7年内閣府令第75号附則第5条第3項の定めにより、当該影響額の注記に代えて、適用初年度の期首の連結貸借対照表に計上されているリース負債に適用している借手の追加借入利子率の加重平均、及び当該追加借入利子率で割り引いた適用初年度の前連結会計年度の末日において開示したオペレーティング・リースの未経過リース料と適用初年度の期首の連結貸借対照表に計上されているリース負債との差額の説明を注記することとされていることにご留意いただきたい。一方、貸手については、遡及処理における累積的影響額を適用初年度の期首残高に反映する方法によるときであっても、原則通りの注記の記載が求められ、税金等調整前中間純損益金額に対する影響額及びその他の重要な項目に対する影響額を注記することとなる点にも併せてご留意いただきたい。
2 「期中財務諸表に関する会計基準」に係る留意点
(1)概要
2025年10月16日に企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」(以下「期中会計基準」という。)が公表された。金融商品取引法上の四半期開示義務の廃止以後、半期報告書に含まれる第一種中間連結財務諸表や第一種中間財務諸表は企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」(以下「中間会計基準」という。)に基づいて作成され、金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期及び第3四半期の四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表は企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」(以下「四半期会計基準」という。)により作成されていた。期中会計基準は、中間決算と四半期決算とで同じ会計基準等に基づき決算ができるようにするという方向性のもと、四半期会計基準と中間会計基準を統合した基準として開発された。その詳細は、波多野貴啓「企業会計基準第37号『期中財務諸表に関する会計基準』等の概要」(本誌No.1101)をご参照いただきたい。
期中会計基準等は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の最初の期中会計期間から適用されるため、2026年9月期の半期報告書に含まれる第一種中間連結財務諸表及び第一種中間財務諸表に適用される。一方、この適用に伴って中間会計基準等については適用を終了することとなる。
(2)会計方針の変更等
期中会計基準の結論の背景では、中間会計基準等と四半期会計基準等を統合しているため、期中会計基準等において個別に検討を行った取扱いを除き、期中会計基準等の適用後も基本的に従前の取扱いを踏襲することになると考えられるとされている。また、個別に検討を行った取扱いのうち、有価証券の減損処理及び棚卸資産の簿価切下げの方法について、切放し法を洗替法に変更する場合は、会計方針の変更に該当すると考えられるが、継続して切放し法を適用することができるとされているため、会計方針の変更が行われる場合は限定的であると考えられるとされている。
(3)切放し法の注記
中間決算における有価証券の減損処理又は棚卸資産の帳簿価額の切下げの方法として切放し法を適用している場合には、その旨の注記が必要とされている(連結財務諸表規則第175条の2)。記載事例では、有価証券の減損処理の方法について切放し法を適用している場合の記載事例を示している。棚卸資産の帳簿価額の切下げの方法について切放し法を適用している場合にも、この記載事例を参考としていただきたい。
| ○ 当社グループは、当中間連結会計期間に係る有価証券の減損処理の方法として、切放し法を適用している。 |
3 その他の留意点
(1)「上場企業等が保有するVCファンドの出資持分に係る会計上の取扱い」に係る留意点
2025年3月11日にASBJから改正移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」が公表され、上場企業等が保有するVCファンドの出資持分に係る会計上の取扱いの見直しを目的として改正が行われた。改正移管指針では、要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができることとされ、この場合、評価差額の持分相当額は純資産の部に計上することとされた。その詳細は、山本智恵「改正移管指針第9号『金融商品会計に関する実務指針』の概要」(本誌No.1072)を参照いただきたい。
当該改正は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされており、改正移管指針を適用した場合、会計方針の変更において注記することが考えられるため、ご留意いただきたい。
金融商品が企業集団の事業の運営において重要なものとなっており、かつ、中間連結貸借対照表計上額その他の金額に前連結会計年度の末日に比して著しい変動が認められる場合には金融商品の時価等に関する事項を注記することとされているが、中間連結貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合その他これに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。以下「組合等」という。)への出資については記載を要しないとされ、この場合、その旨及び当該出資の中間連結貸借対照表計上額の合計額を注記することとされている(連結財務諸表規則第111条第6項)。2025年8月に連結財務諸表規則及び財務諸表等規則が改正されたことにより、組合等の構成資産に含まれる全ての市場価格のない株式について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする取扱いを行っている場合には、その旨、当該取扱いを行う組合等の選択に関する方針及び当該取扱いを行っている組合等への出資の中間連結貸借対照表計上額の合計額を併せて注記することとされた(連結財務諸表規則第111条第6項ただし書き)。
(2)改正企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」等(譲受人が特別目的会社である場合の金融資産の消滅範囲の明確化)に係る留意点
2026年6月2日にASBJから改正企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」等が公表され、譲受人が特別目的会社である場合の金融資産の消滅範囲の明確化を目的として改正が行われた。その詳細は、白府慶士「改正企業会計基準第10号『金融商品に関する会計基準』等の概要」(本誌No.1132)を参照いただきたい。
当該改正は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される金融資産の譲渡から適用するとされ、早期適用として当年度の2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される金融資産の譲渡からも適用可能とされている。適用初年度において、これまでの会計処理と異なることとなる場合には会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うとされており、当年度より早期適用することにより会計方針を変更する場合には会計方針の変更の注記が必要となると考えられるため、ご留意いただきたい。
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