解説記事2026年09月07日 税務マエストロ 簡易課税の事業区分~「サービス業等」の定義を検証する~(2026年9月7日号・№1137)
税務マエストロ
簡易課税の事業区分~「サービス業等」の定義を検証する~
#315
税理士 熊王征秀
マエストロの解説
委託販売取引において、受託者が収受する手数料収入は、簡易課税制度の適用を受ける場合、第何種事業となるのだろうか?

正解は第4種事業である。受託販売(代理商、仲立業)は、日本標準産業分類の大分類I−卸売業、小売業(細分類番号5598)に区分される。
代理商、仲立業は、消費税法基本通達13−2−4(第三種事業、第五種事業及び第六種事業の範囲)に定める第3種事業、第5種事業、第6種事業のいずれにも該当しない。さらに、仕入商品の販売ではないので当然に第1種事業や第2種事業にも該当せず、どん詰まりの第4種事業に該当することとなるのである。
なお、代理商、仲立業については、国税庁質疑応答事例の簡易課税制度(6 日本標準産業分類からみた事業区分(大分類−I卸売業、小売業))にも第4種事業に該当することが明記されている。
ところで、令和8年度(第76回)税理士試験の消費税法では、数年ぶりに簡易課税の計算問題が出題された。問題文中、雑収入の内訳として自動販売機の設置手数料が資料として与えられていたが、この自動販売機の設置手数料は第何種事業に区分されるのであろうか……。大手受験専門学校は第5種事業との解答を公表しているようであるが、第5種事業になるのなら、日本標準産業分類の大分類ではどの区分になるのだろう……。最も可能性の高いのが「中分類79−その他の生活関連サービス業」か「中分類92−その他の事業サービス業」であるが、「自動販売機の設置」という事業は○×の例示にも載っていない。
……であるのなら、どん詰まりの第4種事業に区分するのではなかろうか?
自動販売機の設置手数料収入がある中小事業者は数多く存在する。日本全国の中小事業者は第何種事業に区分して毎年申告してるのだろうか……?
また、作問者は第何種事業として採点をするつもりなのだろうか……。
今回は、簡易課税の事業区分のうち、第5種事業(サービス業等)に的を絞り、制度の内容を検証する。
1 事業区分の基本的な考え方
簡易課税制度を適用する場合の事業区分は、原則として、その事業者が行う課税資産の譲渡等(個々の売上高)ごとに行うことになる(消基通13−2−1)。
したがって、問屋の売上高がすべて第1種事業になるとは限らないし、また、小売店の売上高がすべて第2種事業になるというものでもない。
第1種事業から第5種事業までの定義は次のとおりである。



※第1種事業(卸売業)と第2種事業(小売業等)の定義は消費税オリジナルのものであり、日本標準産業分類は関係ないことに注意する必要がある。
2 事業区分の判定順序
事業区分は課税資産の譲渡等(個々の売上高)ごとに、次の順序により判定する。

例えば、事業区分で不動産業は第6種事業とされているが、不動産業者の売上げがすべて第6種事業に区分されるわけではない。
他から購入した建物などの課税資産を売却した場合には、購入者が事業者であれば第1種事業に、購入者が消費者であれば第2種事業に区分する。中古住宅を購入し、リフォームして売却した場合であれば、性質及び形状が変更されたことから第1種事業と第2種事業には該当せず、建設業として第3種事業に区分することになる。
つまり、不動産業の売上げで第6種事業に区分されるのは、第1種事業~第3種事業、第5種事業のいずれにも該当しないもの、たとえば不動産売買の仲介手数料や貸店舗の家賃収入などがこれに該当するわけである。
3 第5種事業(サービス業等)の範囲
(1)受託販売(代理商、仲立業)による手数料収入
委託販売取引において、受託者が収受する手数料収入は、代理販売というサービスの対価であり、第5種事業になるという意見も一部にはあるようだ。しかし、国税庁質疑応答事例にも明記されているように、受託販売(代理商、仲立業)による手数料収入は第4種事業に区分することになる。
これは、あくまでも第5種事業となるサービス業等は限定列挙であること、その範囲(判断)については日本標準産業分類に委ねられていることが理由(根拠)であるものと思われる。
(2)自動販売機の設置手数料収入
自動販売機の設置手数料収入についても、限定列挙されているサービス業等の範囲に掲載されていないのであれば、受託販売手数料収入と同様にどん詰まりの第4種事業に区分するべきである。国税庁の質疑応答事例はあくまでも例示なのであり、ここに第4種事業と明記されていないことをもって第5種事業と判断すべきではない。
(3)修理工賃収入
本試験問題では、自動二輪車や自転車の修理に伴い収入した工賃が資料として与えられていたが、この工賃収入は第何種事業になるのだろうか……。
日本標準産業分類の大分類I−卸売業、小売業(中分類59−機械器具小売業)の総説では、「自動車、自転車、電気機械器具の小売と修理を兼ねている事業所も本分類に含まれる」としたうえで、「整備、修理専業の事業所は大分類R−サービス業(他に分類されないもの)〔891、901~909〕に分類される。」と記述している。
大分類I−卸売業、小売業には、細分類番号5914に自動二輪車小売業、5921に自転車小売業が掲載されているので、本試験問題のように自動二輪車と自転車の販売店が修理代金を収受した場合には、その売上高は限定列挙されているサービス業等には該当しないことから第5種事業とはならず、どん詰まりの第4種事業に区分することになるものと思われる。
この解釈につき、消費税法基本通達では、おおむね日本標準産業分類(総務省)の大分類に掲げる分類を基礎として判定することとしているのであるから、事業区分の判断について、日本標準産業分類の「総説」は読むべきでないという意見もあるようだ。では、「おおむね」の定義はどこに書いてあるのだろうか?「おおむね」の定義を是非とも知りたい。「おおむね」とは、課税庁に都合のいいところだけ日本標準産業分類に従えということなのだろうか……???
なお、国税庁の質疑応答事例では、中分類59−機械器具小売業について、修理代の取扱いは明記していない。
4 施行令と基本通達の関係について
事業区分の定義については、消費税法施行令57条の5項と6項に規定されている。これを受け、同基本通達13−2−4では、第3種事業と第5種事業、第6種事業の範囲が定められている。施行令と基本通達を読み比べてみると、第3種事業の定義(範囲)については書きぶりにほほ変わりはないものの、第5種事業の定義(範囲)が大きく異なっていることがわかる。

5 日本標準産業分類の改定に伴う基本通達の改正
第5種事業の範囲は、おおむね日本標準産業分類(総務省)の大分類に掲げる分類を基礎として判定することとされているのであるが、日本標準産業分類は平成14年3月と平成19年11月に大幅な改定が行われており、この改定に伴い、基本通達に定める第5種事業の範囲についても改正が行われてきたという経緯がある。
具体的には、旧日本標準産業分類で「サービス業」に分類されていた業種のうち、宿泊業、医療・福祉業、教育・学習支援業などが新たに独立して大分類に格上げされたほか、時代の流れに合わせて細部にわたり調整が行われた。
しかし、基本通達が改正されたにも関わらず、その基本通達のベースとなるべき施行令は改正されていない。

日本標準産業分類の改定に伴い、平成14年9月25日付で消費税法基本通達13−2−4に下記の一文が新たに追加になった。


平成19年における日本標準産業分類の再改定に伴い、平成20年3月28日付で消費税法基本通達13−2−4も次のように再改正された。

6 平成26年度改正
平成26年度改正では、第4種事業に区分されていた「金融業、保険業」を第5種事業に区分することになった。また、新たに第6種事業を新設し、みなし仕入率を40%に設定した上で、第5種事業に区分されていた「不動産業」を第6種事業に区分することになった(消令57⑤五)。

この改正により、消費税法施行令57条(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)5項4号が次のように改正になった。

この施行令の改正をみて、違和感を感じるのは筆者だけであろうか……。
消費税法基本通達は、消費税の法令の解釈や取扱いに関する国税庁の指導である。よって、法令に根拠のないものを基本通達で勝手に定めることはできない。しかし、基本通達が改正になったにもかかわらず、基本通達の根拠となる施行令57条5項4号に規定する第5種事業の定義が改正されてこなかったというのは一体全体どういうことなのだろうか?
消費税法施行令57条5項4号のイ・ロ・ハの業種は、旧日本標準産業分類の概念をそのまま借用してつくられていることは一目瞭然である。
※旧日本標準産業分類(平成14年3月の改定前)の表記で示すと、不動産業が「K」、運輸・通信業が「H」、サービス業が「L」、金融・保険業が「J」である。
にもかかわらず、施行令57条5項4号を改正しないままに基本通達13−2−4だけを改正するというのは、どう考えても納得できるものではない。
おそらくは、この施行令にある「サービス業」などの定義が日本標準産業分類の定義とまったく同一であることを認めた場合、矛盾点が多々あることから、財務省としては困ったことになるのだろう。
「施行令に規定する「サービス業」などの定義は、日本標準産業分類の定義とはベツモノで、もっと広い概念を想定したものである」といったようなワケのわからない玉虫色の“屁理屈”を楯に、あえて施行令の改正をしないのではないのだろうか……と、ついぞ想像してしまうのである。
7 おわりに
消費税実務において、還付請求手続と並んでトラブルの多いのが簡易課税制度を適用する場合の業種区分の誤りである。事業区分の判断ミスは、そのまま倍々方式で納税者に襲いかかってくる。たとえば、第1種事業だと考えて申告をしたものが、税務調査で第2種事業に修正ということになれば税負担は2倍になる。第5種事業であればなんと5倍の税負担である!
これが過去5年分の修正申告ということになってしまったら、クライアントにどう説明したらよいのだろうか……。
税務調査により、売上げや棚卸商品の計上漏れが発見されたような場合には、往々にして顧問先の経理担当者などにその原因があるケースが多いようである。しかし、こと簡易課税の事業区分に関してだけは、顧問税理士がその判断をするわけであり、その判断ミスは100%税理士の責任になるものと覚悟しなければならない。
事業区分にあたっては、下手な先入観念にとらわれずに、まずは法令をしっかりと確認し、その基本的な考え方を理解することが大切である。
中途半端な知識のままに、みようみまねで解説書などを読んで判断をしたり、AIの回答を鵜呑みにしたりしていると、いつかとんでもない失敗をすることにもなりかねない。くれぐれもご注意を……。
令和8年度の税理士試験における消費税法の受験申込者数は、 昨年に引き続き税法中トップの9,715人で、二番目に人数の多い法人税に倍以上の差をつけている。受験専門学校で25年間受験指導をしてきた筆者としては、真剣に一生懸命勉強した受験生が一人でも多く合格することを祈願してやまない。謙虚に公平で真面目な採点を期待したい。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-

-

団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -















