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解説記事2026年09月07日 特別解説 無限定適正意見(結論)以外の監査意見(結論)が表明された事例の調査分析(その2)(2026年9月7日号・№1137)

特別解説
無限定適正意見(結論)以外の監査意見(結論)が表明された事例の調査分析(その2)


監査意見(結論)が不表明となった各社について、会計監査人がそのように判断した根拠(続き)

 無限定適正意見(結論)以外の監査意見(結論)が表明された事例の調査分析(その1)に引き続き、監査意見(結論)が不表明となった会社について、会計監査人がそのように判断した根拠の紹介を続けることとする。

④(株)REVOLUTION
 株式会社REVOLUTIONは都内に本社を置く不動産テック企業であり、東証スタンダード市場に株式を上場している。2019年に株式会社原弘産から商号を変更した。BtoB向けに提供されるサービスとして、都心の優良物件に特化した不動産の再販事業を展開するほか、2023年3月からは、不動産金融子会社を新たに設立し、ファイナンス事業を開始している。
 2026年10月期半期の期中レビュー報告書において、会計監査人である監査法人アリアが記載した「結論不表明の根拠」は次のとおりであった。
(結論不表明の根拠)
 追加情報に記載されているとおり、会社は、連結子会社であるY社が組成し、運営する不動産ファンドが外部の仕入先からの不動産購入に際し、一部の購入不動産について締結した売買契約あるいは同契約とは別途取り交わした覚書に、購入不動産を買戻す旨の取り決めがあり、実際に不動産の購入価格を著しく上回る金額で仕入先等がY社より買戻している複数の取引が存在することを認識した。これを受けて会社は、これら実際に買戻しのあった取引も含め、買戻しの取り決めのある取引については、収益認識に関する会計基準等に照らして適切に会計処理が行われていなかった可能性があると判断し、取引の経済的実態等の事実関係の調査及び財務諸表等への影響の検討等を目的として2026年6月15日開催の取締役会において、社内調査委員会を設置することを決議した。今後、社内調査委員会の下で調査が開始され進められていくことになるため、当監査法人は買戻し取引に係る会計処理の妥当性、類似取引の有無、当該事象が中間連結財務諸表に与える影響の網羅性について、十分かつ適切な証拠を入手できていない。当監査法人は、社内調査委員会の調査の結果が当連結会計年度の中間連結会計期間に係る中間連結財務諸表と比較情報との比較可能性に重要かつ広範な影響を及ぼす可能性があると判断している。その結果、当監査法人は、会社の当連結会計年度の中間連結会計期間に係る中間連結財務諸表に対して、結論表明の基礎となる証拠を入手することができず、中間連結財務諸表に重要な修正が必要かどうかについて判断することができなかった。

⑤(株)海帆
 株式会社海帆(かいはん)は、全国で居酒屋などの飲食店を展開する企業で、東証グロース市場に上場している。現在は、東海地方を中心にフランチャイズの「新時代」を展開しているほか、事業の第二の柱として、2022年から再生可能エネルギー事業も手掛けている。
 2026年3月期の監査報告書において、会計監査人であるプログレス監査法人が記載した「意見不表明の根拠」は次のとおりであった。
(意見不表明の根拠)
 会社は継続して営業損失、経常損失及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上している。また、会社は2026年4月27日にF社に対する債務約109百万円につき名古屋地方裁判所より差押命令を受け、さらに、会社は2026年5月11日および同年6月9日に会社の社会保険料の滞納分合計約39百万円につき日本年金機構より資産の差押を受けており、資金が逼迫している状況が認められる。これらのことから会社の継続性の前提に重要な不確実性が認められる。当監査法人は、会社が実施した継続性の前提に関する経営者の評価につき、会社にこれらの状況を含めた評価の実施を求めたにもかかわらず、経営者が進めている対応策又は改善するその他の要因の存在についての十分な監査証拠を入手できなかったことから、現時点では、必要な監査手続を完了することができなかった。株式会社海帆の財務諸表において、上記のように資金の逼迫が深刻であり、会社の継続性の前提についての重要な不確実性が財務諸表に与える影響は重要かつ広範であるため、当監査法人は、上記の財務諸表について、意見不表明とすることにした。

 (株)海帆の場合、業績不振や資金繰りの逼迫により、会社の継続性の前提に重要な不確実性が認められるにもかかわらず、経営者が実施する対応策等の十分な監査証拠を入手できなかったことを理由に監査意見不表明とされている。継続企業の前提に関する不確実性(疑義)の存在は、売掛金や棚卸資産等の特定の勘定科目に影響するのみならず、まさに会社全体の浮沈に関する事項であり、あらゆる財務諸表項目に直接・間接的に影響を及ぼすこととなる。
 監査意見や結論が不表明となる場合、監査対象会社の内部統制の全社的な重要な不備や、会計監査人と経営者との間の信頼関係の欠如、会計上の不祥事(不正等)の発生に伴って第三者委員会による調査が継続中、といった事項が背景となることが多いが、会計上の不祥事等がなくても、経営不振や資金繰りの逼迫等によって監査意見や結論が不表明となる可能性がある。

監査報告書(レビュー報告書)で限定付適正意見(結論)が表明された会社

 次に、2026年1月1日から6月30日までに、会計監査人が限定付適正意見又は限定付結論の報告書を発行した会社は、の3社であった。

 このうち、(株)ウェッジホールディングスと昭和ホールディングス(株)の2社について限定付適正意見(限定付結論)が表明された経緯や根拠等については、すでに本誌No.1115(2026年3月16日号)において取り上げたことから、本稿ではエア・ウォーターの事例を取り上げることとしたい。

① エア・ウォーター(株)
 エア・ウォーター株式会社は本社を大阪市内に置く産業ガスメーカーである。2000年に大同ほくさんと共同酸素が合併して誕生した。産業ガス事業では日本酸素、日本エア・リキードと並び、日本での3大産業ガスメーカーの一つであり、東証プライム市場に株式を上場している。
 エア・ウォーターの会計監査人は有限責任あずさ監査法人であり、2026年3月期半期の半期レビュー報告書において、「限定付結論の根拠」として記載した事項は次のとおりであった(非常に長文のため、筆者が適宜要約・圧縮している)。
(限定付結論の根拠)
 会社は、連結子会社で在庫に関する不適切な会計処理(損失の先送り)を2025年7月に発見した。その後、社内調査と当監査法人の監査により、会社及び他の連結子会社においても在庫に関する不適切な会計処理が発見され、会社役職員の関与の可能性も生じたため、会社は、2025年10月に特別調査委員会を設置して調査を進めるとともに、会社(外部専門家を含む。)による自主点検を実施した。
 特別調査委員会による調査及び会社による自主点検には、財務分析、実地棚卸の実施状況の検証、収益認識の妥当性の再検討に加え、不適切な会計処理の実態を把握するための以下の調査手続が含まれている。(中略)
 これらの調査及び自主点検を実施した結果、会社及び複数の連結子会社において、売上又は利益目標達成への会社の経営トップによる過度なプレッシャーを背景に、証憑の偽造やデータの改ざんを伴う売上収益の前倒し又は後倒し、売上収益の二重計上、在庫の過大計上、資産評価損の先送り、引当金の計上回避、資産性のない支出の資産計上など様々な不適切な会計処理が行われたことが判明した。そのため、会社は、現時点で特定された虚偽表示について比較情報を修正再表示するとともに、当中間連結会計期間の要約中間連結財務諸表に反映しているが、過年度の有価証券報告書等は訂正していない。なお、調査及び自主点検は継続しているが、会社は、現時点までに得られた結果に基づいて未了事項の影響を評価した結果、今後の調査及び自主点検により新たな虚偽表示が判明したとしても要約中間連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性はないと判断している。
 当監査法人は、上記の不適切な会計処理が判明したことを受け、質問及び分析的手続に加えて、追加的な手続として、不正調査の専門家やITの専門家を利用しながら、これまでに実施された調査及び自主点検の結果を評価するとともに、売上収益及び売上原価の証憑突合、実地棚卸の立会などを実施した。しかし、下記1及び2の事項を確かめるための重要な期中レビュー手続を実施できなかった。
1.A社の売上収益及び売上原価の期間帰属の適切性
 会社の連結子会社であるA社では、売上収益及び売上原価について、売上収益の前倒し又は後倒し、原価付替などの不適切な会計処理が過年度から行われていたことが判明した。そのため、当監査法人は、期中レビュー手続において、A社の営業・会計の責任者等に対して取引内容や取引条件等を質問したほか、工事契約書や工事完成引渡書、物品受領書、発注書等の証憑との突合などの追加的な手続を実施した。しかし、工事完成日や物品の引渡日に関連する証憑が偽造されていたほか、労務費や外注費等の原価付替の実態解明に必要な記録が残っていなかったことから、当監査法人は、A社における当中間連結会計期間の売上収益13,052百万円及び売上原価8,190百万円、比較情報である前中間連結会計期間の売上収益10,578百万円及び売上原価7,318百万円(それぞれ関連する財政状態計算書項目を含む。)に係る期間帰属の適切性を検証するための手続が実施できず、結論の表明の基礎となる証拠を入手できなかった。(中略)
 この結果、当監査法人は、当中間連結会計期間の売上収益及び売上原価並びに比較情報である前中間連結会計期間の売上収益及び売上原価の数値に修正が必要となるかどうかについて判断することができなかった。これらの影響は、連結子会社であるA社の特定の勘定科目に限定されている。したがって、要約中間連結財務諸表に及ぼす可能性のある影響は重要であるが広範ではない。
2.売上収益の期間帰属の適切性
 要約中間連結財務諸表注記(過年度の虚偽表示の修正再表示)に記載されているとおり、会社及び複数の連結子会社において、売上収益の前倒し又は後倒し、売上収益の二重計上、原価付替などの不適切な会計処理が過年度から行われていたことが判明した。そのため、これまでに実施された調査及び自主点検の結果として特定された虚偽表示について比較情報を修正再表示するとともに、当中間連結会計期間の要約中間連結財務諸表に反映しており、修正された虚偽表示は多数ある。要約中間連結財務諸表に計上された売上収益の額及び虚偽表示の修正による売上収益の減少額は以下のとおりである。(中略)
 多数の虚偽表示が検出されたことを受け、当監査法人は、期中レビュー手続において、商流の再調査、売上収益及び売上原価の証憑突合、当中間連結会計期間末における実地棚卸の立会などの追加的な手続を実施した。しかし、売上収益の期間帰属に係る不適切な会計処理は、会社及び複数の連結子会社において検出されており、加えて、売上収益の期間帰属を確かめるために必要な証憑が適切に保存されていなかったことから、当監査法人は、前連結会計年度以前の会計年度末における売上収益(関連する売上原価及び財政状態計算書項目を含む。)の期間帰属に係る虚偽表示として修正すべき額の妥当性を検証するための手続が十分に実施できなかった。この結果、当監査法人は、当中間連結会計期間及び比較情報である前中間連結会計期間の売上収益の期間帰属に係る虚偽表示として修正すべき額(関連する売上原価及び前連結会計年度末の財政状態計算書項目の修正すべき額を含む。)について結論の表明の基礎となる証拠を入手することができず、これらの数値に修正が必要となるかどうかについて判断することができなかった。ただし、これまでの調査及び自主点検並びに当監査法人による期中レビュー手続により発見された売上収益の期間帰属に係る虚偽表示の修正による影響は、個々に重要ではなく、集計した場合でも要約中間連結損益計算書に計上されている売上収益に比して限定的である。そのため、残存している可能性がある売上収益の期間帰属に係る虚偽表示の修正による影響は、要約中間連結財務諸表全体に対して結論表明ができない程ではなく、要約中間連結財務諸表に及ぼす可能性のある影響は重要であるが広範ではない。上記の「1.A社の売上収益及び売上原価の期間帰属の適切性」及び「2.売上収益の期間帰属の適切性」の影響は、集計しても特定の勘定科目に限定され、当該影響を除外すれば、要約中間連結財務諸表は、会社及び連結子会社の2025年9月30日現在の財政状態並びに同日をもって終了する中間連結会計期間の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適正に表示していないと信じさせる事項が全ての重要な点において認められない。したがって、要約中間連結財務諸表に及ぼす可能性のある影響は重要であるが広範ではない。

 「売上収益の期間帰属に係る不適切な会計処理は、会社及び複数の連結子会社において検出されており、加えて、売上収益の期間帰属を確かめるために必要な証憑が適切に保存されていなかった。」といった記載内容からすると、会社(及びグループ各社)の全社的な内部統制に広範かつ重要な不備があるとも判断されかねないが、「これまでに実施された調査及び自主点検の結果として特定された虚偽表示について比較情報を修正再表示するとともに、当中間連結会計期間の要約中間連結財務諸表に反映しており、修正された虚偽表示は多数ある。」点や、「売上収益の期間帰属に係る虚偽表示の修正による影響は、個々に重要ではなく、集計した場合でも要約中間連結損益計算書に計上されている売上収益に比して限定的である。」といった点を勘案し、その結果として、「残存している可能性がある売上収益の期間帰属に係る虚偽表示の修正による影響は、要約中間連結財務諸表全体に対して結論表明ができない程ではなく、要約中間連結財務諸表に及ぼす可能性のある影響は重要であるが広範ではない。」という最終判断に至っている。
 監査報告書でまる2ページにわたって記載された長大な「限定付結論の根拠」は、会計上の不祥事に対応した会社と監査法人の苦闘の過程を物語っているように思われる。
 なお、2026年3月期の有価証券報告書については、会社は提出期限の延長申請を行っていたが、2026年7月31日までの延長が2026年6月30日付で承認された。

終わりに

 2025年には我が国を代表する優良企業の一つと見られていたニデック(株)やKDDI(株)において大規模な会計上の不祥事が明らかになり、ニデックについては監査意見(結論)が不表明という異常事態が今現在も続いている。この流れは2026年に入っても止まらず、上半期だけですでに7社もの会社に対して監査意見(結論)が不表明となっている。特定の勘定科目に影響が限定される限定付適正意見(結論)とは異なり、監査意見や結論の不表明は全社的に影響が及ぶものであり、会社の存続可能性にも大きく影響する。株価や投資家に与える衝撃度もより大きい。現在監査意見(結論)が不表明となっている各社が、無限定の監査意見や結論を得るために今後どのような対応策を実施するのか、会計上の不祥事や業績の低迷等により、監査意見(結論)が不表明となる会社が今後もさらに増えるのか、下半期も注目して見守りたい。

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