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訴訟・登記2014年03月17日 やはり遺言を 執筆者:青木登

 不動産の権利に関する登記の中でも、相続に関する登記は複雑で、処理に苦慮する事例が多いと思われます。他の登記に比較して必要とされる戸籍等の書類が多量であること、親族法等の関係する法令が多岐にわたることがその理由として考えられますが、それに加えて、被相続人と相続人、相続人間の人間関係がその底流にあると実感するものです。
 相続登記の相談の中で、共同相続人の一人が、どうしても遺産分割協議書に押印を拒否し、多額の「ハンコ代」を要求されたとの話もよく聞かれるところです。相続権があることを奇貨とする者がある反面、そもそも法定相続分が納得できないとするのがその原因の一つと考えられます。
 この法定相続分に関して、周知のように最高裁判所は、非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分の半分とする民法900条4号ただし書きの規定は、憲法14条に反すると解し(平成25年9月4日決定)、民法の当該部分は削除され、登記実務上も同決定の趣旨に適する通達が発出されたところです (平成25年12月11日民二781号)。しかし、法的安定性を理由として平成13年7月1日以前の相続に関しては従前のままとされています。
 しかし、このことは、法理論としては理解できるとしても、一般には不公平感が払拭できるか疑問のあるところです。「相続開始」の時期が悪かったとも考えられるからです。
 この不公平感を払拭するには、従来から言われているように、遺言による相続の普及が一層望まれるところと思われます。相続人の全員が納得するには、被相続人の意思を根拠とするのがベストと考えられます。
 遺言が被相続人の財産権の死後処分であるとすれば、相続人も被相続人の意思に従うべきとするのは十分に説得力があると考えるからです。
 そうすると、登記実務に限らず遺言に関与する者は、可能な限り遺言を有効と解するとともに、紛争の生じる余地のないように遺言書を作成すべく、丁寧な作成方法の説明が必要となると考えるところです。

(2014年2月執筆)

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