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民事2009年03月05日 不況に強い?定期借地権の最近の展開  執筆者:荒木哲郎

 不況になると定期借地権の利用が増えると言われることがありますが、これは定期借地権を利用することにより、物件の敷地の所有権を取得する場合に比べ、良質な物件を安価に提供できることが可能になるからであると思われます。
 最近の例としては、昨年マスコミ等でその低価格が話題になった、品川駅東側に建築された期間70年の定期借地権マンションが挙げられます。
 借地借家法の制定とともに創設された定期借地権も、平成4年の施行より今年で17年目ということになりますが、ここ1、2年の間に、重要な改正がなされ、また、注目すべき裁判例が出ています。

 まず、平成20年1月1日に施行の借地借家法の改正により、定期借地権の一類型である従前の事業用借地権について、「事業用定期借地権」という名称に変更されるとともに、期間が10年以上20年以下から、10年以上50年未満と最長期間が伸長されました。
 これに伴い、従前、借地借家法第23条に規定されていた建物譲渡特約付借地権と入れ替わる形で、事業用定期借地権の条数が同法第24条から同法第23条となっています。
 従前の事業用借地権は、制定時においては飲食店や家電等の量販店等の敷地等の比較的短期での利用が念頭におかれていたとされますが、その後の地価の下落等の不動産事情の変化から、企業の土地保有に関するリスク回避の傾向が高まり、現実には大規模商業施設等の長期の利用目的でも利用されていました。
 しかし、その場合20年以下という最長期間は短く、特に建物の減価償却期間と一致しないといった不都合性等が指摘されたことから、最長期間の伸長が要請されるようになり、今回の改正に至ったものです。
 従前でも50年以上の期間であれば、用途が制限されていない一般定期借地権(借地借家法第22条)の利用が可能でしたが、今後は事業用であれば20年超50年未満の期間での定期借地権の設定も可能となり、結局のところ事業用目的での定期借地権の設定期間は、10年以上という点以外の制限は無くなったことから、その利用の可能性は間違いなく広がるものと思われます。

 次に、裁判例についてですが、定期借地権(及び定期借家権)に関しては、これまで、これといった裁判例が出ていませんでした。
 これは、もちろん、その制定からまだ時間が経っていないという理由もありますが、そもそも借地借家関係のトラブルの重大要因である、法定更新及び正当事由制度を排除しているのが定期借地借家制度ですので、裁判例が少ないのはある意味当然とも言えます。
 ただ、近時、定期借地契約において賃料減額請求がなされた事案において、賃借人の請求を棄却する注目すべき判決が、平成18年に千葉地裁で出されました。
 同じ定期契約でも定期借家契約は、特約で賃料増減額請求権を排除できますが(借地借家法第38条第7項)、定期借地契約では賃料増減額請求権(借地借家法第11条)を特約で排除することはできないものとされています。
 本事案の一般定期借地契約では、賃料の改定について年金等の改定に用いられているのと同様の、いわゆる消費者物価指数スライド方式を用いて、3年ごとに賃料を自動改定することを特約していたのですが、賃借人は、約10年間で50%以上地価が下落したこと等を理由にして、それとは別に賃料減額請求を行いました。
 しかし、同判決は、上記方式により賃料改定特約を定めているのは、長期間にわたる定期借地契約関係を維持することができるように配慮したものであり、賃料減額請求の当否を判断するに当たって重要な意味を持つとして、最後に契約当事者が最後に賃料の合意をしたのは直近の賃料改定時であることから、それ以降に賃料を減額すべき事情の有無等を判断し、改定後の賃料が減額請求時においても不相当であるとは言えないとして、賃借人の請求を認めませんでした。
 同判決は、平成19年に東京高裁において賃借人の控訴が棄却され、確定していますが、この判決により、定期借地権では、(消費者物価指数スライド方式等を採用することにより)その期間内は安定的に一定の地代を得ることができるというメリットが確認されたものと考えられます。

 100年に一度とも言われる金融危機の影響で、昨今の不動産事情には厳しいものがありますが、上記の改正や裁判例は、期せずして定期借地権が更に利用されるための状況が整えられたと言えると思われます。

(2009年2月執筆)

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