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民事2007年11月07日 境界をめぐる紛争とADR 執筆者:山崎司平

 近代民主主義社会では、「法の支配」という考え方がとられ、自らの権利を主張したり、相手方に義務を強制するためには、厳格なルールに従った法律上の手続を経ることが要請されています。実力行使により権利状態を変更すること(自力救済)は、原則として禁止されます。これまでは、紛争の解決は、もっぱら裁判所を利用する方法が中心でしたが、最近は裁判外の紛争解決手続も利用できることとなっています。すなわち、司法制度改革審議会は、平成13年6月に発表した「意見書」で、ADR(Alternative Dispute Resolution)を「裁判と並ぶ制度」として位置づけ、国民に多種多様な紛争解決制度を提供することを提言しました。この提言に基づき、平成16年3月から「仲裁法」が施行され、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(ADR法)が平成19年4月から施行されました。なお、ADRの日本語訳は、当初は「代替的紛争処理」でしたが、その後、「裁判外紛争処理」となり、最近は「裁判外紛争解決」とされることが一般的になりました。筆者は、「ADRを意訳すると‘裁判外紛争解決支援’になっていくであろう」と講演等で述べていましたが、法務省の認定ADRは、「かいけつサポート」という表示をするように指導されています。
 ADRにおいては何を基準として解決するか、法源は何かという問題があります。ADR法は「法」であるとしました。第二東京弁護士会での仲裁センターを設立させた当初の議論としては、「善と衡平」や「法と条理」を主張する意見が有力でした。この問題には、訴訟とADRの根本的な違いが、有力な手がかりになると思います。訴訟は「過去の事実を認定して、法を適用する」という側面があります。これに対してADRは、「将来に向けての、開かれた解決策を模索する」のが特色であると説明する方がいます。このADRの特色に着目すると、法律の条文に書かれた「要件」と「効果」にとらわれることなく、多様な解決策が模索されてよいと思います。しかしながら、法治国家における解決ですから、「公序良俗」に反するような結論を是認するのは許されないでしょう。ADR法が、弁護士が関与することを認証ADRの要件としている理由も、ここにあると思います。
 司法型のADRとしては、古くから「調停」制度があります。消費者と事業者との紛争や、都会における交通事故は、解決後に当事者が顔を合わせることが少ないと思われますので、徹底的に権利を主張しあっても解決後の生活に悪影響を与えることは少ないでしょう。これに対して近隣紛争は、土地を接して所有している者の間における紛争ですから、紛争が決着した後も多年に亘って近隣関係を続けなければならないことが多いと思われます。近隣関係においては互譲の精神に基づく調停による解決が望ましい、と言えるかも知れません。「互譲の精神」に基づく調停制度があるにも拘わらず、ADRによる解決を志向する理由は何でしょうか。ADRの特色はたくさんありますが、時間的な制約及び場所的な制約がないことが、民間型ADRの最大の特色だと思います。東京土地家屋調査士会のADRにおいて、弁護士の解決委員が、土曜日や日曜日に都下の係争土地に出向き、時には近所にある地域の集会所を利用して、当事者間の言い分を充分に聞いて、訴訟と比較した場合よりも相当に短期間で、事案を解決した例があります。ADRの面目躍如たる事例です。
 日本におけるADRの歴史はそれなりに古いのですが、第二東京弁護士会が、全国の弁護士会の魁として、平成2年3月15日に「仲裁センター」を発足させたことが特筆されるべきだと思います。現在では全国で23の弁護士会が弁護士会ADRを設置しています。ADR法においては、法務省の認定による民間ADRが数多く設立されることが期待されていますが、弁護士会の他には、全国50単位会のうち22以上の土地家屋調査士会が、弁護士会との協働関係によって「境界ADR」を設置されていることが目立ちます。今後は、これらの弁護士会ADRや土地家屋調査士会の境界ADRを利用して境界をめぐる紛争が、「簡易・迅速・低廉・公正」に解決されることが期待されます。

(2007年11月執筆)

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