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民事2025年06月05日 「不当な配転」防止課題 日本型雇用が壁に 改正公益通報者保護法成立 提供:共同通信社

 兵庫県知事や鹿児島県警での問題を巡り内部通報者の保護に注目が集まる中、改正公益通報者保護法が4日成立した。通報を理由にした報復行為を厳しく禁じ、刑事罰を導入。ただ国会論戦では、当事者らから「不当な配置転換を罰則対象に含めるのは必須だ」などの不満も出た。日本で多く採用されている雇用形態が背景にあるとされ、告発者保護に課題を残した。
 ▽30年以上閑職
 「人事権の乱用で、通報者の生涯を奪うことができてしまう」。4月22日の衆院消費者問題特別委員会の参考人質疑。かつて運輸業界のヤミカルテルを内部告発し、報復として30年以上閑職に追いやられた富山県高岡市の串岡弘昭(くしおか・ひろあき)さん(78)は、罰則対象に配置転換を含めるべきだと訴えた。
 消費者庁が2023年に就労者1万人を対象にしたアンケートでは、通報後に報復を受けたとする人のうち37・7%が「不利益な配置転換」を経験したと回答した。通報者の代理人をしてきた弁護士も「報復として配置転換を受けることが多く、解雇・懲戒処分だけでは保護できない」と強く主張する。
 ▽区別困難
 立憲民主党は今国会で不当な配置転換を罰則に含める修正案を独自に提出。しかし、他の野党などとまとまることができず、採決前に修正案を取り下げた。
 なぜ配置転換が罰則対象から外れたのか。政府は国会答弁で日本の雇用体系を理由に挙げた。
 転勤があり職務内容が頻繁に変わる「メンバーシップ型雇用」が主流で、人事異動は日常的。このため通報後に配置転換が行われても、報復的で不当なものと、通常の人事との区別が容易ではなく、導入は難しいとの姿勢を崩さなかった。
 ▽裁判のハードル
 民事訴訟で異動取り消しや損害賠償を求めて闘う道もあるが、自分が在籍する組織と対峙(たいじ)するハードルは高い。報復を受けて裁判を起こす場合、一審判決までに約2年かかることも多い。高裁や最高裁まで争えばさらに長い時間を要する。
 かつて勤務先のオリンパスで不正疑惑を内部通報し、3度の配置転換を受けた浜田正晴(はまだ・まさはる)さん(64)は民事裁判で会社と計8年間闘うことに。「配転は違法・無効」との判決が最高裁で確定した後も原職復帰されず、再度訴訟提起して争い最終的に和解に至った。
 国会で参考人として意見陳述した浜田さんは「提訴した段階で和を乱すと見なされ、社内で孤立させられる。同僚と仲良く仕事をすることが求められる日本の文化では、裁判自体が難しい」と指摘し、裁判ありきの制度では解決策にならないと主張した。
 改正の方向性を示した消費者庁有識者検討会で座長を務めた山本隆司(やまもと・りゅうじ)東大大学院教授にも意見陳述の機会が設けられた。「全ての当事者が納得するまで待ってから法改正をする考え方もあるが、少しずつでも迅速に改正をするアプローチを取りたい」と理解を求めた。

(2025/06/05)

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