自治2025年08月01日 ふるさと納税1兆2千億円 24年度、5年連続過去最高 物価高騰で節約志向影響 提供:共同通信社

総務省は31日、ふるさと納税制度による2024年度の寄付総額が1兆2728億円だったと発表した。5年連続の過去最高更新。コメなどの物価が高騰する中で消費者の節約志向が広がり、返礼品を目当てにした利用が伸びたとみられる。寄付で居住自治体の住民税が軽減される利用者は前年度から約78万人増の1080万人だった。
24年度の寄付総額は1553億円増加。最も寄付を集めたのは、257億円の兵庫県宝塚市。市立病院の建て替えを巡り市内の夫妻から約254億円の寄付があった。次いで北海道白糠町212億円、大阪府泉佐野市182億円、宮崎県都城市177億円。海産物、ブランド牛など人気返礼品をそろえた地域が上位となった。
コメどころの新潟県南魚沼市は、寄付額が前年度の1・2倍の71億円で、18位。仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク(東京)の担当者は、高騰したコメを返礼品で入手しようとする人が全国的に多いと指摘。「物価高騰で、しばらくは寄付額が増加するだろう」と分析した。
都道府県別の合計額は、44都道府県で増えた。北海道1800億円、宮崎県583億円、兵庫県582億円の順だった。
寄付件数は微減の5879万件で、1件当たりの寄付額が上昇傾向。物価高騰で自治体の返礼品調達費も上がったことが影響したもようだ。
寄付による住民税軽減は、居住自治体にとっては税収減になる。都市部では減収幅が広がり、制度への不満の声も高まっている。減収額が多い自治体は横浜市343億円、名古屋市198億円、大阪市192億円など。
自治体が返礼品調達や広報など募集に要した費用は5901億円で、寄付総額の46・4%。このうち仲介サイトに支払った費用を初集計したところ、1656億円で寄付額の13・0%だった。
総務省は10月から、寄付者に特典ポイントを付与する仲介サイトの利用を自治体に禁じる。寄付者の囲い込み競争が制度の趣旨に反するとの理由だが、楽天グループが、禁止に関する告示の無効を求めて提訴している。
返礼品、違反相次ぐ 産地偽装や調達費用超過
ふるさと納税の寄付額や利用者が増加を続ける中、返礼品の産地偽装や調達費用の基準を超過するといった違反は後を絶たない。違反発覚後も基準を超えた返礼品を送ろうとする自治体もあり、処分規定強化の必要性を指摘する声が出ている。
長野県須坂市は6月、総務省に指定を取り消され、制度から2年間除外された。委託していた和歌山県の業者が、山形県産などのシャインマスカットを「長野県産」と表示して寄付者に発送しており、市がそれを把握しながら実地調査を行わなかったことが問題視された。
宮崎県都城市では2022~23年、熊本県錦町の業者が返礼品として外国産の鶏肉が原料の商品を調達し配送。佐賀県上峰町でも23年、業者による牛肉とシャインマスカットの産地偽装が確認された。
岡山県吉備中央町は、返礼品のコメについて、調達費用を「寄付額の3割以下」とする基準に違反したとして、今年6月に制度から2年間除外された。
ところが、処分後も未発送分について、寄付額の約6割の費用で調達して送ることを決定。町は「約束を守らなければ譲渡契約違反に当たる」と主張するが、総務省は制度内で寄付を集めた以上、調達費用は基準内に収めるべきだとの立場だ。
ある幹部は「今の制度で既に一度処分したところに再度処分することはできない」とした上で「悪質な事例の場合は、永久に除外できるような制度改正が必要かもしれない」と語気を強めた。
返礼品充実、寄付増加 開始の08年度は81億円 Q&A「ふるさと納税」
ふるさと納税の2024年度の寄付総額が1兆2728億円と過去最高を更新しました。
Q 仕組みは。
A 好きな自治体を選んで寄付すると、自己負担の2千円を除いた額が居住する自治体の住民税などから控除されます。生まれ故郷などを応援するのが本来の目的です。
Q なぜ増えたの。
A 自治体が寄付者に贈る返礼品が主な要因です。ブランド牛や海産物といった返礼品の充実で制度の利用が広がり、寄付を仲介するサイトも多く登場しました。
Q 利用状況は。
A 制度開始の08年度の寄付総額は81億円で、23年度には1兆円の大台を超えました。ただ寄付額の半分近くは返礼品の調達や送付などの経費に使われ、24年度は5901億円でした。このうち仲介サイトに支払った費用は1656億円で寄付総額の13%でした。
Q 課題は。
A 本来は居住地に納める税金が寄付金として他の自治体に流出する形となるため減収額が大きい都市部を中心に批判的な声もあります。産地偽装など返礼品を巡るトラブルも後を絶ちません。
Q どんな対策を。
A 総務省は「返礼品は寄付額の30%以下の地場産品」「返礼品の用意に必要な経費は50%以下」などと規制を設けてきました。違反すれば2年間は制度から除外されます。10月からは自治体が寄付を募る際、特典ポイントを付与する仲介サイトの利用を禁止します。
林氏「制度の認知度向上」 ふるさと納税、最高額に
林芳正官房長官は31日の記者会見で、ふるさと納税制度による2024年度の寄付総額が5年連続で過去最高を更新したことを受け「年々、制度の認知度が高まっている」と述べた。ゆかりのある自治体に感謝を伝え、税の使い道を選択できると意義を強調。返礼品による自治体の競争過熱を念頭に「本来の趣旨に沿い、適正に運用されることが重要だ」と語った。
ふるさと納税
生まれ故郷などの自治体に寄付すると、自己負担額2千円を除いた額が住民税、所得税から差し引かれる制度で、2008年度に始まった。19年6月からは返礼品は「寄付額の30%以下の地場産品」とし、順守する自治体だけが参加できる制度に移行した。その後も豪華な返礼品を呼び水とした自治体間の寄付獲得競争の過熱を受け、総務省は毎年、ルール改正を繰り返している。
(2025/08/01)
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