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一般2024年03月21日 ドイツのスポーツ事情 執筆者:堀田裕二

1 先日、ドイツに訪問し、ドイツにおけるスポーツ事情について知る機会を得たので今回はこの点について述べる。
 日本では、スポーツを行う一番の場所は学校における部活動であろう。
 これに対し、ドイツでは学校で体育の授業は行うものの、部活動というものは原則的に存在せず、フェライン(以下ではフェラインのことを「スポーツクラブ」という)と呼ばれる日本では総合型地域スポーツクラブのようなスポーツクラブがスポーツを行う場となっている。

2 ドイツには87,000ものスポーツクラブが存在し、2,700万人の会員数を有している。これは、ドイツ国民の約3分の1がクラブの会員になっていることを意味する。また、ドイツ国民の小中学生(7~14歳)の男子の80パーセントがスポーツクラブに加入したことがあり、60歳以上の男性の25%、女性の30%がスポーツクラブに加入しているというデータがある。

3 ドイツのスポーツは、19世紀初頭、ナポレオンの占領と戦うための強い国民を作るという意味もあり、体操(ドイツ体操)を行うスポーツクラブから始まったと言われており、この時期に創設され、200年以上の歴史を持つものがいくつもある。そして、長い歴史の中で地域に根ざし、ドイツ国民にとってスポーツクラブは当たり前のものとなっているようである。

4 ドイツのスポーツクラブは基本的に会員の会費(年会費)で運営されているが、その年会費はクラブによって異なるものの平均的に子供で年間60ユーロ、大人で180ユーロ程度である。スポーツクラブに対しては、州や市からの補助金もあるが、政府などの行政からの補助金は必要な範囲に限られ、また、行政からのスポーツクラブへの干渉は行われない。
 年会費を中心に運営されているスポーツクラブでは、ボランティアベースでの運営がなされており、専門的なコーチや常勤のスタッフなど一部の職員を除いてボランティアで支えられているのが基本である。ドイツオリンピックスポーツ連盟(DOSB)によれば、880万名ものボランティアが働き、その活動時間も非常に長時間にわたるということである。
 そこには、代々地域でスポーツクラブを支えるという考え方があり、また、スポーツクラブの理事など運営に関わるということが名誉であり、キャリアであるという考え方があるようであり、このような考え方故にボランティアベースでの運営が成り立っているようである。

5 スポーツクラブは、必ず日本における公益社団法人のような非営利団体が運営する必要があり、7人以上の発起人を必要とし、登録(登記)される必要があるなどの要件を満たす必要があるものの、要件を満たして登録されれば税金面での優遇が受けられるということになっている。

6 ドイツのスポーツを競技別に見ると、やはりサッカーが圧倒的に人気であり、それ以外に体操やテニス、ハンドボール、馬術、卓球、バレーボールやアイスホッケーなどが比較的広く行われているようである。 サッカーでは、ブンデスリーガと呼ばれるプロサッカーリーグが有名であり、ブンデスリーガには1部と2部に各18チーム、合計36チームが存在する。ブンデスリーガではバイエルン・ミュンヘンが圧倒的に強く、1強の感があるが、このバイエルン・ミュンヘンを含め、ブンデスリーガのチームもすべてベースはスポーツクラブである。
 ただし、さすがにプロチームをボランティアベースでかつ非営利団体で運営することは難しいため、現在ではプロチームの運営は営利法人(株式会社)が行うことが認められている。ただし、あくまで営利法人の親会社にあたる立場にスポーツクラブがいる必要があり、スポンサーなどの資金が入ったとしても、スポーツクラブが必ず51%以上の議決権を持つことができることになっている(50+1ルール)。
 スポーツクラブは、ボランティアベースの非営利団体であるが、会員による民主制により運営されており、会員の意見が反映される仕組みとなっている。そして、ブンデスリーガにおいても、スポンサーからの出資金額に拘わらず、最終的にはスポーツクラブの意向が反映されるようになっており、地域で支えるスポーツクラブがドイツのスポーツを支えるという構図が維持されるようになっている。

7 このような考え方でスポーツが行われているため、ドイツでは皆が何らかの形でスポーツに関わり、皆でスポーツを行うという文化があり、ブンデスリーガの試合はいつでも地域のサポーターで満員という状態があるのである。

8 ドイツのスポーツは長い歴史によって培われてきた面があるため、日本においてすぐに取り入れることはできないかも知れないが、日本でも、部活動の地域移行が言われている中、スポーツへの関わり方、考え方は参考になるものがあると思われる。

(2024年2月執筆)

執筆者

堀田 裕二ほった ゆうじ

弁護士/アスカ法律事務所パートナー

略歴・経歴

【経歴】
平成17年10月 大阪弁護士会登録 アスカ法律事務所入所
平成23年 1月 アスカ法律事務所 パートナー

公益財団法人日本スポーツ仲裁機構 スポーツ仲裁人・調停人候補者
一般社団法人奈良県サッカー協会 常務理事
OCA大阪デザイン&IT専門学校eスポーツ学科 講師
日本スポーツ法学会理事・事務局長
大阪弁護士会スポーツ・エンターテインメント法実務研究会世話役
日本スポーツ協会スポーツ少年団協力弁護士等

【主な取扱い分野】
インターネット、コンピュータに関連する法律問題
スポーツ(eスポーツ含む)・ファッションビジネスに関連する法律問題

【書籍】
「eスポーツの法律問題Q&A」 (共著・eスポーツ問題研究会編)民事法研究会
「スポーツの法律相談」 (共著・菅原哲朗・森川貞夫・浦川道太郎・望月浩一郎 監修)青林書院
「発信者情報開示請求の手引」 (共著・電子商取引問題研究会編)民事法研究会
「スポーツガバナンス実践ガイドブック」 (共著・スポーツにおけるグッドガバナンス研究会編)民事法研究会
「スポーツ界の不思議 20問20問」 (共著・桂充弘編)かもがわ出版
「Q&A スポーツの法律問題(第4版)」 (共著・スポーツ問題研究会編)民事法研究会

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