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民事2025年10月12日 内部告発者に4千万円請求 障害者ホームが元役員提訴 不正請求や食費過大徴収 提供:共同通信社

 障害者向けグループホームの入居者から食費を過大徴収し、公的な報酬の不正請求もしていたとして、埼玉県から行政指導を受けたホーム運営会社が、きっかけとなる内部告発をした元取締役に対し、約4千万円の損害賠償を求める訴訟をさいたま地裁に起こしていたことが11日、分かった。元取締役は「正当な公益通報に対する報復だ」として反訴している。
 公益通報者保護法は「通報で損害を受けたことを理由に、通報者に賠償を請求することはできない」と定めているが、会社側は裁判の中で「会社に損害を与える目的のため、公益通報に該当しない」と主張している。
 裁判資料などによると、会社は埼玉県熊谷市を中心にグループホームを複数運営する「日本リメイク」(さいたま市)。
 同社の取締役だった青木智義(あおき・ともよし)さん(50)は昨年12月、退職前に過大徴収と不正請求のほか、別の取締役による業務上横領の疑いなどを県と県警に通報した。
 県は今年1~2月にホームを立ち入り調査。①食材費と光熱水費の過大徴収分を入居者に返還②人員配置が基準を満たしていないのに受け取った加算報酬を市町村に返還―することなどを指導した。
 業務上横領については「私的流用を疑われないよう会計処理のチェック体制整備」を求めた。同社は「横領の事実はない」として、捜査を求めない上申書を県警に提出し、立件はされていない。
 同社は、青木さんが会計資料を無断で持ち出したほか、従業員に退職を促したと主張。事業を計画通り進められなくなったとして、今年4月、青木さんに約4130万円の賠償を求めて提訴した。
 青木さんは「会計資料は業務の中で得たもので、県や県警の調査・捜査に必要だと思って提出した。現行法では報復訴訟に対する罰則がなく、通報するリスクが大きすぎる。不正に対し声を上げた人が守られるようにしてほしい」と話している。

通報者へ訴訟、懲戒相次ぐ 勤務先の不正や施設虐待で

 勤務先の不正や問題を内部告発したり、高齢者・障害者施設の虐待を通報したりした人が損害賠償請求や懲戒処分を受けるケースは、ここ数年相次いでいる。
 兵庫県では斎藤元彦(さいとう・もとひこ)知事のパワハラなどの疑惑を告発した元局長(故人)が昨年5月に停職処分を受け、県の対応を疑問視する声が広がって大きな問題に発展。
 鹿児島県警では、不祥事に関する個人情報を記者に漏らしたとして、元部長が国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで昨年逮捕、起訴された。
 今回明らかになった埼玉県の会社による提訴と似たケースとしては、従業員による顧客情報のずさんな取り扱いを報道機関に内部告発した元労働組合員らに対し、大手引っ越し会社が今年5月、100万円の損害賠償を求めた訴訟がある。
 障害者施設を巡っては、自治体から虐待を認定された東京都小平市の運営法人が昨年、通報した元職員を懲戒解雇。元職員が解雇無効を求めて法人を提訴している。
 北海道函館市の特別養護老人ホームでは、虐待を通報した元職員の懲戒解雇を巡る訴訟で函館地裁が今年8月、解雇を無効とする判決を出し、確定している。

通報への不当訴訟に制裁を 識者談話

 公益通報者保護法に詳しい日野勝吾(ひの・しょうご)・淑徳大教授の話 まず、悪意のある情報漏えいと正当な公益通報は別次元のものとして捉えるべきだ。今回のケースは埼玉県が調査した結果、通報内容の大半を認めて会社を指導していることから、真実相当性は高いと言える。約4千万円という損害賠償請求額はかなり高く、報復的な訴訟に当たる可能性がある。
 今回のように事業者が通報者を訴えるケースはほかにも起きている。2027年までに施行される改正公益通報者保護法は、通報を理由とした解雇・懲戒処分に刑罰を設けたが、通報者への訴訟についても、判決で不当と認められた場合には何らかの制裁を科す再改正が必要だ。

(2025/10/12)

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