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不動産登記2026年01月19日 公共事業における所有者不明土地への対応 -表題部所有者不明土地解消作業と嘱託登記- 実務で役立つ!ベテラン登記官の知恵袋 執筆者:角間隆夫

 道路の拡幅や整備などの公共事業において、事業区域内に表題部の所有者欄に「字〇〇」や「共有惣代何某」などと変則型登記がされている土地があり、事業推進が遅れたことはありませんか。
 変則型登記がされている土地は、所有者の特定が難しいため、用地の買収や境界の確認ができないことがあると思いますが、そのようなときには、表題部所有者不明土地解消作業における所有者特定方法を参考にすることによって、事業を円滑に進めることができることもあると思います。

 全国の法務局及び地方法務局において令和元年度から長期相続登記未了土地解消事業とともに取り組んでいる表題部所有者不明土地解消事業では、毎年度、作業を実施する地域(字又は大字単位)を選定し、当該地域内にある170筆程度の土地にある表題所有者不明土地の所有者を探索していますが、作業を実施する地域については、令和元年10月17日付け法務省民二第253号民事局長通達においてその選定方法を明確にしています。
 選定にあたっては、地方公共団体等から要望のあった土地を含む地域ごとに、同通達第1の1⑴に定める次の考慮すべき要素に基づき地域を選定して作業を実施しています。

1 自然災害等からの復興・復旧事業を行う必要のある地域

2 自然災害等発生時により大きな被害が発生することから、早急に防災・減災対策を講じる必要のある地域

3 まちづくりや森林の整備などの土地利用や土地の調査に関する計画を策定している地域

4 地域コミュニティが衰退し,地域の実情を知る者が乏しくなるため、早期に所有者等の探索を行う必要がある地域


 正確な筆数は不明であるもののおおよそ410万haあるとされる(「所有者不明土地を取り巻く状況と課題について」国土交通省、平成29年)所有者不明土地の解消には、相当な時間を要しますが、九州に匹敵する面積もある所有者不明土地は、その多くが山林や道路や河川などの公共機関が管理する用地のなかにあると思われます。
 そのため、日常において所有者不明土地があることを意識することは少ないと思いますが、災害からの復興事業や防災のための事業、道路の拡張整備などの公共事業のほか、大規模開発などにおいて事業のための用地買収において探知され、各事業の実施や推進の隘路となることも少なくありません。
 そのため、表題部所有者不明土地解消作業は、地方公共団体などからの要望に基づいて作業を実施する地域を選定することとされています。

 ところで、作業開始から6年を経過した表題部所有者不明土地解消事業では、数万筆もの表題部所有者不明土地の所有者を特定又は所有者として登記する者がないと特定していることから、類型ごとの収集すべき資料や所有者の特定方法等についてのノウハウが、各法務局及び地方法務局において蓄積されているものと思われます。

 表題部所有者不明土地解消作業では、登記官は、所有者を特定又は所有者として登記する者がないと特定したときには、作業の対象として選定した土地について、収集した資料や、資料や現地における調査の結果に基づき所有者を特定又は所有者として登記する者がないと特定した理由を、表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律14条2項に基づき「所有者特定書」に記録することとされていることから、「所有者特定書」が表題部所有者不明土地に係る所有者の特定等のノウハウとも言えます。
 しかしながら、所有者特定書は、対象土地を管轄する登記所において永久に保管され、登記簿の付属書類として、不動産登記法121条3項に基づく閲覧の対象となりますが、閲覧を請求することができる者は、表題部所有者として登記された者やその相続人など、正当な理由がある場合に限られています。

 また、表題部所有者不明土地作業において所有者を探索する際には、様々な資料を収集して調査しますが、これらの資料は、旧土地台帳などの登記所内にある資料のほかは、その多くが、市町村や都道府県において保管されている以下の資料などです。
 ・固定資産税台帳
 ・農地台帳
 ・墓地台帳
 ・森林台帳
 ・道路管理台帳
 ・ため池データベース
 市町村や都道府県において保管されているこれらの資料について、表題部所有者不明土地の所有者の探索において活用される理由については、資料を保管している市町村や都道府県の担当者が、承知されているものと思います。

 一方で、表題部所有者不明土地解消作業は、地方公共団体から要望に基づき作業を実施する地域を選定するとされているものの、表題部所有者不明土地解消作業を実施する地域の選定は、上記通達第1の2において同1の⑴の選定要素の順に優先すべき要素とされていること、また、選定要素の優先度が同じである場合には、表題部所有者不明土地が多い地域から順に選定することから、市町村などの要望と一致しないこともあると思われます。

 表題部所有者不明土地解消作業の実施を要望したものの、選定要素において後順位となるため、作業の実施に数年の期間を要する場合には、表題部所有者不明土地解消作業で積み上げた所有者を特定等するノウハウの活用を図って、嘱託による表題部所有者の変更又は更正の登記や所有者不明土地管理制度によって、表題部所有者不明土地の解消を検討することも、一つの方策ではないかと思います。

 表題部所有者不明土地に係る所有者の特定等のノウハウについては、登記申請による表題部所有者の変更又は更正の登記や、所有者不明土地管理制度において活用されることも期待されるところですが、個人は元より弁護士や司法書士、土地家屋調査士などの資格者であっても、容易に閲覧等ができない資料もあり、また、登記の申請代理を業務とする司法書士や土地家屋調査士、所有者不明土地管理制度に携わる裁判官や弁護士と、資料に基づく所有者の特定方法を共有するために個別の事案について打合せ等を行うことが、必要と考えられます。

 その一方で、表題部所有者不明土地の所有者の特定に必要な資料や情報を保管していると思われる市町村等であれば、必要な資料や情報の提供も可能であり、資料や情報の活用についてもより具体的に検討されるものと思われます。
 市町村等から資料や情報の提供を受けて、法務局又は地方法務局において積み上げられた表題部所有者不明土地解消作業におけるノウハウを基に市町村等と資料や情報の有効な活用方法を打ち合わせることにより、表題部所有者不明土地の解消が図られるとともに、表題部所有者不明土地の所有者の特定方法について、広く情報が共有され、表題部所有者不明土地の解消がより一層推進されることを期待します。

(2025年12月執筆)

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