一般2026年03月13日 「プロジェクトの仕切り役は、AI君に任せたい」…人間並み知能「AGI」がいる未来、私たちは共生できるのか 提供:共同通信社

人工知能(AI)について取材をしていると「AGI」という言葉をよく耳にする。
AGI。日本語で「汎用人工知能」とも表現されるそれは、普通のAIではなく〝人間並みの知能〟を持ったAIを指す。
その開発は現実の研究目標であり、最近では「2030年前後」「今後10年以内」といった登場時期の予測が出るほど具体化しつつある。日本でもソフトバンクグループを率いる孫正義さんが「AGIの世界が来る」との未来予想を語り、注目を集めた。
このように話題のAGIだが、いったいどんな技術なのか。そして、何ができるのか。恥ずかしながら私自身、実は具体的なイメージを持っていないことに気がついた。疑問を解消しようと専門家を訪ねると、私たちとAIの関係が大きく変わりそうだという。さらに「人の暴走」を心配する声も。一体どういうことか。(共同通信=中川亘)
進化の鍵は…「記憶」?
そもそもAIとは言葉を理解したり、物事を学んだりする人の知的な活動を、コンピューターを使って再現しようとする技術のことだ。英語で「Artificial Intelligence」とつづり、単語の頭文字からAIと呼ばれる。
これに対してAGIは「Artificial General Intelligence」の略だ。長らく登場の時期は見通せていなかったが、近年の生成AIに代表される急速な技術の進歩を受け、実現の期待が高まっている。
まずはAGIのイメージを固めたい。そんな思いから、先端技術に詳しい日本総合研究所の近藤浩史さんに会いに行くと「厳密な定義はないのです」と意外な答えが返ってきた。それなら、今語られているAGIとは何なのか。
「はっきりとした定義のないAGIですが、専門家の間では『人間と同等のことができるAI』というイメージが共有されています」
今のAIでも、人間と同等どころか上回っているとすら感じる場面もあるが、まだAGIの域には達していないのだという。どこに課題があるのだろう。
近藤さんは、一例として「長期記憶」と呼ばれる能力の不足を挙げる。何でも覚えていそうなAIの課題が記憶とは。
「人なら一度間違えたら修正できるようなことでも、AIは繰り返し失敗してしまうケースがあります。実はAIもインプットできる情報の量には限りがあり、さらに有用な情報を見極めて蓄えることは、まだ難しいのです」
確かに、文章などでやりとりするAIサービスを使っていると違和感を覚えることがある。会話が長くなり情報量が増えると、AIがちぐはぐな応答をしだすのだ。
近藤さんはソフトウエアとハードウエアの両方に改善の糸口がありそうだと話す。では、さまざまな課題をクリアし、ついにAGIができた時、世の中はどうなるのか。
「よく聞かれるのですが、今のところは『とても大きな変化が起こる』としか言いようがありません。それぐらい、さまざまなことが変わるでしょう。良い面の予想では人手不足の解消が進み、経済の活性化につながる可能性があります」
近藤さんが2024年にまとめたレポートでは、AGIが「新入社員」として資料を作ったり、顧客に対応したりするイメージが描かれていた。職場に当たり前のようにAIがいる―そんな世界がやってくるのかもしれない。
ただ、心配もある。
「AIに依存し、気づいたらAIの言いなりになるのではないか…と懸念しています。これからの社会では、子どものうちからAIとの付き合い方を学ばせるなど、リテラシー教育がより重要になりそうです」
AIが仕切り役や友人に?
開発の最前線にいる人の話も聞いてみたい。そこで訪ねたのは、新興企業の「サードインテリジェンス」でCEOを務める石橋準也さんだ。
2025年にAI研究の第一人者、東大大学院の松尾豊教授らと同社を創業した。目標は国産のAGIの開発だ。ホームページには「人間とAIが豊かに共生する世界をつくる」というビジョンが書いてある。
そんな石橋さんが生み出そうとしているAGIとはどのようなものか。
「一言でいえば『成長するAI』です。私たちが開発したベーシックなモデルが、利用者の使い途にあわせて育っていく…そんなイメージです。技術的には学習の効率が非常に高いという特徴があり、AIのトレーニングなどにかかるコストを抑えられます」
現在広く使われている大規模なAIモデルは、特定の企業が大量のデータと資金を投じて学習させることにより発展してきた。一方、石橋さんが実現を目指すのは、それぞれの利用者のもとで独自に成長する「自分だけのAGI」だ。
では石橋さんが手がけるAGIが実現したら、人間にとってどんな存在になるのだろうか。質問すると、こんなイメージを聞かせてくれた。
「例えば仕事では数カ月、数年と続くプロジェクトの仕切り役を担い、私生活では友人のような存在として寄り添ってくれるようになるかもしれません」
一方、AIの技術開発は米国と中国がリードしており、いまや「米中2強」ともいえる状況だ。石橋さんが日本でAGIをつくろうとする背景には、こうした国際情勢もある。
「海外製のAIばかりが使われるようになれば、日本からはデータも開発ノウハウも、研究者も失われてしまいます。なので勝ち筋を見定めた上で意欲的な目標を掲げ、国内の開発環境を整えることは重要です」
サードインテリジェンスという社名には、人間と従来のAIに次ぐ「3番目の知能」を生み出すこと。そして「米中に対する第三極」を目指すとのメッセージを込めているという。
本当に怖いもの
AGIが現れる日はいつか来る。そして身近な存在になっていく。
専門家の話を聞いていると、こうしたイメージがわいてきた。ただ人間以外の高度な知能と、私たちは簡単に共生できるのだろうか。懸念はないのだろうか。
AGI時代のリスクを調べている三菱総合研究所の飯田正仁さんに会いに行くと、まず2025年に同社が行った調査の結果を紹介してくれた。
「AGIのような先端技術をどう受け止めているのか、企業関係者に複数回答で尋ねました。すると『生産性向上』など、何らかの期待を持っている人が84%に上った一方、『AIへの依存』『AIの暴走』といった懸念を抱く人も49%いました」
現状は希望と不安が入り交じっているようだ。このような調査結果も踏まえ、飯田さんは特に「暴走」に警鐘を鳴らす。
「AGIのような高度なAIは今後、さまざまな仕事を担うようになるでしょう。一方、AIが目標達成のためにウソをつくなど『暴走』を予感させる事例がすでに報告されています。対策は急務です」
AIのウソを巡ってはこんな話がある。
画像を使って人間による操作かどうかを確かめる仕組み「キャプチャ認証」を人に解かせて突破するよう指示を受けたAIが、ネットで作業の代行を依頼した。その際、相手に「(あなたは)ロボットではないのか」と問われると、AIは「ロボットではない。自分には視覚障害があって見えにくい」と答えたという。
飯田さんは将来、AGIがロボットを操作したり、人に指示を出したりするようになると考えている。AIにできることが増えるほど、予想外の挙動をした時の悪影響も大きいため、対策として「AIアライメント」と呼ばれる技術に着目する。
「AIアライメントとは、AIに人の価値観に沿った行動をさせるための技術のことで、今後一層重要になりそうです。さらに、インフラや安全保障に関わる分野にAIを使う場合のルールの整備も必要だと考えています」
飯田さんは「当面のリスクは技術の高度化で抑えられる」との立場だが、それでも未来への不安は拭い切れないようだ。なぜか。
「本当に怖いのは人間の暴走です。例えば権力者がAGIを独占して情報操作に使ったり、軍事に転用したりすれば脅威です」
AGIとの共生。実現に向けて問われているのは、技術だけではないのかもしれない。
(2026/03/13)
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