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相続・遺言2026年05月03日 望まぬ申し立てトラブルも 「本人や家族の声聞いて」 提供:共同通信社

 身寄りのない高齢者らを対象に、市区町村長が成年後見の開始を家裁に求める「首長申し立て」が増えている。自治体が保護や対応に力を入れてきた表れともいえるが、一部では「望まない申し立てをされた」とトラブルになる事例も。より使いやすい制度の実現を掲げた法改正を控える中、「後見をされる本人や、家族の声も聞いてほしい」との要望が上がる。

▽出前講座
 青森家裁は2025年、申立人の内訳で首長の割合が45・0%でトップだった。青森市の担当者は「孤立する高齢者が本当に増えた」と実感を込めて話す。そもそも身寄りがなかったり、親族がいても交流がなかったり…。首長申し立ての手続きは必要な書類が多く、職員の負担も増している。
 熊本市は住民や医療関係者らを対象に、成年後見に関する出前講座を実施している。25年度は計8回で220人ほどが参加。成年後見の利用者は増えており、担当者は「制度が浸透してきているのでは」と話す。

▽連れ去り
 その一方で、首長申し立てが原因で「家族を後見人に連れ去られた」と訴える人たちもいる。
 「母の人生も私の人生も、後見制度に殺されたようなもの」。東京都港区に住む女性(40)は取材に声を震わせた。精神的に不安定だった母親に22年、区長申し立てで弁護士が後見人に就き、母親はすぐに入院させられた。後見人からは入院先を知らされず、支援者の協力を得て初めて面会できたのは1年半後だったという。
 母親は25年5月にようやく退院。「捜してくれてありがとう」と感謝してくれたが、その3カ月後、肺がんで亡くなった。
 なぜ娘がいるのに区長申し立ての対象となったのか。港区は「個別事案には答えられない」とするが、女性は「区は私が母を虐待しているとみていた」と話す。本人を保護すべきケースと判断された可能性がある。
 女性は「虐待なんてしていない。家族の事情も知らない自治体の勝手な判断で申し立てるのはおかしい」と唇をかんだ。

▽自己決定
 現行の成年後見制度は「一度始めたらやめられない」との批判もあった。政府が4月に閣議決定した民法改正案では、家裁が「必要なくなった」と判断すれば終了でき、家族らも終了を申し立てることが可能になる。
 ただ利用者の家族らでつくる「後見制度と家族の会」の石井靖子代表は「家裁がいったん決めたことを、本当に途中でやめられるのか」と疑問を抱く。自身も親族に付いた後見人の意向で面会が制限された。「改正案には私たちの声が反映されていない」。家裁による後見人の選任に対し、本人や家族が不服申し立てできるルールの創設などを求めている。
 制度に詳しい日本大の清水恵介教授は「本来、支援は本人の自己決定に基づく形が望ましい」と指摘した上で「地域ぐるみの支援など、成年後見に頼らずに済む方法を少しずつ増やしていき、首長申し立てが必要ない社会をつくり上げていくのが理想だろう」と話した。

(2026/05/03)

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