一般2026年06月25日 カスハラ対策の実効化 関西大学 佐藤方宣 提供:共同通信社

顧客の迷惑行為や暴言などのカスタマーハラスメントが社会問題化する中、以前よりも一歩踏み込んだ実行効果の高い対策を打ち出す動きが顕著だ。この間、自治体による防止条例制定、企業や業界団体の対策マニュアル作成が進んだが、それだけでは防ぎきれないという問題意識がうかがえる。一方で正当な要求などを排除しない仕組みも忘れてはいけない。
カスハラ防止条例は既に東京都をはじめいくつかの自治体で成立しているが、このほど三重県が全国初の罰則付きの条例案をまとめた。正当な理由のない繰り返しの謝罪要求などを「特定カスハラ」と定義し、知事が禁止命令を出しても改善されなければ捜査機関に刑事告発し、50万円以下の罰金や拘留または科料を科すという。
企業の対応も進んでいる。小田急電鉄は、近年のカスハラの増加傾向をふまえ、今年4月、全駅で駅係員が胸部に装着する小型ウエアラブルカメラを導入した。
客同士のトラブルや犯罪行為、そしてカスハラ発生時の録画による状況の正確な記録や、録画中と明示することによる抑止効果が目的だという。乗客へのマナー向上の呼びかけを超えて、より実効化しようとするものだと言えるだろう。
今年10月からは、法改正により、全ての企業にカスハラ対策が義務化される。今後どのように実効化していくかは、社会的課題と言える。
だが罰則化による実効化には懸念もある。ある顧客の言動が、正当な要求や異議申し立てだと言えるのか、あるいは現場で対応する従業員を不当に威圧するカスハラに当たるかどうかの判断は、どうしても主観的な要素や判断が絡むからだ。
こうした多分に主観的な要素がはらむ問題については、可能な限り客観的な状況の把握と、当事者だけでなく公平な第三者の冷静な判断が必要だろう。三重県の条例案で、弁護士など有識者でつくる審査会が特定カスハラに当たるかどうかの判断をするとしているのは、そうした配慮だろう。
カスハラ対策の実効化が喫緊の課題であることは間違いない。企業側の細やかな対策や公的ルールの整備が、カスハラ対策の適切な実効化に資するものとなることを期待したい。
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さとう・まさのぶ 1969年生まれ。慶応大非常勤講師、大東文化大特任講師などを経て2016年、関西大経済学部教授。編著に「ビジネス倫理の論じ方」など。
(2026/06/25)
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