一般2026年07月06日 国選報酬、相次ぐ増額要請 43弁護士会、20年据え置き 刑事裁判担い手減懸念 提供:共同通信社

国の費用負担で刑事事件の容疑者や被告を弁護する国選弁護人への報酬が低すぎるとして、全国に52ある弁護士会のうち43の会が昨年12月以降、報酬の見直しを政府や国会に求める会長声明を出したことが5日、共同通信の取材で分かった。各声明は報酬が20年間ほぼ据え置かれているなどと指摘。刑事弁護の担い手減少を危惧し、国費での支援増額を求めている。
最近の物価高も反映されていないことから「実質的な切り下げに等しい」(鳥取県弁護士会)との意見もあった。報酬が低いままでは弁護活動に支障を来し、質の低下を招く懸念がある。冤罪被害が絶えない状況で、国選弁護の重要性を訴える内容も目立っている。
国選弁護は、経済的理由で私選の弁護人を付けられない容疑者や被告のための制度。逮捕された後、勾留が決まった段階から選任することができる。弁護人への報酬は日本司法支援センター(法テラス)を通じて国が支払う。
報酬額は接見や公判の回数などで変動するが、一つの事件を起訴前から判決まで担った場合の相場は10万~20万円程度とされている。「遠距離の接見や鑑定費用などへの手当も不十分」「経費を引いたら毎回赤字になる」とする声が上がる。
昨年12月にいち早く声明を出した茨城県弁護士会は「国選弁護業務のための国家予算は160億円前後と極めて少ない額で推移している」「人権保障の経済的基盤の拡充は立ち遅れている」などと批判した。
また各会は独自の予算で、勾留が決まる前の容疑者のもとに無料で駆け付ける「当番弁護士制度」も担っている。各声明ではこうした制度についても「無罪推定の原則が憲法上保障されており、本来は全て国費で担うべきだ」と求めた。
当番弁護士制度に関しては、登録している弁護士の割合が2025年は過去最低の30・7%だったことが日弁連の集計で判明。当番を担った弁護士がそのまま同じ容疑者の国選弁護人となるケースが多いことから、国選の報酬が低いことが登録減少の一因とされている。
人ごとにせず、受け止めを 国選弁護報酬
【解説】国費で賄う国選弁護人の報酬の低さは以前から指摘されてきた。今回、各地の弁護士会が続けて声を上げたのは、世間に刑事弁護の意義や重要性を改めて認識してもらい、これ以上の担い手減少は危険水域に達すると訴える目的がある。全ての国民にとって決して人ごとではなく、政府や国会は声明を真摯に受け止めるべきだ。
刑事事件に力を入れる弁護士は「なぜ犯罪者の味方をするのか」とよく批判されるという。重大事件を引き受けた弁護士が嫌がらせを受けた例も聞く。被害者側の心情を踏まえた非難と思われるが、刑事弁護はあくまで、容疑者・被告という個人が国家からの訴追に対して正当な防御権を行使するために憲法が理念を定めたもので、被害者保護とは論点が異なる。
静岡県一家4人殺害事件などの再審無罪事件は過去の話ではなく、最近でも大川原化工機冤罪事件で捜査機関の誤りが無実の人々を苦しめた。こうした事態を防ぐには充実した刑事弁護が欠かせない。
国選弁護業務に関する政府予算は大きく変わっていない。担い手の数や質を担保するためにも、重い負担に見合った報酬への予算措置が必要だ。
弁護士会の会長声明 特定の政策や法案、社会問題などに対し、日弁連や各弁護士会としての考え方やスタンスを表明したもの。日弁連の場合は、これまで取り組んできた重要な政策や方針に関して動きがあった場合などに声明を出す。個別の事件に動きがあった際は会長談話を発表する。声明や談話は各会のホームページで閲覧できる。法的拘束力はなく、所属する弁護士個人の立場を縛るものでもない。
(2026/07/06)
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