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一般2026年08月12日 「僕は離婚してて、バツイチです」信じた男は独身偽装だった 不妊治療して出産した女性は司法に訴え…裁判所の判断は? 提供:共同通信社

 東京都内に住むデザイナーで30代のユマさん(仮名)は2022年8月、知人の紹介である男性と出会った。交際を開始する際に「不倫は絶対いや」などと伝えると、男性はこう答えた。
 「僕は離婚してて、バツイチです」
 交際が始まると、男性からはこんなLINE(ライン)のメッセージが届いた。
 「愛してる。結婚してください」
 「8月12日にプロポーズする事は決めてるから、今から心の準備よろしくな」
 男性の言葉を信じて婚約。妊活や不妊治療を経て、念願の子どもを授かった。しかし、実は男性には妻子がいた―。
 「独身偽装」の被害に遭ったユマさん。精神的苦痛を受けたとして男性を相手に裁判を起こした。司法はどう判断したのか。(共同通信=広川隆秀)

 ▽知人の紹介で交際「離婚して独身」
 ユマさんは男性に対し、子どもが欲しいことや、年齢を踏まえ高齢出産のリスクに不安があることをたびたび伝えていた。男性も理解を示していた。
 「俺さ微力かもしれんけど彼氏として夫として生涯のパートナーとして、支えていきたい」
 ユマさんの両親を交えて食事や旅行をしたこともあった。
 2023年には男性が署名・押印した婚姻届を渡してきた。妊活や不妊治療を経て、2024年7月、ユマさんが妊娠していることが分かった。不妊治療の際に病院側に提出した書面には、「私たちは事実婚関係にあります」の欄にチェックがされていた。
 ところが、男性に貸していた金が返ってこないなど、不審な言動も多く見られた。そこで2024年10月、知人に同席してもらった上で、何が真実なのかを問い詰めた。男性は、自分が既婚者であり、子どもがいることを明らかにした。
 その後、2025年3月にユマさんは自らの意思で女児を出産した。

 ▽「性的自由が侵害された」訴訟の行方
 2025年6月、男性に約1700万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。独身偽装で関係を結ぶ相手を自ら選ぶ「性的自己決定権(性的自由)」が侵害されたと訴えた。
 訴訟では「既婚者だと知っていれば交際せず、婚約もしなかった」として精神的苦痛を受けたと主張。これに対し男性側はこう反論した。
 「ユマさんは自らの意思で性的関係を結び、婚約自体も成立していない」
 2026年6月23日、東京地裁で判決が言い渡された。高島剛裁判官はまず、ユマさんが既婚者とは交際しないことを明示し、男性も認識していたと判断。2年以上も交際を続け、さらに男性が婚約指輪も渡した点を挙げた。「法的保護に値する婚約が成立したと認められる」
 さらに、既婚者だと知っていれば性行為に同意しないため、男性によるユマさんの性的自由の侵害も認定。
 その上で、男性の一連の行動についてこう結論付け、約466万円の支払いを命じた。
 「精神的苦痛の大きさは計り知れず、察するに余りある」
 ただ判決は、ユマさんが求めていた出産時の休業による損害については退けた。
 「出産するかどうかは、性行為を行うかどうかとは全く別の意思決定を要する」

 ▽認知と養育費はどうなる?
 独身偽装の被害に遭った末に出産した場合、子どもの認知や養育費の問題はどうなるのだろうか。
 今回のケースでは、東京家裁に家事調停を申し立て、男性による認知と養育費の取り決めが成立しているという。既に月々の支払いが始まっているが、ユマさんには懸念もある。
 「これまでに嘘を重ねてきた経緯があり、今後も約束が守られるかどうかは分からない」

 ▽娘に説明できるように
 男性と決別後、シングルマザーになったユマさん。「何が本当で、何が嘘だったのか。何も信じられなくなってしまった」と打ち明けた。「最近、独身偽装をする男性がいるとの報道を多く目にし、心を痛めている」
 裁判を起こしたのは、娘に何があったのかを説明できるよう判決として形に残したかったと切実な思いを打ち明け、こう話す。
 「二度と同じような被害が起きてほしくない」
 ユマさんの代理人の溝口矢弁護士によると、独身偽装の被害は以前からある。マッチングアプリだけでなく、結婚相談所のほか職場内、知人間でも起こり得るという。だまされないよう、自己防衛が重要だが、だます側も虚実を織り交ぜるため、見抜くのが難しいケースも多いと指摘する。
 「違和感があったら、すぐに信頼できる周囲の人や弁護士に相談する必要がある」
 7月2日、被告の男性側は判決を不服として控訴した。ユマさん側も男性の対応を踏まえ、控訴することを選択した。
 男性側は取材に、「高裁の審理が始まった段階で主張を順次明らかにしていきたい」としている。

 ▽賠償命令はほかの独身偽装でも
 独身偽装の被害が司法の場に持ち込まれ、賠償が命じられたケースは他にもある。
 会社員の女性が、マッチングアプリで出会った男性に既婚者であることを隠されて交際を続けたとして損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は2025年12月、約150万円の支払いを命じた。
 2026年7月には、名古屋地裁が独身偽装の被害を認定。「信頼を裏切られた心の傷は深い」として、30代の既婚男性に121万円の支払いを命じている。

(2026/08/12)

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