労働基準2026年08月20日 残業一律指導9月見直し 「45時間以内」取りやめ 労基署、健康確保踏まえ 提供:共同通信社

厚生労働省は19日、時間外労働(残業)時間に関する労働基準監督署の指導を9月から見直すと発表した。これまでは労使合意で月100時間未満まで残業可能な事業所にも月45時間以内に抑えるよう一律で指導していたが、健康確保措置などに応じて必要な対応を取るとした。
一律指導について経営側から「画一的」「法律違反の観点で指導するべきだ」との声があった。一方、労働者側からは、見直しによって長時間労働が助長されるとの懸念が出ている。
労働基準法に基づく労働時間は1日8時間、週40時間以内だが、労使協定(三六協定)を結べば月45時間を上限に残業が可能となる。その上で、繁忙などの事情があれば特別条項付きの協定を締結でき、上限が月100時間未満(休日労働を含む)に延びる。
指導の在り方を見直すにあたっては、労基署は過重労働への不安払拭のため、事業所の健康確保措置の実施状況を重点的に確認する。違法な長時間労働の恐れがある場合は厳しく対応するとしている。
全国の働き方改革推進支援センターに、三六協定や特別条項の締結などを支援する「専門相談窓口」を設置。労基署とも連携し、こうした制度の活用を念頭に企業を直接訪問する取り組みも始める。
労働時間を巡っては、高市早苗首相が「規制の緩和検討」を掲げる。7月に閣議決定された日本成長戦略には「労働時間や労働者の健康確保措置に関する労使の合意にのっとった指導が行われるよう速やかに見直す」と明記された。
長時間助長に募る懸念 首相意欲、自民提言倣う
時間外労働(残業)に関する労働基準監督署の一律指導が9月から見直されることになった。高市早苗首相が意欲を示す労働時間規制の緩和の一環で、自民党の提言に沿った内容となった。違法な長時間労働には引き続き厳正に対応するとしたが、過労死遺族からは「長時間労働を助長しかねない」と、働き方の行く末を危惧する声が漏れた。
「『働きたい改革』を推進」。自民党が2025年夏の参院選で掲げた公約の一文だ。党日本成長戦略本部の岸田文雄本部長(元首相)は今年4月、労基署の指導見直しなどを盛り込んだ提言を高市首相に手渡した。今回の見直しは、この提言が色濃く反映された格好となった。
「とんでもない内容だ」。見直しを受け、こう訴えるのは「全国過労死を考える家族の会」代表世話人の寺西笑子さん(77)。厚生労働省は健康確保措置の実施状況の重点的確認などを打ち出したが、「本当に管理できるのか」と疑問視し、こう憤る。「過労死防止法が制定されたが、現状でもワークライフバランスを重視する流れにはなっていない」
過労死遺族だけではなく、実際に監督を実施する現場からも疑問の声は上がっている。ある労働基準監督官は「法に基づいて取り組んできたわれわれの仕事を変える話だ。どんどん残業しましょうとの指導になりかねない」と本音を漏らした。
一方、高市首相は実際の労働時間ではなく、一定時間働いたとみなして賃金を払う裁量労働制の適用拡大を規制緩和の「本丸」と見ているとされる。今回の発表には盛り込まれておらず、今夏から始まった裁量労働制に関する実態調査を踏まえて、厚労省の審議会で検討が続けられる見通し。
厚労省幹部は指導見直しを「三六協定の締結には労使合意が必要であり、労働者の意に反してどんどん残業をしてもらうという意図はない」と説明。裁量労働制については「結論は見通せない」としながらも「厚労省は労働者の健康と命を守るのが役割だ」と強調した。
三六協定 労働基準法が定める原則1日8時間、週40時間を超えて従業員を働かせる場合に労使が合意の上で結ぶ協定で、労基法36条に基づき「三六(サブロク)協定」と呼ばれる。労働基準監督署に届け出る必要がある。厚生労働省は、協定で定める時間外労働(残業)は原則として月45時間、年360時間までとしているが、特別条項を付ければ月100時間未満、2~6カ月の平均80時間以内、年720時間以内を上限で働かせることが可能となる。
(2026/08/20)
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