教育・宗教2026年09月01日 変わる学校、教員の役割は AI「効率主義」加速懸念 提供:共同通信社

誰もが情報技術を使いこなす社会を掲げる次期学習指導要領の中教審審議まとめ案が31日示された。急速に発達した人工知能(AI)が「先生役」の一端を担いつつあり、学校の風景は大きく変わりそうだ。過度なデジタル化が「子どもの効率主義を加速させる」との懸念は根強く、教員の果たす役割が問われる。
▽伴走
「改善点を教えて」。7月、国の特例制度を活用した埼玉県久喜市立砂原小の独自授業「ひらめきたんきゅう科」で、5年生の女子児童がスライド資料の出来栄えを尋ねた。相手は1人1台ずつ配布されたパソコンの学習用生成AIだ。
総合的な学習の時間に国語、算数の一部単元を取り入れ、探究活動を進める。毎週1回、朝15分の「情報通信技術(ICT)タイム」で端末に親しんできた児童は、資料の収集や作成、スケジュール管理まで自在に使いこなす。情報教育の拡充と指導の柔軟化という次期指導要領の青写真を先取りした形だ。
ある班では、AIがスライドに書かれていない内容を「短くした方がいい」と的外れな返答をした。戸惑う児童に、すかさず教員が「どうしてAIは間違えたと思う?」と問いかける。教務担当の斎藤果織教諭は「『児童対端末』の閉鎖空間にさせず、学びを広げる。教員の役割は伴走者だ」と解説した。
▽孤立
情報活用力の強化は2020年度から順次始まった現行指導要領でも重視され、端末を児童生徒に行き渡らせる「GIGAスクール構想」は新型コロナウイルス禍を契機に前倒しで実現した。「端末を新時代の文房具に」(文部科学省幹部)と国がハッパをかけ、幅広い教科で活用が進む。
AIの進展を見据え、文科省はさらにギアを上げる構えだが「急速なデジタル化の功罪が検証されていない」と心配する教員は少なくない。
関西地方の公立小のベテラン男性教員は「話し合いの活動なのに黙々とチャットで議論している」と嘆く。校長と教育委員会が端末の使用時間をチェックし、高い稼働率を求めているため、若手教員は歯止めなく授業で使ってしまうという。
「主体的・対話的で深い学び」を掲げた現行指導要領をより洗練し、次期テーマは「深い学びの実装」。この教員は「デジタル化の陰で子どもたちの対話が減り、どんどん孤立化していないか」と危機感を口にした。
▽吟味
次期指導要領が小学校でスタートする30年度は、デジタル教科書の本格導入と重なる。動画や音声の活用が進み、文科省は子どもの特性に合わせた「個別最適な学び」の浸透を期待する。
文科省幹部は「教育を全てデジタル化するとは言っていない」と語る。ただ31日にまとめ案を議論した中教審特別部会では、認知科学が専門の研究者今井むつみ委員が「AIが主導する授業になってしまうのではないか」と懸念を口にした。実際に国語を教える奈良県の小学校の女性教員は「教室全体に行間の意味を問いかける授業は時代遅れにみられ、年々難しくなっている」とこぼす。
東北大の大森不二雄名誉教授(教育政策)は「端末を使った授業作りに習熟した教員はまだ少なく、小中学校でのAIの活用には慎重さが求められる」と指摘。「AIが出力した情報に依存せず吟味する習慣や、批判的な思考力をどう育てるかが課題になる」とした。
(2026/09/01)
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