
現在、管理職不足に頭を悩ませる企業は少なくない。登用しようにも「管理職を任せられる人材がいない」「候補者はいるが時期尚早である」などの声を経営者から聞くことは多いものだ。加えて、社員自身が管理職にネガティブな感情を抱き、登用に消極的なケースも見受けられる。このような状況下で、企業が管理職を円滑に育成・登用するにはどうすべきか。本稿では、企業の管理職育成のポイントを考えてみたい。
目 次
1 「部下育成」「組織活性化」まで求められる管理職
2 人材強化に課題を抱える企業は多い
3 管理職は登用して育てる
4 社員が管理職を敬遠する理由(後編)
5 社員の意識転換を促す経営との接点づくり(後編)
1 「部下育成」「組織活性化」まで求められる管理職
管理職は組織運営の根幹を支える、極めて重要度の高い機能である。そのような管理職に求められる役割は、時代の変遷とともに移り変わっている。
経済成長が著しい時代であれば、企業は前年と同様の活動を継続することで業績の維持・向上を期待できた。そのような時代に必要とされるのは、「決められた業務を着実に遂行する社員」の存在である。したがって、必然的に管理職の役割も、社員の勤怠などの労務管理が中心とされた。
一方、経済成長が鈍化し、モノが飽和状態となった現代では、同様の活動を繰り返すだけの企業は淘汰されかねない。このような環境下では、「決められた業務を着実に遂行する社員」だけでは、生き残ることが困難である。「新しいニーズを発見・創出する能力」「今あるものを改善・改革する意欲」などを有した人材が必要とされる。
そのため、現代の管理職には従前の労務管理に加え、以下の業務も求められている。
① 部下育成:高い知識・スキル・意欲を持つ部下を育成する。
② 組織活性化:部下が能力を発揮できる職場環境を整備する。
これらの取り組みによって企業業績の維持・向上に貢献することが、現在の管理職に与えられた役割といえよう。
2 人材強化に課題を抱える企業は多い
㈱帝国データバンクの『企業の経営課題に関するアンケート(2026年)』の結果によると、企業が重要視する経営課題として最も多かったのは「人材強化(採用、定着、育成)」で90.2%である。この数値は2番目の「既存顧客との取引深耕」66.0%を24.2ポイント上回っている。

現代の企業にとり、ヒトの問題がいかに経営環境のボトルネックになっているかが見てとれる結果である。企業が管理職を円滑に育成・登用するには、「経営者の意識転換」「社員の意識転換を促す取り組み」の2点が必要である。
こうした調査結果を裏付けるように、企業経営の現場では管理職育成・登用に困惑しているケースが少なくない。「管理職を任せられる人材がいない」「候補者はいるが時期尚早である」などの声を聞くことは、非常に多いものだ。
加えて、昨今では社員が「管理職になりたくない」と考えるなど、管理職登用にネガティブな事例も散見される。このような状況を踏まえ、企業は管理職育成にどのように取り組めばよいだろうか。
3 管理職は登用して育てる
企業が管理職を円滑に育成・登用するには、「経営者の意識転換」「社員の意識転換を促す取り組み」の2点が必要である。
はじめに、経営者の意識転換である。前述のとおり、経営者の中には「管理職を任せられる人材がいない」「候補者はいるが時期尚早である」などと考えているケースが少なくない。この見解は、「管理職としての力が備わってから登用すべきである」という認識に根差しているといえよう。
ところで、ヒトには「役割を与えられると、その役割に応じた言動を取ろうとする」という特性が存在する。企業内であれば管理職という役割を与えられた人材は、その役割を果たそうと試行錯誤をする。その過程で、管理職としての能力やスキルが向上するものである。
そのため、まだ不十分だと感じても権限を委譲し、管理職に登用することによって育成するという考え方も必要になる。「育てて任せる」だけでなく、「任せて育てる」わけである。
なお、「任せて育てる」過程では失敗が発生する。管理職登用では「自分でやった方が早いと考え、仕事を抱え込む」「自分のやり方を無条件に押し付ける」などは、よく発生する失敗例だ。
このように実務で失敗をした経験は、管理職としての能力・スキルの醸成に繋がる。「任せて育てる」プロセスでは失敗を含むあらゆる経験が、研修では達成し得ない大きな教育効果を発揮するものである。
したがって、ある程度の失敗は許容した上で権限を委譲し、管理職に登用することが、管理職育成の大きなポイントといえよう。
【参 考】
㈱帝国データバンク:企業の経営課題に関するアンケート(2026年)
https://www.tdb.co.jp/report/economic/20260304-management-issues/
【著者プロフィール】
大須賀 信敬
コンサルティングハウス プライオ 代表
(組織人事コンサルタント/中小企業診断士・特定社会保険労務士)
中小企業の経営支援団体で各種マネジメント業務に従事後、2007年4月に組織運営及び人的資源管理のコンサルティングを行う中小企業診断士・社会保険労務士事務所「コンサルティングハウス プライオ」を設立。『気持ちよく働ける活性化された組織づくり』(Create the Activated Organization)に貢献することを事業理念とし、組織人事コンサルタントとして大手企業から小規模企業まで、さまざまな企業・団体の「ヒトにかかわる経営課題解決」に取り組んでいる。一般社団法人東京都中小企業診断士協会及び千葉県社会保険労務士会会員、ISO30414(人事マネジメント)リードコンサルタント/アセッサー。
オフィシャルサイト https://www.ch-plyo.net
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