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一般2020年07月06日 コロナ10万円の例外的な直接給付はDV被害者に限られる? 執筆者:藤原家康

 この度、コロナウイルスの感染への緊急経済対策として、1人当たり10万円が給付されることになり、現在その手続が進められています。
 この給付は、原則として、世帯分につき、世帯主にまとめて給付されることになっています。しかし、事情により、その給付の方法が適切でない場合もあります。
 いわゆるDV被害者に対しては、例外的に、被害者の分が、世帯主ではなく被害者に給付される制度があります。しかし、その制度において、直接給付を受けられるとされているのは、配偶者から暴力を受けている場合や、DV法における保護命令を受けている場合に限定されています。
しかし、それ以外にも、世帯主にまとめて支給されるのを避けるべき場合があります。
 例えば、DVはなくても、夫婦が別居している場合です。夫婦が直接やり取りをすることが現実的ではない場合や、世帯主である夫に支給されると夫がお金を独占してしまうおそれがある場合は多くあると思います。
 現在公にされている制度では、DV被害者の場合、以下の、「申出書」という書類を提出すればよいことになっています(総務省のホームページの特別給付金の箇所にもデータがあります)。「申出書」記載の添付書類も必要となっています。この申出書の受理の手続がすめば、その後、その申出をした人が、申出の対象者につき、世帯主とは別に申請をし、受給することになります。

 「特別定額給付金受給に係る配偶者からの暴力を理由に避難している旨の申出書」の様式はこちら

 しかし、上記のとおり、DV被害者以外の場合も、状況に応じ、DV被害者と同様の申請ができて然るべきです。この点につき、ある市役所に相談、交渉をしたところ、DV被害者以外の場合でも、以下の方法で、DV被害者に準ずる場合として申請することができることになりました。

・申出書の表題の「避難」から線を引いて、これに準じる場合と記載し、添付書類なしで提出する。
・役所が面談で本人から状況を確認し、役所が確認書を作成して、それを添付書類として処理をする。

 役所により対応が異なることもあり得ますが、DV被害者ではない場合でも、直接支給を受けられるべき場合は多くあると思います。該当が考えられる方は、現在実際にお住まいの住所地の市区町村の役所に相談、確認し、難しいと言われても交渉してみて頂ければと思います。
 なお、申出書の提出は、従前期限とされていた2020年5月1日以降でも可能となっていますが、給付の期限は申請可能となった日から3か月とのことで、それより前になるべく早く手続を進める必要があります。
 ところで、申出書が受理される前に世帯主が世帯全員分を受給した場合、申出をした人は例外的な直接給付を受けられなくなるようにも考えられます。ある市役所によれば、申出書が受理されれば、その申出書の対象者につき例外的な直接給付はなされ、これにより自治体の二重払いとなってしまうが、世帯主に、二重で支払われた分の返還を求めることになるとのことでしたが、二重払いを防ぐより効果的な方法が望まれます。このことや、各々の家族には様々な事情があり、世帯が一緒であるから世帯主にまとめて支給されることは合理的ではない場合があることや、本来、個人に受給されるものは当該個人が受給すべきことからすれば、世帯主がまとめて給付を受けることを例外的な取扱いにすべきではないかとも考えられます。
 いずれにしても、上記のとおり、現在の手続は、DVの場合にしか例外的な直接給付ができないと一般に考えられており、直接給付を受けたい場合も、手続がそうなっているから仕方がない、ということで終わってしまうことが危惧されます。政府及び自治体において、速やかに、DV被害者ではない場合も直接受給できる、市民にとって誤解のない明確な手続が設けられ、またその手続が広報されて然るべきと考えます。

(2020年6月執筆)

執筆者

藤原 家康ふじわら いえやす

弁護士

略歴・経歴

【略歴】
1999年3月  東京大学法学部卒業
2000年4月  司法研修所入所(54期)
2001年10月 弁護士登録(第二東京弁護士会)
複数の法律事務所所属を経て
2013年10月 藤原家康法律事務所 開設

【著作】
『防衛庁情報公開請求者リストの作成配布を理由とする国家賠償請求』(法律時報2006年7月号(972号))
『市民的自由の広がり-JCLU 人権と60年』「第15章 監視カメラの問題点」(社団法人自由人権協会編・新評論)
『Q&A一般法人法・公益法人法解説』(三省堂、共著)
『トピックス憲法』(三省堂、共著)
                 など

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