コラム2005年06月20日 【経理スタッフのための実務サプリメント】 売上表示は総額?それとも純額?(2005年6月20日号・№119)
経理スタッフのための実務サプリメント
テーマ 売上表示は総額?それとも純額?
TSNメンバー 藤元拓志 /公認会計士
アソシエント・テクノロジー社の粉飾決算等に端を発して、IT企業の売上の中身に注目が集まっています。これを受け、企業会計基準委員会では、「情報サービス産業における会計処理」に関する収益の認識及び測定の問題についての検討を開始しました。売上を巡っては、「いつ売上をたてるのか」(収益の認識)という根本的な問題と関連して、「売上をどう表示するのか」という表示の問題もあります。最近では、大手商社が米国基準により開示している売上(収益)について、従来の総額主義によるものではなく、純額主義による収益を開示するようになりました。ただし、日本基準により開示している売上は従来のままとなっていることから、財務情報の利用者にとっては「いったいどっちが本当の売上なんだ?」と混乱を招きかねない事態となっています。
本人?それとも代理人?
売上の表示が総額か純額かという問題は、売上を総額で計上する本人か、あるいは手数料のみを計上しうる代理人なのかという問題に置き換えることもできます。これは商社やIT企業に限らず、デパートや仲介業、代行業等といった業種でも問題となってきます。この点、我が国の会計基準では、明確な回答が準備されていないのが現状です。そこで、平成17年3月11日に日本公認会計士協会より公表された「情報サービス産業における監査上の諸問題について」においては、
(売上を総額で計上する指標)
ア.取引において主たる債務者(ユーザーに対してサービス責任を負う者)である。
イ.商品受注前又は顧客からの返品に関して一般的な在庫リスクを負っている。
ウ.自由に販売価格を設定する裁量がある。
エ.商品の性質を変えたり、サービスを提供することによって付加価値を加えている。
オ.自由に供給業者を選択する裁量がある。
カ.製品やサービスの仕様の決定に加わっている。
キ.商品受注後又は発送中の商品に関して物的損失リスクを負担する。
ク.代金回収にかかる信用リスクを負担する。
(売上を純額で計上する指標)
ア.供給業者が契約の主たる債務者である。
イ.会社が稼得する金額は確定している。
ウ.供給業者が信用リスクを負う。
といった米国会計基準(FASB/EITF第99-19号)の指標が参考になるとしています。
もちろん、上記指標だけで単純に白黒がつくわけではないのが通常かと思われます。取引の法的性質や経済実態、リスクの状況をよく吟味する必要があるといえます。
CAUTION:収益認識は同業他社との比較可能性確保という問題もあることから、一概に理屈だけで決まる訳ではないことに注意が必要です。
ABOUT US:TSN(Tax Solution Network):若手会計人による税務・会計に関する研究会。問い合わせはこちらまで info@ts-n.jp
テーマ 売上表示は総額?それとも純額?
TSNメンバー 藤元拓志 /公認会計士
アソシエント・テクノロジー社の粉飾決算等に端を発して、IT企業の売上の中身に注目が集まっています。これを受け、企業会計基準委員会では、「情報サービス産業における会計処理」に関する収益の認識及び測定の問題についての検討を開始しました。売上を巡っては、「いつ売上をたてるのか」(収益の認識)という根本的な問題と関連して、「売上をどう表示するのか」という表示の問題もあります。最近では、大手商社が米国基準により開示している売上(収益)について、従来の総額主義によるものではなく、純額主義による収益を開示するようになりました。ただし、日本基準により開示している売上は従来のままとなっていることから、財務情報の利用者にとっては「いったいどっちが本当の売上なんだ?」と混乱を招きかねない事態となっています。
本人?それとも代理人?
売上の表示が総額か純額かという問題は、売上を総額で計上する本人か、あるいは手数料のみを計上しうる代理人なのかという問題に置き換えることもできます。これは商社やIT企業に限らず、デパートや仲介業、代行業等といった業種でも問題となってきます。この点、我が国の会計基準では、明確な回答が準備されていないのが現状です。そこで、平成17年3月11日に日本公認会計士協会より公表された「情報サービス産業における監査上の諸問題について」においては、
(売上を総額で計上する指標)
ア.取引において主たる債務者(ユーザーに対してサービス責任を負う者)である。
イ.商品受注前又は顧客からの返品に関して一般的な在庫リスクを負っている。
ウ.自由に販売価格を設定する裁量がある。
エ.商品の性質を変えたり、サービスを提供することによって付加価値を加えている。
オ.自由に供給業者を選択する裁量がある。
カ.製品やサービスの仕様の決定に加わっている。
キ.商品受注後又は発送中の商品に関して物的損失リスクを負担する。
ク.代金回収にかかる信用リスクを負担する。
(売上を純額で計上する指標)
ア.供給業者が契約の主たる債務者である。
イ.会社が稼得する金額は確定している。
ウ.供給業者が信用リスクを負う。
といった米国会計基準(FASB/EITF第99-19号)の指標が参考になるとしています。
もちろん、上記指標だけで単純に白黒がつくわけではないのが通常かと思われます。取引の法的性質や経済実態、リスクの状況をよく吟味する必要があるといえます。
CAUTION:収益認識は同業他社との比較可能性確保という問題もあることから、一概に理屈だけで決まる訳ではないことに注意が必要です。
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