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税務ニュース2004年06月21日 東京高裁、弁護士⇒税理士の所法56条事件で必要経費算入を認めず(2004年6月21日号・№071) 当然無効・限定解釈・違憲、いずれの主張も斥けられる

東京高裁、弁護士⇒税理士の所法56条事件で必要経費算入を認めず
当然無効・限定解釈・違憲、いずれの主張も斥けられる


 東京高等裁判所第23民事部(原田和徳裁判長)は、平成16年6月9日、弁護士である夫が、税理士である妻に対して支払った税理士報酬の必要経費への算入の可否を主たる争点とした、国・東京都に対する不当利得返還請求控訴事件について、原審(東京地裁平成13年(行ウ)第423号)を取り消して、被控訴人の請求を棄却する弁護士(原告)逆転敗訴の判決を言渡した(東京地裁平成15年(行コ)第209号)。

事件の概要
 被控訴人〈原告〉Xは弁護士であり、その妻Aは税理士である。XはAとの間で顧問契約を締結し、同契約に基づき、Aに税理士報酬等を支払ったため、この報酬を弁護士報酬を受けるための必要経費として申告した。これに対し税務署長は、所得税法56条の規定する「生計を一にする配偶者」に対して支払ったものに該当するから、必要経費として認められないこと等を理由として更正決定をした。Xは、これを不服として審査請求をした上、これに対する裁決により一部取り消された後の処分は違憲又は違法であるとして、国及び東京都に対し、Aに支払った報酬をXの必要経費として認められないことにより、Xが負担させられた金額について誤納金として返還するよう請求した。
 原判決(東京地裁民事3部⇒「藤山判決」)は、Xの所得の算定に関し、法56条の規定の適用はないものと解し、各決定を違法なものと判断した。各決定には、いずれも現行法の根幹をなす個人単位課税の原則を採用する法の解釈の適用を誤ったという点で重大な瑕疵が認められるというべきであり、いずれも当然に無効なものというべきであるとして、誤納金の返還請求を認容した。これを不服として、控訴人ら〈国・東京都〉が控訴した。

事件の争点

 ①原告の所得の算定に関し法56条の適用があるか(法56条の「従事したことその他の事由により対価の支払を受ける場合」・「生計を一にする」の意義)及び、②法56条及び本件各処分の合憲性、が主たる争点となり、本件が課税処分の取消請求ではなく国等への不当利得返還請求として争われていることから、各処分が当然無効となるかどうかが争われることになった。

「当然無効」・「限定解釈」を認めず
 判決はまず、本件各処分等に重大かつ明白な違法があるとは到底いうことができないとして、不当利得返還請求が認められる前提となる当然無効との原審の判断を覆した。また、法56条の「事業に従事したことその他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合」の解釈について、独立した事業者を除外する限定的な解釈(原審の判断)を斥けた。AがXから税理士報酬等の支払を受けることは、法56条所定の、Xの営む事業所得を生ずべき事業に「従事したことその他の事由により」当該事業から対価の支払を受ける場合に該当するものと判断した。

立法府の裁量的判断を尊重
 Xは、法56条の規定自体又はこれに基づく処分等が違憲であると主張した。判決は、立法府の裁量的判断の尊重を判示した最高裁大法廷の「大島訴訟」判決(昭和60年3月27日)を引用して、法56条が憲法13条、14条に違反しないことは「大島訴訟」判決の趣旨に徴して明らかであるとするとともに、「その立法目的は、支払者に累進税率を適用することにより、憲法30条、84条が要請する租税の公平な分担を実現するというものと解されるから、正当なものと認められる。」と判示した。

法は個人単位を貫徹しているわけではない
 法56条は個人単位課税制度に反するものとするXの主張に対しては、「世帯を単位とした担税力を考慮することにもなお一定の合理性があるとし、(中略)個人単位を貫徹しているわけではない。」とするとともに、生計を一にする親族間で支払われる対価は、家計から逸出していないとみることもできるとして、「支払をした者の所得に対応する累進税率によって所得税を課税すべき担税力を認めたことについて直ちに合理性を否定することはできない。」とした。

法56条適用の不合理論に理解を示すが
 Xは、本件のような場合にまで法56条が適用されるのは不合理であると主張し、その主張を補強する多数の論文等を提出した。この論文等にみられる見解に対して、「法56条の規定が設けられてから今日に至るまでの間に、家族関係の在り方、社会の経済構造、個人の権利意識の高揚に伴う個人事業の実態及び税務当局の徴税体制の充実等の実情に変化が生じていることは、否定することができない。」として理解を見せる一方で、「しかしながら、法56条について、現時点で、著しく不合理であることが明らかとはいえないし、法56条の改廃・改正については、立法府の判断を待つべきものといわざるを得ない。」としている。

X・A夫婦の違和感に理解を示しつつも
 Xは、法56条自体が合憲であるとしても、本件各処分等は適用違憲であると主張した。
判決は、「本件の税理士報酬の支払は、夫婦とはいえ、独立した事業者である弁護士と税理士との間でされたものであり、税理士報酬等の額が不当に高額であるという事情はうかがわれず、同一の顧問契約に基づくB弁護士の税理士報酬等の支払については必要経費算入を認められることと対比すると、違和感を抱かれることも理解することができなくはない。」とX・A夫婦の状況に理解を示しつつも、「XとAとが生計を一にしており、家計内で所得税の負担の調整を図ることが十分可能であることからすれば、本件について法56条を適用することが違憲であると判断することはできない。」として適用違憲の主張を斥けた。

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