解説記事2010年07月12日 【ニュース特集】 個人による完全支配内の法人による完全支配関係に新寄附金税制(2010年7月12日号・№362)
“グループ内グループ”にも「一の者」が存在
個人による完全支配内の法人による完全支配関係に新寄附金税制
平成22年度税制改正で導入された新寄附金税制の適用関係を判断するうえでキーワードとなるのが、「完全支配関係」だ。
ただ、この「完全支配関係」という文言を巡っては、政令の解釈を巡り実務家の間でも混乱がみられる。
そこで本稿では、「完全支配関係」と新寄附金税制の適用関係について、図解を交えて検討する。新寄附金税制は「グループ税制」ととらえるよりも、二法人間に係る税制ととらえたほうが、理解は容易といえそうだ。
グループではなく「2法人間の関係」に着目する必要 平成22年度税制改正で導入された「新寄附金税制」とは、具体的には、法人税法25条の2<受贈益>1項および法人税法37条<寄附金の損金算入>2項のことを指している。いずれの条文も、適用にあたっては「法人による完全支配関係」があることが前提になっている(下掲条文の太字部分参照)。
ここでいう「法人による完全支配関係」とは、典型的には図1のような関係を指す。このような関係の間で行われた寄附については、まさに新寄附金税制の適用対象となり、寄附を行った側において全額損金不算入、寄附を受けた側において全額益金不算入となり、さらに、寄附を受けた側の株価を調整する寄附修正(法令9七、119の3⑥)が適用されることになる。
一方、図2のような個人を頂点とする完全支配関係における法人間の寄附については、「法人による完全支配関係」がある法人との間の寄附に該当しないため、法人税法37条2項、25条の2第1項ともに適用されないことは、本誌でも既報の通りだ(本誌342号6頁以下参照)。
図1、2ともに、新寄附金税制の適用があるかどうかの判断が容易なのは、あくまで“一階層”の完全支配関係について検討しているにすぎないからである。
これに対し、図3のように、個人を頂点とする完全支配関係内に「法人による完全支配関係」がある場合、果たして新寄附金税制の適用があるのかどうか、実務家の間では議論がある。
これは、図3のグループ全体としては「個人」による完全支配関係グループということができるが、内国法人Aと内国法人Bだけの関係に着目すれば、「法人」による完全支配関係グループにもみえるためだ。
この点、本誌取材によると、個人を頂点とする完全支配関係の内にある「法人による完全支配関係」も、法人税法37条2項、25条の2第1項にいう「法人による完全支配関係」に該当し、新寄附金税制が適用されることが確認されている。
これは、新寄附金税制に係る条文上は、寄附を行った法人と寄附を受けた法人という「2法人間の関係」が「法人による完全支配関係」にあるかどうかが問題とされており、この2法人が属するグループの頂点(図3でいう個人)との関係は問われていないからだ。
寄附に係る2法人の一方が「一の者」に該当 ただ、ここで気になるのは、法人税法施行令4条の2第2項の規定振りだ。
完全支配関係については、法人税法2条十二号の七の六において定義規定が置かれ、さらに法人税法施行令4条の2第2項への委任が行われている。
この法人税法施行令4条の2第2項の後段部分(次頁の条文の下線部分)を読むと、「当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の全部を保有するものとみなす」とあり、あたかも完全支配関係においては、常にグループの頂点である「一の者(図3でいう個人)」との関係が問われているようにも読めなくもない。
政令の後段を図示すると図4のようになる。すわなち、「一の者」としてのAの支配がCにまで及ぶような規定振りにみえるということだ。仮にそのように解釈するとすれば、図3のようにグループの頂点が個人である場合には、個人の支配が内国法人Bにまで及ぶことになり、「個人による完全支配関係」の内に「法人による完全支配関係」は存在し得ないようにみえる。そうなれば、「法人による完全支配」を要件とする寄附金税制の適用はないことになってしまう。
しかし、上述のとおり、新寄附金税制においては、あくまで寄附に係る二法人間の完全支配関係が問題にされる。
したがって、図3のような個人を頂点とする完全支配関係グループにおいて、内国法人Aと内国法人Bの間で寄附が行われた場合には、内国法人Aと内国法人Bの関係に着目し、これが「法人による」完全支配関係にあれば、新寄附金税制の適用があることになる。
気になる法人税法施行令4条の2第2項との関係だが、この場合、内国法人Aと内国法人Bの完全支配関係に対して法人税法施行令4条の2第2項が適用されると考えることになる。
すなわち、ここでは内国法人Aが「一の者」に該当することになる。この場合、内国法人Aと内国法人Bは、個人頂点とする100%グループ(個人を「一の者」とする完全支配関係)内に存在する100%グループ(内国法人Aを「一の者」とする完全支配関係)ということができよう。
以上をまとめると、新寄附金税制は「グループ税制」ととらえるよりも、二法人間に係る税制ととらえたほうが、理解は容易といえそうだ。
個人による完全支配内の法人による完全支配関係に新寄附金税制
平成22年度税制改正で導入された新寄附金税制の適用関係を判断するうえでキーワードとなるのが、「完全支配関係」だ。
ただ、この「完全支配関係」という文言を巡っては、政令の解釈を巡り実務家の間でも混乱がみられる。
そこで本稿では、「完全支配関係」と新寄附金税制の適用関係について、図解を交えて検討する。新寄附金税制は「グループ税制」ととらえるよりも、二法人間に係る税制ととらえたほうが、理解は容易といえそうだ。
グループではなく「2法人間の関係」に着目する必要 平成22年度税制改正で導入された「新寄附金税制」とは、具体的には、法人税法25条の2<受贈益>1項および法人税法37条<寄附金の損金算入>2項のことを指している。いずれの条文も、適用にあたっては「法人による完全支配関係」があることが前提になっている(下掲条文の太字部分参照)。
ここでいう「法人による完全支配関係」とは、典型的には図1のような関係を指す。このような関係の間で行われた寄附については、まさに新寄附金税制の適用対象となり、寄附を行った側において全額損金不算入、寄附を受けた側において全額益金不算入となり、さらに、寄附を受けた側の株価を調整する寄附修正(法令9七、119の3⑥)が適用されることになる。



これに対し、図3のように、個人を頂点とする完全支配関係内に「法人による完全支配関係」がある場合、果たして新寄附金税制の適用があるのかどうか、実務家の間では議論がある。

これは、図3のグループ全体としては「個人」による完全支配関係グループということができるが、内国法人Aと内国法人Bだけの関係に着目すれば、「法人」による完全支配関係グループにもみえるためだ。
この点、本誌取材によると、個人を頂点とする完全支配関係の内にある「法人による完全支配関係」も、法人税法37条2項、25条の2第1項にいう「法人による完全支配関係」に該当し、新寄附金税制が適用されることが確認されている。
これは、新寄附金税制に係る条文上は、寄附を行った法人と寄附を受けた法人という「2法人間の関係」が「法人による完全支配関係」にあるかどうかが問題とされており、この2法人が属するグループの頂点(図3でいう個人)との関係は問われていないからだ。
寄附に係る2法人の一方が「一の者」に該当 ただ、ここで気になるのは、法人税法施行令4条の2第2項の規定振りだ。
完全支配関係については、法人税法2条十二号の七の六において定義規定が置かれ、さらに法人税法施行令4条の2第2項への委任が行われている。
この法人税法施行令4条の2第2項の後段部分(次頁の条文の下線部分)を読むと、「当該一の者は当該他の法人の発行済株式等の全部を保有するものとみなす」とあり、あたかも完全支配関係においては、常にグループの頂点である「一の者(図3でいう個人)」との関係が問われているようにも読めなくもない。

政令の後段を図示すると図4のようになる。すわなち、「一の者」としてのAの支配がCにまで及ぶような規定振りにみえるということだ。仮にそのように解釈するとすれば、図3のようにグループの頂点が個人である場合には、個人の支配が内国法人Bにまで及ぶことになり、「個人による完全支配関係」の内に「法人による完全支配関係」は存在し得ないようにみえる。そうなれば、「法人による完全支配」を要件とする寄附金税制の適用はないことになってしまう。

しかし、上述のとおり、新寄附金税制においては、あくまで寄附に係る二法人間の完全支配関係が問題にされる。
したがって、図3のような個人を頂点とする完全支配関係グループにおいて、内国法人Aと内国法人Bの間で寄附が行われた場合には、内国法人Aと内国法人Bの関係に着目し、これが「法人による」完全支配関係にあれば、新寄附金税制の適用があることになる。
気になる法人税法施行令4条の2第2項との関係だが、この場合、内国法人Aと内国法人Bの完全支配関係に対して法人税法施行令4条の2第2項が適用されると考えることになる。
すなわち、ここでは内国法人Aが「一の者」に該当することになる。この場合、内国法人Aと内国法人Bは、個人頂点とする100%グループ(個人を「一の者」とする完全支配関係)内に存在する100%グループ(内国法人Aを「一の者」とする完全支配関係)ということができよう。
以上をまとめると、新寄附金税制は「グループ税制」ととらえるよりも、二法人間に係る税制ととらえたほうが、理解は容易といえそうだ。
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