資料2010年03月02日 【税務通達等】 個人が所有する土地を法人に現物出資した際の費用を、契約により個人が負担した場合の当該費用の譲渡費用の該当性について
個人が所有する土地を法人に現物出資した際の費用を、契約により個人が負担した場合の当該費用の譲渡費用の該当性について
〔照会〕
照会の内容 | ① 事前照会の趣旨(法令解釈・適用上の疑義の要約及び事前照会者の求める見解の内容) | 別紙1のとおり |
② 事前照会に係る取引等の事実関係(取引等関係者の名称、取引等における権利・義務関係等) | 別紙2のとおり | |
③ ②の事実関係に対して事前照会者の求める見解となることの理由 | 別紙3のとおり | |
④関係する法令条項等 | 所得税法第33条、登録免許税法第3条、会社法第207条 | |
⑤添付書類 | 照会の趣旨及びその理由等の照会事項に関係する参考資料 |
〔回答〕
⑥回答年月日 | 平成22年3月2日 | ⑦ 回答者 | 関東信越国税局審理課長 |
⑧回答内容 | 標題に関する登録免許税については、貴見のとおり取り扱われますが、税理士報酬及び不動産鑑定料については、下記の理由から、貴見のとおり取り扱われるとは限りません。 なお、この回答内容は関東信越国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではないことを申し添えます。 (理由) 1 所得税法第33条第3項に規定する資産の譲渡に要した費用 所得税法第33条第3項に規定する譲渡所得の総収入金額から控除することのできる「資産の譲渡に要した費用」(以下「譲渡費用」といいます。)とは、取得費とされるものを除き、①資産の譲渡に際して支出した仲介手数料等その他資産の譲渡のために直接要した費用、②①のほか、借家人等を立ち退かせるための立退料等その他資産の譲渡価額を増加させるため譲渡に際して支出した費用であるとされています(所基通33-7)。そして、資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法第33条第3項にいう譲渡費用に当たるかどうかは、一般的、抽象的に当該資産を譲渡するために当該費用が必要であるかどうかによって判断するのではなく、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものである(平成18年4月20日最高裁第一小法廷判決)とされており、①の資産の譲渡のために直接要した費用に当たるかどうかは、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかにより判断することとなります。 2 現物出資に係る税理士報酬及び不動産鑑定料 株式会社が増資をしようとするときにおいて、金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びにその財産の内容及び価額を定めなければなりません(会社法199①三)。この場合、株式会社は、遅滞なく、当該現物出資財産の価額を調査させるため、裁判所に対し検査役の選任の申立てをしなければならず(同法207①)、裁判所は、検査役を選任した場合には、株式会社が当該検査役に対して支払う報酬の額を定めることができるとされています(同法207③)。 ただし、現物出資財産が不動産であって、当該現物出資財産の価額が相当であることについて税理士等による証明及び不動産鑑定士による鑑定評価を受けた場合には、検査役の調査は必要ないとされています(同法207⑨四)。 そして、この税理士等による証明及び不動産鑑定士による鑑定評価は、専門家による評価への信頼を基礎として、現物出資する不動産の価額についての検査役の調査に代わり不動産の価額が相当であることを証明するものであり、また、検査役による価額の調査が行われた場合の報酬は現物出資を受けた株式会社が当該検査役に対して支払うべきものとされていることからすれば、この場合の税理士報酬及び不動産鑑定料も、現物出資を受けた株式会社が税理士及び不動産鑑定士に対して支払うべきものと解するのが相当です。 そうすると、本件の場合、税理士報酬及び不動産鑑定料は、A法人が税理士及び不動産鑑定士に対して支払うべきものであるから、たとえ契約に基づき甲らが負担するものとされたとしても、甲らにとって、上記1①の客観的に見て現物出資を実現するために必要であった費用に該当するとは認められないものと考えられます。 また、当該税理士報酬及び不動産鑑定料は、現物出資する不動産の価額の証明の対価ですから、上記1②の譲渡価額を増加させるために譲渡に際して支出した費用にも該当しません。 したがって、税理士報酬及び不動産鑑定料は、譲渡費用に該当しません。 |
個人が所有する土地を法人に現物出資した際の費用を、契約により個人が負担した場合の当該費用の譲渡費用の該当性について(照会)
別紙1
事前照会の趣旨
個人甲及び乙(以下「甲ら」といいます。)は、A株式会社(以下「A法人」といいます。)の増資に当たり、甲らの所有する土地(以下「本件土地」といいます。)を現物出資し、A法人の株式を取得しました。
本件土地の現物出資に当たっては、下記からまでの費用(以下「本件各費用」といいます。)が生ずることとなりますが、本件各費用について、甲らとA法人との間の契約(以下「本件契約」といいます。)において、甲らが負担するものとされ、甲らが支払いました。
この場合、甲らの現物出資に係る譲渡所得の計算上、本件各費用は譲渡費用になると解してよろしいでしょうか。① 本件土地の所有権移転登記に係る登録免許税
② 会社法第207条第9項第4号に規定する現物出資した土地の価額についての税理士の証明に対する報酬(以下「税理士報酬」といいます。)
③ 会社法第207条第9項第4号に規定する現物出資した土地の価額についての不動産鑑定士の鑑定評価に対する報酬(以下「不動産鑑定料」といいます。)別紙2
事前照会に係る取引等の事実関係
1 現物出資の内容
現物出資者 現物出資財産 付与株式 甲A土地
B土地(持分1/2)A法人株式 ○○○○株 乙B土地(持分1/2) A法人株式 ○○○○株 2 本件各費用の内容
(1)契約
甲らとA法人との間で、本件各費用は、甲らが負担する。(2)内訳
本件各費用 登録免許税 1,544,000円 税理士報酬 420,000円 不動産鑑定料 399,000円 計 2,363,000円
別紙3
事前照会者の求める見解となることの理由
1 法令等の定め
(1)所得税法
譲渡所得の金額の計算上、譲渡所得の総収入金額から譲渡所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除することができますが(所法33③)、この「資産の譲渡に要した費用」とは、次のとおりとされています(所基通33-7)。イ 資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記又は登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用
ロ 上記イに掲げる費用のほか、立退料、建物取壊費用、当該資産の譲渡価額を増加させるために譲渡に際して支出した費用
(2)登録免許税法
登記等を受ける者は、登録免許税を納める義務があるとされています(登免税法3)。
この場合、通説では、「登記等を受ける者」とは、売買による不動産の所有権移転登記のように共同申請により行われる場合には、登記権利者と登記義務者の双方が登録免許税を納付する義務があると解するのが妥当とされ、当事者の契約によって登録免許税の負担を定めた場合には、その定めるところにより、取引上慣習があればそれに従うことも当然であるとされています。(3)会社法
イ 株式会社は、発行株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式について、所定の事項を定めなければならないとされており、金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額を定めなければならないとされています(会社法199①三)。
ロ 株式会社は、会社法第199条第1項第3号に掲げる事項を定めたときは、現物出資財産の価額を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならないとされています(同法207①)。
ただし、現物出資財産が不動産である場合、その価額が相当であることについて税理士の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を受けた場合、当該証明を受けた現物出資財産の価額について検査役の調査は不要となります(同法207⑨四)。2 見解
(1)登録免許税
不動産を売買した場合、売買を原因とする所有権移転登記が行われることから、当該所有権移転登記の費用は、資産の譲渡及び取得に際し直接生ずる費用であると考えられます。
そして、上記1(2)のとおり、売買による不動産の所有権移転登記のように登記申請が登記権利者と登記義務者との共同申請により行われる場合には、登記権利者と登記義務者の双方が登録免許税の納税義務者と解され、その納付義務の割合は、契約があればその契約の定めるところにより、また、慣習があれば慣習によるとされています。
したがって、所有権移転登記が甲らとA法人の共同申請により行われている本件の場合、本件土地の所有権移転登記に係る登録免許税の納税義務者は、登記権利者であるA法人と登記義務者である甲らの双方となり、登録免許税は本件契約により甲らが負担することとされていますので、甲らが負担する登録免許税の全額が、客観的に見て資産の譲渡を実現するために必要な費用であり、譲渡費用に該当するものと考えます。(2)税理士報酬及び不動産鑑定料
上記1(3)ロのとおり、不動産を株式会社に対し現物出資するためには、裁判所の選任した検査役の調査若しくは税理士の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価が必要となります。
そして、本件の場合、税理士報酬及び不動産鑑定料は、本件契約により甲らが負担するものとされていることから、客観的に見て資産の譲渡を実現するために必要な費用であり、譲渡費用に該当するものと考えます。
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