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民事2021年03月22日 派遣会社の使用者責任(2) 執筆者:政岡史郎

1. 2020年12月14日付のコラムで、「派遣労働者が就労中に第三者に損害を与えた場合、派遣元と派遣先のいずれが使用者責任を負うのか」を説明しました。簡単におさらいすると、以下の事例の場合には、派遣元C社にB社事業所内での指揮命令権限や安全配慮義務は無く、被害者Xは、加害者Aに民法709条の不法行為責任を追及するほかに、派遣先B社に対して使用者責任(民法715条1項)を追及することになります。
  これは、使用者責任の趣旨が、「報償責任・危険責任」(『事業活動の中で他人を用いて利益を得ている者・危険を生じさせている者は、その他人・危険から派生した損失もまた負担すべき』)という考え方にあり、このケースでは、B社が利益を獲得し、また危険を生じさせているからです。
2.では、派遣先のB社がXに損害を賠償した後、B社は賠償額を誰からも回収できないのでしょうか。
  もちろん、本来的に責任を負うのは加害者(派遣労働者)のAですから、Aに対しては求償が出来ます(過失相殺の議論は別途出てきますが)。
  次に、派遣元のC社に対して考えます。
  Aの不法行為をC社が予見していて回避できたのであれば別かもしれませんが、通常、C社はAの日々の動向を確認することはできず、B社内に入り込んでAに対して指揮命令し、安全配慮の措置をとることは通常出来ません。したがって、C社の責任は肯定できず、B社がC社に求償することは出来ないと考えます。
  ただ、派遣先から派遣元への使用者責任追及については、パソナ事件(平成8年6月24日東京地裁判決) という判例があり、一応の注意が必要です。この事件は、今回紹介しているケースとは異なり、「派遣労働者が派遣先の金銭を横領して派遣先に損害を与えた」事例です。
  パソナ事件では、①派遣元パソナが派遣料のうち1/3もの報酬を受領し、派遣労働者には派遣料の2/3しか支払われていなかったこと(高額の利益)、②派遣元が派遣先を定期的に訪れて派遣労働者を監督していたこと(指揮命令権限があった)、③派遣先の要求に関わらず派遣元が派遣労働者の住民票を提出しなかったこと(選任・監督上の過失がみられる)などから、派遣元パソナの使用者責任を認めています。また、他にも、「派遣労働者が第三者に損害を与えた場合」と「派遣労働者が派遣先に損害を与えた場合」を明確に区分した上で、後者については派遣元の使用者責任を認めた判例(テンブロス・ベルシステム24事件 平成15年10月22日東京地裁判決) もあります。
  これらの事例のように、派遣労働者が派遣先自体に直接的に不法行為を働いたケースの場合は派遣元に使用者責任が認められることがありますので、注意をしておく必要があります。
3.なお、派遣先としては、派遣労働者が第三者に損害を与えた場合の負担を軽減するため、どのような工夫が出来るでしょうか。
  既に述べた通り、「使用者責任」という『不法行為責任を問う枠組み』では派遣元に求償出来ないと考えておく必要がありますので、『契約責任を問う枠組み』が考えられます。
  具体的には、派遣元が「適切な派遣労働者を雇用して派遣先に派遣する義務」を怠ったとして派遣契約上の債務不履行責任を追及するという方法や、派遣元との労働者派遣契約(基本契約書や個別契約書)において「派遣労働者が第三者に損害を加えた場合の責任負担の割合」を事前に定めておき、当該条項に基づいて損害の負担を求めていくという方法が考えられます。
  従って、派遣労働者を受け入れる事業者としては、後日の紛争や損害の負担を回避するため、事前に派遣会社と損害の負担割合などについて交渉しておく必要があるといえるでしょう。
(2021年3月執筆)

執筆者

政岡 史郎まさおか しろう

弁護士

略歴・経歴

  H7  早稲田大学卒業、都内某不動産会社入社
  H13 同社退社
  H17 司法試験合格
  H19 弁護士登録・虎ノ門総合法律事務所入所
  H25 エータ法律事務所パートナー弁護士就任

「ある日、突然詐欺にあったら、どうする・どうなる」(明日香出版社 共著)
「内容証明の文例全集」(自由国民社 共著)
「労働審判・示談・あっせん・調停・訴訟の手続きがわかる」(自由国民社 共著)
「自己破産・個人再生のことならこの一冊」(自由国民社 校閲協力)

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