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解説記事2013年06月17日 【税制改正解説】 平成25年度における消費税・間接諸税関係の改正について(2013年6月17日号・№503)

税制改正解説
平成25年度における消費税・間接諸税関係の改正について
 根本浩之

はじめに

 平成25年度税制改正においては、現下の経済情勢等を踏まえ、「成長と富の創出の好循環」の実現、社会保障・税一体改革の着実な実施、震災からの復興の支援等のための税制上の措置、期限切れ租税特別措置の延長等を織り込み「所得税法等の一部を改正する法律案」として、平成25年3月1日に国会に提出された。その後、同法案は同年3月22日に衆議院を通過し、同年3月29日に参議院本会議において可決・成立し、同年3月30日に公布された。以下において、この改正による消費税及び間接諸税関係の改正の内容について説明する。

Ⅰ 消費税関係の改正

1 国等における仕入控除税額の計算の特例の見直し
 国、地方公共団体、公共法人等(消法別表3に掲げる法人)及び人格のない社団等は、恒常的に税金、補助金、寄附金等の対価性のない収入(以下「特定収入」という。)を得て運営されているが、このような特定収入によって賄われる課税仕入れ等は最終消費的な性格を持つものであることから、課税仕入れ等の税額の計算にあたっては、特定収入により賄われる課税仕入れ等の税額として算出した金額を控除する調整規定が設けられている(消法60④)。
 平成25年度税制改正においては、公益社団・財団法人が募集する寄附金のうち、その募集要綱等において以下の要件の全てを満たす寄附金で、内閣総理大臣又は都道府県知事(公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号)第3条に規定する行政庁をいう。)の確認を受けたものについては、特定収入から除外される収入とする旨の改正が行われた。
① 特定の活動に係る特定支出のためにのみ使用されること。
② 期間を限定して募集されること。
③ 他の資金と明確に区分して管理されること。
 この改正は、平成26年1月1日から施行され、同年4月1日以後に募集される寄附金について適用される(改正消令附則①②)。

2 新型インフルエンザ等対策特別措置法の施行に伴う改正  消費税法においては、社会政策的配慮から公的な医療保障制度に係る医療等を非課税とし、同法施行令第14条(療養、医療等の範囲)においては、国・地方公共団体の費用負担による公費負担医療についても非課税の対象とされている。今般、新型インフルエンザ等対策特別措置法(平成24年法律第31号)が平成24年5月に公布されたことに伴い、同法に基づく「損害補償に係る療養の費用の支給に係る療養」(公費負担医療)を非課税の対象に加える改正が行われた(消令14十九)。
 この改正は、新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令(平成25年政令第122号)の施行日である平成25年4月13日から適用される(新型インフル特措法施行令附則1)。

3 一定の幼稚園併設型認可外保育施設の利用料に係る非課税措置  幼稚園併設型認可外保育施設については、学校教育法等他の仕組みによってその質が担保されていることを踏まえ、当該施設のうち一定の基準を満たすものが行う資産の譲渡等について、消費税の非課税対象に加える改正が行われた(平成17年厚労省告示第128号)。
 この改正は、平成25年4月1日から適用される(平成25年厚労省告示第111号)。
(注)「一定の基準を満たすもの」とは、幼稚園を設置する者がその幼稚園と併せて設置している施設であって、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)第3条第3項(教育、保育等を総合的に提供する施設の認定等)の規定による認定を受けているもの又は同条第5項の規定による公示がされているもの(同条第1項の条例で定める要件に適合していると認められるものを除く。)において、乳幼児を保育する業務として行われる資産の譲渡等をいう。

4 その他の改正
(1)課税標準額に対する消費税額の計算の特例(端数処理の特例)の見直し
 総額表示義務の対象となる取引(対消費者取引)について、税抜レジシステムを採用している場合など、税抜価格を基礎とした代金決済を行う場合には、代金の受領の際に消費税等相当額の1円未満の端数が生じる場合があるが、総額表示導入時においては、平成19年3月31日までの時限的な措置として、端数処理後の消費税等相当額を基礎として、課税期間の課税標準額に対する消費税額の計算を行うことができる特例が設けられていた(平成15年財務省令第92号附則②四)。
 平成25年度税制改正においては、事業者の実態等を踏まえるとともに、消費税の引上げに伴う転嫁対策の一環として、期限切れとなっていた当該端数処理の特例を、平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等から当分の間の措置として改正が行われた(平成25年財務省令第37号)。
(2)身体障害者用物品の指定  消費税においては、身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する一定の身体障害者用物品の譲渡、貸付け等が非課税とされている(消法別表1十)。平成25年度税制改正においては、新たに次の品目が非課税物品に追加されたほか、既に非課税物品に指定されている物品で厚生労働省告示の別表に個別製品名が掲げられているものについて、バージョンアップ等に伴う所要の改正が行われている。
○ 視覚障害者用携帯型歩行支援装置  視力に障害を有する者の歩行に必要な地図情報及び位置情報の入手を容易にする製品であって、点字、凸線等により操作ボタンが知覚でき、かつ、人工衛星を利用した情報通信ネットワーク等を通じて位置情報を受信する機能及び触覚や音声信号のみにより情報を確認できる機能を有するものに限る。
 この改正は、平成25年4月1日から適用される(平成25年厚労省告示第115号)。

Ⅱ 酒税関係の改正

1 清酒等に係る酒税の税率の特例措置の改正
 清酒等に係る酒税の税率の特例措置について、軽減割合の見直しが行われた上、その適用期限が平成30年3月31日まで5年延長された。本特例の適用を受ける酒類に対する改正後の酒税の税率は、次のとおり(措法87)。
(1)清酒、連続式蒸留しょうちゅう、単式蒸留しょうちゅう又は果実酒 ① 平成25年4月1日から平成28年3月31日まで 本則税率の100分の80
② 平成28年4月1日から平成30年3月31日まで 前年度課税移出数量が次のいずれの場合に該当するかに応じ、それぞれ次の税率
 イ 前年度課税移出数量が1,000キロリットルを超え1,300キロリットル以下の場合 本則税率の100分の90
 ロ 前年度課税移出数量が1,000キロリットル以下の場合 本則税率の100分の80
(2)合成清酒又は発泡酒 ① 平成25年4月1日から平成28年3月31日まで 本則税率の100分の90
② 平成28年4月1日から平成30年3月31日まで 前年度課税移出数量が次のいずれの場合に該当するかに応じ、それぞれ次の税率
 イ 前年度課税移出数量が1,000キロリットルを超え1,300キロリットル以下の場合 本則税率の100分の95
 ロ 前年度課税移出数量が1,000キロリットル以下の場合 本則税率の100分の90

2 入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例措置の延長  入国者が輸入するウイスキー等に係る関税を無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成26年3月31日まで1年延長されたことから、これに併せて、本特例の適用期限についても平成26年3月31日まで1年延長することとされた(措法87の5)。

3 ビールに係る酒税の税率の特例措置の改正  ビールに係る酒税の税率の特例措置について、軽減割合の見直しが行われた上、その適用期限が平成28年3月31日まで3年延長された。本特例の適用を受けるビールに対する改正後の酒税の税率は、次のいずれの者に該当するかに応じ、それぞれ次のとおり(措法87の6①~④)。
(1)平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間に初めてビールの製造免許を受けた者 ① 平成25年4月1日から平成27年3月31日まで 本則税率の100分の85
② 平成27年4月1日からビールの製造免許を受けた日から5年を経過する日の属する月の末日まで 前年度課税移出数量が次のいずれの場合に該当するかに応じ、それぞれ次の税率
 イ 前年度課税移出数量が1,000キロリットルを超え1,300キロリットル以下の場合 本則税率の100分の92.5
 ロ 前年度課税移出数量が1,000キロリットル以下の場合 本則税率の100分の85
(2)平成25年3月31日以前にビールの製造免許を受けた者 ① 平成25年4月1日から平成27年3月31日まで 本則税率の100分の85
② 平成27年4月1日から平成28年3月31日まで 前年度課税移出数量が次のいずれの場合に該当するかに応じ、それぞれ次の税率
 イ 前年度課税移出数量が1,000キロリットルを超え1,300キロリットル以下の場合 本則税率の100分の92.5
 ロ 前年度課税移出数量が1,000キロリットル以下の場合 本則税率の100分の85

4 被災酒類製造者が移出する清酒等に係る酒税の税率の特例措置の改正  被災酒類製造者が移出する清酒等に係る酒税の税率の特例措置は、平成23年4月1日から平成28年3月31日までの間として措置されていたが、上記Ⅱ1の特例が延長(平成25年3月31日が適用期限となる清酒等に係る中小特例の5年延長)されたことに伴い、平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間の本特例措置による酒税の税率についても、租税特別措置法第87条の規定により計算した金額の100分の93.75とするための所要の規定の整備が行われた(震災税特法43の2①②)。

Ⅲ たばこ税関係の改正

 入国者が輸入する紙巻たばこに係るたばこ税の税率の特例措置の延長
 入国者が輸入する紙巻たばこに係る関税を無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成26年3月31日まで1年延長されたことから、これに併せて、紙巻たばこに係るたばこ税の税率の特例措置の適用期限が1年延長された(措法88の2)。

Ⅳ 揮発油税及び地方揮発油税関係の改正
バイオエタノール等揮発油に係る課税標準の特例措置の延長  「バイオエタノール等揮発油に係る課税標準の特例」については、平成25年3月31日までの措置とされていたが、エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(平成21年法律第72号)において、平成29年度に50万キロリットル(原油換算)のバイオエタノールの導入を石油事業者に求めていること等を考慮し、その適用期限を5年延長し、平成30年3月31日までの措置とすることとされた(措法88の7)。

Ⅴ 自動車重量税関係の改正

1 衝突被害軽減ブレーキを装備した貨物自動車に係る自動車重量税率の特例措置の改正
 衝突被害軽減ブレーキを装備した貨物自動車に係る自動車重量税率の特例措置の適用対象に、車両総重量が5トンを超えるバス等であって衝突被害軽減ブレーキを装備したものを加えることとされた(措法90の14、措規40の4)。
 この改正は、平成25年4月1日から平成27年4月30日(車両総重量が12トンを超えるバス等については、平成26年10月31日)までの間に新車に係る新規検査を受ける車両総重量が5トンを超えるバス等であって衝突被害軽減ブレーキを装備したものについて適用される。

2 被災自動車等に係る自動車重量税の還付措置の延長  「被災自動車等に係る自動車重量税の還付」については、平成25年3月31日までの措置とされていたが、平成24年度における申請状況等を考慮し、その適用期限を1年延長し、平成26年3月31日までの措置とすることとされた(震災税特法45)。

Ⅵ 印紙税関係の改正

1 金銭又は有価証券の受取書の免税点の引上げ

 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成24年法律第68号。以下「抜本改革法」という。)第7条では、税制に関する抜本的な改革の一環として、受取書に係る印紙税について負担の軽減を検討するとされ、事業者の納税事務の簡素化を図る観点や低額な文書の作成割合が高いという受取書の作成実態に鑑み、免税点の水準を5万円(現行3万円)未満に引き上げることとされた(印法別表1十七)。
 この改正は、平成26年4月1日以後に作成される受取書について適用される(改正法附則16)。

2 不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限の延長等  抜本改革法第7条において、税制に関する抜本的な改革の一環として、不動産譲渡契約書等に係る印紙税負担の軽減を検討するとされていたことから、不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置については、その適用期限を5年延長した上、平成26年4月1日以後に作成される契約書については、軽減割合及び対象範囲を拡充することとされた(措法91)。
 具体的には、下記ののとおり軽減割合及び対象範囲を拡充することとされた。


3 独立行政法人中小企業基盤整備機構が作成する不動産の譲渡に関する契約書等の印紙税の非課税措置の延長  独立行政法人中小企業基盤整備機構が作成する不動産の譲渡に関する契約書等の印紙税の非課税措置の適用期限が1年延長された(震災税特法52)。

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