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解説記事2014年07月07日 【ニュース特集】 法人税改革案からみる課税ベース拡大の行方(2014年7月7日号・№553)

政府税調、中小企業への課税強化案を提言
法人税改革案からみる課税ベース拡大の行方

 政府税制調査会(会長・中里実東京大学大学院教授)は6月27日、法人実効税率引下げに伴う課税ベース拡大の候補などを盛り込んだ「法人税の改革について」を取りまとめた。内容は、法人税の負担を“広く薄く”求めるという観点から、軽減税率(措置法による15%部分)の廃止や資本金基準(現行1億円以下)の見直しなど中小企業に対する課税強化案が多数盛り込まれることとなった。ただ、課税ベース拡大の具体案は、自民党税制調査会を中心とする年末の年度改正プロセスのなかで決定される。中小企業への課税強化は、公明党だけでなく、自民党税調でも反対が相次ぐことが予想されるだけに、どの程度実現するかは不透明な状況だ。


法人課税DGの大田弘子座長(写真中央)と中里実会長(写真右)

措置法部分の軽減税率(15%)廃止、資本金基準の見直しを明記
 政府が6月24日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2014」(いわゆる骨太の方針)には、平成27年度から数年で法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す旨が明記される一方で、法人税減税の財源は課税ベース拡大などで補う旨が明記された。また、課税ベース拡大の内容について骨太の方針では、年末に向けて議論を進め、具体案を得る旨が明記されている。
 つまり、具体的な項目は、自民党税制調査会を中心とする平成27年度税制改正プロセスのなかで議論されるわけだが、その議論のベースとなり得るのが政府税調が取りまとめた「法人税の改革について(以下、法人税改革案)」(本号32頁以降に全文掲載)だ。
本法部分の税率(19%)の見直しも  政府税調による「法人税改革案」で示された課税ベース拡大の候補(参照)をみると、中小企業に対する課税強化案が多数盛り込まれていることが目立つ。政府税調が、法人課税の負担を“広く薄く”求める方針を打ち出しているためだ。

 具体的にみると、まず、最も影響が大きいと思われるのが、中小企業(資本金1億円以下の法人)に対する軽減税率の見直しだ。
 法人税法では、中小企業の800万円以下の所得に対する法人税率は19%(資本金1億円超の大企業は25.5%)と規定しているが(法法66②)、租税特別措置法により15%に軽減されている(措法42の3の2)。
 法人税改革案は、リーマンショックへの対応として措置された時限的な軽減税率(15%)については、その役割を終えているとして廃止を提言。また、法人税法による19%の軽減税率も厳しく見直す必要があるとした。
資本金基準の引下げ、段階的設置が必要  法人税改革案では「中小企業」を定義付けている資本金基準(現在は1億円以下)を見直すべきとしている。これは、会計検査院からの「多額の所得を得ながら中小企業向け優遇税制を受けている企業が存在する」との指摘に対応する必要があるためだ。
 具体的には、企業規模を見る上での資本金基準が妥当であるか見直すべきであり、「1億円以下」という基準の引下げや基準を段階的に設けることも検討する必要があるとしている。
 さらに、外形標準課税については、現在は適用対象外である中小企業についても付加価値割(法人事業税)を導入すべきとの意見が多く出されたと明記された。

大企業の欠損金、繰越期間を延長したうえで控除割合を縮小へ
 法人税改革案には、中小企業だけでなく、大企業に影響を及ぼす項目も盛り込まれている。その1つが、欠損金の繰越控除制度の見直しだ。具体的には、欠損金の繰越期間(現在9年)を延長する一方で、現在80%(資本金1億円以下の中小企業を除く)とされる控除割合を引き下げる見直しを行うとしている。「控除割合×繰越期間」で計算されるトータルの控除額は現行を維持するように見直しが行われる模様だ(本誌550号9頁参照)。
 また、減価償却制度では、現在の200%定率法が廃止し、定額法に一本化することを盛り込んだ。
 さらに、受取配当等の益金不算入制度については、企業の株式保有が支配関係を目的とする場合は配当収益を課税対象から外すべきとする一方で、資産運用の場合は対象とすべき配当等の範囲や益金不算入の割合などを見直すとしている。

租特はゼロベースで見直し、社会福祉法人の介護事業に課税も
 減税の恩恵が大きい租税特別措置では、①期限のあるものは原則、期限到来時に廃止する、②期限のないものは期限を設定し、対象の重点化などの見直しを行う、③適用者数が極端に少ないものは廃止を含めた抜本的な見直しを行う、という3つの基準に沿ってゼロベースで見直しを行うとされた。
 ただ、研究開発税制(総額型)については、税率引下げに対応して大胆に縮減し、研究開発投資の増加インセンティブとなるような仕組みに転換していくべきだとしている。
 また、公益法人課税関係では、事業が競合する民間法人にあわせるかたちで、社会福祉法人などが行う介護事業の法人税非課税措置の見直しが盛り込まれた(546号12頁参照)。

課税ベース拡大の具体案は年末の年度改正議論で決定
 政府税調が示した法人税改革案は、法人実効税率の引下げに強い意欲を示す安倍首相の指示を受けて取りまとめられたもの。ただ、課税ベース拡大の具体的な項目は自民党税制調査会を中心とする年度改正プロセスのなかで決定される。
 中小企業に対する課税強化に対しては、公明党だけでなく、自民党税調でも反対の意見が相次ぐことは確実といえる。また、研究開発税制を始めとする租税特別措置の見直しについては、関係する業界団体や産業界からの反発は避けられないだろう。
 平成27年度税制改正プロセスのなかで政府税調が示した法人税改革案の内容が、どの程度実現するかは不透明な状況といえそうだ。

Column 与党税制調査会の法人税改革案の内容は?
 政府税制調査会による「法人税の改革について」の取りまとめに先行するかたちで、自民党・公明党の税制調査会は6月5日付けで「法人税改革に当たっての基本認識と論点」を公表している。このペーパーには、課税ベース拡大の具体的な対象項目は明確には示されていないものの、「中小企業に配慮しつつ、……公共サービスの対価を黒字企業に限らず広く公平に分かち合うという地方税の応益課税を強化する方向で見直していく必要がある。」と明記されている。外形標準課税の強化を示唆する一方で、中小企業への適用にはハードルを設けた格好だ(550号9頁参照)。

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