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解説記事2014年10月13日 【ニュース特集】 改正消費税法の経過措置政令を読み解く(2014年10月13日号・№566)

10%引上げ時はリサイクル料金などが対象に
改正消費税法の経過措置政令を読み解く

 政府は12月上旬にも平成27年10月1日から消費税率(地方消費税を含む。以下同じ)を10%に引き上げるか否かの判断を行う予定だ。これに先立ち、「消費税法施行令の一部を改正する政令」(政令第317号)が9月30日に公布された(平成27年10月1日施行。今号29頁参照)。今回の平成26年改正政令は、経過措置の対象となる工事の請負に係る契約に類する契約など、政令委任されていた事項を規定したほか、消費税率10%引上げ時の経過措置取引などを改めて定めたものとなっている。
 経過措置取引では、消費税率8%引上げ時と同じ取引を規定したほか、新たに家電リサイクル法に基づくリサイクル料金が対象になった。また、経過措置対象である旅客運賃等の範囲に「灯油の供給」を追加するなどの改正を行っている。本特集では、平成26年改正政令の主だった内容を解説する。

予約販売の書籍や通信販売などは改めて規定
 平成24年8月22日に公布された「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(平成24年法律第68号)により、平成26年4月1日から消費税率が8%に引き上げられた。さらに平成27年10月1日からは10%へと引き上げられる予定となっている。
 したがって、仮に消費税率が10%に引き上げられた場合には、平成27年10月1日(施行日)以後の資産の譲渡等、課税仕入れ及び保税地域から引き取られる外国貨物に係る消費税について税率10%が適用されることになる。
 ただし、改正消費税法では、ご存知のとおり、一定の取引については平成27年10月1日以降も旧税率を適用できる経過措置が設けられている。
 具体的には、(1)旅客運賃等に関する経過措置、(2)電気料金等に関する経過措置、(3)工事の請負等に関する経過措置、(4)資産の貸付けに関する経過措置、(5)役務の提供に関する経過措置である(改正消法附則3~14)。これらの経過措置取引については、消費税率8%引上げ時のみならず、10%引上げ時も同様の取扱いとなるよう読み替え規定が設けられている(改正消法附則16)。このため、これらの取引は、平成27年10月1日以降も経過措置の要件に該当すれば、旧税率が適用されることになる。
 ただ、消費税率8%引上げ時に措置されていた経過措置は前述の取引だけではない。たとえば、予約販売に係る書籍、特定新聞、通信販売、有料老人ホームの介護に係る入居一時金なども経過措置の対象とされていた。しかし、これらについては読み替え規定がなく、法令上は消費税率8%時のみの取扱いとなっていた。
 このため、9月30日に公布された平成26年改正政令では、消費税率8%への引上げ時と同様の経過措置が改めて規定されている(本誌565号11頁参照)。

家電リサイクル法のリサイクル料金も経過措置の対象に
 改正政令で措置された経過措置取引は、消費税率8%引上げ時と同様の①予約販売に係る書籍等に関する経過措置、②特定新聞に関する経過措置、③通信販売に関する経過措置、④有料老人ホームの介護に係る入居一時金に関する経過措置のほか、新たに家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)に基づくリサイクル料金等について新たな経過措置として規定されることになった(改正消令5条⑤)。
 具体的には、平成27年10月1日(施行日)前にリサイクル料金等を領収している場合において、施行日以後に廃家電を引き渡す場合には旧税率の8%が適用される(図表1参照)。

 本来であれば、消費税率8%引上げ時においても同様の措置を講じるべき取引といえそうだが、消費税率5%引上げ時においては家電リサイクル法が存在していなかったため、課題として浮上しておらず、平成25年改正政令(平成25年3月13日政令第56号)では盛り込まれなかったものだ。しかし、今回は消費税率8%引上げ時の状況を踏まえ、平成26年改正政令において新たに規定したものである。
予約販売の書籍、指定日は27年4月1日  そのほかの取引は基本的に消費税率8%の引上げ時と同様の取扱いとなっている。以下、概要を紹介する。
 ①の予約販売に係る書籍等に関する経過措置(改正消令附則5条①)では、事業者が平成27年4月1日の指定日前に締結した不特定かつ多数の者に定期的に継続して供給することを約する契約に基づく書籍等で、当該契約に定められた対価の全部又は一部を平成27年10月1日(施行日)前に領収している場合には、旧税率の8%が適用されることになる。
 たとえば、平成27年3月31日までに、購読期間が平成27年4月から平成28年3月までの月刊誌の購読契約を締結し、その代金の全部又は一部を平成27年9月30日までに領収しているものが経過措置の対象となる(領収した対価の額に限る。図表2参照)。書籍等とは、週刊誌、月刊誌、旬刊誌、季刊誌のほか、順次発行される文学全集などが該当する。

 なお、予約販売に係る書籍等に関する経過措置だが、平成25年改正政令の経過措置の適用を受けている場合は5%となる。具体的には、平成25年10月1日前に購読契約を締結し、その代金の全部又は一部を平成26年3月31日までに領収しているケースである。
雑誌は経過措置の対象外  ②の特定新聞に関する経過措置(改正消令附則5条②)については、事業者が平成27年10月1日(施行日)前に不特定多数に販売される新聞であれば、10月以降に販売しても旧税率の8%が適用される(図表3参照)。

 なお、雑誌については経過措置の対象外となっている。これは、平成16年4月から導入された消費税の総額表示に伴うシステム変更が行われた関係で、POSレジシステムが複数税率に対応できなくなってしまったことによるものである。
 このため、週刊誌等の雑誌については、バックナンバーも含めて経過措置の対象外となり、平成27年10月1日(施行日)以後は新税率の10%が適用される。
適用日前までに申込みを受けることが必要  ③の通信販売に関する経過措置(改正消令附則5条③)では、通信販売(不特定多数の者に商品の内容、販売価格その他の条件を提示し、郵便、電話その他の方法により売買契約の申込みを受けて当該提示した条件に従って行う商品販売)の方法により商品を販売する事業者が、平成27年4月1日(指定日)前に条件を提示し、または提示する準備を完了した場合が対象になる。事業者が平成27年10月1日(施行日)前に申込みを受けて当該提示した条件に従って施行日以後に商品を販売するときは、当該商品の販売に係る消費税については、旧税率の8%の適用となる。
 たとえば、通信販売業者が平成27年4月1日(指定日)前に配布したカタログにより、平成27年9月30日までに注文を受け、10月以降に販売するケースが該当する(図表4参照)。

 なお、平成25年改正政令の経過措置の適用を受けている場合は5%となる。具体的には、平成25年10月1日前に条件を提示等し、事業者が平成26年4月1日前に申込みを受けているケースである。
施行日前に老人ホームに入居  有料老人ホームの介護に係る入居一時金に関する経過措置(改正消令附則5条④)では、平成25年10月1日から平成27年4月1日(指定日)の前日までに有料老人ホームに係る終身入居契約をし、①入居期間中の介護に係る役務の提供の対価が入居の際に一時金として支払われる、②一時金につき事業者が事情の変更その他の理由によりその額の変更を求めることができる旨の定めがないものであり、平成27年10月1日(施行日)前から施行日以後引き続き当該契約に係る資産の譲渡等を行っている場合には、施行日以後に行う当該役務の提供(当該一時金に対応する部分に限る)に係る消費税については、旧税率の8%が適用できる(図表5参照)。
 なお、仮に指定日前に契約していたとしても、施行日以後に入居した場合には経過措置の対象外となる。また、指定日後に一時金の額の変更が行われた場合にはその時点から経過措置の対象外となるので要注意だ。


「灯油の供給」が新たに経過措置の対象に
 また、今回の平成26年改正政令では、経過措置の対象となる工事の請負に係る契約に類する契約など、政令委任されていた事項も改めて規定されている。
 まず、旅客運賃等に関する経過措置については、旅客運賃、映画又は演劇を催す場所への入場料金を平成27年10月1日(施行日)前に領収している場合で、その対価の領収に係る課税資産の譲渡等が施行日以後に行われるものが対象となる。たとえば、平成27年10月1日以後に乗車する電車の運賃で平成27年9月30日までに購入されたものについては旧税率の8%の適用となる。
 今回の平成26年改正政令では、旅客運賃等の範囲が改めて規定されている。具体的には、①汽車、電車、乗合自動車、船舶又は航空機に係る旅客運賃(料金を含む)、②映画、演劇、演芸、音楽、スポーツ又は見せ物を不特定かつ多数の者に見せ、又は聴かせる場所への入場料金、③競馬場、競輪場、小型自動車競走場又はモーターボート競走場への入場料金、④美術館、遊園地、動物園、博覧会の会場その他不特定かつ多数の者が入場する施設又は場所でこれらに類するものへの入場料金と明記された(改正消令附則4条①)。
平成27年10月31日までに料金が確定  これらの点は平成25年改正政令と同じ取扱いとなっているが、変更点があったのは電気料金等に関する経過措置の範囲である。
 平成26年改正政令では、具体的な範囲として、①電気の供給、②ガスの供給、③水道水又は工業用水の供給及び下水道を使用させる行為、④電気通信役務の提供、⑤熱供給及び温泉の供給が明記されたほか、新たに⑥灯油の供給が追加されている(改正消令附則4条②六)。北海道などの寒い地域のマンションで供給される灯油などで行われている取引であり、実務上は消費税率8%引上げ時においても経過措置を認めていたものだ。今回、政令に規定することで法令上も明確化したものである。
 したがって、灯油の供給を含め、これらの料金については、平成27年10月1日(施行日)から平成27年10月31日までの間に料金の支払いを受ける権利が確定するもの(10月31日後に確定するものは同日までの相当額)のその確定した料金が対象となる(図表6参照)。

工事の請負等の範囲を規定  工事の請負等に関する経過措置については、平成25年10月1日から指定日である平成27年4月1日の前日までの間に締結した工事又は製造の請負に係る契約に基づいて、平成27年10月1日(施行日)以後にその契約に係る課税資産の譲渡等を行う場合(指定日以後にその契約に係る対価の額が増額された場合には、その増額される前の対価の額に相当する部分に限る)が対象になる。
 たとえば、平成27年3月31日までに締結した契約に基づく建物建築工事で、完成した建物の引渡しが平成27年10月1日以後になるものについては旧税率の8%が適用できる。ただし、平成27年4月1日(指定日)以後にその契約に係る対価の額が増額された場合の増額部分については、経過措置の対象とはならず消費税率は10%となる。
 この工事の請負に係る契約とは、建物建築工事だけが対象になるのではない。平成26年改正政令によると、測量、地質調査、工事の施工に関する調査、企画、立案及び監理並びに設計、映画の制作、ソフトウエアの開発その他の請負に係る契約(委任その他の請負に類する契約を含む)とされた(改正消令附則4条⑤)。
 加えて、①仕事の完成に長期間を要し、②当該仕事の目的物の引渡しが一括して行われることとされているものであり、③当該契約に係る仕事の内容につき相手方の注文が付されているものとの要件が付されている。この点については消費税率8%引上げ時と同様の取扱いとなっている。
 なお、「その他の請負に係る契約」とは、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、技術援助、情報の提供に係る契約が該当する。また、「委任その他の請負に類する契約」とは、検査、検定等の事務処理の委託、市場調査その他の調査に係る契約が該当する(平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A問24参照)。

所有権移転外ファイナンス・リースでも経過措置の対象になるケースが
 リース契約等が対象となる資産の貸付けに関する経過措置については、平成25年10月1日から平成27年4月1日(指定日)の前日までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、平成27年10月1日(施行日)前から引き続き行われている資産の貸付けで、一定の要件を満たすものが対象となる。
費用の90%以上の支払い  一定の要件とは、その契約の内容が次の①及び②、又は①及び③に掲げる要件に該当する場合である。ただし、平成27年4月1日(指定日)以後にその資産の貸付けの対価の額が変更された場合には、その変更後におけるその資産の貸付けについては対象外となる。
① その契約に係る資産の貸付けの期間及びその期間中の対価の額が定められていること
② 事業者が事情の変更その他の理由によりその対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと
③ 契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがないこと、その他対価に関する契約の内容が政令で定める要件に該当していること
 平成26年改正政令では、上記③の契約内容の要件について、貸付けに係る資産の取得に要した費用の額及び付随費用の額(利子又は保険料の額を含む)の合計額のうちにその契約期間中に支払われるその資産の貸付けの対価の額の合計額の占める割合が100分の90以上であるようにその契約に定められていることとされた(改正消令附則4条⑥)。この点についても消費税率8%引上げ時と同様の取扱いとなっている。
延払基準の方法により経理  前述の資産の貸付けに関する経過措置について、①及び③の要件を満たすものはファイナンス・リース取引が該当、①及び②の要件を満たすものはそれ以外の資産の貸付けが該当することになる。いわゆる所有権移転外ファイナンス・リース取引については、平成19年度税制改正により、平成20年4月1日以後に締結するリース契約から、リース資産の引渡日においてリース資産の譲渡があったものとして取り扱われることになっている。つまり、「賃貸借取引」から「売買取引」になったことにより、資産の貸付けに関する経過措置の対象外となったわけだ。
 ただし、所有権移転外ファイナンス・リース取引であっても延払基準の方法により経理している場合には経過措置の対象とする措置が講じられることになった。
 具体的には、平成26年4月1日から平成27年10月1日(施行日)の前日までにリース延払基準の方法により経理した場合の長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例の適用を受けている場合については、施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡延払収益額に係る部分の課税資産の譲渡等に係る消費税については経過措置が適用され、旧税率の8%の適用となる(改正消令附則6条、図表7参照)。

 また、リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合も同様に経過措置が設けられている(改正消令附則8条、図表8参照)。平成26年4月1日から平成27年10月1日(施行日)の前日までに行ったリース譲渡につき、施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡収益額に係る部分の課税資産の譲渡等に係る消費税については、旧税率の8%が適用されることになる。

冠婚葬祭互助会が行う結婚式と葬式が対象  役務の提供に関する経過措置については、平成25年10月1日から平成27年4月1日(指定日)の前日までの間に締結した役務の提供に係る契約で、その性質上役務の提供の時期をあらかじめ定めることができないものが対象となる。当該役務の提供に先立って対価の全部または一部が分割して支払われる契約であり、平成27年10月1日(施行日)以後にその契約に係る役務の提供を行う場合において、契約内容が次に掲げる要件に該当するときは、その役務の提供については旧税率の8%となる。
① その契約に係る役務の提供の対価の額が定められていること
② 事業者が事業の変更その他の理由によりその対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと
 平成26年改正政令では、「役務の提供に先立って対価の全部又は一部が分割して支払われる契約」の詳細が改めて規定された(改正消令附則4条⑦)。
 具体的には、①婚礼(結婚披露を含む)のための施設の提供、衣服の貸与その他の便益の提供及びこれに附随する物品の給付、②葬式のための祭壇の貸与その他の便益の提供及びこれに附随する物品の給付が該当することになる。
 たとえば、冠婚葬祭互助会が行う結婚式やお葬式を行うための契約について、事業者が平成27年3月31日までに契約し、平成27年10月1日以後に結婚式やお葬式を行う場合については旧税率の8%のままとなる。
 ただし、平成27年4月1日(指定日)以後にその役務の提供の対価の額の変更が行われた場合には、変更された対価の部分だけでなく、当該変更後においては、当該役務の提供そのものが経過措置の対象とはならず、新税率の10%が適用されることになる。

コラム 消費税引上げ時の経過措置とは?
 消費税引上げ時の経過措置は、課税の公平を阻害しない範囲内で、原則的な処理を厳格に適用することが困難な取引を念頭に置いて措置されたものである。
 たとえば、電車の運賃等は、売上計上時期と資産の譲渡等の時期にズレがあり、かつ、事後的にその料金等を精算することが困難であるため、経過措置取引となったものだ。また、請負工事等については、目的物の完成・引渡しまでに長期間を要する取引であり、事後的に契約価格を変更することが難しい取引だからである。
 なお、経過措置を適用するか否かは任意ではない。要件に該当すれば強制的に旧税率が適用されることになる。仮に当事者間で新税率を前提とした価格で契約を締結していたとしても経過措置の要件を満たしていれば旧税率が適用されることになる。

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