解説記事2016年04月11日 【SCOPE】 7月総会への法整備が進むも開催は企業の“任意”(2016年4月11日号・№638)
税務の明確化や会社法施行規則の改正も
7月総会への法整備が進むも開催は企業の“任意”
金融庁に設置された金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ」は近くまとめる報告書において、企業が任意で株主総会を7月に開催しやすくするよう、決算日とされている「大株主の状況」等の記載時点を見直す方針を盛り込む。これを受け、金融庁などでは法整備等を行う方針だ。また、税務に関しては、現在、経済産業省が国税庁と調整を行っており、法人税の税務申告期限を延長可能である旨が明確化される方向。法制度の整備をすることで、企業は7月に株主総会を開催することが以前よりも容易になる。ただし、あくまでも株主総会を後ろ倒しするかどうかは企業の任意となるため、どの程度の企業が実施するかは未知数といえよう。
「大株主の状況」等の記載時点を議決権行使基準日に変更へ
株主との建設的な対話等を充実させるための方策の1つに株主総会の後ろ倒しが検討されている。例えば、多くの3月決算会社では、定時株主総会について毎年3月31日を基準日とし、毎年6月に招集する旨を定款で規定しているのが一般的だ。ただ、会社法上は事業年度の終了後の一定の時期に定時株主総会を開催すればよいとされている(会社法296条1項)。このため、現行の規定でも基準日を別に定款で定めれば、6月末までに定時株主総会を開催しなくても法令違反にはならず、7月以降に株主総会を開催することが可能となっている。
ただ、制度上の問題として挙がっているのが有価証券報告書と事業報告の「大株主の状況」等の記載時点である。両者とも記載時点が決算日(事業年度末)とされているため、仮に株主総会を後ろ倒しした場合には決算日と議決権行使基準日がずれることにより、株主の確定を2回行う必要が生じるとの指摘がされていた。このため、金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ」が近くまとめる報告書では、「決算日」から「議決権行使基準日」と見直すことにより、株主確定の事務負担を増加させないようにする旨が盛り込まれる方向となっている。事業報告の場合は会社法施行規則122条の改正も視野に入ってくる。
申告期限延長の“特別な事情”に該当 また、もう1つの問題は税務上の取扱いだ。法人税の確定申告については、事業年度終了の日の翌日から2か月以内とされ、上場会社の場合は申告期限を延長することで「3か月以内」とされている。3月決算法人が7月以降に株主総会を開催するようなケースでは、株主に計算書類の報告をする前に確定申告を行うことになってしまうからだ。
この点、経済産業省の「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」が昨年4月に取りまとめた報告書では、経済産業省が国税庁と調整した上で、「株主との対話促進のための株主総会関連の日程の適切な設定が要請される上場会社等において、基準日を決算日以降の日に設定することによる株主総会時期の見直しが行われた場合、その株主総会時期が相当な時期と認められるときは、法人税法上の税務申告期限を延長できる特別の事情に該当するものと考えられる」と明記されている。経済産業省によると、現在、国税庁に正式な文書として公表してもらうよう調整を行っているとしている。
基準日変更する企業は? 金融庁や経済産業省では、企業が7月に株主総会を後ろ倒しできるように法制度の整備を進めるが、実際に株主総会を後ろ倒しする企業がどの程度出てくるかは未知数といえる。投資家サイドからすれば、有価証券報告書の総会前提出や株主総会議案の十分な検討時間の確保を通じた対話の促進や、株主総会の開催日の集中緩和等に繋がるとのメリットがあるが、企業側にメリットが見られない中、決算日の株主に対して計算書類の報告をするという企業の実務慣行からすると、基準日を変更するという状況にはならない可能性が高そうだ。また、時期的に四半期決算実務と重なるといった実務上の問題点もある。
7月総会への法整備が進むも開催は企業の“任意”
金融庁に設置された金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ」は近くまとめる報告書において、企業が任意で株主総会を7月に開催しやすくするよう、決算日とされている「大株主の状況」等の記載時点を見直す方針を盛り込む。これを受け、金融庁などでは法整備等を行う方針だ。また、税務に関しては、現在、経済産業省が国税庁と調整を行っており、法人税の税務申告期限を延長可能である旨が明確化される方向。法制度の整備をすることで、企業は7月に株主総会を開催することが以前よりも容易になる。ただし、あくまでも株主総会を後ろ倒しするかどうかは企業の任意となるため、どの程度の企業が実施するかは未知数といえよう。
「大株主の状況」等の記載時点を議決権行使基準日に変更へ
株主との建設的な対話等を充実させるための方策の1つに株主総会の後ろ倒しが検討されている。例えば、多くの3月決算会社では、定時株主総会について毎年3月31日を基準日とし、毎年6月に招集する旨を定款で規定しているのが一般的だ。ただ、会社法上は事業年度の終了後の一定の時期に定時株主総会を開催すればよいとされている(会社法296条1項)。このため、現行の規定でも基準日を別に定款で定めれば、6月末までに定時株主総会を開催しなくても法令違反にはならず、7月以降に株主総会を開催することが可能となっている。
ただ、制度上の問題として挙がっているのが有価証券報告書と事業報告の「大株主の状況」等の記載時点である。両者とも記載時点が決算日(事業年度末)とされているため、仮に株主総会を後ろ倒しした場合には決算日と議決権行使基準日がずれることにより、株主の確定を2回行う必要が生じるとの指摘がされていた。このため、金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ」が近くまとめる報告書では、「決算日」から「議決権行使基準日」と見直すことにより、株主確定の事務負担を増加させないようにする旨が盛り込まれる方向となっている。事業報告の場合は会社法施行規則122条の改正も視野に入ってくる。
申告期限延長の“特別な事情”に該当 また、もう1つの問題は税務上の取扱いだ。法人税の確定申告については、事業年度終了の日の翌日から2か月以内とされ、上場会社の場合は申告期限を延長することで「3か月以内」とされている。3月決算法人が7月以降に株主総会を開催するようなケースでは、株主に計算書類の報告をする前に確定申告を行うことになってしまうからだ。
この点、経済産業省の「持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会」が昨年4月に取りまとめた報告書では、経済産業省が国税庁と調整した上で、「株主との対話促進のための株主総会関連の日程の適切な設定が要請される上場会社等において、基準日を決算日以降の日に設定することによる株主総会時期の見直しが行われた場合、その株主総会時期が相当な時期と認められるときは、法人税法上の税務申告期限を延長できる特別の事情に該当するものと考えられる」と明記されている。経済産業省によると、現在、国税庁に正式な文書として公表してもらうよう調整を行っているとしている。
基準日変更する企業は? 金融庁や経済産業省では、企業が7月に株主総会を後ろ倒しできるように法制度の整備を進めるが、実際に株主総会を後ろ倒しする企業がどの程度出てくるかは未知数といえる。投資家サイドからすれば、有価証券報告書の総会前提出や株主総会議案の十分な検討時間の確保を通じた対話の促進や、株主総会の開催日の集中緩和等に繋がるとのメリットがあるが、企業側にメリットが見られない中、決算日の株主に対して計算書類の報告をするという企業の実務慣行からすると、基準日を変更するという状況にはならない可能性が高そうだ。また、時期的に四半期決算実務と重なるといった実務上の問題点もある。
【表1】株主総会開催時期に関する各国規定 |
日 本 | 米 国 | ドイツ | フランス | 英 国 |
事業年度終了後 一定の時期 | 最後の年次総会の後 13ヶ月以内※ | 決算日から 8ヶ月以内 | 決算日から 6ヶ月以内 | 決算日から 6ヶ月以内 |
※ 最後の年次総会の後、13ヶ月以内に開催されない場合には、株主又は取締役が裁判所に申し立てることができる。デラウェア州一般会社法。 |
(出典:経済産業省) |
【表2】議決権行使の基準日に関する各国規定 |
日 本 | 米 国 | ドイツ | フランス | 英 国 |
3ヶ月以内 | 10~60日以内※1 | 21日前※2 | 3営業日前 | 2日以内 |
※1 デラウェア州一般会社法。 ※2 無記名株式についての規定。 |
(出典:経済産業省) |
議決権行使書面など3種類以外は電子提供可能に | |
株主による議案検討期間が十分に確保されているとはいえないとの指摘を受け、経済産業省に設置された株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会(座長:尾崎安央早稲田大学法学学術院教授)では、株主総会招集通知の提供の原則電子化などを検討している。 今後取りまとめられる報告書には、①株主総会の基本的情報、②法令上、株主総会前に提供すべきと規定された情報が掲載されたWEBサイトのアドレス、③議決権行使書面の3種類については、株主に提供する必要最低限の情報として、株主からの個別承諾を得ない限り、書面により通知することとする。この3種類以外の書類(株主総会参考書類、事業報告、計算書類・連結計算書類、会計監査報告・監査報告に相当する情報)については、原則として電子提供ができることを提案する方向だ。 |
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