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解説記事2017年04月24日 【税務マエストロ】 資産の譲渡等の範囲(4)(2017年4月24日号・№688)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
資産の譲渡等の範囲(4)

#187 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#188
外国子会社合算税制の総合的見直し④
PwC税理士法人
品川克己
税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一
人者がそのリスクを検証する。

マエストロの解説  今月も、「資産の譲渡等の範囲」について、「国税庁質疑応答事例」のうち、本稿で未掲載の事例を紹介し、必要に応じて解説を加えることとする。今回は、土地信託やPFI事業の取扱いなどについて確認する。なお、本稿の内容については、前月掲載したNo.684(2017.3.27号)のほか、No.628(2016.2.1号)及びNo.632(2016.2.29号)の掲載記事も参考にされたい。

○土地信託と消費税(資産の譲渡の範囲32)
【照会要旨】  事業者が行う土地信託に係る取引の消費税の取扱いで、例えば、土地信託契約の中でも一般的な賃貸型土地信託に係る消費税の取扱いは、どのようになりますか。
 なお、賃貸型土地信託とは、信託された土地の上に借入金等により建物を建築し、その賃貸による収益を受益者に信託配当金として交付する信託契約をいいます。
【回答要旨】 (1)信託の規定による委託者から受託者への信託財産の移転は、資産の譲渡等に該当しません。
  ただし、信託の設定により取得した信託受益権を他に譲渡した場合には、受益者が信託受益権の目的となっている信託財産の構成物の全部を一括して譲渡したものとして取り扱われるので、その譲渡等の対価の額を課税資産と非課税資産とに合理的に区分する必要があります。
(2)借入金等により建物を建築した場合には、受益者が当該建物を取得したことになりますので、受益者の課税仕入れに該当します。
(3)信託財産となった建物を賃貸した場合 の賃貸料収入は受益者の課税売上げとなります(ただし、住宅の貸付けに係るものは非課税となります。)。
(4)信託財産から支出される販売費、一般管理費等は個々の内容により、課税、非課税及び不課税取引に区分し、その結果課税取引となるものについては、受益者の課税仕入れに該当します。
(5)信託期間中に受託者から受益者に交付される信託配当金は、資産の譲渡等の対価として受領したものではありませんから、課税関係は生じません。
(6)信託の終了に伴い受託者から受益者への信託財産の移転は、資産の取得等に該当しないので、課税関係は生じません。
<解説>  賃貸型土地信託とは、土地の所有者(委託者)が、土地の有効利用を信託銀行や信託会社(受託者)に依頼する契約のことをいう。受託者は、信託された土地の上に借入金等により建物を建築し、その賃貸による収益を委託者(受益者)に信託配当金として交付する。

 上記取引において、建物の建築費が10,000の場合には、受益者の課税売上高は賃料収入の100(賃料収入)、課税仕入高は10,020(建物の建築費10,000+信託報酬20)となる。
○委託者と受益者の関係  通常の信託の場合、「委託者」と「受益者」は一致することになる。ただし、信託の設定により取得した信託受益権を他に譲渡した場合には、受益者が信託受益権の目的となっている信託財産を譲渡したものとして取り扱われるので、委託者は信託受益権の譲渡者、受益者は信託受益権の購入者となる(委託者と受益者が一致しない)。


○売買とされるPFI事業についての消費税の取扱い(資産の譲渡の範囲37)
【照会要旨】  次のような契約を締結して行われるPFI事業については、その資産の契約形態が賃貸借であったとしても、その賃貸借の目的となる資産の引渡しの時にその資産の売買があったものとされるとともに(法人税法64の21)、民間事業者Aが一定の延払基準の方法により経理したときは、法人税法第63条《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》第1項の規定の適用ができるとされていますが、これらの適用を受ける場合の賃貸料相当額に係る消費税の取扱いについてはどのようになるでしょうか。
1 事業の概要  本事業は、民間事業者AがPFI法に基づき建設・所有するB館を、契約期間中(30年間)はC県に賃貸しながら、そのB館の維持管理の業務を受託するというものであります。
 なお、契約期間経過後には、民間事業者Aが有するB館の所有権をC県に対して無償で譲渡します。
(参考)
PFI……Private Finance Initiativeの略です。
PFI法……「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(平成11年法律第117号)」の略です。
PFI事業……公共施設等の整備等に関する事業であって、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより効率的かつ効果的に実施されるものをいいます(PFI法第2条第2項)。
2 サービスの対価の支払  C県は、民間事業者Aに年2回・30年間払いによってサービスの対価を支払うこととしていますが、その対価のうち賃貸料相当額の部分については、本件工事費等及びこれに係る支払利息相当額が積算の基礎となっています。
3 運営と観覧料の徴収・管理  B館は、民間事業者Aがその所有権を有しますが、対外的に「C県立B館」の名で運営されるとともに、C県は、B館の入館者から観覧料を徴収(実際の徴収事務は民間事業者Aに委託しますが、当日分の観覧料は県の出納員に引継ぎ)し管理します。


【回答要旨】
1 長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例
 事業者が、法人税法第63条第1項《長期割賦販売等に係る収益及び費用の帰属事業年度》に規定する長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等(以下「長期割賦販売等」といいます。)を行った場合において、当該事業者が同項の規定の適用を受けるため当該長期割賦販売等に係る対価の額につき同項に規定する延払基準の方法により経理することとしているときは、当該事業者が当該長期割賦販売等に係る賦払金の支払の期日の属する各課税期間においてそれぞれ当該賦払金に係る部分の資産の譲渡等を行ったものとすることができます(消費税法16)。
 したがって、民間事業者Aが、PFI事業について法人税法第63条第1項の適用を受ける一定の延払基準の方法により経理したときは、消費税についても、消費税法第16条第1項又は第2項《長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例》により各課税期間において当該賦払金に係る部分のみの金額を課税売上げとすることができます。
 ただし、法人税法第63条第1項の規定により延払基準の方法により経理した費用の額は各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入することとされていますが、消費税については、このような規定はないことから、課税仕入れを行った日の属する課税期間における課税仕入れとなります。
《注意》
1 法人税法第63条第1項の適用を受けている場合であっても、消費税については、 消費税法第16条第1項又は第2項を適用しないで、資産の引渡しの日の属する課税期間中の課税売上げとすることもできます。
2 引渡しを受けた事業者(C県)においては、相手方事業者(民間事業者A)において消費税法第16条第1項又は第2項の規定の適用の有無にかかわらず資産の引渡しの日の属する課税期間における課税仕入れとなります。
2 賃貸料相当額に含まれる利息相当額の取扱い  民間事業者Aが、C県から収受する長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の対価の額(賃貸料相当額)には、当該賦払金に対する利息相当額が含まれています。
 消費税法において、資産の譲渡等の対価の額又は当該対価の額に係る金銭債権の額を二月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して受領する場合におけるその受領する賦払金のうち利子又は保証料の額に相当する額で当該賦払に係る契約において明示されている部分を対価とする役務の提供については、利子を対価とする貸付金等に類するものとして非課税とされています(消費税法別表第一3、消費税法施行令10③十)。
 照会の賃貸料相当額は、資産の譲渡等の対価の額等を二月以上の期間にわたり、かつ、三回以上に分割して受領するものですから消費税法施行令第10条第3項第10号《割賦販売等に準ずる方法により資産の譲渡等を行う場合の金利又は保証料相当額》に規定する賦払金に該当し、契約において当該利息相当額が明示されている場合には、当該賦払金に対する利息相当額は非課税となります。

<解説>  代金分割払いの契約により資産を譲渡する場合には、その資金の回収に長期間かかることに加え、回収に費用がかかり、貸倒れとなる危険性も高いことから、所得税や法人税では、延払基準による処理が認められている。そこで、消費税法においても、所得税又は法人税で延払基準の方法により経理しているときは、これらの税法との調整上、売上高の繰延処理(長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例)を認めることとしたものである。
1 適用要件(消基通9-3-3、所法65③、所令190、法法63⑥、法令127)  消費税において、「長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例」の適用を受けることができるのは、次の①~③のすべての要件に適合する契約に基づく譲渡又は請負である。
① 月賦、年賦その他の賦払の方法により3回以上に分割して行われるものであること
② 目的物の引渡し又は役務の提供期日の翌日から最終支払期日までの期間が2年以上であること
③ 目的物の引渡期日までに受けるべき頭金等が、対価の2/3以下であること
〔具体例〕
(契約内容) ①譲渡年月日 平成29年3月1日
②賦払金の最終支払期日 平成32年2月29日
③譲渡代金 9,000,000円
④決済方法
  譲渡契約時(平成29年3月1日)に頭金1,800,000円を受領し、以後、平成29年3月31日を第1回の支払期日として毎月末に200,000円ずつ36回の均等分割払い
(延払基準の判定) ①36回+1回=37回≧3回
②平成29年3月2日~平成32年2月29日≧2年
③9,000,000円×2/3=6,000,000円≧1,800,000円 ∴延払基準の適用あり

2 選択基準  「長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例」は、所得税または法人税において、(リース)延払基準などの適用を受けていることが要件となるが、強制されるものではない。よって、所得税や法人税の申告で延払基準の適用を受け、消費税では引渡基準(原則)によることも認められる(消法16①、消基通9-3-1)。

3 計算方法(消令31)
4 仕入税額控除との関係図表1参照)

 延払基準の適用を受ける場合、所得税や法人税の世界では、売上高だけでなく、売上原価についても調整計算が必要となる。これに対し、消費税には費用収益対応の概念がないため、たとえ割賦販売用資産であっても、仕入時に全額が仕入控除税額の計算に取り込まれることになる。
 また、割賦で課税資産を購入した事業者は、売手側の処理や未払金の額に関係なく、取得時に全額を仕入控除税額の計算に取り込むことができる(消基通11-3-2)。

○各種ホテルが提供する食事付き宿泊プラン(資産の譲渡の範囲41)
【照会要旨】  各種ホテルが、ホテル内の直営レストランで利用できる食事券の付いた宿泊サービス「食事付き宿泊プラン」を宿泊客に提供している場合の消費税の課税関係はどのようになるのでしょうか。
【回答要旨】  当該食事付き宿泊プランは、一つの包括的な役務として提供しているものと認められますので、食事券の利用の有無にかかわらず、その料金の全額が消費税の課税対象となります。
〔具体例〕  Mホテルにおける宿泊料金は、朝食付きの宿泊料金が12,000円、素泊り料金が10,000円に設定されている。Mホテルでは、食事付きの宿泊プランを申し込んだ宿泊客が朝食をとらなかったとしても、食事代金は返金しないこととしている。この場合において、課税期間中に利用されなかった食事券が100枚あった場合においても、この利用されなかった食事券に相当する金額20万円《(12,000円-10,000円)×100枚=20万円》を売上高から控除することはできない。

○産業医の報酬(役務の提供1)
【照会要旨】  医療法人が、事業者との間の契約に基づき、病院の勤務医をその事業者の労働安全衛生法第13条に規定する産業医(一定規模以上の事業所で選任しなければならないとされている労働者の健康管理に当たる医者)に選任して派遣した場合に、病院がその対価として事業者から委託料の支払を受ける委託料は課税の対象となるのでしょうか。
(注)個人の医師が事業者から支払を受ける産業医としての報酬は、所得税法上は原則として給与に該当するものとして取り扱われています。
【回答要旨】  医療法人がその勤務医を産業医として派遣した対価として受領する委託料は、医療法人のその他の医業収入となるものであり、課税の対象となります。
 なお、開業医(個人)が事業者から支払を受ける産業医としての報酬は、原則として給与収入となり、消費税は不課税となります。
<解説>  産業医の報酬は、その産業医が個人開業医か医療法人かにより取扱いが異なってくる(図表2参照)。

 医療法人が自らの勤務医を産業医として派遣する行為は、派遣先と派遣される勤務医との間に雇用関係がないことから社員の出向には該当しない。よって、派遣先から収受する委託料は「労働者派遣料」として課税売上高となる(消基通5-5-10・5-5-11)。
 また、産業医は派遣先に対して直接診療行為を行っているわけではないので、収受する委託料は非課税となる保険診療報酬にも該当しない。


参考
税理士法人が収受する会計参与としての 報酬の取扱い  会計参与は法人税法における役員に該当する(法法十五)。したがって、個人の税理士が会計参与として会社から収受する金銭は役員報酬(給与)となる。
 これに対し、税理士法人が会計参与として会社から収受する金銭は、所得税法第28条第1項(給与所得)に規定する給与には該当せず、税理士法人が会社に対して行う役務提供(会計参与)の対価として課税売上高になるものと思われる。

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