解説記事2017年11月13日 【未公開裁決事例紹介】 相続財産に関する判決後に更正請求が可能な場合は?(2017年11月13日号・№715)
未公開裁決事例紹介
相続財産に関する判決後に更正請求が可能な場合は?
申告時に予測できなかった事態であることが必要
○請求人に係る相続に係る相続分の帰属が零に変更された判決が相続税法に規定する「相続財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決」に該当するかが争われた裁決。国税不服審判所は、当該規定に該当するためには申告時には予測し得なかった事態その他やむを得ない理由に基づくものであることが必要であると判断し、請求人の主張を斥けた(平成29年1月12日、棄却)。
基礎事実等
(1)事案の概要 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、亡母の相続に係る相続税について、相続税法(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)第32条《更正の請求の特則》の規定に基づく更正の請求をしたのに対し、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実及び審査請求に至る経緯 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ ×××(以下「本件被相続人」という。)は、××××に死亡し、同人に係る相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
本件相続の法定相続人は、長女である請求人、二女である×××(以下××という。)及び長男である×××(以下「××」という。)の3名である(以下、これら3名を「本件法定相続人ら」という。)。
ロ 請求人は、××××に対し、本件相続について、熟慮期間伸長の申立てを二度行った上、伸長後の熟慮期間内に相続放棄の申述(以下「本件申述」という。)をし、同裁判所は、平成20年12月25日、これを受理した。
ハ ××は、平成23年7月25日、××××に対し、請求人及び××を相手方として、本件被相続人の夫である×××(××××死亡)、その父×××(××××死亡)、その母×××(××××死亡)及び本件被相続人の各相続に係る遺産分割審判の申立てをした。
ニ 請求人は、本件相続に係る相続税について、法定申告期限後である平成24年2月24日、別表の「申告」欄のとおり申告した(以下「本件期限後申告」という。)。
請求人は、本件期限後申告において、本件相続に係る財産(以下「本件相続財産」という。)がまだ分割されていないとして、相続税法第55条の規定に基づき、民法の規定による相続分の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算した。
ホ ××××は、平成26年2月21日、上記ハの遺産分割審判の申立てに対し、本件相続の相続人が本件法定相続人ら3名であり、本件法定相続人らの各法定相続分がいずれも3分の1であることを前提に、遺産分割として、本件相続財産に含まれる別紙2(略)記載の各土地(以下「本件各土地」という。)を請求人に取得させることなどを内容とする審判(以下「本件審判」という。)をし、本件審判は同年3月12日に確定した。
へ 本件審判に基づき、本件各土地のうち、別紙2(略)の3、4の各土地について、平成26年3月12日受付で、別紙2(略)の1、2の各土地について、同年5月1日受付で、それぞれ本件相続を原因とする本件被相続人から請求人への各所有権移転登記等(別紙2(略)の3の土地については持分全部移転登記)が経由された。
ト ××は、平成26年10月20日、××××に対し、請求人及び××を被告として、請求人が本件申述をしており、相続人でなかったことなどを理由に、本件審判の無効確認を求めるとともに、本件審判を前提としてされた上記への本件各土地についての各所有権移転登記等の抹消登記手続等を求める訴えを提起した。
××××は、××××、上記訴訟について、請求人が本件申述をし、これが受理されたことにより、請求人は本件相続の相続人ではなくなり、その結果、××及び××の法定相続分にも変動を来すことから、本件審判は、本件相続について相続人でない者を相続人とし、その余の被相続人に係る相続について法定相続分を誤ったものであり、その全体が無効というほかないなどとして、本件審判が無効であることを確認するとともに、請求人に対し、本件審判を前提にされた上記への本件各土地についての各所有権移転登記等の抹消登記手続を命じることなどを内容とする判決(以下「本件判決」という。)を言い渡し、同判決は××××に確定した。
チ 請求人は、平成27年7月21日、本件相続に係る相続税について、相続税法第32条の規定に基づき、別表(略)の「更正の請求」欄のとおり更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ、原処分庁は、同年10月19日付で、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
そのほか、審査請求に至る経緯は別表(略)のとおりである。
争点および主張
(1)本件判決により、相続税法第32条第1号に規定する相続財産の分割が行われたといえるか否か(争点1)。
(2)本件判決が、相続税法第32条第6号の委任を受けた相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「相続財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決」に該当するか否か(争点2)。 当事者の主張は表のとおり。
審判所の判断
(1)争点1(本件判決により、相続税法第32条第1号に規定する相続財産の分割が行われたといえるか否か。)について イ 上記のとおり、本件判決は、請求人が本件相続について相続放棄をしていたことを理由に、本件審判が無効であることを確認するとともに、本件審判を前提にされた本件各土地についての各所有権移転登記等の抹消登記手続を命じることなどを内容とするものであり、これによって本件相続財産の分割が行われたものとはいえない。
したがって、本件更正請求は、相続税法第32条第1号所定の要件を満たさない。
ロ 請求人は、共同相続人の一人が遺産分割調停において相続財産を取得しないことが確定した場合、相続税法第32条第1号の適用が認められていることからして、本件判決があったこともこれと同様に解される旨主張するが、請求人が主張する事例と本件判決とは場面を異にするから、請求人の主張は採用することができない。
(2)争点2(本件判決が、相続税法第32条第6号の委任を受けた相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「相続財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決」に該当するか否か。)について
イ 法令解釈 相続税法第32条の規定は、相続税特有の更正の請求の事由について定めたものであり、更正の請求に関する一般的規定である通則法第23条に対し、特例的規定と位置付けられる。
そして、通則法第23条第2項に定めるいわゆる後発的事由による更正の請求は、申告書を提出した者が、その申告時には予測し得なかった事態その他のやむを得ない事由が後発的に生じたことにより、遡って税額等の減額をなすべきこととなった場合に、同条第1項所定の期間が過ぎていることを理由に更正の請求が認められないとすると納税者にとって酷となるような一定の場合について、同項所定の期間経過後においても更正の請求を認め、例外的にその救済を図ろうとするものであり、その中の同項第1号は、後発的事由の一つとして、「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」ことを定めている。
上にみた通則法第23条第2項の趣旨及び同条と相続税法第32条の関係等に鑑みると、相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「判決」と、通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」とは、その基本的な性質を同じくするものであると解するのが相当である。
そうすると、相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「判決」は、通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」と同様に、当該判決について、納税者において申告時に予測し得なかった事態その他のやむを得ない事由が生じたと評価できるものでなければならないものと解するのが相当である。
ロ 検討 これを本件についてみると、請求人は、自ら本件申述をして、本件相続について相続放棄をしたにもかかわらず、これと矛盾する内容の、請求人が本件相続に係る相続税の納税義務者であることを前提とする本件期限後申告をし、さらに、その後の遺産分割審判においても、相続放棄をしていることを家庭裁判所に申し出なかった結果、相続人でないことが看過されて、本件審判がされたことが認められる。
これらの事情に照らすと、請求人が本件相続について相続放棄をしていたことを理由に、本件審判が無効であることを確認するとともに、本件審判を前提にされた本件各土地についての各所有権移転登記等の抹消登記手続を命じることなどを内容とする本件判決は、納税者において申告時に予測し得なかった事態その他のやむを得ない事由が生じたと評価できるものではなく、相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「判決」に該当しないものというべきである。
したがって、本件更正請求は、相続税法第32条第6号及び相続税法施行令第8条第2項第1号所定の要件を満たさない。
ハ 請求人の主張について 請求人は、本件期限後申告を行う際に、自身の相続分が零であるとは認識していなかったから、本件申述が受理された後に本件期限後申告をしたことにつき何ら落ち度はないなどと主張する。
しかし、請求人は、家庭裁判所に対し、本件相続について、熟慮期間伸長の申立てを二度行った上、伸長後の熟慮期間内に本件申述をし、受理されたものであって、これにより本件相続に係る相続人でなくなったことを十分認識していたものと認められるから、請求人の主張は前提を欠き、採用することができない。
相続財産に関する判決後に更正請求が可能な場合は?
申告時に予測できなかった事態であることが必要
○請求人に係る相続に係る相続分の帰属が零に変更された判決が相続税法に規定する「相続財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決」に該当するかが争われた裁決。国税不服審判所は、当該規定に該当するためには申告時には予測し得なかった事態その他やむを得ない理由に基づくものであることが必要であると判断し、請求人の主張を斥けた(平成29年1月12日、棄却)。
基礎事実等
(1)事案の概要 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、亡母の相続に係る相続税について、相続税法(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)第32条《更正の請求の特則》の規定に基づく更正の請求をしたのに対し、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令(略)
(3)基礎事実及び審査請求に至る経緯 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ ×××(以下「本件被相続人」という。)は、××××に死亡し、同人に係る相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
本件相続の法定相続人は、長女である請求人、二女である×××(以下××という。)及び長男である×××(以下「××」という。)の3名である(以下、これら3名を「本件法定相続人ら」という。)。
ロ 請求人は、××××に対し、本件相続について、熟慮期間伸長の申立てを二度行った上、伸長後の熟慮期間内に相続放棄の申述(以下「本件申述」という。)をし、同裁判所は、平成20年12月25日、これを受理した。
ハ ××は、平成23年7月25日、××××に対し、請求人及び××を相手方として、本件被相続人の夫である×××(××××死亡)、その父×××(××××死亡)、その母×××(××××死亡)及び本件被相続人の各相続に係る遺産分割審判の申立てをした。
ニ 請求人は、本件相続に係る相続税について、法定申告期限後である平成24年2月24日、別表の「申告」欄のとおり申告した(以下「本件期限後申告」という。)。
請求人は、本件期限後申告において、本件相続に係る財産(以下「本件相続財産」という。)がまだ分割されていないとして、相続税法第55条の規定に基づき、民法の規定による相続分の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算した。
ホ ××××は、平成26年2月21日、上記ハの遺産分割審判の申立てに対し、本件相続の相続人が本件法定相続人ら3名であり、本件法定相続人らの各法定相続分がいずれも3分の1であることを前提に、遺産分割として、本件相続財産に含まれる別紙2(略)記載の各土地(以下「本件各土地」という。)を請求人に取得させることなどを内容とする審判(以下「本件審判」という。)をし、本件審判は同年3月12日に確定した。
へ 本件審判に基づき、本件各土地のうち、別紙2(略)の3、4の各土地について、平成26年3月12日受付で、別紙2(略)の1、2の各土地について、同年5月1日受付で、それぞれ本件相続を原因とする本件被相続人から請求人への各所有権移転登記等(別紙2(略)の3の土地については持分全部移転登記)が経由された。
ト ××は、平成26年10月20日、××××に対し、請求人及び××を被告として、請求人が本件申述をしており、相続人でなかったことなどを理由に、本件審判の無効確認を求めるとともに、本件審判を前提としてされた上記への本件各土地についての各所有権移転登記等の抹消登記手続等を求める訴えを提起した。
××××は、××××、上記訴訟について、請求人が本件申述をし、これが受理されたことにより、請求人は本件相続の相続人ではなくなり、その結果、××及び××の法定相続分にも変動を来すことから、本件審判は、本件相続について相続人でない者を相続人とし、その余の被相続人に係る相続について法定相続分を誤ったものであり、その全体が無効というほかないなどとして、本件審判が無効であることを確認するとともに、請求人に対し、本件審判を前提にされた上記への本件各土地についての各所有権移転登記等の抹消登記手続を命じることなどを内容とする判決(以下「本件判決」という。)を言い渡し、同判決は××××に確定した。
チ 請求人は、平成27年7月21日、本件相続に係る相続税について、相続税法第32条の規定に基づき、別表(略)の「更正の請求」欄のとおり更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ、原処分庁は、同年10月19日付で、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
そのほか、審査請求に至る経緯は別表(略)のとおりである。
争点および主張
(1)本件判決により、相続税法第32条第1号に規定する相続財産の分割が行われたといえるか否か(争点1)。
(2)本件判決が、相続税法第32条第6号の委任を受けた相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「相続財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決」に該当するか否か(争点2)。 当事者の主張は表のとおり。
【表1】争点1(本件判決により、相続税法第32条第1号に規定する相続財産の分割が行われたといえるか否か。) |
請 求 人 | 原処分庁 |
共同相続人の一人が遺産分割調停において相続財産を取得しないことが確定した場合、相続税法第32条第1号の適用が認められているところ、本件判決は、請求人が相続放棄の申述をしていたことを理由に本件審判を無効としていることから、同判決によって、はじめて請求人の相続分が3分の1から零となったといえ、このことは、相続税法第32条第1号に規定する「財産の分割が行われ、共同相続人が当該分割により取得した財産に係る課税価格が民法の規定による相続分の割合によって計算されていた課税価格と異なることとなった」場合に該当するといえる。 | 相続税法第32条第1号に規定する「財産の分割」がされたというには、共同相続人間の協議又は家庭裁判所の審判による遺産分割の実行がされなければならないところ、本件において、共同相続人間で財産を分割する協議がされた事実は認められない。また、本件審判は、本件判決により無効とされており、本件判決も、本件審判が無効であることを確認したものであって、遺産分割を実行するものではない。 したがって、本件において相続税法第32条第1号に規定する「財産の分割」がされた事実はない。 |
【表2】争点2(本件判決が、相続税法第32条第6号の委任を受けた相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「相続財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決」に該当す るか否か。) |
請 求 人 | 原処分庁 |
本件判決により、請求人に係る本件相続に係る相続分の帰属が3分の1から零に変更された旨の本件判決は、相続税法第32条第6号の委任を受けた相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決」に該当する。 相続放棄は、裁判所による申述の受理によって終局的に確定するものではないことから、請求人は、本件期限後申告を行う際に、自身の相続分が零であるとは認識していなかったのであり、本件申述が受理された後に本件期限後申告をしたことにつき何ら落ち度はない。 | 本件判決は、相続税法第32条第6号の委任を受けた相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決」には該当しない。 |
審判所の判断
(1)争点1(本件判決により、相続税法第32条第1号に規定する相続財産の分割が行われたといえるか否か。)について イ 上記のとおり、本件判決は、請求人が本件相続について相続放棄をしていたことを理由に、本件審判が無効であることを確認するとともに、本件審判を前提にされた本件各土地についての各所有権移転登記等の抹消登記手続を命じることなどを内容とするものであり、これによって本件相続財産の分割が行われたものとはいえない。
したがって、本件更正請求は、相続税法第32条第1号所定の要件を満たさない。
ロ 請求人は、共同相続人の一人が遺産分割調停において相続財産を取得しないことが確定した場合、相続税法第32条第1号の適用が認められていることからして、本件判決があったこともこれと同様に解される旨主張するが、請求人が主張する事例と本件判決とは場面を異にするから、請求人の主張は採用することができない。
(2)争点2(本件判決が、相続税法第32条第6号の委任を受けた相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「相続財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決」に該当するか否か。)について
イ 法令解釈 相続税法第32条の規定は、相続税特有の更正の請求の事由について定めたものであり、更正の請求に関する一般的規定である通則法第23条に対し、特例的規定と位置付けられる。
そして、通則法第23条第2項に定めるいわゆる後発的事由による更正の請求は、申告書を提出した者が、その申告時には予測し得なかった事態その他のやむを得ない事由が後発的に生じたことにより、遡って税額等の減額をなすべきこととなった場合に、同条第1項所定の期間が過ぎていることを理由に更正の請求が認められないとすると納税者にとって酷となるような一定の場合について、同項所定の期間経過後においても更正の請求を認め、例外的にその救済を図ろうとするものであり、その中の同項第1号は、後発的事由の一つとして、「課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」ことを定めている。
上にみた通則法第23条第2項の趣旨及び同条と相続税法第32条の関係等に鑑みると、相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「判決」と、通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」とは、その基本的な性質を同じくするものであると解するのが相当である。
そうすると、相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「判決」は、通則法第23条第2項第1号に規定する「判決」と同様に、当該判決について、納税者において申告時に予測し得なかった事態その他のやむを得ない事由が生じたと評価できるものでなければならないものと解するのが相当である。
ロ 検討 これを本件についてみると、請求人は、自ら本件申述をして、本件相続について相続放棄をしたにもかかわらず、これと矛盾する内容の、請求人が本件相続に係る相続税の納税義務者であることを前提とする本件期限後申告をし、さらに、その後の遺産分割審判においても、相続放棄をしていることを家庭裁判所に申し出なかった結果、相続人でないことが看過されて、本件審判がされたことが認められる。
これらの事情に照らすと、請求人が本件相続について相続放棄をしていたことを理由に、本件審判が無効であることを確認するとともに、本件審判を前提にされた本件各土地についての各所有権移転登記等の抹消登記手続を命じることなどを内容とする本件判決は、納税者において申告時に予測し得なかった事態その他のやむを得ない事由が生じたと評価できるものではなく、相続税法施行令第8条第2項第1号に規定する「判決」に該当しないものというべきである。
したがって、本件更正請求は、相続税法第32条第6号及び相続税法施行令第8条第2項第1号所定の要件を満たさない。
ハ 請求人の主張について 請求人は、本件期限後申告を行う際に、自身の相続分が零であるとは認識していなかったから、本件申述が受理された後に本件期限後申告をしたことにつき何ら落ち度はないなどと主張する。
しかし、請求人は、家庭裁判所に対し、本件相続について、熟慮期間伸長の申立てを二度行った上、伸長後の熟慮期間内に本件申述をし、受理されたものであって、これにより本件相続に係る相続人でなくなったことを十分認識していたものと認められるから、請求人の主張は前提を欠き、採用することができない。
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