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解説記事2018年06月04日 【ニュース特集】 プロデュース社の粉飾決算めぐり監査法人に約6億円の賠償命じる(2018年6月4日号・№741)

ニュース特集
粉飾時の監査法人を吸収した監査法人の賠償責任を認める
プロデュース社の粉飾決算めぐり監査法人に約6億円の賠償命じる

 ジャスダックに上場していたプロデュース社の粉飾決算をめぐり、同社の株主らが粉飾時の監査法人を吸収合併した監査法人に対して損害賠償を求めていた事件の控訴審で東京高裁は平成30年3月19日、監査法人に対して約6億円の損害賠償を命じる判決を下した。東京高裁第11民事部の野山宏裁判長は、粉飾時の監査法人の代表社員であった公認会計士がプロデュース社の社長らと共謀して巧妙な手法で巨額の赤黒転換に伴う粉飾決算を実行して有価証券報告書等の重要事項に虚偽記載をした点について、粉飾時の監査法人を吸収合併した監査法人の賠償責任の免責を認める余地はないと結論付けている(控訴審判決で確定済み)。本特集では、監査法人に対して約6億円の損害賠償を命じた東京高裁判決の判断内容をお伝えする。

粉飾に加担した公認会計士は懲役3年6月の実刑判決に
 電子部品製造装置の開発製造等を行っていたプロデュース社による粉飾は、同社がジャスダックに平成17年12月14日に上場する前から行われていたもので、架空の循環取引などにより売上高や経常利益を嵩上げし、赤字を黒字に転換(赤黒転換)するというものであった。この粉飾には、プロデュース社の社長らのほか、同社の監査を受嘱していた監査法人の代表社員であった本件公認会計士も粉飾の手口を逐一指南するなどして粉飾決算に積極的に加担していた。なお、有価証券報告書の虚偽記載(金商法違反)による刑事事件では、プロデュース社の社長に対して懲役3年及び罰金1,000万円の実刑判決が下されたほか、本件公認会計士に対して懲役3年6月の実刑判決が下されている。
証取等監視委員会の調査で粉飾が発覚  このプロデュース社の粉飾は、証券取引等監視委員会による調査により発覚した。プロデュース社は、平成20年9月19日に証券取引等監視委員会から強制調査を受けた事実を公表(以下「本件公表」という)。同社の株価(終値)は、粉飾が発覚する直前(本件公表の前日)の33万4,000円から大幅に続落し、最終取引日である平成20年10月24日の株価(終値)は305円であった(平成20年10月27日に上場廃止)。
 粉飾発覚前にプロデュース社の株式を取得した株主ら(法人4社・個人225名)は、同社が有報等に虚偽記載をしたために損害を被ったとして、有報等に係る財務計算書類の監査証明をした粉飾時の監査法人を吸収合併した監査法人に対して損害賠償を求める訴訟を提起していた。
 しかし、この株主らの訴えに対して原審の東京地裁は、株主らの訴えを全部棄却する判決を下したことから(平成29年7月19日判決)、株主らは控訴を提起した(なお、東京地裁は、プロデュース社の監査役の賠償責任は認める判決を下している)。

高裁、公認会計士に粉飾の故意があったことは明らかと指摘
 東京高裁の野山宏裁判長はまず、プロデュース社が提出した有報等には利益について赤黒転換を行うなどその重要な事項に虚偽記載があったことは明らかであると指摘。そして粉飾時の監査法人を吸収合併した監査法人の責任原因及び免責事由の有無については、吸収合併された粉飾時の監査法人(代表社員・本件公認会計士)が重要事項に虚偽がある財務諸表につき監査証明として無限定適正意見を表明していることから、粉飾時の監査法人及びこれを吸収合併した監査法人は金商法21条、22条及び24条の4並びに公認会計士法34条の19第4項の規定により、虚偽記載により生じた損害を賠償する責めに任ずるとした(関係法令は次頁の囲みを参照)。

>参考法令
金商法第21条(虚偽記載のある届出書の提出会社の役員等の賠償責任)
1 有価証券届出書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときは、次に掲げる者は、当該有価証券を募集又は売出しに応じて取得した者に対し、記載が虚偽であり又は欠けていることにより生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、当該有価証券を取得した者がその取得の申込みの際記載が虚偽であり、又は欠けていることを知っていたときは、この限りでない。
 一及び二 (略)
 三 当該有価証券届出書に係る第193条の2第1項に規定する監査証明において、当該監査証明に係る書類について記載が虚偽であり又は欠けているものを虚偽でなく又は欠けていないものとして証明した公認会計士又は監査法人
 四 (略)
2 前項の場合において、次の各号に掲げる者は、当該各号に掲げる事項を証明したときは、同項に規定する賠償の責めに任じない。
 一 (略)
 二 前項第三号に掲げる者 同号の証明をしたことについて故意又は過失がなかったこと。
 三 (略)
3~4 (略)
金商法第22条及び金商法第24条の4 (略)
公認会計士法34条の19(合併)

1~3 (略)
4 合併後存続する監査法人又は合併により設立する監査法人は、当該合併により消滅した監査法人の権利義務(当該監査法人が行うその業務に関し、行政庁の処分に基づいて有する権利義務を含む。)を承継する。
(編注)金商法第22条及び第24条の4は、流通市場における株式の取得者の損害額について、虚偽記載のある有価証券届出書(募集若しくは売出しによらないで取得した者に対する損害)及び虚偽記載のある有価証券報告書(取得した者に対する損害)の提出会社の役員等(公認会計士又は監査法人を含む)の賠償責任を定めた規定である。

 さらに野山宏裁判長は、粉飾時の監査法人の代表社員であった本件公認会計士がプロデュース社の社長らと共謀して巧妙な手法で巨額の赤黒転換に伴う粉飾決算を実行して有報等の重要事項に虚偽記載をし、無限定適正意見を表明したものであることから、本件公認会計士に故意があったことは明らかであると指摘。控訴審のなかで粉飾時の監査法人が主張した無過失の抗弁は失当であるとしたうえで、粉飾時の監査法人を吸収合併した監査法人の免責を認める余地はないと判断した。
株式取得価額自体を損害と認定  粉飾(虚偽記載)により株主らが被った損害額に関し野山宏裁判長は、本件公表前にプロデュース社の株式を取得した後、本件公表後に処分した株主らについては、本件公表後に処分したプロデュース社の株式につきその取得価額の合計額から処分価額の合計額を控除した額が基礎となる損害額になるとした。
 また、本件公表前にプロデュース社の株式を取得した後、処分することなく保持し続けている株主らについては、プロデュース社の株式の取得価額と当審の口頭弁論終結時(平成29年12月15日)の評価額との差額が基礎となる損害額になるとしたうえで、プロデュース社は平成26年9月4日に破産手続開始決定を受けていることから、当審の口頭弁論終結時における評価額はゼロであるとした。そして、本件公表後のプロデュース社の株式の価格下落について、経済情勢、市場動向、プロデュース社の業績等虚偽記載に起因しない価額の下落分があればこれを損害額から控除すべきであるものの、本件公表後のプロデュース社の株式の下落状況と当時のリーマン・ショック等に起因する経済情勢、市場動向等の状況等を対比するとき、虚偽記載に起因しない価額の下落分は存在しないか、仮に存在するとしても無視してよいほどの微々たるものと推認するのが相当であるから、本件においては控除しないとした。
 以上の点などを踏まえ野山宏裁判長は、虚偽記載により株主らが被った損害額を約6億円などと認定したうえで、粉飾時の監査法人を吸収合併した監査法人に対して損害賠償を命じた。

Column 野山宏裁判長、会計士の故意による粉飾行為の影響の大きさを指摘
 判決理由のなかで野山宏裁判長は、本件は公認会計士の故意による粉飾行為(開示規定違反行為)が問題となる事案であり、公認会計士を志す者がその資格を取得する過程において必ず学ぶべき教訓・戒めを含む事案であると指摘している。野山宏裁判長は、公認会計士が故意により粉飾行為に加担したときには、公認会計士個人が被害者からの損害賠償請求や監査法人からの求償権行使による倒産リスクに必ずさらされるのみならず、その公認会計士が所属する監査法人も倒産リスクにさらされるのであり、その監査法人に属する先輩、同僚、後輩の公認会計士及びその家族の生活も脅かす結果を生じるものであるとしたうえで、このことは金商法の立法趣旨(巨額の賠償リスクを存在させることを公認会計士による開示規定違反行為を抑止するための重要な一手段として位置付けること)に照らしてやむを得ないと指摘した。

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