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解説記事2018年10月15日 【SCOPE】 「監査上の主要な検討事項」と注記における誤解(2018年10月15日号・№759)

注記が前提にあらず
「監査上の主要な検討事項」と注記における誤解

 改訂監査基準により、平成33年3月期の監査報告書から「監査上の主要な検討事項」の記載が求められることになる。「監査上の主要な検討事項」が導入されることにより、中にはIAS第1号「財務諸表の表示」における「経営者が会計方針を適用する過程で行った判断」及び「見積りの不確実性の発生要因」に関する注記が必須になるのではといった話もあるが、これはまったくの誤解といえる。「監査上の主要な検討事項」は監査基準上、財務諸表における注記が必ずしも前提とはなっていないからだ。また、企業会計基準委員会のディスクロージャー専門委員会では、当該注記を日本で導入した場合の論点を検討しているが、「監査上の主要な検討事項」を導入しやすくする目的のためではないと注意喚起している。

財務諸表に開示がある場合・・・・・・・には当該開示を参照
 今年7月に監査基準が改訂され、監査報告書において「監査上の主要な検討事項」の記載が求められることになった。監査プロセスの透明性を向上させることが目的であり、すでにEUなどで導入されているKAM(Key Audit Matters)と同様のものだ。
 改訂監査基準(第四.七)によれば、「監査上の主要な検討事項」とは、監査人が「監査の過程で監査役等と協議した事項の中から特に注意を払った事項を決定した上で、その中からさらに、当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項」として決定されたものと定義。その上で「監査上の主要な検討事項として決定した事項について、関連する財務諸表における開示がある場合には当該開示への参照を付した上で、監査上の主要な検討事項の内容、監査人が監査上の主要な検討事項であると決定した理由及び監査における監査人の対応を監査報告書に記載」するとされている。
 ここで留意しなければならないのは、「監査上の主要な検討事項」を記載する際においては財務諸表における注記が必ずしも前提とはなっていない点である。あくまでも「開示がある場合」とされているからだ。
 ただ財務諸表に注記がされていないからといって監査人が「監査上の主要な検討事項」を記載できないわけではない。監査人が未公表の情報を「監査上の主要な検討事項」に含める必要があると判断した場合には、経営者に追加の情報開示を促すことになる。仮に経営者が情報を開示しない場合において、監査人が正当な注意を払って職業的専門家としての判断において未公表の情報を「監査上の主要な検討事項」に含めることは、監査基準に照らして守秘義務が解除される正当な理由に該当するとされている(「監査基準の改訂について」二.1(5))(図表参照)。


見積りの注記は「監査上の主要な検討事項」の導入とは関係なし
 最近、「監査上の主要な検討事項」との関係で語れることが多いのが、IAS第1号「財務諸表の表示」第122項「経営者が会計方針を適用する過程で行った判断」及び第125項「見積りの不確実性の発生要因」に関する注記だ。「監査上の主要な検討事項」の導入に合わせこれらの注記が必要になるというものだが、「監査上の主要な検討事項」とこれらの注記に直接的な関係はない。
日本基準に基づく財務諸表改善が目的  現在、企業会計基準委員会のディスクロージャー専門委員会では、基準諮問会議(会計基準の検討テーマなどを審議する財務会計基準機構の機関)の依頼を受け、日本において当該注記の開示を行う場合の具体的な範囲や有用性について検討を行っている。同専門委員会では、11月中にも検討結果の報告を基準諮問会議に行う予定だが、現時点ではIAS第1号第122項及び第125項の開示要求をそのままの形で日本基準に導入することは適当ではないと分析している。
 また、今回の注記の検討は、日本基準に基づく財務諸表の改善を目的として行うものであると指摘。「監査上の主要な検討事項」を導入しやすくするために行うことを目的とはしていないと注意を促している。

【参考】IAS第1号「財務諸表の表示」
>第122項(経営者が会計方針を適用する過程で行った判断)
 企業は、重要な会計方針又は他の注記とともに、見積りを伴う判断(第125項参照)とは別に、経営者が当該企業の会計方針を適用する過程で行った判断のうち、財務諸表に認識されている金額に最も重要な影響を与えているものを開示しなければならない。
>第125項(見積りの不確実性の発生要因)
 企業は、報告期間の末日における、将来に関して行う仮定及び見積りの不確実性の他の主要な発生要因のうち、翌事業年度中に資産及び負債の帳簿価額に重要性のある修正を生じる重要なリスクがあるものに関する情報を開示しなければならない。当該資産及び負債に関して、注記には次の事項の詳細を記載しなければならない。
(a)その内容
(b)報告期間の期末日現在の帳簿価額

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