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解説記事2018年11月05日 【税理士のための相続法講座】 遺言(16)-遺言の内容(8)(2018年11月5日号・№762)

税理士のための相続法講座
第42回
遺言(16)-遺言の内容(8)
 弁護士 間瀬まゆ子

 「遺言の内容」の8回目となる今回のテーマは遺言執行者です。
1 遺言執行者の指定
(1)遺言執行者の人選
 遺言者は、遺言で遺言執行者を指定することができます(民法1006条1項前段)。その指定をする際に問題となるのが誰を遺言執行者(候補者)にするかという点です。
 遺言執行者として、相続人の一人(または二人以上)を指定することも可能と解されています。そのため、跡取りの長子等、メインとなる相続人を指定する例は多いと思われます。
 弁護士や司法書士等の専門家や信託銀行に遺言の作成援助を依頼した場合には、当該専門職または銀行を指定することが多いでしょう。ある公証人の話によると、専門職として税理士が登場することは稀だそうです。しかし、紛争性のない事案であれば、税の知識があり、数字に長けている税理士は、遺言執行者として適任のように思います(実際、弁護士が自らの遺言を作成する際に、知人の税理士を遺言執行者に指定したという例もあるそうです。)。
 相続人がおらず、あるいは相続人がいるけれども慈善団体等に全て寄付するというような場合には、当該寄付先の団体の代表者等を指定しておくという方法もあります。ユニセフや赤十字等の著名な団体であれば、遺贈を受けることにも慣れていますので、問題はないはずです。大きな団体でない場合や不安がある場合は、遺言を作成する段階で、遺言執行者に指定してよいかどうか確認しておいた方が無難でしょう。
(2)遺言執行者を指定する場合の注意点  遺言執行者を指定する場合、指定する者と遺言者の年齢差を考慮しておくことは大切です。年齢が近いと、遺言者より先に遺言執行者として指定された人が亡くなってしまったり、遺言者の相続開始時に高齢になっていて就任することが困難になっていたりといった事態が生じるリスクが高まるからです。そういったリスクを避けるには、最初から年齢の離れた人を指定するほか、以下のような補充条項を入れて、第二順位の遺言執行者を指定しておくという方法もあります。
 前項記載の遺言執行者が事故等により遺言執行者に就任することが困難なときは、Aを遺言執行者に指定します。
 遺言執行者は複数でも構いません。その場合、原則として、任務の執行は過半数で決すると定められています(民法1017条1項)。ただ、一般的には、複数の遺言執行者の選任は手続きが煩雑になりますので回避すべきと考えます。
※ 実例として、仲の悪い2人の相続人のどちらを遺言執行者に指定しても任務の遂行が滞るだろうと懸念された事案で、その2人ともを遺言執行者に指定したところ、不本意ながらも協力し合って円滑に遺言の内容を実現できたというようなケースもあるようですが、あくまで例外的な事例と考えるべきでしょう。
2 遺言執行者の指定の委託  遺言で「遺言執行者は○○とする」というように特定の人を指定するほか、「遺言執行者の指定を○○に委託する」というように、遺言執行者の指定を第三者に委託することも可能です(民法1006条1項後段)。
 実務上、遺言執行者の指定を委託する例は稀でしょうが、ある弁護士会の会長が遺言執行者の指定を委託され、実際に当該弁護士会所属の弁護士を指定したという例もあるそうです。
 なお、こういった指定の仕方をする場合、遺言執行者として指定された弁護士は、遺言者や遺産に関する情報を一切持っていないわけですので、遺言の内容を細かくしたり、遺言とともに遺言に関するライフプランノートや財産関係の書類が渡るよう準備しておく等の対策が必要になります。この点は、寄付先の代表者等を指定する場合も同様です。
3 遺言執行者が指定されていないとき  遺言執行者が指定されていないとき(または欠けたとき)は、相続人等の利害関係人は家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てることが可能です。
 遺言執行者がいなくとも、相続人らにおいて遺言の内容を実現できる場合は多いです。そのような場合は必ずしも遺言執行者を選任してもらう必要はありません。ただ、子の認知(民法781条2項)、推定相続人の廃除とその取消し(民法893条)、一般社団法人の設立(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項後段)のように遺言執行者による執行行為が必須とされる場合もあります。
 このように、遺言執行者が必要かは事案によって変わるわけですが、相続人の事務処理能力に不安がある場合や、相続人間の対立が見込める場合には、遺言の中で遺言執行者を定めておいた方が安心でしょう。
4 遺言執行者の報酬  遺言者は、遺言の中で遺言執行者の報酬を定めておくことができます(民法1018条1項但書)。その定めがない場合、遺言者と相続人らで話し合って定める必要が生じます。遺言執行者は、家庭裁判所に対して遺言執行者の報酬を定める審判を申し立てることが可能ですので(同項本文)、相続人らとの協議が調わない等の場合には、そのような審判を申し立てることになります。そうなると遺言執行者に思わぬ負担が生じてしまいますので、遺言執行者を指定する場合には、あわせて執行報酬も定めておくべきでしょう。
 遺言執行者の報酬については、「金100万円」というように定額で定めるほか、執行の対象となる財産の価額の何パーセントというように比率で指定することも可能です。弁護士が遺言の作成段階から関わり、自らが遺言執行者の候補者になる場合には、「○○法律事務所の報酬規程に基づいて算出した額」等の定めを入れることが多いかと思います。
 また、遺言執行者の報酬をどの財産から支出するかを定めておくことも、相続人らと遺言執行者との間のトラブルを回避するためには肝要です。この場合、例えば、遺言執行者が預貯金を解約した中から執行者報酬や執行費用を控除し、残額を相続人に分配する等の規定を置いておくことが考えられます。
 なお、遺言執行者が報酬を受けられる時期は、原則として、執行事務を終了した後になります(民法1018条2項が準用する同法648条2項本文)。

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