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解説記事2019年03月18日 【ニュース特集】 海外取引調査で着目、アンダー・オーバーバリュー(2019年3月18日号・№779)

ニュース特集
輸出免税非適用とする裁決事例が相次ぎ公表
海外取引調査で着目、アンダー・オーバーバリュー

 海外取引重点調査担当者を配置するなど海外取引に対する調査体制を強化する中、課税当局は、貿易取引におけるアンダーバリュー取引、オーバーバリュー取引に着目した調査を実施しているようだ。真実の取引価額よりも低い価額で税関へ申告して輸出入を行うアンダーバリュー取引では、輸出法人が売上除外を行っている事例があるという。逆に、真実の取引価額より高い価額で税関へ申告して行うオーバーバリュー取引では、輸入法人が水増し仕入れを行っているケースがあるようだ。
 また、最近では、国税不服審判所が、海外の取引先からの要請等により輸出物品価額を低く記載した取引に対し、輸出免税規定は適用されないとする裁決事例を相次いで公表している。

アンダーバリュー取引 ~売上除外事例~
 課税当局が、貿易取引に係る調査で着目するアンダーバリュー取引とは、真実の取引価額よりも低い価額で税関へ申告して輸出(輸入)を行う取引のこと。例えば、輸出法人が海外の取引相手に商品を輸出する際に、真正価額100のところ、税関への申告は70という過少額で輸出したように装うことである。
 このアンダーバリュー取引は、輸出相手先側で高い関税が課されることを回避するために行われることがあるほか、税務上も問題となるケースがあるという(図1参照)。

 図1では、調査法人Aが、取引相手先と通牒の上、コマーシャルインボイス、契約書等を70で作成し、輸出売上の計上と決済を70で行い、正当な輸出価額である100との差額30を調査法人Aの代表者の個人口座へ振り込ませる方法や現金回収する方法により売上除外を行っている。

オーバーバリュー取引 ~水増し仕入事例~
 アンダーバリュー取引とは逆に、真実の取引価額よりも高い価額で税関へ申告して輸出(輸入)を行う取引をオーバーバリュー取引という。例えば、日本の輸入法人が海外の取引相手から商品を輸入する際に、真正価額100のところ、税関への申告は130という過大額で輸入したように装うことである。
 オーバーバリュー取引は、豚肉など特定品目の輸入関税(差額関税制度)を回避する目的で行われる場合もあるが、課税上、問題が生じるケースもあるようだ(図2参照)。

 図2では、調査法人Cが、取引相手先と通牒の上、コマーシャルインボイス、契約書等を130で作成し、輸入仕入れの計上と決済を130で行い、正当な輸入価額100との差額30を調査法人Cの代表者の個人口座へ振り込ませる方法や現金回収することにより水増し仕入れを行っている。

輸出販売する腕時計の価格を20万円以下と記載
 貿易取引に関しては、国税不服審判所が、取引価額を低く記載した輸出取引に係る裁決事例(消費税)を相次ぎ公表している。
 平成30年6月5日裁決(裁決事例集No.111)は、宝石、時計及び貴金属の販売等を行う請求人が国際郵便により輸出した資産の譲渡については、消費税法7条《輸出免税等》2項に規定する証明がされていないため、輸出免税規定は適用されないとした事例である。
 本事案では、請求人が、日本国内で仕入れた腕時計を国際スピード郵便によりJ国所在のG社(本件法人)に輸出販売する取引(本件取引)に係る郵便物は、いずれもその価格が20万円以下であるので、全て簡易郵便物(消費税法施行規則5条1項2号)に該当し、請求人は同号に規定する書類等を保存しているから、本件対象物品(腕時計)についても消費税法7条2項に規定する証明はなされている旨を主張した。
輸出時見積価格は20万円を上回る  審判所は、輸出申告時点で資産の価格が未確定である郵便物については、郵便物1個当たりの輸出時見積価格(調達原価に通常の利潤、一般管理費等を加えた額又は値引き等の調整が加えられる前の額)をもって当該郵便物の価格とみるのが相当であり、通常は、輸出時見積価格は調達原価を上回るといえると指摘。
 本件取引においては、1個の郵便物にまとめられた各腕時計のそれぞれの仕入金額の合計額は、最も少ないものでも20万円の2倍超であり、輸出免税規定が適用されて消費税等の還付金額が発生することがあり得ることを考慮しても、郵便物1個当たりの輸出時見積価格は、いずれも20万円を上回ると認定。本件取引は簡易郵便物としての資産の輸出には該当せず、本件取引について消費税法7条2項に規定する証明はされていないと判断している。

取引先法人からの要請を受け、インボイスに低い価格
 本事案において、審判所は、請求人が本件取引に先立ち、本件法人から、J国における通関手続上、通関する物品の金額が高いと税金が発生し、取引価額に影響が生じる旨の理由による要請を受けて、本件法人に腕時計を発送するに当たり、輸出販売する腕時計の本数・品質等にかかわらず、所定の物品用ラベル(伝票)の「内容品の価格」欄及び発送物の内容品を宛先国の税関に申告する際に必要な書類(インボイス)の内容品の「合計額」欄のいずれにも、300J国ドルと記載して輸出の手続を行う旨の合意(本件合意)をしたと認定。「本件合意は、……本件法人の事情により、郵便物が高額な商品でないように装ってJ国の輸入通関手続を通過させるためのものであったことがうかがわれる」と指摘している(下線は編集部)。
 請求人は、本件合意に基づき、伝票及びインボイスのいずれにも、「J$300」と記載し、発送していた(300J国ドルの邦貨換算額は3万円に満たない金額であり、20万円を超えたことはない)。
化粧品、健康食品の輸出事例でも  平成29年9月15日裁決(裁決事例集No.108)は、上記の裁決と同様に、郵便物として現実の取引価格が20万円を超える資産を輸出した場合、輸出許可書等の一定期間の保存がない限り、消費税の輸出免税規定の適用はないとされた事例。化粧品や健康食品を輸出する取引を行う個人事業者は、20万円を超える商品を郵便物として輸出する際、「郵便発送伝票」の「内容品の価格」欄に、取引先の要望に応じて、商品の合計額として20万円以下の金額を記載していた。

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