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解説記事2019年06月10日 【レポート】 中小企業強靭化法が国会成立、民法特例や税制措置(2019年6月10日号・№790)

レポート
中小企業強靭化法が国会成立、民法特例や税制措置
防災設備への税制優遇など

 「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案」(中小企業強靱化法案)が5月29日に国会で成立し、6月5日に公布された(表1参照)。

【表1】中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)概要
 本案は、自然災害の頻発や経営者の高齢化等を踏まえ、中小企業の事業活動の継続に資するため、中小企業の災害対応力の向上及び円滑な事業承継に係る支援措置等を講ずるものであり、その主な内容は次のとおりである。
一 中小企業等経営強化法の一部改正
 1 基本方針において定める事項に、中小企業者の事業継続力強化に関する事項等を追加すること。
 2 中小企業者が単独で又は連携して行う事業継続力強化に関する計画の認定制度を創設し、各種支援措置を講ずること。
 3 新規中小企業者等が行う社外高度人材を活用した新事業分野開拓に関する計画の認定制度を創設し、各種支援措置を講ずること。
二 商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律の一部改正
  商工会又は商工会議所が市町村と共同して行う小規模事業者の事業継続力強化に係る支援事業に関する計画について、都道府県知事の認定を受けることができるものとし、当該計画の実施について各種支援措置を講ずること。
三 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の一部改正
  遺留分に関する民法の特例の対象を個人事業者に拡大すること。
四 独立行政法人中小企業基盤整備機構法の一部改正
  右記の措置を支援するための事務を独立行政法人中小企業基盤整備機構の業務として追加すること。
五 施行期日
  この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。

 改正法では、中小企業者が単独で行う「事業継続力強化計画」や複数の中小企業が連携して行う「連携事業継続力強化計画」を経済産業大臣が認定する制度を創設。認定事業者に対し、信用保証枠の追加、低利融資、防災・減災設備への税制優遇(20%の特別償却)等の支援措置が講じられる。また、「個人版事業承継税制」が平成31年度税制改正で創設されたことに合わせ、遺留分に関する民法特例の対象を個人事業者に拡大する。
 なお施行日は、原則として公布の日(令和元年6月5日)から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日からとされている。

経済産業大臣の認定が必要  平成31年度税制改正では、防災・減災設備への投資に係る20%の特別償却制度が創設されたが、同制度は中小企業強靭化法の改正が前提になっている。改正法では中小企業が行う防災・減災の事前対策に関する計画(事業継続力強化計画)を国が認定し、認定を受けた者に対して課税の特例などの支援措置が講じられる。税制措置は改正法の施行日から令和3年(平成33年)3月31日までの間に取得等し、事業の用に供した事業継続力強化設備等(表2参照)が対象。中小企業は事業継続力強化計画を策定し、経済産業大臣の認定を受けることにより同計画に基づく事業継続力強化設備等への投資について課税の特例の適用が受けられる。

【表2】事業継続力強化設備等
減価償却資産の種類 対象となるものの用途又は細目
機械及び装置
(最低投資額:100万円)
 自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有する次のいずれかに該当するものとして経済産業大臣が定めるもの。
一 自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプその他の自然災害に起因する電気、ガス又は水道水の供給の停止の影響の軽減に資する機能を有するもの
二 排水ポンプその他の自然災害に起因する浸水の影響の軽減に資する機能を有するもの
三 制震装置、免震装置その他の自然災害に起因する設備の転倒又は損壊の影響の軽減に資する機能を有するもの
器具及び備品
(最低投資額:30万円)
全ての設備
建物附属設備
(最低投資額:60万円)
電気設備(照明設備を含む。)
給排水又は衛生設備及びガス設備
消火、排煙又は災害報知設備及び格納式避難設備
 自然災害の発生が事業活動に与える影響の軽減に資する機能を有する次のいずれかに該当するものとして経済産業大臣が定めるもの。
一 制震装置、免震装置その他の自然災害に起因する設備の転倒又は損壊の影響の軽減に資する機能を有するもの
二 防水シャッターその他の自然災害に起因する浸水の影響の軽減に資する機能を有するもの
三 防火シャッターその他の自然災害に起因する発火の影響の軽減に資する機能を有するもの

生前贈与された財産を遺留分算定から除外  また、平成31年度税制改正では、個人版事業承継税制が創設された。同税制は、10年間の時限措置で既存の事業用小規模宅地特例との選択適用とするもの。法人の事業承継税制と同じく、承継計画を作成して中小企業経営承継円滑化法の認定を受ける仕組みとなっている。
 今回、個人事業者についても法人と同様の事業承継税制が措置されることを踏まえ、遺留分の民法特例の対象に個人事業者が追加された。相続人の全員の合意を得れば、簡易な手続きで事業用資産の全部又は一部について、遺留分算定基礎財産から除外することができる。また、事業用資産以外の財産についても同様だ。

社外協力者へのSO付与は計画認定が必要  中小企業者等が社外高度人材を活用して新事業分野を開拓する計画の認定制度も創設される。主務大臣からこの計画の認定を受けた中小企業者等に対しては、ストックオプション税制の対象に、計画に従って活用する社外高度人材(プログラマー、税理士など)が追加される。
 課税の特例を受けられる会社の要件については、社外高度人材活用新事業分野開拓に関する命令案(6月30日まで意見募集中)に規定されており、①大規模法人グループの所有に属さない会社、②非上場会社、③風俗営業を営む会社ではない、④暴力団が関与する会社ではない、⑤中小企業等経営強化法施行規則に規定する要件に該当するベンチャーキャピタル等から最初に出資を受けた時点で資本金の額が5億円未満かつ常時使用する従業員の数が900人以下の会社、⑥業務委託契約に基づき、社外高度人材活用新事業分野開拓計画全体の実施期間において社外高度人材を日本国内のみで2年以上活用する会社、⑦計画期間が新株予約権の全ての行使の日まで継続することとされている会社、⑧計画期間において、社外高度人材に対する新株予約権の付与決議及び付与を行う会社、⑨社外高度人材活用新事業分野開拓計画の開始の日から当該計画に従って社外高度人材に付与する新株予約権の行使の日まで日本国内の居住者である社外高度人材を活用する会社であること――のすべての要件に該当する必要がある。
 なお、中小企業強靭化法案は衆参の経済産業委員会で附帯決議が付されている(表3参照)。

【表3】中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(令和元年五月二十八日、参議院経済産業委員会)
 政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一 中小企業の防災・減災対策の高度化に向けて、認定事業継続力強化計画等が最大限活用されるよう、効果的なハンズオン支援を実施できる人材を育成するとともに、制度の普及啓発を含め十分な支援措置を講ずること。
  特に、小規模事業者による活用を促すため、商工会・商工会議所と関係市町村の緊密な連携に向けて、商工会・商工会議所、小規模事業者に関する実情が市町村において十分に理解されるよう、政府が責任を持って対応するとともに、「基本方針」で分かりやすい認定基準を示すほか、申請手続をできる限り簡素化すること。
二 商工会・商工会議所の経営指導員については、マンパワー不足が確認されているため、地方交付税措置等を通じ、必要な財源措置を講ずるよう努めること。また、都道府県による設置定数基準の見直し等を促し、抜本的な体制整備に努めるとともに、こうした取組が着実に継続して実施されるよう、不断の検証を実施すること。さらに、支援能力向上のための研修を充実し、小規模事業者支援を十分に実施できる体制を構築すること。
三 サプライチェーンの強靱化に当たっては、親事業者が下請中小企業に対して過大な負担を一方的に押し付けることがないよう、下請法の運用等について適切な対応を図ること。
四 喫緊の課題である中小企業の事業承継への対応を推進するため、事業承継税制等について広く周知に努めるとともに、事業引継ぎ支援データベースの抜本的な拡充を図る等の取組を加速すること。
五 プログラマーや弁護士等の社外高度人材をストックオプション税制の対象として認める課税特例については、社外高度人材活用新事業分野開拓計画に関する合理的かつ客観的な認定基準を定めた上で、適切な認定を行うこと。あわせて、認定後も計画の実施状況について継続的な確認に努めるとともに、税の公正の観点から、制度全体を通じて適切な運用を行うこと。

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